そんなこんなで、こころに連れられて商店街とかを無駄に回っているうちに日が天に登り、そしてようやく市ヶ谷さんの家に到着する。
「こんにちはー」
「おう、ようやく来たか」
市ヶ谷さんの家に着くなり、市ヶ谷さんが出迎えてくれる。家の奥から戸山さんが、現れてこちらに手を振る。
「こんにちはー!こころ!」
「まぁ!かすみじゃない!」
玄関まで来た戸山さんとこころがハイタッチする。それを見つつ私と市ヶ谷さんは苦笑する。恋人繋ぎをしていた手を離すと、こころは靴を脱ぎ、玄関を上がってから戸山さんと話し始める。ちょっと、寂しいけどそれはそれでいいのかな……と思いつつ私も靴を脱いで玄関に上がる。
「……一応、他の面子は来て私の部屋にいるんだが……」
こっそりと市ヶ谷さんが耳打ちをしてくる。それに対して私は頷いた。
「そうだね……こころ、荷物頂戴」
いいわよ!っと言ってこころは私に荷物を渡してくれる。それから私はこころと楽しそうに話している戸山さんの方を見る。
「戸山さん、こころと一緒に市ヶ谷さんの蔵行って蔵の中案内してくれない、こころここ来た事ないし」
「いいよ!いいよ!ね、ありさ!」
そう言って私と戸山さんが市ヶ谷さんの方を見る。私が何をしたいか察したのか諦めた様に溜息をつく。
「あーいいよ、行ってこい、ただ迷惑かけるなよ」
そう、市ヶ谷さんは戸山さんとこころに釘を刺すと、2人は頷いてそのまま家の奥に行ってしまった。
「これで、よしっと、すみませんね、私の事情に付き合わせてしまって」
こころには少し申し訳ないけど、上でミッシェル系の話をしなくちゃいけないから戸山さんと楽しんできてね。
「……そう考えてみると、奥沢さんもかなり策士だよなぁ……」
私が心の中でこころに謝っているとボソッと市ヶ谷さんが何かを言った。聞き取れなかった私はん?っと首を傾げる。すると独り言だ、気にするなっと返さる。
「じゃ、かすみ達が行ってる間に行くぞ」
「了解でーす」
市ヶ谷さんの後をついて行き、彼女の部屋に到着する。部屋の中には、ベットに腰掛けてギターの調節している花園さん、部屋の中央で机の奥に座っているりみ、その右隣に山吹さんが座っていた。
「こんにちはー」
「どうも」
「あーこんにちは、美咲ちゃん」
「お、来た来た」
挨拶の返事をされつつも、私はこころと私の荷物を(多分戸山さん達の荷物であろう)少し積み上げられているリュックの山の近くに置く。
「いやー、久しぶりだね、りみー」
「ほんま、あのゾンビドッキリ以来やねー、こうやってゆっくり話すのは」
りみの前に座りながら声を掛けるとほんわかとりみが返してくる。以前、丸山先輩のゾンビドッキリっと言うか、映画の宣伝のドッキリを仕掛けられた時以来あまり話せてなかったので、いつも通りのりみに少しほっとする。そう言えば一昨日の丸山先輩、日菜先輩とかと走って途中の広場でゾンビになりかけてたなぁ……。
「そう言えば、一昨日ね、丸山先輩がさぁー」
私から見て左に座った市ヶ谷さんが手を私の口の前に持ってきて私の話を遮る。
「その事について少し話を聞かせてもらえないか、昨日の朝はホラ、話がし難そうだったしな」
「なんの話ー?」
花園さんが話に食い込んでくる。それに対して市ヶ谷さんが少し待てと言う。そう言えばそんな事ありましたね。何の為にこころと戸山さんとこころを隔離したんだって話なんですよね。
「そうですね、どこから話せば良いんだろう」
1番最初から話すかなと心に決めて、1番最初から話し始める。事の発端はハピハロ会議でミッシェルが一日中出る事が決まった事から始まり、ひょんな事でパスパレとのコラボをし、その最初の撮影で海に溺れてしまった少女を助け出したと言う一連の流れを事細かく説明する。
「……ってことは、昨日のニュースのミッシェルって奥沢さんの事だったんだ」
まぁそうなりますと目を細めた山吹さんの言葉に頷く。確かに、昨日のニュースだと少し遠目から撮っている様な構図の為ミッシェル=私となる人は少なさそう。現に、
「へぇーどうりで、学校の表玄関の方に、人がいっぱいいたんだね」
「そうだったんだー凄いじゃん!」
山吹さんに続いて納得した様にりみが、珍しく興味をひいたのかギター弄りをいつの間にか辞めて、私の話を聞いていた花園さんがそれぞれの反応を示す。ただ、1人だけ両手を机に添えて顔を下に下げてふるふる震えていた人物がいた。まぁ、市ヶ谷さんなんですけどね。
「おーくーさーわーさーんーさー!!なんで自らそんな事をするんだよ!」
顔を上げるなら私に向かって噛み付いてくる。まぁ、常識的な人から見たらそうなるよね。だからといってなんでって聞かれても私は、あの金髪の少女の後ろ姿を見ているのは嫌で少しでもその少女の隣に立ちたかったからとは多分今ここで、口で言っても伝わらないし、どちらかと言うとあの人の言葉で、身体が勝手に動いたと言った方がしっくりくる。
「いや、だって、身体が勝手に動いたんですもん……」
「そんなわけねーだろ!それに、わざわざ自分から行かなくても、他に助けを呼ぶとか出来なかったのか!」
確かにそうする事は出来た。普段の自分なら多分、あの岩場にいた人たちと同様に棒立ちしか出来なかったと思う。だけど、あの時は違っていた。
『……彼らを助けたい?……いや、質問を間違えた、笑顔にしたい?』
あの日菜先輩の一言で私は突き動かされていたのだと改めて実感する。
「……そうですね、そう言う手段もあったかもしれません、ただ、その、本当に、その時の私の本心はあの少女を今すぐ助けたい、そう思っていたからあの行動をしたんだと思います」
そう言うと市ヶ谷さんが深く長く溜息を吐く。
「……はぁぁぁぁぁ、ほんっとうに奥沢さんってお人好しなんだな」
「まぁ……そうですね」
前だったらそんな事ないですよーとか言ってたかもしれない、だけど、私は今はそう思わなかった。すると調子が狂ったかの様にあぁもうっと市ヶ谷さんが頭をかく。
「それが奥沢さんの選択なら否定はしないけどよ、無茶だけはするなよ!」
「了解です」
ありさ、心配しすぎだよーっと茶々入れた花園さんに対して、おめーらが誰一人心配しないからだろぉ!っと市ヶ谷さんが食いかかって行く。それを他の二人と一緒に見つつ、私は苦笑いをする。そして、ドタドタドタと2つの足音がこの部屋に向かって来るのを床越しに私は感じるのたった。