《完結》テイルズ オブ デスティニー〜七人目のソーディアンマスター〜   作:ねここねこねこ

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第五十話

『ふははははは! どうだ、目の前で全てが失われていく様を見るのは? 何百年生きていても、なかなか体験できないことだぞ!』

 

 ダリルシェイドに向けて発射されたベルクラントの攻撃。

 その光を見て、現ソーディアンチーム全員が膝を折り、俯いてしまった。

 ()()()()()()()()()()()()()()()

 

「嘘…………でしょ……?」

「こんな簡単に……無くなってしまう……なんて……」

「ダリルシェイドの民よ……すまない」

「あ……あああ……くそぉ……くそぉぉぉぉ!!!」

 

 スタンは俯き、泣き叫んでいた。

 力を尽くせば、全てを救えると思っていた。諦めなければ道は開けると思っていた。

 どんな困難ですらも、仲間とであれば乗り越えていけるはずだと。

 

 だが、今目の前で起こったことは、その考えを全て覆すこと。

 ダリルシェイドに向けて、ベルクラントから発射されたという事実──それだけだった。

 

『はーっはっはっはっは! それだ! 貴様らのその絶望に染まったその顔が見たかったのだ! 見よ、このダリルシェイドの様子──』

「──あらあら? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

『なんだと……?』

 

 どこからか声がしたと全員が思ったところで、頭上から()()()()が現れる。

 そして、今まで黙っていた時雨(しぐれ)が話し出す。

 

『待たせたな! ……英霊召喚(サモン・エージェント)!!』

「ようやくあたしの出番ね♪」

 

 光がゆっくりと下りていき、徐々に輝きが収まっていく。

 その光の中から出てきたのは──ハロルド・ベルセリオスであった。

 

 

 

 

 突然現れたハロルドに対して、スタン達は口を開けたままぽかんとしていた。

 

『き、貴様! 一体どこから現れた!?』

「あら? あんたがミクトランね。ゆっくりと挨拶をしたいところなんだけど、先に今の状況を確認したほうがいいのではなくて?」

『な、なんだと!?』

「もう気付いているとは思うけれども、ベルクラントの砲撃は()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 その言葉を聞いて、スタン達が立体映像の方に目線を向けると、ダリルシェイドには何も被害がなく無事な状態であった。

 

『い、一体どうやってそんな真似を!? ここには神の眼はないのだぞ!』

「ああ、それね。グレバムと戦ったときに解析させてもらったんだけど、封印する前に時雨(しぐれ)に言われてちょちょいっとね♪」

『そんなことしていたのか!? 我らも聞いていないぞ!』

「あら、ディムロス。それは単なるお・茶・目・よ♪」

 

 ウインクしながらポーズを取るハロルドに、ディムロスは『む、むうう……』と何も言わなくなる。

 そして、リオンのところまで歩いていくと、手を差し出す。

 

「ベルセリオス、貸して」

「あ、ああ……」

 

 勢いに押されて、ベルセリオスをハロルドに渡してしまうリオン。

 ハロルドがベルセリオスを持った途端、ハロルドを中心に軽い衝撃波が巻き起こる。

 何が起こったのかを察したクレメンテが『そ、それはもしや……』と呟き、ディムロスも疑問を抱く。

 

『その現象は、ソーディアンとオリジナルメンバーが共鳴(シンクロ)したときに起きるもの……だが、ベルセリオスは()()()()()()()を投影したもののはず……!』

「あら? あたしがいつ()()()()()()()()()()()()()()だと言ったのよ?」

『面白いから言わなかっただけだったりして……』

 

 ディムロスの疑問にハロルドが答えると、今まで沈黙していたソーディアン・ベルセリオスも会話に加わる。

 アトワイトとイクティノスもその特徴のある話し方にソーディアン・ベルセリオスの人格が誰なのかに気付く。

 

「そうよ。ソーディアン・ベルセリオスの本当の人格はあ・た・し。時雨(しぐれ)とも相談して、言わないほうが面白いから黙っていたんだけどね♪」

 

 1,000年前の天地戦争の際にソーディアン・ベルセリオスだけは、カーレルの人格ではなく双子の妹であるハロルドの人格を投影していた。

 そして、それはその当時のソーディアンチームにすら打ち明けられていない内容であったのだ。

 しかし、ディムロスはそのことに納得していない様子であった。

 

『だがな──』

「──無駄話はストップ! 今は目の前のこいつ(ミクトラン)をなんとかしないといけないんじゃないの?」

 

 騒ぎの原因であるハロルド本人に諭され、全員が再度ミクトランに向き合う。

 ここまで追い詰められたミクトランは、それでも冷静であった。

 

『……ふん。ベルクラントは使えなくなったようだが、だからといってこれで貴様らが私に勝てる道理などないわ!

1,000年前にオリジナルメンバーが全員揃ってようやく倒せた私に、戦力が1人増えたところで他が雑魚では何の意味も為さぬ!』

「へぇ……案外冷静ね。()()()()()()()()()。今のあたしたちでは、コアクリスタルのままのあんたにすら勝てない」

『それならばどうするというのだ? まさかこの状況で逃げるとでもいうのか?』

「そうね…………()()()()よ! エド!!」

 

 いつの間にかスタン達のところに来ていたエドワードは、陰に隠れてある晶術を詠唱していた。

 ハロルドはエドワードを呼ぶと、リオンと一緒にスタン達のところへ駆け寄る。

 そして、魔法陣がスタン達の下に現れ、エドワードの「”空間転移(テレポート)”!」という言葉とともに、大きな光に包まれてその場にいたミクトラン以外の全員の姿が消え去ったのであった。

 

『……ちっ、逃したか。まぁいい。私は今のうちに元の身体に戻るとしよう。』

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 光が収まり、全員が辺りを見回すとそこはストレイライズ神殿近くの森の中であった。

 ウッドロウが、その場の全員が考えているであろう言葉を口にする。

 

「逃げ切れたのか……?」

「ええ。エドの晶術(テレポート)のおかげでね」

 

 ハロルドが答え、全員が放心しているとスタンが思い出したかのように顔を上げてリオンを見る。

 

「そうだ! リオン!!」

「……なんだ」

「生きて……生きていたんだな!?」

「お前には僕が死んでいるように見えるのか?」

「そうじゃなくて! えっと、エドワードもだけど……生きていてよかった……!」

 

 他のメンバーも安堵した表情を見せる。

 

「勝手に安心するのはいいが……()()()()()()()()()()()をなんとかしたほうがいいんじゃないのか?」

 

 エドワードが気絶しているのを見ると、既にフィリアが膝枕をしていた。

 フィリアが落ち着いている様子から大事はないと安心する一同だったが、()()1()()を見たときにどうすればいいのか迷ってしまっていた。

 エドワードの隣には、ヒューゴ・ジルクリストが横になっていたのだった。

 

「「「…………」」」

『とりあえず近くにエドの隠れ家があるから、そこまで移動しよう。ウッドロウとスタン、エド達を運ぶのを任せてもいいか?』

「……ああ。それでは私がヒューゴを運ぶから、スタン君はエドワード君をお願いしてもいいかな?」

「ええ、分かりました」

 

 エドワードの隠れ家に着いた一同がマリアンを見て再度驚いたというのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

「それで時雨(しぐれ)、これからのことなのだが……エドワード君は、丸一日は起きないのだね?」

『ああ。あの晶術(テレポート)は、使い手にかなりの負担を強いるからな』

「それでは今の私達に出来ることから始めよう」

 

 ウッドロウはベッドで寝ているエドワードのいる部屋をちらりと見ながら、時雨(しぐれ)に質問をする。

 そして今後の動きについて全員で相談を始める。

 しかし突然、スタンがディムロスに先程からずっと疑問に思っていたことを口にした。

 

「……なあディムロス」

『なんだスタン?』

似非(えせ)ソーディアンマスターって……どういうことだ?」

「それは私も気になっていましたの。何か大切な意味があるのでは……と」

「どうなんだ、ソーディアンの諸君……?」

 

 スタンの言葉にフィリアとウッドロウも同調する。

 少しの間のあと、クレメンテがその言葉の説明を始める。

 

『……ソーディアンが最大パワーを発揮するのには、必要な条件がある。その条件とは……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ』

「それって……」

「あたしがベルセリオスを持ったときに感じたでしょう? ソーディアンとは使い手の精神と完全同調することで、その真の能力を発揮するのよ。

つまり言い方は悪いけど、あんた達はソーディアンの本当の力を全く引き出せていないってわけ」

 

 クレメンテの言葉にフィリアが更に質問をしようとしたため、ハロルドが引き継いで更に詳細な説明をする。

 ウッドロウが納得したような口調で「だからミクトランは私達を偽物呼ばわりしたのか……」と言い、それ以上何も言えずにスタン達は黙ってしまう。

 しかしリオンはため息をつくと、落ち込んでいるスタン達を見て口を開いた。

 

「……ふん、だからどうしたというのだ。ソーディアンの力を発揮できないのであれば、その状態でも旧ソーディアンチームの力を超えればいいだけだ」

『そうだな。全員に足りないのは、単純に力と経験、そして覚悟だけだ』

『そうですよ! それならオリジナルメンバーよりも強くなればいいだけの話です!』

 

 リオンの言葉に時雨(しぐれ)とシャルティエが同調する。

 だが、ルーティが強くなるための方法についての案が浮かばずに全員に質問をする。

 

「でも……そのため私達はどうすればいいのよ?」

『そうよね。何か方法はあるのかしら……?』

「あら、全員忘れてるんじゃないの? あなた達ソーディアンは()()()作られたのよ?」

『……そうか! “ソーディアン研究所”か!』

「そういうこと! あそこなら飛行竜があれば行けるわよ♪」

 

 ハロルドの言葉にディムロスがソーディアン研究所のことを思い出すが、そこに行くための飛行竜をスタンの暴走で壊してしまっていたため、再度振り出しに戻ってしまう。

 

『生体金属のベルセリウムならカルバレイスにあるぞ。それで飛行竜を直せばいい。』

『……時雨(しぐれ)、お前まさか()()()()まで知っていたのか?』

『…………てへぺろ』

『それなら事前に──』

「──ほら! ディムロスもいちいち突っかからないの! とりあえずぱぱっと行って、ささっと取ってきて!」

 

 ハロルドがディムロスと時雨(しぐれ)のやり取りを止めて、飛行竜を直すために必要な素材である生体金属ベルセリウムがあるカルバレイスに行くように指示を出す。

 スタンがカルバレイスへと向かおうと全員に号令をかけたところで、フィリアが話し始める。

 

「あ、あの……」

「ん? どうしたんだい、フィリア?」

「私、ここに残っては……ダメでしょうか……?」

「フィリア……」

 

 リオンだけでなく、エドワードもあの状況では助かっていないであろうと誰もが思っていた。

 フィリアはエドワードを信じたかったのだが、それでも心のどこかでは諦めていた。

 バルバトス戦で自身を助けてくれたエドワード。そして、先の道を切り開いてくれた彼を見殺しにしてしまったのではという罪悪感に(さいな)まれていたのだ。

 

 ベルクラント最奥にて、彼が現れた時は夢ではないのかと思っていた。

 だが、それ以上にフィリアのピンチにはまた現れてくれるのではという期待もあった。

 そして、また助けてくれたのだ。だからこそ、そんなエドワードのためにソーディアンマスターとしての使命よりも、今は少しでも一緒にいたいという気持ちのほうが勝っていた。

 

『だが、今は少しでも早く──』

「──それなら僕が一緒に行けばいいだろう」

 

 ディムロスがフィリアの提案に難色を示したところ、リオンがフィリアの代わりにスタン達に合流して向かうと言う。

 元々誰もがフィリアの気持ちを優先させてあげたいと考えていた。それはディムロスとしても同じである。

 しかし、軍人として今やるべきことをやらなくてはいけないという信念があった。

 

 それは天地戦争時代の彼──ディムロス・ティンバー自身の言動からも読み取れる。

 最愛の人であるアトワイト・エックスがバルバトスにより人質に取られた際、彼はアトワイトを助けるという選択肢を取らず、()()()()()という立場を優先させていた。

 彼は地上軍の全兵士について責任を持っていた。つまり、彼の言動はそれだけの命を預かっているという自覚からゆえのものだった。

 

 そして、リオン・マグナスはディムロス・ティンバーとは違う考えを持っていた。

 彼は最愛の人であるマリアンを人質に取られた際、彼女を守るために世界を危機に晒す陰謀に加担した。

 

 愛する者への気持ちは同じだが、その行動は真逆であった2人。

 それがフィリアへの対応を変えていたのであった。結果として、リオンの案が採用される。

 ディムロスは渋々納得するが、その様子に当時を思い出していたアトワイトは苦笑いをしていた。

 

「ディムロス、あんたの気持ちも分かるけどね。今回は戦力も十分だし、別にいいでしょ。あたしが飛行竜の修理をしている間に、フィリアには念の為ここの護衛をしてもらうわ」

『む、むう。仕方がない。さっさと行くぞ!』

 

 話が終わった段階でクレメンテを通してリトラーへの報告を行い、最終決戦への準備をリトラー側でも行うとのことで作戦開始となった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

(エドさん……私は……)

 

 フィリアはベッドで寝ているエドワードの横に座っていた。

 エドワードを優先したことを後悔しているわけではない。だが、カルバレイスでも自分に出来ることはきっとあった。

 彼女は本当にこの決断で良かったのかを悩んでいたのであった。

 

「フィリア、ちょっといいかしら?」

 

 扉が開けられ、そこから現れたのはハロルド。彼女はフィリアの隣に来ると、寝ているエドワードの髪を愛おしそうに撫でる。

 

「ありがとね。エドワード(この子)のために残ってくれて」

「……え?」

「あたしからするとディムロスとリオンの気持ち、両方とも分かるのよ。ディムロスは1,000年前にリオンと同じ様に恋人であるアトワイトを人質に取られたことがあってね……」

 

 フィリアに1,000年前の出来事を話すハロルド。なぜ急にその話をするのかフィリアには分かっていなかったが、黙って話を聞いていた。

 

「ほんとにディムロス(あいつ)って馬鹿でしょ? 力を貸してくれって言えば、あたし達はいくらでも力を貸したのに。

リオンも同じよ。男ってなんであんなに頑固でプライドが高いのかしらね?」

「……ふふっ。そうですわね」

「でしょー? だからこそちゃんと自分の気持ちを言ってくれたフィリアには嬉しかったのよ。仲間としても、この子の母親としてもね」

 

 笑い合うフィリアとハロルド。その笑顔には含むものは一切なかった。

 

「あたしはさ、エドワード(この子)のためにしてあげられることが少なかった。今回の件が終わったらまた過去に戻ってしまうしね。

だからあなたに言っておきたかったの。エドを、私の大切なこの子のことをよろしくね」

「……はい。こちらこそよろしくお願いします」

 




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