《完結》テイルズ オブ デスティニー〜七人目のソーディアンマスター〜   作:ねここねこねこ

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第四十九話

「あんなところに神の眼が!」

 

 無差別地殻破砕兵器ベルクラントに突入したスタンが、最奥にて浮かび上がる神秘的な巨大レンズを見つける。

 しかしそれは立体映像に過ぎず、神の眼はこの場にはなかった。

 

「ここまでだ。地上軍よ」

 

 神の眼の立体映像の先からヒューゴが現れる。

 全員が武器を抜いて警戒する。

 

「まさかベルクラントに乗り込んでくるとはな。君達の悪あがきには感服した」

「ヒューゴ、お前の野望もここまでだ。これ以上、好きにはさせん」

「あなたが頼りにしていた側近はもういません。残るはあなただけです」

「覚悟は良いわね?」

「お前に勝ち目はない。天地戦争はこれで終わりだ!」

 

 ウッドロウに続き、フィリアやルーティ、スタンもヒューゴに言葉をぶつけるが、彼は黙ったままだった。

 いや、何も分かっていない者達の言葉に笑いをこらえていたという方が正確であった。

 

「ふふふ……はーっはっはっは! ()()()()()()ときたか!」

「何がおかしいのよ!」

「君達の無邪気さがだよ。リオンから聞かなかったのかね?」

「リオンから……? 何を……?」

「私がどれほどの力を持つかだよ。全く聞かなかったのかね? あの少年剣士が()いつくばり、泣いて私に許しを()うた有様を!」

「リオンを侮辱するな! あいつはそんな事しない!」

「ふふふ……せっかく会ったのだ。ひとつ、相手をしてやろう」

 

 ヒューゴはそう言いながら、一振りの剣を取り出す。

 それは漆黒の刀身に黄金に輝く柄という、その剣の持つ「光」と「闇」の属性を現す姿であった。

 

『あれは……!』

『そんな、まさか……』

『……ベルセリオス!』

『どうしてあそこにあるのじゃ、あれが……!』

 

 ソーディアン・ベルセリオス。1,000年前の天地戦争の際、ミクトランへ(とど)めの一撃を与えたとされる()()()()()()()()()()()での6本目のソーディアン。

 スタン達やセインガルド国王ですら知らなかったことだが、ヒューゴによって発見され保管されていた。

 

『ベルセリオス、本当にお前なのか? 聞こえているなら返事をしろ!?』

『ベルセリオス!』

『…………』

「リオンの時は歯ごたえが無さすぎて、わざわざ出すまでもなかったがな……。

さあ、覚悟は良いか、虫けら共よ。ベルセリオスの刃にかかり、果てるがよい!」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

「ぐはっ……」

「これで……終わった……」

 

 スタン達の目の前にはヒューゴが膝をついており、現ソーディアンチームが勝利したことは誰の目から見ても明らかであった。

 

『まさかベルセリオスと渡り合うとは思わなかった──』

「──ちょっと……神の眼の様子、変じゃない?」

 

 ディムロスの称賛の声を遮り、ルーティが神の眼の変化に対して指摘をする。

 神の眼は先程までよりも輝きを増していた。そして、それに呼応するように地面に突き刺さったベルセリオスも光を放ち始める。

 そして、ヒューゴがゆっくりと立ち上がる。

 

「な……!? まだ立ち上がるっていうの!?」

「くくく……これしきの攻撃で、私を倒せるなどと思うな。下賤な民がいくら足掻こうと、至高の存在たる私に敵うものか!

()()()()()()()()()()()()()! 私は無敵だ!」

「…………お前……誰だ?」

 

 スタンがヒューゴの発言に対し、不審がるようにその正体を問う。

 その言葉の真意が分からず、メンバー全員はスタンを見つめる。

 

「さっきから……何か変だ。お前は本当にヒューゴなのか? ……実は別の誰かなんじゃないのか?」

「スタン、あんたさっきから何言ってるの……?」

 

 ルーティがスタンの言っていることが理解出来ずに彼に聞くが、その問いには答えず、ヒューゴへと質問に答えるように詰め寄る。

 初めは目を瞑り、無表情で黙っていたヒューゴだったが、静かに笑い出す。

 

『ふふふ……下賤な地上の民にしては、なかなか良い勘をしている』

『こっ、この声は!』

 

 スタンに答えたその声は、ヒューゴの()()ではなかった。

 そしてその声の主に気付いたディムロスが驚きの声を上げる。

 

『そこまで気付いたからには、我が真の姿を見せてやろう!』

 

 光を放っていたベルセリオスが地面からゆっくりと抜け、ヒューゴに向かっていく。

 その光景を全員が黙って見てい────

 

 

 

 

『──させねーよ』

 

 スタン達にとって聞き覚えのある声がしたと同時に、スタンとヒューゴの間にあったベルセリオスが消える。

 そして、全員のすぐ横に現れた1人の青年の手にそれは握られていたのであった。

 

『な……!?』

「「「「え……エドワード!?」」」」

()()()()()()は任せたぞ!」

 

 エドワードは手に持っていたベルセリオスをスタン達の後ろに投げる。

 そこに現れた人物はベルセリオスを受け取り、そこに()められていた()()()()()()()()()()()()()を全力で引き抜き、壁へと投げつける。

 その隙にエドワードはヒューゴのみぞおちに当て身をして気絶させる。

 

「な……な……!」

「なんだ、スタン。そんな間抜けな顔をしてどうした?」

 

 スタンは想像していなかった出来事がいきなり何度も重なったせいで、口を開けて(ほう)けていた。

 しかし、それはスタンだけではなかった。現ソーディアンチームやディムロス達ソーディアンですらも言葉を失っていたのだった。

 

 

 リオン・マグナスとエドワード・シュリンプ。

 先の海底洞窟の崩落により、死亡したとされていた人物が突然目の前に現れれば、誰しも同じ反応を取る。

 その中で唯一すぐに状況を理解することが出来た──むしろ、それしか出来ていないとも言えるが──ディムロス・ティンバーは、この場にいる現ソーディアンチームの中で誰よりも修羅場を潜った歴戦の戦士なのであろうことが分かる。

 

『な、なぜお前達がこ──』

「──まだだ! 全員油断するな!」

 

 ディムロスの声を、ヒューゴを抱えていたエドワードが遮り、リオンが投げた()()()()()()()を睨みつける。

 その声に咄嗟に反応した全員は武器を構え、同じ方向を見ていた。

 コアクリスタルは沈黙していたが、少しの間ののち、ゆっくりと浮かび上がる。

 

『……いつから気付いていた?』

『初めからだよ……()()()()()!』

 

 時雨(しぐれ)にミクトランと呼ばれたコアクリスタルはある程度の高度を保ち、ふわふわと浮いている。

 天地戦争の際、天上軍を指揮していた天上王ミクトラン。

 まだ何が起こっているのか分かっていない現ソーディアンチームをよそに、話は進んでいく。

 

『貴様……時雨(しぐれ)か』

『へえ、覚えていてくれたなんて光栄だね』

『忘れるものか! 貴様に与えられたあのときの屈辱は忘れんぞ!』

『何でもいいんだが、()()()()でお前が勝てるとでも言うのか?』

 

 ミクトランは宿主(ヒューゴ)を失い、ベルセリオスからも切り離されてしまったため、コアクリスタルとしてだけでその存在を維持していた。

 対して、その目の前には先程まで戦っていた現ソーディアンチームに加え、時雨(しぐれ)のマスターであるエドワードとシャルティエのマスターであるリオンもいた。

 数の利ではミクトランには圧倒的不利であったのだが、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『くくく……はーっはっはっは! 時雨(しぐれ)よ、貴様には分かっているであろう!

貴様とそのマスターはともかく、残りは烏合の衆ではないか! そこにいるリオンですらも私にとっては雑魚でしかないのだよ!』

『……ちっ』

『そこにいる似非(えせ)ソーディアンマスターどものような未熟者では、何人いたところで今のこの私にすら(かな)いはしない。この場で私と対等に勝負がしたいのであれば、ソーディアンの真の持ち主(オリジナルメンバー)を連れてくるんだな!』

 

 現在のソーディアンマスターは、あくまでもソーディアンと精神の波長が合い、ソーディアンの声が聞こえる者というだけでしかない。

 副次的効果として晶術が使用できるといったことはあるが、それはマスターがソーディアンの力を引き出しているというわけではなく、あくまでもソーディアンの力である。

 

 

 

 使い手の精神と完全同調することで、ソーディアンは真の能力(ちから)を発揮する。

 

 

 

 つまり、ディムロス達ソーディアンの真の力を発揮するのは、人格を投影した本人達(オリジナルメンバー)にしか出来ない。

 だからこそミクトランは()()()()()()()()()()()()と言っていたのだった。

 

 しかしエドワードだけは単純に実力(レベル)が違っていた。

 それは彼の才能というのもあったが、時雨(しぐれ)の特典──持ち主の技術力を大きく向上させる──もあり、その実力はオリジナルメンバーのそれを超えていた。

 それに気付いていたのは、ソーディアン達以外にはミクトランとエドワード、そしてリオンだけだった。

 

『どうするのだ? それでも私に掛かってくるのか?』

 

 時雨(しぐれ)はミクトランの言葉に()()()()()

 その様子を何も言い返せないと判断したミクトランは、笑いながら話を続ける。

 

『そんなお前達に素敵なプレゼントをしてやろう』

「……な、なんだ!? 何が起こっているんだ?」

 

 ミクトランの言葉が終わるとともに地面が揺れ始める。

 スタンがその揺れに何が起こったのかと問いかけるが、答えるものは誰もいなかった。

 その時、神の眼が再度輝きを放ちだす。

 

「神の眼が……!」

「な、何が起こるというのだ……?」

『くくく。似非(えせ)ソーディアンマスターどもに分かりやすく説明してやろう。……ここがどこだか分かるかな?』

 

 フィリアとウッドロウが神の眼の異変に気付く。

 宙に浮きながら神の眼の立体映像の前に移動するミクトラン。

 そして映像は神の眼から、その場にいる全員にとって()()()()()()()()に変わっていた。

 

「あ、あそこは!?」

「「「ダリルシェイド!?」」」

『ま、まさか……!』

 

 スタンや残りの現ソーディアンチームも、映像がセインガルド王国の首都ダリルシェイドであることを理解する。

 そしてクレメンテが真っ先にミクトランによって何が行われようとしているのかに気付く。

 

()()()()()()()が何か……と言えば、私が何をしようとしているかが、愚鈍な貴様ら地上人にも理解ができよう?』

『ここにある……そ、そういうことか!!』

「ディムロス! どういうことだよ!?」

『スタン! 全員で今すぐミクトランを止めるんだ!』

「……どういうことよ、ねぇアトワイト!」

『ミクトランは……()()()()()()を……』

『ダ、ダリルシェイドに打ち込むつもりだ……!』

「……それは本当なのか、イクティノス!?」

 

 ソーディアン達の言葉で最悪の状況を理解したスタン達が、ミクトランの人格を投影されたコアクリスタルに向かって突撃を始める。

 

「うおおおおお! 熱波旋風陣(ねっぱせんぷうじん)!」

「いくわよ! ……メイルシュトローム!」

「喰らえ! 空破絶掌撃(くうはぜっしょうげき)!」

「いきます! ……エクステンション!」

 

 自身が持つ最高の攻撃をミクトランに放つスタン達。

 攻撃は全て命中し、確かな手応えを感じた彼らであったのだが、

 

「や……やったか……!?」

『……くくくく。やはり似非(えせ)ソーディアンマスターではこの程度の威力しか出せないか』

 

 土煙が晴れたその先には、障壁に守られたミクトランがいた。

 そして立体映像が2つに分割され、ダリルシェイドとベルクラントの外側の光景が映し出された。

 

『貴様らはゆっくりとダリルシェイドが崩壊する様子を見ているがいい』

「や、やめ……」

 

 ベルクラントの砲身にエネルギーが充填されていく映像が映る。

 ミクトランは絶望的な顔をしている現ソーディアンチームを見て、高笑いをしていた。

 しかし、スタンだけは諦めずにベルクラント発射を止めるべく、ミクトランへと突撃をしていた。

 

「や……やめろぉぉぉぉ!!!」

『ス……スタン……』

 

 攻撃を繰り返すスタン。しかし、ミクトランへは欠片も通らない。

 ルーティ達はその様子を黙って見ていた。いや、既に()()()()()()をしていた。

 先程の攻撃が通らなかった以上、ダリルシェイドを救うために今の自分達が出来ることは何もないと思い知らされてしまったのだ。

 それでもスタンだけは諦めていなかった。

 

「やめろ! やめるんだ! やめろぉぉぉ!!」

『くは、くははははっ! 精々悔しがるがよい。そして目の前で大切な者達が失われるのを見て、己の無力さに打ちひしがれるがいい!』

 

 ベルクラントの砲身全体にエネルギーが溜まり、光は徐々に発射口へと集まっていく。

 誰にも止められないその攻撃を、全員が黙って見ているしか出来なかった。

 

『さあ、これでおしまいだ!!』

 

 

 

 ミクトランの言葉と共にベルクラントがかつてないほどに輝き────そして、一筋の光が発射されるのであった。

 




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