無事にポピパの人達、市ヶ谷さんの家の人と私達2人分のコロッケを買い終え帰宅した私達は、既に出来上がっていた夕ご飯を少し大きい市ヶ谷さん家の居間で食べ、そして食後の雑談に花を咲かせていた。
「でね!はぐみがね……」
こころが楽しそうに先程はぐみと話していた事をポピパと市ヶ谷さんの家族に対して話しているのを横目に私は話を聞いていると、ブブッと携帯が鳴る。一応確認してみると日菜先輩からのメッセージで今日集まる時間が明記されていた。時間まではまだ余裕はある。画面のロックを開けて"分かりました"と書き送り返して、また携帯をポケットの中にしまう。
「……なぁ、奥沢さんさ、少しツラ貸してくれねーか」
私の右斜め後ろに来ていた市ヶ谷さんに耳打ちされる。
「おぉー怖い怖い、反対したらカツアゲされる奴だコレ」
おいっと市ヶ谷さんに少し怖い顔をされるが、冗談ですよっと笑いながら返しめ立ち上がる。それに少しばかり不屈という感じで口をへの字にした市ヶ谷さんの跡をついていくようにして誰もいない少し暗い縁側まで連れてこられる。そして、縁側を見るようにして立ち止まった市ヶ谷さんが私を見て来る。
「昨日の朝、何があった」
縁側の方からほのかに来る光が市ヶ谷さんの顔を照らし、陰影が出来たおかげでいつもツンケンしている顔に少しばかり怖さを感じる。それに頭の中の何が警笛を鳴らし私に緊張感を与えて来る。
「何があった……とは」
「ほら、顧問の先生に呼ばれてたじゃん」
そう言って市ヶ谷さんは縁側に腰を掛けるようにして座る。あー大会の事ね、そう言えば話してなかった。まぁ、一々話す必要もないよね。
「いや、特にどうって訳じゃありませんよ」
鼻で笑いながら言うと、市ヶ谷さんはジッとこちらを下から見て来る。それからはぁと大きくため息をついた。
「……いや、それ嘘だな、そう言った割には昨日の朝、顧問の先生に呼ばれて帰ってきたとき、かなりしょぼくれてたぞ」
「…………バレましたか」
「バレるだろ、あんなに落ち込んでるんだかさ」
相変わらず市ヶ谷さんは人の事見てるよなーと思いつつ市ヶ谷さんの隣に座る。それから、一昨日先輩が事故った事、それにより代行として私に白羽の矢が立った事を話すと、市ヶ谷さんがまるでこの世の終わりを見たかのような顔でこちらの両肩を掴んでくる。
「おい、バカッ!なんでそんな大切なこと言わないんだよ!」
「だって、コレは私の問題ですし、言う必要ないかなと思いまして……」
こちらの目を捉えている市ヶ谷さんの目から視線を外そうとすると"そうじゃねぇ"っと両肩を前後に揺らして来る。それから、また私の目と目線を合わせる。
「ちげぇよ!朝、朝が潰れちまったらどうするんだよ!弦巻さんと会えなくていいのかよ!なぁ!なんでそうも自分を苦しめるような道に進んでいくんだよ!なんで、なんでだよ!あんたが居ない……あんたが一日何も言わずに学校に来なかった時の弦巻さんをお前は知らないのか!いや、知るわけねーよな!あんたは居ないからな!それなのに、それなのにさ!なんでそんなことするんだよ!」
若干、涙目になっていた市ヶ谷さんに対して何か言おうとした。しかし、私は何も言えず、またそれに対して答えを出すことはできなかった。ただ、その言葉を、聞くことしか私には出来なかった。
「なんか言えよ!奥沢さん!なぁ!頼むからさぁ!」
震えている手で私の胸ぐらを掴んだ市ヶ谷さんが、顔を下にして叫んでいた。それを聞いた私は心の奥底で黒い何かが蠢く物が存在するのを感じた。だが、それがなんなのかその時の私にはわからなかった。