《完結》テイルズ オブ デスティニー〜七人目のソーディアンマスター〜 作:灰猫ジジ
第二次天地戦争から1年後。スタン達はリーネ村にて集合していた。
この1年で、スタンは既に寝坊する癖を直しており、妹のリリスにつまらないと言われていた。
全員がその場に集まって近況を話していると、突然ルーティがスタンの横に行き、話し始める。
「はいはーい! それでは私とスタンから報告があります!」
「……え?」
「なによ、1年前に話したことをもう忘れちゃったっての?」
「いや、覚えてるけど……あれから何も返事してくれなかったから……」
グレバムを倒して別れた際、スタンはルーティに「一緒に旅をしよう」と誘っていたのだった。
そのときは返事を保留にしていたルーティだったが、この場で返事をしようと決めていたのであった。
「私、ルーティ・カトレットと横にいるスタン・エルロンは今日から一緒に旅をすることになりました!」
「えええっ!」
「この先どうなるか分かりませんが、今後ともよろしくお願いしまっす!」
急なことに驚く全員に対し、ルーティはスタンにも挨拶するように促す。
そして挨拶を聞いたあと、祝福の声を貰うのであった。
「そういえば! エドワードとフィリアは結婚するんだって?」
「……え!? そうなの!?」
突然のルーティの暴露に全員が更に驚く。
エドワードはリオンにも話していないことをルーティが知っていることに驚き、フィリアを見る。
フィリアは両手と首を横に振って、自分が漏らしたわけではないと否定する。
「どこでその情報知ったんだよ……まだ誰にも言ってなかったのに」
「別にいいじゃない♪ めでたいことはめでたいってことで!」
高笑いをするルーティ。
ようやく状況を飲み込んだ全員──コングマンを除く──が、エドワード達にお祝いの言葉を伝え、そのままエルロン家でパーティーをすることとなった。
スタンはルーティに「今日から旅に行くんじゃないのか?」と尋ねるが、「そんなもの明日からでいいじゃない」と言われ、それもそうかと素直に受け入れる。
コングマンはずっと家の外で固まっていたが、2人のお祝いパーティーは深夜まで続くのであった。
◇◇◇◇◇◇
その数日後、クレスタの町。
奥にある孤児院には子供達と遊ぶ1人の男性がいた。
その男性に孤児院の院長が話しかける。
「いつもありがとうございます、
「いえいえ、私もここでお世話になっていますし、ルーティもお世話になっていたのでね。当たり前のことをしているだけですよ」
第二次天地戦争の終結後、全員が困ったのはヒューゴ達の処遇だった。
ミクトランに操られていたとはいえ、世界中で地上の民の裏切り者として知られてしまっていたからだ。
各国のトップ層は事情を知って受け入れていたが、それを全ての人達に周知して受け入れさせるのは困難である。
そこで、クレスタの孤児院の院長にルーティから事情を話し、そこでほとぼりが冷めるまで過ごすこととなった。
バルックはつい先日カルバレイスへと去っていったが、イレーヌとレンブラントはその場に残り、クレスタから少しずつ貧富の差を無くしていこうとゆっくりとではあるが動き始めていた。
「ヒューゴ様も落ち着いたわね」
「ああ。昔のような優しいお顔に戻ってくれて、わしも嬉しいよ」
「ルーティやリオン君とも少しずつだけど、和解出来てきて良かったわよね」
ヒューゴとルーティ達は和解に時間が掛かっていた。
それはルーティとリオン側の性格に問題があった。事情が分かっていても、すぐに受け入れるのはどうしても出来なかったのだ。
もちろんルーティとリオンの姉弟としての間についてもそれは同様であった。
なにか話そうとするとすぐに喧嘩になってしまうため、むしろヒューゴとのことよりも深刻なのかもしれない。
ただ、それも時間の問題だとイレーヌは思っていた。
ルーティがスタンと旅に出る際に、リオンとのことをヒューゴに相談しているのを彼女は見ていたからだ。
そのあとに嬉しそうな顔をしてアドバイスをするヒューゴを思い出して、彼女はふふっと笑ってしまった。
(あのとき……そのまま死のうとしなくて良かったな)
イレーヌは笑みを浮かべたまま、晴れた空を見上げていたのであった。
◇◇◇◇◇◇
リーネ村での再会から半年後。ダリルシェイドでは結婚式が開かれていた。
そこでは、エドワード・シュリンプ、フィリア・フィリスの両名が主役となっていた。
「いいなぁ……フィリアさん……」
純白のドレスに身を包んだフィリアを羨ましそうな顔で見ていたのはリリス・エルロンだった。
彼女も年頃の女性であり、結婚に憧れてもおかしくない年齢である。
普段は田舎娘のような格好をしているが、ドレスを身にまとい、化粧をしている今の彼女は、フィリアにも決して負けないほどの美しさがあった。
実際に結婚式に参加しているエドワードの同僚などからは注目を集めていた。
だが、彼女は
「ねぇ、スタン」
「ん? なんだルーティ?」
「フィリアを見てたら羨ましくなっちゃったわ。……私達も結婚する?」
「え!? なななな!」
「なによ、嫌なの?」
「そうじゃなくて! そんな簡単に決めてもいいことじゃないだろ?」
「別にいいじゃないのよ。私達いつも一緒にいるんだし、もう結婚しているみたいなもんじゃない」
「…………まぁそれもそうかぁ」
リリスとは違う場所でフィリアを眺めていたルーティとスタン。
まさかのルーティからのプロポーズにスタンは慌てるが、ルーティの説得により一瞬にしてそのプロポーズを受け入れる。
スタン・エルロン。恐らくこの物語の中で一番チョロい存在であろう。
◇◇◇◇◇◇
結婚式が終わり、家に帰ってきたリリス・エルロン。
フィリアの姿を思い出しては、自分も同じくウェディングドレスを着ている姿を想像していたが、それも1ヶ月経つと落ち着いていた。
今日も買い物を終えたリリスは村の中を散歩していたのだが、彼女は村の人から人気があり、いつも周りの皆から話し掛けられる。
「あら、リリスちゃん、いいところに来たわね。実はいいお見合いの話が──」
「──あ、あはは! おばさん、それはまた今度ね!」
「リリスちゃん、この果物持っていってよ。今日の食後のデザートにでも使ってくんな!」
「あ! おじさん、いつもありがとう♪」
「よ! リリスちゃん! 今日も可愛いねぇ!」
「ありがと♪」
「リリスお姉ちゃん! 遊ぼうよぉ!」
「あとでねぇ♪」
「あ、リリス〜! ちょっと手を貸してくれない〜? あんただけが頼りなのよぉ〜!」
「もうしょうがないなぁ〜♪ そこまで言われたら断れないじゃない〜!」
「お、リリスちゃん! 今夜も君の魅惑のボディを期待してるよ〜!」
「もう! まっかせといてよ♪ 何から何まで余すことなくばーーん! ……って何言わせんのよ!
あ! あなたいつもうちのお風呂を覗いている人ーーーっ!!!」
「えへへ……」
「こら! 待ちなさーーーーい!!! 今日という今日は許さないんだからーー!!」
覗き魔は笑いながら走って逃げていく。
リリスは怒りながらもその後を追いかけていくのであった。
村の外まで追いかけていったリリスだが、覗き魔の足は物凄い速く、彼女の足を持ってしても見失ってしまう。
辺りを見回す彼女だったが、ついに覗き魔を発見することは出来なかった。
「はぁ……はぁ……どこに行ったのかしら!? 捕まえたらただじゃおかないんだから…………って
リリスは道の外れに太陽の光に反射して光っている物を発見する。
そして、そこからは怒鳴り声が聞こえるのであった。
『何が俺に任せておけだ!
『あ、あれれ〜?』
『あれれ〜? とか言っている場合じゃないだろ! これからどうするんだ!!』
『本当よね』
『本当じゃな』
『本当だな』
『本当ですよ』
『さすがにこれは酷いわね』
リリスが言い争いをしているレンズと思しき物をじっと眺めていると、その1つがリリスに気付いて話し掛けてくる。
『……あ! ほら合ってた! ちゃんとスタンの妹のリリスのところに転移できたじゃないか!』
「あなた達……だれ? お兄ちゃんのこと知っているの?」
『む、むうう。確かにスタンの妹だな。覚えているか? 我はスタンのソーディアンであるディムロスだ』
「……え? えぇぇぇええ!?」
〜fin〜
以上で、『テイルズオブデスティニー〜7人目のソーディアンマスター〜』を完結とさせていただきます。
ご愛読、本当にありがとうございました!
いやぁ……ここまでの道のり、なかなか大変でしたね。
話を考えるのもですけど、文章を作ったり、それを何度も読み返して修正したりする作業もなかなか大変でした。
特に修正はもう苦行です。何度も何度も修正していると、泣きたくなってきます。
でもそれも含めてとても楽しかったです!
まぁ中途半端な作品を投稿したくないということもあったので、最低限私が満足出来る内容には仕上げられたかなとは思っています。
一応、最後はテイルズオブファンダムVol.1の『リリス、がんばります!』に繋がるようにしています。
続きはどうしようかなぁ……完結にはしますけど、要望があれば後日談とかここまでの話で描かれていなかった部分を間話で書くかもしれません。