《完結》テイルズ オブ デスティニー〜七人目のソーディアンマスター〜   作:ねここねこねこ

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第五十一話

 カルバレイスで飛行竜を直すための生体金属ベルセリウムを見つけてきたスタン達一行。

 再会したときにはリオンに対して少なからずわだかまりがあった一同だが、カルバレイスまでの道中で話し合ったのであろう、出発時とは雰囲気があからさまに変わっていた。

 そしてハロルドが飛行竜を修復(魔改造)し、次の目的地はソーディアン研究所となった。

 

「それでは、これからソーディアン全員で向かうのだな」

「いいえ、あたしとエドは行かないわ。あんた達だけで行ってきなさい」

 

 ウッドロウの言葉にハロルドは、彼女とエドワード──スタン達が戻ってくる前に目覚めていた──はソーディアン研究所には向かう必要がないと伝える。

 理由としては、彼女はベルセリオスのオリジナルメンバーであること。そして、時雨(しぐれ)()()()()()()()()()()()からであった。

 

 ソーディアン研究所で行われる強化とは、ソーディアン自身の強化とソーディアンマスターの強化である。

 そうすることでお互いの共鳴度が高まり今よりも強くなるのだが、オリジナルメンバーの場合はこれ以上共鳴度が高まることで人格の相互干渉を引き起こしていまい、オリジナルメンバーの人格崩壊に陥る危険度が増すためであった。

 天地戦争時代、ソーディアンが戦争後に凍結・封印されたのもそのためであった。

 

 そして時雨(しぐれ)は元々与えられていた特典のせいで、これ以上強化できないというデメリットも与えられていたため、エドワード(マスター)が強くなるしかなかった。

 その実力はエドワード個人で既にオリジナルメンバー達に勝るとも劣らない位置にあり、時雨(しぐれ)を持つことで向上する技術も重なり、現ソーディアンチームとはかなりの差があった。

 

 結果として、今回はハロルドとエドワードを除く全員で向かい、終わり次第ラディスロウにて集合ということで話が纏まるのであった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 ラディスロウ中枢部。

 そこにはリトラーとレイモンド以外に、イレーヌとバルック、レイモンドがいた。

 

「ヒューゴ様! よくぞご無事で!」

「レイモンド……随分迷惑を掛けたな……」

 

 先にラディスロウ入りをしていたハロルドとエドワード。そして、ヒューゴ。

 レイモンドが真っ先に駆け寄り、ヒューゴの無事を喜ぶ。

 

「イレーヌ、バルック……お前達にも苦労を掛けてしまった。」

「いえ……そんな……」

「ヒューゴ様がご無事であっただけで……」

 

 時雨(しぐれ)はこの光景を見ていて、ヒューゴがどれだけ慕われている存在だったのかを改めて認識する。

 ミクトランに意識を乗っ取られたとはいえ、それは徐々にであった。もちろんミクトランのカリスマ性があったからこそ、オベロン社創設後も彼らは付いてきていたのもある。

 しかし、ヒューゴのそれまでの積み重ねがなかったとしたら、彼のために命を賭けて動こうとする人はいなかったであろう。

 

 

 そして、彼らのその姿は、スタン達が合流するまで続くのであった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

『それではこれからダイクロフト突入作戦を開始する! これが最後の決戦だ! 全員、気を引き締めて掛かってくれ!』

 

 リトラーの号令のもと、全員が頷く。

 そしてラディスロウが少しずつ空中都市ダイクロフトへ向かって動き出す。

 

「……あんた達は本当に行かなくていいの? ミクトラン(あいつ)に借りがあるんでしょ?」

「ああ、私達ではもう足手まといにしかならないからね。君達に任せるとするよ。……あの子達を頼む」

 

 ハロルドがヒューゴに一緒に行かないのかと尋ねるが、彼は自身やバルック達の力がミクトランには遠く及ばないと分かっていた。

 そして、未だに一言も話すことが出来ていない自分の娘と息子(意地っ張りな2人)を見ながら、優しく微笑む。

 その笑顔には、ミクトランに乗っ取られていたときの面影など一切なかった。

 

「あの2人を子供に持つと苦労するわね。あたしなんてエドが子供で良かったわ。ちょっとニブチンだけど、それもまた可愛いし」

「ふふっ。あれはあれで可愛いものだよ。クリスには本当に苦労を掛けてしまったがな」

「あたしも旦那には迷惑しか掛けてなかったから大丈夫よ。すべてが終わったら、あの子達を奥さんの分まで愛してあげなさいよ」

「……そうだな。私を許してくれるかは分からんが」

「それはきっと大丈夫よ。あの子達は頑固で意地っ張りだけど、根は素直で優しいから。きっと周りの人間に恵まれたのね」

 

 ハロルドの話を聞いて、ヒューゴは「そうだといいな」と少し嬉しそうな顔をした。

 今ヒューゴからルーティ達に声を掛けてしまうと、せっかく集中している彼らの妨げになってしまう可能性がある。

 だからあえて話し掛けていないのだが、彼女たちを見て、そうしていてよかったとヒューゴは感じていたのであった。

 

『それでは気を付けて行ってきてくれ。(みな)の武運を祈る』

「ベルクラントの時はあたしが事前に仕掛けておいたから神の眼の制御は出来ていたけれど、おそらく今はもう()()()()()()()()()()()()()

ミクトラン(あいつ)ももう復活していると思うから、絶対に油断しないようにね」

 

 ラディスロウがダイクロフトの入り口へと到着し、リトラーとハロルドがスタン達に声を掛ける。

 ミクトランが復活したのであろうことは、全員が感じていた。ダイクロフトの方向から禍々しい気配が大きくなっていたからだ。

 そして、スタン達が中枢部からラディスロウの外へ出ようとしたところで、ルーティが立ち止まる。そして目を合わせずヒューゴに話しかける。

 

「あんたが父親だなんてまだ信じられないけど、絶対に生きて帰ってくるから。……そうしたらまた会いに行くわ。

その時は母さんのこと、もう一人の家族(リオン)のこと、ちゃんと聞かせなさいよね」

「…………ああ」

 

 ヒューゴは一言だけ話し、ルーティもまともな返事は期待していなかったのか、そのままスタン達の後を追って行ってしまう。

 その様子を見ていたバルック達は、似たもの親子だと苦笑いをする。

 リオンはスタン達の一番うしろをゆっくりと歩きながらヒューゴとルーティの会話を聞いていたが、一言も話すことはなかった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 ダイクロフトに突入してからのスタン達は快進撃を続けていた。

 彼らを排除しようと数多のモンスターが出てくるが、苦戦するどころか危なげない戦い方でモンスターを倒していく。

 

『ソーディアン研究所での強化は、ソーディアンとマスターの両方とも上手くいったみたいね』

『ああ。我らもまさかここまで上手くいくとは思っていなかったぞ』

『そうね。私達にもまだこんなに強くなれる要素があったなんて驚きだわ』

『ですね! 坊っちゃんも前よりも鋭くなっていて嬉しいです!』

『たしかにフィリアの晶術も威力がかなり上がったのう』

『ああ。ウッドロウもファンダリア王家でも過去に類を見ない実力を身に付けてくれたからな』

『ま、それでもうちの息子(エド)が一番だけどな!』

 

 ソーディアンの面々が研究所での強化と各マスターについて、()()()()使()()()話していた。

 最後の時雨(しぐれ)の親バカ発言を無視し、本題に入る。

 

『それで……神の眼のコントロールは出来そうなのか?』

『直接見てみないと分からないわね。ミクトランのことだから、操作のロックか何かを掛けている可能性もあるわ』

『ベルセリオス、そうなるとハロルド(あなた)達でも難しくなるのかしら?』

『ええ……時雨(しぐれ)が言っていたのが本当なら、空中都市が落ちるまでに制御権を取り戻すには時間がないわね』

『そうなると、やはり()()しか方法はないということかのう』

『それが俺達ソーディアンとしての宿命なのかもしれないな……』

『……無視かよ。まあ、それ以外にも気を付けなければいけないのがあるぞ。リオンやヒューゴ達を助けてしまったことで、もう何が起こるか分からないからな。

最悪ソーディアンチームが全滅するような強敵が出てくる可能性もある。だからまずはミクトランに確実に勝つことを考えるぞ』

 

 ディムロス達はミクトランに勝利した後の神の眼の処置について話し合っていたが、時雨(しぐれ)だけは自身が起こしてしまった歴史の変化に対して、もはや何が起こるか分からないと警鐘を鳴らしていた。

 それほどグレバム戦のときの出来事が頭に残っていたのだ。イザーク王の命を助けてイクティノスが壊れないようにしただけで、グレバムがフェザーダオスに変化してしまった。

 リオンやシャルティエ、ヒューゴ達を助けたことで、それ以上のことが起こってもおかしくはない。ただ、それでも時雨(しぐれ)は自分のやったことに対して、少しの後悔もしていなかった。

 

(カーレルを助けると決めたときから、俺は覚悟してきたんだ。それならば絶対に全員を救ってみせるさ……)

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 ダイクロフトを進み、後半の第三層に差し掛かっていた。

 ここまで何も問題なく進むことが出来ていたが、スタン達は油断することなく進んでいた。

 そう。()()()()()()()()()

 

「みんな! ()()()!!」

「ブルゥァァァアアア!!!!」

 

 前触れもなく仕掛けられた上空から攻撃を、スタン達は危なげなく躱す。

 そして追撃に備えて全員が武器を構えるのだった。

 

「よぉぉぉく躱したなぁぁあ!!」

「バルバトス!?」

 

 現れた人物が、オベロン社廃工場でソーディアンチームを全滅寸前まで追い込んだバルバトス・ゲーティアであることに驚くスタン。

 バルバトスはゆっくりと地面に刺さった斧を持ち上げると、笑みを浮かべて彼らを見る。

 

「お前達の命運もここまでだァァ!! 更なる強さを手に入れたこの俺様に──」

 

 バルバトスが話している途中に2人の人間が前に進んでいく。

 それはエドワードとリオンであった。

 

「エドワード! リオン!」

「スタン、ここは先に行け」

「コイツには僕も借りがあるんでな。僕たちに任せてもらおう」

「でも……2人で大丈夫なのか!?」

 

 2人でバルバトスと戦うと言い出すエドワードとリオンに心配するスタン。

 ソーディアン研究所で強くなったスタンだからこそ、今のバルバトスが以前のそれとは比べ物にならないほどの強さを身に付けたことに気付いていた。

 そのことは他のメンバーも同じであった。

 

「スタン、お前誰に言っているんだよ」

「ふん。お前達に心配されるほど僕たちは弱くないぞ」

「だけど──」

「──スタン! お前達にはお前達にしか出来ないことがあるだろう! ……それとも俺達をそんなに信用できないか?」

 

 スタンはエドワードの叱責に一瞬俯くが、すぐに顔を上げて「絶対に死ぬなよ!」と言い、他のメンバーと共に走っていく。

 その際にエドワードとフィリアは目を合わせるが、お互いにかすかに笑っただけで言葉を交わすことはなかった。

 そして、後ろに残っている気配を察して声を掛ける。

 

「残ってくれたんですね、()()()

「あら、ついにエドもあたしのことを照れずに母さんって呼んでくれたわね」

「まぁこれだけ一緒にいれば慣れますよ。それよりもスタン達と一緒に行かなくていいんですか?」

「そうね。彼らならもう大丈夫でしょ。それなら可愛い息子(エド)の勇姿をのんびり見ている方がいいわ」

 

 軽口を叩き合う親子には、余裕が感じられていた。

 決して油断はしていなかったが、それでもこの程度の会話をするだけの余裕はまだあったのだ。

 先程自身のセリフを遮られたバルバトスは、黙ってそれを見ていたが、会話が終わったのを確認すると口を開く。

 

「親子の最後の会話は終わったかぁぁ?」

「最後じゃないけどな」

「ついに……ついにお前を倒すときが来たのだァァァ!!! 俺は、俺はお前を倒して、最強の称号を手に入れるのだぁぁ!!」

「そうだな。いい加減、俺もお前の奇行に付き合うのもうんざりしてきたところだ。これで終わりにしようか」

「…………僕を無視するな」

 

 バルバトスは斧を構えて全身に赤い闘気を纏うと、エドワード達目がけて突撃するのであった。

 




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