《完結》テイルズ オブ デスティニー〜七人目のソーディアンマスター〜   作:灰猫ジジ

5 / 65
第五話

 七将軍長老であるニコラス・ルウェインに”セインガルド王国武術大会”の参加の打診をされてから二週間後。

 ついに武術大会が開催されることになった。

 場所は城内の訓練場で行われる。この大会はセインガルド王が自ら観戦に来ることもあり、参加者は気合十分で臨むのである。

 

 優勝すれば、セインガルド王から直接言葉を頂くことができ、場合によっては昇進も夢ではなく、過去には近衛兵に昇格した人もいた。

 そして、過去優勝者は次回から参加することが出来ないため、次回参加者にも優勝希望が見えるのと、前年の大会よりも質を下げないように訓練にも励む人たちが多い。

 だからこそセインガルド王国は、ファンダリア王国と並んで二大強国と呼ばれるだけの質の高い兵力を有しているのである。

 

「それでは、これよりセインガルド王国武術大会を開催致します! まずは開会の挨拶としまして、陛下よりお言葉を頂戴いたします」

 

 八人の参加者が訓練場の真ん中に並ぶ中、その前にセインガルド王が歩いてやってくる。

 

「今回も質が高い兵士を推薦したと七将軍から聞いておる。前回同様のフェアな戦いを期待する。

それと、今回はヒューゴからの推薦もあり、王国客員剣士のリオン・マグナスも参加することになった。

リオンよ、客員剣士として恥じない戦いを見せてみよ」

「……はっ」

 

 リオンは頭を下げて、セインガルド王の言葉に頷く。

 そして頭を上げたときに、エドワードを軽く睨み付ける。

 

(うげ、こっちを睨んできたよ。俺何もしてないのに……)

 

 エドワードはため息を吐きそうになるが、国王の前なのでなんとか我慢して平静を保つ。

 そしてトーナメント表が貼り出され、第一試合が始まろうとしていた。

 

「俺は……Aブロックの二試合目か」

『リオンはBブロックだから、戦うとしても決勝だな』

「どうなることやらだけど……まぁ全力で戦うだけだな」

 

 エドワードはこの二週間で剣術だけでなく、ソーディアンマスターとしての戦いも練習していた。

 休みの日はもちろんだが、勤務が終わった後にダリルシェイド付近でモンスターと戦い、晶術を交えた戦いもするようになっていた。

 しかし、まだ晶術は慣れていないので今回の大会では使わないように決めている。

 

「それでは第一試合を始めます! マット選手とクーガー選手は中央へ来てください」

 

 この試合に勝った方がエドワードの次の対戦相手になるため、時雨(しぐれ)と一緒にじっくりと観戦することにしていた。

 マットは身長が170cmくらいの高さで体型はガッチリしている。

 クーガーは190cmくらいの長身だが細身でひょろっとした印象をエドワードは感じていた。

 

 (マットは斧を使うのか……対してクーガーはレイピアを使っているな。お互いに体型に合った装備を選んでいる感じだ)

 

 この武術大会は真剣を使っての勝負で、得物も自分の持っている武器を使う。

 貸し出しもしているが、余程のことがない限り借りることはない。

 愛用の武器を使った方が戦いやすいからだ。

 

「では……はじめ!」

 

 開始の合図と同時にクーガーが突っ込んでいく。

 マットは待ち構えるようだ。斧を構えたまま動かない。

 

「きえええええーーい!」

「ぐっ…」

 

 クーガーは叫びながら高速で突きを連発していく。

 マットは少し苦しそうに防御をしているが、躱すことが出来ずに攻撃を受け続けている。

 

「おおっと! こりゃマットの負けだな」

「だな。完全に止まっちまって、攻撃を避けることも出来てないじゃん」

 

 周りで観戦している兵士達が劣勢に見えるマットに対して負けが確定だと話している。

 エドワードはその言葉を聞いて、ため息を吐く。

 

(あれを見てどこがマットの負けなんだよ)

 

『ありゃあだめだな……クーガーとかいう兵士の負けだ』

 

 時雨(しぐれ)の言葉に返事をせずに頷くエドワード。

 その間にもクーガーの連続突きは止まらない。

 そして────

 

 

「これで止めだ!」

 

 クーガーが少し距離を取ったと思ったら、再度向かっていき、マットの身体目掛けて全力の突きを放つ。

 マットは目を見開き、斧を胸に構えて斧腹をクーガーに向けた。

 

「むううん!」

「しまっ……!」

 

 クーガーが気付いたときにはすでに遅く、マットはレイピアを斧腹で弾くことで武器を奪い、そのままクーガーを殴りつける。

 前に全力で向かってきていたクーガーは避けることもできず、マットの攻撃がカウンターとなり数メートル吹っ飛ぶ。

 そしてそのまま気絶してしまった。

 

「クーガー選手は……気絶していますね。それではマット選手の勝ちです!」

「おおおお! 大番狂わせだ!」

「あの状態からマットが勝つとは……」

 

(あれは完全にカウンター狙いだったでしょ)

 

 エドワードは観戦している兵士達の言葉を聞いて、再度ため息を吐く。

 カウンター狙いだったマットは見れば分かるもんなんじゃないかと思っていたが、そうではなかったことが残念だった。

 

『いやいや、でもあれはある程度の実力がないと気付けないと思うぞ。エドだから分かることでもあるってことさ』

「そんなもんかねぇ……」

『それよりも次は俺たちの番だ。気持ちも含めて準備は大丈夫か?』

「……ふー。ああ、大丈夫そうだ」

 

 エドワードは一回深呼吸をして、自分の状態を確かめる。

 少し緊張はしているが、それが逆に戦意を高めてくれているため、特に問題はなさそうだった。

 

「それではAブロックの第二試合を始めます! エドワード選手とミグ選手は中央に来てください!」

 

 エドワードは審判に呼ばれたので、訓練場の中央に向かう。

 対戦相手のミグも同じく中央に向かっている。

 エドワードは身長が180cmで細めだが筋肉がしっかりついている体型に対し、ミグはエドワードよりも少し小さい175cmほどでポッチャリ体型である。

 

(得物は……ハンマーか。一撃が強そうだな。当たる前に仕留めるか……)

 

「それでは……はじめ!」

 

 ミグは先ほどのマットのようにカウンター狙いで待ち構えているようで、自分から動こうとしていなかった。

 ミグ自身も先ほどのマットの戦いを参考にしており、自分に合った戦い方に持ち込もうとしていた。

 

 

 

 

 

 

────しかし、

 

 

 

 

 

 

 

 

 突然目の前からエドワードが消え、その直後大きな音を立ててミグが前のめりに倒れた。

 ミグが立っていた場所には手刀の構えをしたエドワードが立っていた。

 

「しょ、勝者エドワード選手!」

 

 審判はミグが気絶しているのを確認後にエドワードの勝利を告げ、その言葉を聞いてそのまま訓練場の端まで戻っていくエドワード。

 訓練場内はあまりの光景に静まり返っていた。

 

『こいつ、俺を抜かないで終わらせたよ……』

「まぁさっきみたいにカウンターを狙っているのが分かったからね。だからスピード重視で回り込んで、手刀の一撃で十分かなって」

 

 ミグの一瞬の隙をついて背後に回り、首元に手刀で攻撃をしたという単純な流れである。

 ただし、これは相当な実力差がないと回り込む段階で気付かれるし、気付かれると避けられるのだ。

 少しでもズレれば、意識を飛ばすことは無理なので、エドワードとミグにはそれほどの実力差があったのであった。

 

 

 

 Bブロックの第三試合は特に面白みもない戦いで、淡々と試合は終わった。

 第一、第二試合の内容が良かったため、比べられてしまうとお粗末なものに見えてしまっていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、Bブロック第四試合、ついにリオン・マグナスの試合が始まるのであった。

 




面白い!また続きが見たいと思ったら、ぜひ高評価、お気に入り登録、感想をお願いします!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。