テニスの大会の件を言われた翌日の朝、一応週末ではあるもののいつも通りに黒服さんとのランニングをする為に河川敷に行き、走った後私はそのまま弦巻邸に向かった。
「おはよー!!みさきーー!!!」
「おぉ、どうどうどう」
私が弦巻邸の玄関の扉を開けるや否や、中から私を待っていたかの様にリュックを背負ったこころが私に目掛けて飛び込んでくる。それを真正面からキャッチするとこころは首に手を、腰に足を回し巻きつけてくる。それと共に軽くひまわりの様な暖かい香りと程良い暖かさが私を襲う。個人的には抱きついてくれて嬉しいと言えば嬉しいけどこれじゃ、私が身動きが取れない。
「ちょ、こころ、これじゃ私が動けないよ!」
「あ、ごめんなさい、みさき」
足を下ろしはしたもののこころは首に手を回したままだったので、バランスが悪くなり私自身が前のめりになりそうになる。
「こーら、こころ危ないって」
そう言いつつもこころの太腿に手を回し、彼女を抱え上げる。思いの外軽く抱え上げる事ができてしまい本当にこの子食べてるのかなと言う心配をしつつこちらをじっと見ていた黒服さんの方を見る。
「では、こころをお借りしますね」
借りると言っても、市ヶ谷さんの家に泊まりに行くって事なんですけどね。まぁ、本当だったら、ここから黒服さん達が車を出して市ヶ谷さんの家に行くって流れなんだけど、今日の朝黒服さんに会った時に"こころ様が美咲様と一緒に歩いて市ヶ谷様の家に行きたいと所望されている"と言われた為、車の出番はない。ただ、それでも秘密裏にこの人達はついてくるんだろうなぁと心の中で思ったりしている。
「了解しました、では、こころ様をよろしくお願いします」
そう言って中にいた黒服さんがお辞儀をする。そして彼女らが表を上げる前にバタンっと言う音を出して弦巻邸の玄関は閉まった。それからこころが首に回していた手を解く。同時に私はこころを下ろし離れないように手を掴んだ。
「んーそれより、こうの方がいいわ!」
こころは一度強引に私の手を振り解き、それから指と指を交わらせると言う、言わば恋人繋ぎをする。
「ちょ、こころ」
あんたこの意味わかってるの!っと言おうとしたが、その前にこころが私を引っ張って先に行こうとする。
「さぁ、行きましょ!みさき!」
手を繋いでない方の手の人差し指を立ててこころはにこやかな笑った。少しずつ熱く、湿り気の出てくる季節になりつつあるこの時期でも、繋いだ手から来る暖かさ、少し頬を赤らめて笑っているこころの顔と私の顔が熱くなる感覚は感じ取る事が出来たのだった。