《完結》テイルズ オブ デスティニー〜七人目のソーディアンマスター〜   作:ねここねこねこ

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第六話

「Bブロック第四試合を始めます! リオン選手とリヴッツ選手は中央に来てください」

 

 リオンとリヴッツが中央に歩いてくる。

 160cmに満たない小柄なリオンとエドワードと同じくらいの身長であるリヴッツ。

 もちろんリオンが持っているのは”シャルティエ”、リヴッツはロングソードを持っていた。

 

「それでは……はじめ!」

 

 審判の試合開始の合図でリヴッツは構える。

 しかしリオンはシャルティエを抜いてはいるが、一切構えようとしない。

 構えることすら無駄だと言わんばかりに、シャルティエを持ってその場にただ立っているだけだった。

 

(な、舐めてるのか……? 俺はこれでも前回の準優勝者なんだぞ)

 

 リヴッツはリオンの舐めた態度に苛立ちを覚えるが、さすが実力者なだけであって不用意には動こうとしていなかった。

 一、二分ほどそのままの状態が続いた頃、リオンがため息を吐いてシャルティエを構える。

 

「おい、時間の無駄だ。さっさとかかって来い」

「な……!? なんだ──」

「──時間の無駄だと言ったんだ。そちらから来ないのであれば、こちらから行くぞ」

 

 その直後、リオンが真っ直ぐ突っ込んでいく。

 スピードには乗っているが、リヴッツが対応できないほどの速さではなかった。

 リヴッツはロングソードを正眼にして待ち構える。

 

「……え?」

 

 リオンはリヴッツを通り過ぎて止まり、シャルティエを鞘にしまう。

 リオンは何もしていなかった。ただ突っ込んできただけで、何もしていなかったのだ。

 リヴッツには──回りにいるほとんどの人にもだが──そう見えていた。

 

「う、うおおおお!」

 

 訳は分かっていないが、チャンスだと思ったリヴッツは背後を振り返り、持っていたロングソードで後ろを向いているリオンに右切り上げをする。

 これで勝った! と思ったリヴッツであったが、リオンには当たることなくそのまま振り切ってしまった。

 

「なっ、なん……だと……?」

 

 リヴッツが剣の先を見ると根元から刀身がなくなっており、思わず顔を青くしてしまう。

 リオンが振り返り、「……まだやるのか?」と睨みつける。

 

「ま、まいった」

「……ふん」

 

 リヴッツが降参をして、リオンの勝利となった。

 リオンは当然とばかりに喜びもせず、そのまま訓練場の端に行き壁に寄りかかる。

 腕を組んで俯きながら目を瞑っている様子が、リオンの余裕の証でもあった。

 

『今の……見えたか?』

「ああ。わずかにだけどね」

 

 リオンはリヴッツの(そば)まで来たあと、ものすごいスピードでシャルティエを抜き、ロングソードを”切り裂いて”納刀したのであった。

 そう、”切り裂いた”のだ。叩き切るだけであれば、腕に覚えがある人であれば出来る。

 だがロングソードを切り裂くことができるのは誰にでも出来る芸当ではなかった。

 

(しかもアレをほとんどの人に見えないスピードで行うとか……あいつ本当に十五歳かよ)

 

 エドワードは自分の三歳下のリオンの実力にわずかながら恐怖したのであった。

 しかし、これから準決勝が始まるので、エドワードは気持ちを切り替えてそちらに集中することにする。

 

「これからAブロック第五試合を始めます! マット選手とエドワード選手は中央に来てください」

 

 審判に呼ばれたエドワードは先ほどと同じく中央に向かう。

 リオンはエドワードの名前を聞いて、俯いていた顔を上げて試合を観戦する様子であった。

 ただ、親の仇のようにエドワードに殺気を放っているので、さすがのエドワードも苦笑いをしていた。

 

(だから俺はそんなに恨まれることはしてないっての! ……っとまずは目の前の戦いに集中しよう)

 

 エドワードは時雨(しぐれ)を抜き、構える。

 マットは斧を構えつつも、意外な顔をする。

 

「私には抜くんだな」

「そうですね。あなたは強敵なので」

 

 お互いに微かに笑いながら向き合う。

 そして、審判の開始の合図があったところで、両者が突っ込み武器を撃ち合った。

 金属がぶつかり合う音が大きく鳴り響き、すぐに距離を取り合う。

 

(……この人、やっぱり強いな。それなら俺も”アレ”を試してみようか)

 

 エドワードは時雨(しぐれ)を鞘に納めて左の腰に差す。

 そして、やや前傾姿勢になり、右足を前に出して右手は柄の前に持ってくるという構えを取り出す。

 

『おま! それって抜刀術(ばっとうじゅつ)の構えじゃないか! どこでそれを習ったんだ!?』

 

 

 抜刀術(ばっとうじゅつ)。それは刀を鞘に収めた状態で帯刀し、鞘から抜き放つ動作で一撃を加える。もしくは相手の攻撃を受け流し、二の太刀で相手にとどめを刺す形、技術を中心に構成された武術である。

 

 

 エドワードは時雨(しぐれ)を持って訓練をしているうちに、より洗練された方法は無いかと考えるようになっていた。

 今まで使っていた剣は、”叩き切る”ような使い方であったが、刀はそうではなく”引き切る”といった使い方だと感じていた。

 使う得物が違うのであれば、構えから攻撃の仕方まで違うであろうということだ。

 だからこそ、抜刀術の構えは常に最適な攻撃の仕方を模索していたエドワードが到達した一つの答えであった。

 

(俺が出来る技では、これが一番合っていると思う。あとはタイミングだけだ)

 

 マットも初めて見るエドワードの構えに警戒をして動かない。

 エドワードもタイミングを計っているのか、構えたまま動かない。

 観客も異様な雰囲気を感じて、押し黙ってしまっていた。

 

 

 

 マットが空気に耐えられず動き出すのに三十秒も掛からなかった。

 それに合わせてエドワードも納刀したまま突っ込む。

 

(武器を抜かずに突っ込んでくるだと!?)

 

「な、舐めるなぁぁぁぁ!!!」

 

 マットは斧を両手で持ち、近づいてきたエドワードに上段から振り下ろすようにして斧で攻撃する。

 斧が当たる瞬間でさえも、刀を抜く仕草を見せないエドワードにマットは「勝った」と思い、そのまま振り下ろすが、その瞬間エドワードが消えて斧は大きな音を立てて地面に突き刺さる。

 マットはエドワードが消えたことに少し慌て、すぐに斧を抜いて周りを見渡すと、自身の後方やや先に刀を抜いて左切り上げで何かを切った後の構えをしたエドワードを見つけた。

 そしてそのまま時雨(しぐれ)を仕舞うエドワードに、「まだ勝負は終わっていないぞ」と言いながら斧を構えるが、

 

「いえ、もう勝負はつきました」

 

 そう言って時雨(しぐれ)を鞘に納めきった瞬間、マットが持っていた斧の柄が二つに割れて斧が地面に落ちた。

 マットは一瞬何が起こったのか理解が出来なかったのだが、彼も実力者のため、すぐに自身の斧が先ほどの攻撃──”抜刀術(ばっとうじゅつ)”──によって切り裂かれたのだと理解した。

 

「……そうだな。俺の負けだ」

 

 マットが負けを認めたところで、エドワードの勝利と決勝戦進出が決まった。

 観客の兵士達はよく分かっていない者が多かったが、二戦連続で相手の武器を切り落とす芸当を見せた二人(リオンとエドワード)に対して歓声を上げた。

 

『エド。あの構えはどこかで知っていて使っていたのか?』

「んー、知識として持っていたわけではないけど、元々頭の中での考えにはあったんだよ。実戦で使うのは初めてだったから、成功して良かった」

 

 初めて使う抜刀術であそこまでの精度を出したエドワードに、時雨(しぐれ)はかなり驚いたが、彼の素質が高いのは感じていたため当たり前かと思い直した。

 それよりも今はまだまだ拙い抜刀術を必殺技にまで昇華させることが出来れば、エドワードが”ソーディアンチーム”に入っても遜色ない実力を発揮することが出来るはずだと思っていた。

 

 

 

 

 

 

『坊っちゃん。今のはどうでしたか?』

「…ふん。僕なら簡単に見切れた」

『ですね! あの程度の実力なら坊っちゃんなら楽勝ですよ! 優勝も間違いなしですね!』

「ああ。そうだな」

 

 リオンはシャルティエを話しながら、準決勝を戦うために中央まで歩いていく。

 対戦相手は先ほどのリオンの戦いを見ているため、心なしか震えている。

 お互いが目を合わせたところで、リオンはあることに気が付く。

 

「あれ? お前は僕のことを()()()()()()()()()()()()()()()()()()だと陰で言っていたやつじゃないか。どれ程のものなのか楽しみだな」

「……ひぃぃ!!! 参りました! 私の負けです!!」

 

 リオンが笑みを浮かべて皮肉を言うと、対戦相手の男は恐怖で身が竦んでしまい、開始の合図がある前に降参をしてしまった。

 これには審判だけでなくセインガルド王ですらも呆れてしまうのだが、この後の決勝戦を見た後に記憶に残しているものはほとんどいなかった。

 そのため処罰も一切無く、運が良く助かった一人である。

 

「えー、それではリオン選手の決勝進出ですね。決勝は一時間後に行いますので、それまで休憩とさせていただきます!」

 

 リオンは審判の言葉を聞いて、訓練場から出ていく。

 エドワードも気持ちを落ち着けるために用意された控え室に戻ることにした。

 

『エド、決勝の相手はリオン・マグナスだ。勝てる見込みはあるか?』

「それは俺が時雨(しぐれ)に聞きたいね。勝てるかね?」

 

 お互いに勝算を聞いた後、ため息を吐く。一回戦を見る限り、明らかな差を感じていたのだ。

 このままだと確実に負けると分かったエドワードと時雨(しぐれ)は晶術の解禁をするか悩んでいた。

 

『まぁアレは使えないわけではないんだろ?』

「そうだね。ただいきなり対人戦で使ったことないから自信がないだけでね」

『そこはお前に任せるよ。俺はソーディアンとしてエドが勝てる方法を模索していくだけだ』

 

 結局晶術を使うかどうかはうやむやなまま一時間が経ってしまい、対策も浮かばないまま決勝戦が始まることとなった。

 




名前もない男の人、ちょっとかわいそうですね(笑)

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