《完結》テイルズ オブ デスティニー〜七人目のソーディアンマスター〜   作:ねここねこねこ

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け、結局ヴェスペリア編も小話入れて1万字を越えてしまいました……!
また長いので、ゆっくりじっくりお読みください!

それと本日で『テイルズ オブ デスティニー〜7人目のソーディアンマスター〜』が投稿から一周年になりました。
ここまで続けてこられたのも皆様のお陰です。
本当にありがとうございます!

次回、後日譚の最終話です。
また気長にお待ちくださいませ!



第五話 リリス、協力します!

 テルカ・リュミレース世界、望想の地オルニオン──ヒピオニアという大陸の北東部に位置しているその町は、その世界の住人にとってある目的のために作られた町であり、テルカ・リュミレースの命運を賭けた最後の戦いが今まさに始まろうとしているところであった。

 

 日が沈もうとしている夕方。二人と一匹がオルニオンから外へとやってきた。

 一匹の犬は途中で止まり、二人の行方を見守ろうとしていた。

 少し離れた場所で、全身黒い格好をした黒髪長髪の青少年が立ち止まり、青と白を基調とした騎士鎧を身に纏った金髪の青少年へ声を掛ける。

 

「フレン、あらたまってどうしたんだ?」

「君は……このまま行くのか、ユーリ?」

 

 黒髪長髪の青少年(ユーリ)は、質問を質問で返事する金髪の青少年(フレン)にどういう意味なのか分からず、「あん?」と再度聞き返すことしか出来なかった。

 フレンは少し目を瞑ったあと、自らの考えを述べていく。

 

オルニオン(ここ)に世界の指揮をとる人たちが集まってる。……今こそ、君の功績を称えられるときだ」

「またその話か」

 

 フレンの言葉をユーリは鼻で笑うと、興味無さそうな顔をする。

 しかしそういう態度に出るであろうと分かっていたフレンは腐らずに続きを話す。

 

「僕の功績の半分、いやそれ以上が本当は君の──」

「いいじゃねぇか。誰がやったかなんてどうでも」

 

 ユーリはフレンの話を遮り、心底どうでも良いという風に顔を俯かせる。

 

「良くないさ。なぜ自分だけ損な選択をする? どうして辛い部分を全部背負い込もうとする? ……僕には背負えないからか?」

 

 フレンは納得が出来ないとばかりにユーリへと語気を少しだけ強める。

 いつもユーリのやった功績を自分にだけ譲られ、それ以上のことを彼に返すことが出来ていないと思っているフレンは少しだけ不安そうにユーリへと問い掛ける。

 しかしユーリから出てきた言葉は────フレンへの感謝の言葉だった。

 

「……おまえはオレが背負えないもの、背負ってくれてんじゃねえか。オレが好き勝手やれてんのが誰のお陰かってことくらい、分かってるつもりだぜ?」

「──ッ! だけど……!! ……駄目だ、どうも余計な言葉ばかり出てきてしまう」

 

 フレンはもっと自分を頼ってほしいと思っていた。そしてそれ以上にユーリが、自分の親友が世の中に認められてほしいと心の底から思っていた。

 しかし、ユーリと真剣に話そうとするといつも煙に巻かれてしまうか、自分だけが熱くなってしまって話が逸れていってしまう。

 今度こそ真剣に向き合いたいというフレンの気持ち。それが伝わったのか、ユーリは薄く笑うと左手に持っていた鞘から刀を抜く。

 

「フッ、なら……()()()で来いよ」

「ユーリ……!」

「おまえが口でオレに勝てるわけねぇだろ。おまえがオレに勝てるのは……()()()だろ?」

 

 刀をフレンに向け、彼にも抜くように促すユーリ。フレンは一瞬驚いた顔をするが、納得したような顔で笑うと腰に差してある騎士剣に手を掛ける。

 

「そうか……そうだったな。君はいつもそうだ。」

 

 フレンは抜いた剣をユーリの刀に軽く当てる。日没が近いその場には、剣が当たるカキンという音が響き渡る。

 

「思いはすべてこの剣に乗せる!」

「……いいぜ、来な──」

 

 ユーリとフレンの一騎打ちが始まるまさにその時。二人の上空に大きな光が輝き始める。

 

「なっ!?」

「な、なんだぁ!?」

 

 二人は思わず上空を見るが、眩しさで先に何があるかが見えない。

 徐々に光が弱まっていく。

 

「わっ! わわわ……ま、またなのぉ〜〜!?」

 

 光から降ってきたのは、ピンク色のワンピースにエプロン姿の女の子であった。

 

「危ない!!」

「……ちっ!」

 

 上空から現れたのが女の子であると理解したフレンは、咄嗟に剣を地面に刺して少女を受け止める。

 ユーリも何が起こったのか理解はしていたが、このままでは危ないと思い自らの刀を仕舞い、フレンが受け取りそこねた時にカバーできるように瞬時に動いていた。

 

「いったたたた…………ってあれ、痛くない?」

 

 少女は地面に落ちたのだと錯覚していたのだが、痛みがないことに気付き目を開ける。

 

「……大丈夫かい?」

「…………」

 

 フレンは冷静を努めつつ、少女の心配をする。少女は金髪碧眼の整った顔に見惚れていた。

 それも無理はない。フレンの顔は女性が見ればほぼ全員がイケメンと称する程であり、その爽やかさは今までその少女が出会ったことがない部類だったからだ。

 

「……あの、えっと、だ、大丈夫?」

「ふぇ? ……あ、ははははい! だ、大丈夫です!!」

 

 フレンはもはや慣れた女性からのいつもの視線に苦笑いを浮かべていた──ように周りからは見えていた──が、現状を理解した少女は慌てて返事をする。

 ユーリはまた一人フレンに落とされたかと思っていたが、それ以上にいきなり現れた少女に警戒していた。

 

「ユーリ! 今の光って何があったの!?」

「カロル!」

 

 そこに少女が現れた光を見たオルニオンの町の住人が何人か走ってやってきた。

 先頭を走るカロルと呼ばれた茶髪の少年は、その先に見知った人間達と知らない少女がいたのが不思議に思っていた。

 

「ん? ああ、なんでもねーよ。大丈夫だ」

「ユーリ、あんたもしかしてフレンとその女の子に何かしようと──」

「しねーよ!」

「しないよ!」

 

 カロルに返事をしたとき、後ろから追いついてきた茶髪の少女にあらぬ疑いを掛けられそうになったため、フレンと一緒に即座に否定する。

 やけにフレンの語気が強かったのだが、幸いそれに気付く者はいなかった。

 茶髪の少女も冗談で言っていたので、頭につけたゴーグルをいじりながら「まぁそうよね」と笑っていた。

 

「……で、そのお嬢さんは誰なんだい?」

「そうね。もしかしてさっきの()()()()はあなたなのかしら?」

 

 興味津々な様子で黒髪を後ろで結っている軽薄そうな男性と耳が尖っている青髪の女性が問い掛ける。

 話し方は興味本位な感じではあったが、二人の目と雰囲気がユーリと同じく少女を警戒しているようであった。

 フレンから降りた少女は服を整えて自己紹介をする。

 

「あの……えっと……私はリリス・エルロンっていいます。よ、よろしく……お願い……し、します……」

 

 リリスはテルカ・リュミレースに到着するやすぐに囲まれてしまったため、動揺していた。

 しかも全員が明らかに手練だったため、さきほどフレンに抱いた気持ちなど忘れ去ってしまうくらい泣きそうになっていた。

 

「ちょ、ちょっと! ジュディスもレイヴンもそんな目をしてたら駄目だよ! 怖がってるでしょ!」

 

 カロルの言葉に青髪の女性(ジュディス)軽薄そうな男性(レイヴン)はそれ以上何も言わなかったが、警戒を解くつもりはないようであった。

 ため息を吐いたカロルはリリスの方を向いて自己紹介をする。

 

「ボクはカロル・カペル! ギルド〝凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)〟の首領(ドン)だよ!」

「うちはパティなのじゃ!」

 

 カロルの後ろから海賊帽子を被った金髪幼女がひょこっと出てくる。

 パティの出現で周りの空気が少し緩んだかに見えたが、ユーリ、ジュディス、レイヴンは違っていた。

 

「フレン、そこから離れろ」

「え……いきなりどうしたんだ?」

 

 ユーリは仕舞っていた刀を再度抜き、フレンにリリスから離れるように伝える。

 フレンは刀を急に抜いたユーリに驚くが、ジュディスとレイヴンもそれぞれの得物を抜く。

 

「……ユーリの言うとおりだわ。その子は明らかに()()()()()のよ」

「そうだな。()()()()()()()で出てくるなんて、いくら可愛らしいお嬢さんでもおっさん疑っちゃうよ」

「え……えぇぇぇええ!?」

 

 リリスはいきなり三人に武器を向けられ、驚きの声を上げる。しかし、最終決戦前に突然現れた人物を疑うなという方がおかしい。

 それにはディムロス達も仕方がないと頷いていた。

 

『たしかにこんなところに急に現れたら我も確実に疑うぞ』

「ちょっとディムロス! どっちの味方なのよ〜!」

 

 ディムロスに小さな声で反論するリリス。その行為は周りからすると明らかに怪しかった。

 更に警戒するメンバーの前にフレンが立ちふさがる。

 

「フレン!?」

「…………リタ。僕はユーリ達の言うことに納得が出来ない」

 

 茶髪の少女(リタ)がリリスを庇うようにして立つフレンに驚きの声を出すが、彼は頑なな態度を見せていた。

 

「フレン、そこをどけ。その子は最低でも拘束させてもらう」

「ユーリ!? 本当にその子を拘束するの!? フレンもちょっと落ち着こうよ!」

 

 リリスを拘束しようとするユーリに対し、それを阻止しようとするフレン。

 カロルはまさか仲間内で一触即発になるとは思わなかったため、二人を宥めようとする。

 しかしそれは今の二人にとっては無駄であった。

 

「ユーリ、君は言ったね。僕は君には口では勝てない……確かにその通りだ。だから(コレ)で僕の意志を通させてもらう!」

 

 フレンは地面に刺さった剣を抜き、ユーリに斬りかかる。ユーリはそれに気付き、フレンの攻撃を受け流していく。

 突然のことにリリスは困惑を隠しきれない。

 

「え、え……どういうこと? なんでいきなり仲間同士で戦い始めてるの?」

『それはな、美少女リリスを巡ってイケメン達が争っているのさ!』

「えぇぇぇええ!?」

『そ、それは乙女としては激アツな展開ね……』

『アトワイトも天地戦争のときに味わってますもんね』

『ディムロスとバルバトスの戦いのときか……』

『あのときのアトワイトはまさに乙女じゃったのう。ふぉっふぉ』

『ええい! 時雨(しぐれ)、適当なことを言うな! シャルティエもイクティノスもクレメンテ老もふざけないでもらおう!』

『そうね。遊んでいる場合じゃないかもね。リリス、気を付けなさい!』

 

 ユーリとフレンが剣を交えているとき、そのすぐ横でリリスとソーディアン達はふざけ合っていた。

 いや、リリスとディムロス、そして珍しくベルセリオスは真面目であった。

 ベルセリオスの声にリリスが周りを見渡すと、レイヴン、ジュディス、リタ、パティが彼女を拘束するべく距離を縮めていた。

 

「悪いが、お嬢さん。今は大人しくしていてくれよ」

「……嫌よ。私だってやらないといけないことがあるんだから、こんなところで簡単に捕まってはいられないわ!」

 

 リリスはそう言うと、手に持っていた()()()を構えて臨戦態勢を取る。

 内心では人数差の関係もあって不利であると自覚していたリリス。しかし、それを口に出して諦めるのは彼女のプライドが許さなかった。

 

「──くそっ!」

「おっと、ここから先は行かせないぜ? あの子を助けたかったらオレを倒してから行くんだな」

 

 ユーリとフレンはほぼ互角。その隙を突いてレイヴン達がリリスを捕えに行くのは当然の作戦である。

 しかしカロルだけはオロオロしているだけで、どちらの味方にもならなかった。

 

「行くわよ──」

「おっと」

 

 リリスが先手を取ろうと攻撃を仕掛けたのだが、その直前にレイヴンが矢をリリスの足元に放つ。

 それを避けたためリリスは先制を取ることが出来なかった。

 ジュディスは槍で体勢を崩しているリリスへと突撃していく。

 

「くっ!」

「……ふふっ。やるわね」

 

 ジュディスの槍をリリスがおたまで受け、彼女がバックステップで離れると同時にパティがナイフでリリスを攻撃する。そしてすぐさま離れて、もう片方の手に持っていた銃でリリスを狙い撃つ。

 おたまで銃弾を弾いたリリスがパティを狙おうとしたところで、レイヴンが更に矢を放ってきたためリリスは防戦一方で攻撃を仕掛けることが出来ない。

 

「…………行くわよ! ファイアボール!!」

「きゃああ!」

 

 詠唱を終えたリタが魔術を放つと、リリスは避けられずにその火球をまともに受けてしまう。

 あくまで生け捕りを目的にしているため、リタは殺傷力の低い魔術を使っているが、食らった衝撃でリリスは膝をついてしまう。

 

「はぁ……はぁ……」

『リリス、ここは一旦引くぞ! これでは多勢に無勢だ!』

「……い……いや!」

『そんなことを言っている場合か! クレスのときとは違うんだぞ!』

「でもこんなところで逃げていたら……胸を張ってソーディアン()を直したなんてお兄ちゃん達に言えないもん!」

『リリス……しかしだな……!』

 

 リリスとディムロスは問答を繰り返す。身の安全を考えて離れるように言うディムロスと、己のプライドのために逃げたくないと言うリリス。

 だが、このままではリリスは勝てないことは分かっていた。

 

(確かにこのままだとツラいわね……せめて──)

 

()()()()()()()()()()()ってことだよな、リリス!』

「……え?」

 

 リリスが思っていたことを口に出したのは時雨(しぐれ)だった。

 

『ベルセリオス! ちょっと無茶するから、あとは頼んだぞ!』

『はいはい。あなたの()()()()はちょっとだった試しがないんだけどね』

 

 ベルセリオスが苦笑いをした直後、リリスの周りに七つの魔法陣が浮かび上がる。

 

「な、何あの魔法陣は……今まで見たことないわよ!!」

『じゃあ今後のために学んでおくんだな、リタ! ──英霊召喚(サモン・エージェンツ)!!』

 

 そもそも時雨(しぐれ)の声は魔法陣を凝視していたリタには聞こえないのだが、時雨(しぐれ)は気にせず英霊召喚(サモン・エージェンツ)を唱える。

 そしてその魔法陣が大きな光を放つ。

 

「……どこだ、ここは?」

「私達はこれからソーディアンを封印に行くところだったはず……」

「この風景は見たことありませんね」

「ああ、確かに見たことないな」

「なんぞ不可思議なことも起こるもんじゃのう」

「……シグレ、あんたまた何かしたわね?」

「え……俺は何もしてないぞ! いや、今回は本当だって!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ディムロス・ティンバー

 アトワイト・エックス

 ピエール・ド・シャルティエ

 イクティノス・マイナード

 ラヴィル・クレメンテ

 ハロルド・ベルセリオス

 シグレ・カザハヤ

 

 

 

 

 

 

 魔法陣の光から現れたのは────()()()()()()()()()()の面々であった。

 

 

 

     ◇

 

 

 

 シグレは激怒した。必ず、かの自由奔放の()をなんとかせねばならぬと決意した。

 シグレには訳が分からぬ。シグレは転生者である。テイルズオブデスティニーの天地戦争時代に転生し、色々と悪ふざけをして暮らして来た。

 けれども今回のことに関しては、確実に(自分)のせいであると一瞬で理解したのであった。

 

「ええい! だからきっと、いや絶対にお前のせいなんだろうが!」

「ディ、ディムロス君、それは横暴と言うものだよ」

「お前が私に()付けするときは、大抵何かを誤魔化しているときなんだ!」

 

 周りにいる全員が呆然としていた。いきなり魔法陣から現れた歴戦の戦士とも思える七人の男女。

 しかし、そのうちの二人が現れるなり言い合いを始めてしまったのだ。

 一緒に現れた者達もいつもの光景で慣れてしまっているのか、苦笑いをするだけで何も言わない。

 

「え……? ディムロス、時雨(しぐれ)……って、どういうこと? ねぇディムロス!」

『…………』

「ちょ、ちょっと! なんで無視するのよ、ディムロスってば!」

「……む? そなたはなぜ私の名前を知っているのだ?」

 

 リリスはソーディアン・ディムロスに話し掛けたつもりだったのだが、返事がなく、代わりに返事をしたのはディムロス・ティンバーだった。

 訳が分からなくなっていたリリスは、振り向いたディムロスに一瞬硬直する。

 そこにシグレと呼ばれた男がリリスの前まで歩いてきて、しゃがみながら優しく話し掛ける。

 

「君は……もしかしてリリス・エルロンかな?」

「え、ええ。そうよ。あなたは──」

「俺はシグレ・カザハヤ。…………もしかして君ってソーディアンのコアクリスタルを持っていたりする?」

 

 自己紹介をしたシグレは、後半部分をリリスにしか聞こえないくらい小さな声で話し掛ける。

 小さく頷いたリリスを見て、納得したような顔になったシグレは立ち上がって立っているディムロスの方を向く。

 

「あー…………言いづらいんだが……」

「なんだ?」

()()、やっぱり俺が原因だったみたい! あははははっ!」

 

 後頭部に手をやりながら笑うシグレ。ズッコケそうになる旧ソーディアンチームだったが、「どういうことか事情を説明しろ!」というディムロスに対し、少し考えた素振りをしたシグレが説明を始める。

 

「リリス、もし違ったら都度訂正を加えてくれ」

「わ、分かったわ」

 

 シグレはユーリやフレン、そしてリリスに襲いかかってきていたレイヴン達にも聞こえるように事情を説明する。

 あくまで原作知識と転生特典を考えた上での話のため、リリスから少しだけ訂正はあったのだが、おおよその内容に間違いはなく話は進んでいく。

 

「──というわけで、この世界に飛んできたはいいんだけど、タイミング悪く〝タルカロン〟に向かおうとしていた彼らの前に現れてしまったから誤解されたってところかな?」

 

 シグレは肩をすくめながら「こんなところでどうだい?」と語っていた。リリスはほぼ間違いはないことから受け入れるしか選択肢はなく、ユーリたちはまさか自分達の事情にも詳しいと思っていなかったため心底驚いた顔をしていた。

 

「でも待って……異世界から来たっていうの? いや、でもこの星以外に生命体がいたとしてもそれは不思議なことではないわ。それなら異世界人だって……」

「ま、そういうことだな。リタ・モルディオ……さん……?」

「なんでそこ疑問形なのよ! てかなんであたしやユーリ達の名前を知っているのよ!!」

 

 突拍子もない話を聞いてブツブツと考察を続けるリタに話し掛けるシグレ。

 しかし自分達の名前を知っているのだけは理解が出来なかった。ツッコミを入れるが、ディムロスにとってはもはや慣れたことのため「例のアレか」と言うだけで話が流れていく。

 

「……というわけで、そちらさんとこっちはもう争う理由がないわけなんだが──」

「いいえ、私にはあるわ!」

 

 シグレが上手いこと争いを収めようとしたとき、リリスが話を遮る。

 ゆっくりと立ち上がったリリスはシグレ達の方を向いて話し始める。

 

「このまま負けっぱなしなんて悔しいもの! ディムロス、シグレ……手伝って」

「え──」

「な、なにを──」

「手・伝・っ・て・! 未来のあなた達の剣を直そうとしてるんだもの、まさか断らないわよね?」

 

 さすがのシグレもリリスの突拍子もない発言には言葉を失った。

 しかしそこをフォローするのは、いつも妻であるハロルド・ベルセリオスであった。

 

「なかなか面白そうだわね♪ あたしは参加させてもらうわ」

 

 彼女は武器を持つとリリスの横に立ってウインクをする。

 ウインクをされたリリスは少し嬉しそうな顔をして、ハロルドを見返していた。

 

「……はぁ。まぁ仕方ないか」

 

 シグレは刀を抜いて二人よりも前に出る。

 ハロルドがこうなってしまった場合、ほぼ確実にシグレは追従する。そして逆もまた然り。

 これがお似合い夫婦と呼ばれている所以(ゆえん)であった。

 

「で、うちのリリス(お姫様)はこう言ってますけど、君達はどうするんだい? そちらもエステル(お姫様)を交えて戦ってみるかい?」

 

 シグレはユーリ達を挑発する。エステルの名前を出してはいないが、()()()という単語を使って暗にエステリーゼ・シデス・ヒュラッセインのことを指し示したことで今度はフレンが反応した。

 

「……エステリーゼ様を巻き込むわけにはいかない! そういうことなら僕はユーリ達につかせてもらう」

 

 先程までユーリと争っていたフレンがシグレの挑発に乗り、リリス達へ剣を向けてくる。

 リリスは少し残念そうに、フレンは少し気まずそうにお互いに目を合わせたが、すぐに目を逸らした。

 

「おい! 勝手に決めるな、シグレ!」

「まぁ……でもこの二人がこうなったらもう止められないですよ?」

「そうなのよね。もうこんなところで出さなくてもいいのに……」

「ふぉっふぉっふぉ。まぁこれから最後の決戦に向かおうとしている若人(わこうど)達の壁になってやるのも……また一興かのう?」

「クレメンテ老、あなたは面白がっているだけでしょう?」

 

 旧ソーディアンチームはそれぞれ勝手なことを言っていたが、ディムロス以外が参戦を決めると、ディムロスも「ええい、仕方がない!」とソーディアンを抜いて前に出る。

 シグレはその様子を笑いながら見たあと、再度前を向く。

 

「ユーリ・ローウェル君はどうするんだい? 俺は自分と同じ得物()を使うやつと手合わせしてみたかったんだが、フレン君との勝負が中途半端だって思うなら……やってみないか?」

「……ちっ。オレらが勝ったら更に詳しく説明してもらうからな」

 

 ユーリがフレンの横に立ち、刀をシグレに向ける。

 ジュディスは元々やる気になっており、リタはシグレから「勝てば転移陣の説明を詳しく教えてやる」と言われ、すぐに参戦を決める。

 パティは「面白そうじゃの!」と嬉々としており、その横にはキセルを咥えた犬もいた。

 

「もう! 〝凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)〟の首領(ドン)はボクなんだから、勝手に決めないでよね!」

「わりぃな、カロル。でも……ここまで来たらやるしかねぇだろ?」

「……んー! ズルいよユーリ! ラピードまでやる気になってて、ボクだけ逃げるわけにはいかないでしょ!」

 

 キセルを咥えた犬(ラピード)はカロルの声に遠吠えを上げると、短剣を抜いて臨戦態勢を取る。

 そして旧ソーディアンチーム対凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)の戦いが始まるのであった。

 

 

 

     ◇

 

 

 

「えっと……これで最後よね?」

「ええ、これだけあれば足りるでしょ♪」

 

 リリスとハロルドはテルカ・リュミレースで取れる〝レアメタル〟と呼ばれる鉱石を採取していた。

 彼女達の世界では既に存在せず、インフェリアではリヴァヴィウス鉱石と呼ばれており、そこでは少量しか採取出来なかったのだが、テルカ・リュミレースでは珍しいがソーディアン達を修復する分の量を確保することが出来た。

 

「いやぁ、これも俺がユーリ君達に教えてもらえたお陰だねぇ♪」

「シグレ……まだ怒られ足りないみたいだな?」

「いや、冗談だって! そんなカリカリしないでくださいよ、ディムロスせんぱぁい!」

 

 自分の手柄にしようと軽く発言したシグレに対し、ディムロスはオルニオンで行われた公開説教が足りなかったと判断し、再度説教を始めようとする。

 その空気を察したシグレは揉み手でディムロスに近付き、冗談だということをアピールしていた。

 

「あなた達って人間のときも同じ関係だったのね」

 

 リリスは呆れた声で二人のやり取りを見ていた。

 凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)との戦いのあと、コアクリスタルのみとなったソーディアン達が反応しなくなってしまった原因をシグレ達に聞いていた。

 ソーディアンはオリジナルがいるときに人格を表出ししてしまうと、オリジナルの人格崩壊に繋がる可能性があるという理由から、安全機能(セーフティー)が掛かるとハロルドが答えていた。

 安全機能(セーフティー)のせいで、ソーディアン同士のテレパシーでの会話以外は話せなくなるためリリスに対して返答ができなくなっていたのであった。

 

「あとは〝最高位精霊〟とやらに直してもらうだけね」

「うん! ありがとう♪」

 

 ハロルドの言葉に笑顔で答えるリリス。

 

「短い間だったけど、本当に助かったわ! 今まではコアクリスタルだったあなた達としか話していなかったから、まだ違和感があるけどね」

「俺達がいなくなればソーディアンの俺達とも会話ができるようになると思うから、あとは彼らに引き継ぐよ」

 

 リリスとシグレ達は握手を交わし、先にリリスが〝異世界渡り君DX(デラックス)〟でリーネの村に帰ることになった。

 〝異世界渡り君DX(デラックス)〟を起動する直前にハロルドからボソッと言われて顔を真っ赤にしたリリスだったが、何を話したのかはその場にいる誰にも分からなかった。

 

「じゃあね♪ 本当にありがとう!」

 

 光に包まれながら消えていくリリス。

 それを旧ソーディアンチームは手を振って見送るのであった。

 

「…………ところで私達はどうやって帰ればいいのだ?」

「あ……」

 

 ディムロス達が自分達の世界に帰ることが出来たのは、時雨(しぐれ)が直って英霊召喚(サモン・エージェンツ)を解除していないのに気付いた後であった。

 元の世界に戻れるまでの間、毎日のようにシグレが怒られていたのは仕方のないことなのであろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『て、てへぺろ♪』

 




【小話:凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)

カロル
「負けちゃったね〜」

レイヴン
「いや、あれは負けたってレベルの話じゃなかったとおっさんは思うぞ」

フレン
「…………」

ジュディス
「彼らは最終決戦を乗り越えたかどうかだけの差だとは言っていたけれど……」

リタ
「本当にそれだけの差だったのかしらね……結局、魔法陣の秘密を教えてもらえなかったし!」

フレン
「…………」

パティ
「でもうちは楽しかったのじゃ♪ 特にシグレとハロルドとはまた会いたいのじゃ!」

フレン
「また……会いたい……?」

ユーリ
「あん? フレン、さっきからどうしたんだ?」

エステル
「そうですね、フレンの様子が先程からおかしいですよね」

ラピード
「くぅ〜ん」

フレン
「…………はぁ」

レイヴン
「そういえばリリスっておたまで戦っていた女の子なんだが……〝フライパンとおたまで戦う少女〟という話をどこかで聞いたことがあるような……?」

フレン
「リ、リリス……さん!?」

レイヴン
「ん、なんだ? ……あ! もしかしておっさん、分かってしまったかもしれないぞ!」

カロル
「えっ!? レイヴン、教えてよ!」

レイヴン
「それはな……ごにょごにょ」

ユーリ、カロル、リタ、エステル、パティ
「こ、恋っ!? フレンが!?」

ジュディス
「あらあら! ……ふふっ」

フレン
「また……会いたい……はぁ」
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