市ヶ谷さんを若干泣かしてしまった私はどうしようもなく、市ヶ谷さんが落ち着くのを待った。それから落ち着いた市ヶ谷さんに"1人にさせてくれ"っと言われて私は縁側から去った。そして、居間に戻ろうとした所でこころと会い"みさき!お風呂入りましょ!"っと言われ、拒否権なしに着替えを持ってこさされ、今私とこころは市ヶ谷さんの家のお風呂に一緒に入っていた。まぁ、こころとは何度か一緒に弦巻邸のお風呂入った事あるから、別に特別にアレとかはなかったりする。ただ、重りの件があった為、2人で入る時は必ず同時に入るの所をこころの方を先に入れようと一悶着はあったけどね。
「気持ちがいいわぁ……」
「そうですね……」
こころの家のお風呂よりかは、遥かに小さいけど、一般的な家庭のお風呂より大きめのお風呂だったので2人一緒に入る事ができた。ただ二人同時に入ると足を伸ばす事が出来ず、体育座りして入るのが限界だった。ただ、一緒に足を伸ばしたいという要望がこころから出たので、私の上に乗って足を伸ばしてもらっている。
「本当、毎回思うんだけど、こころの髪の毛って綺麗だよね」
優しくこころの髪を研ぎながら私が言うと、こころが面白そうに、それでいて何処か安心さだような顔をこちらに向けてうふふと優しく笑う。
「なんか、みさきにそう言われると凄い、こう、気持ちがポカポカするわ」
その笑みは本当に信頼した人にしか見せないこころの笑みで、それを見た私は少し小恥ずかしくなり、そうですかっと素っ気なく返ししまう。それでも、私はこころの髪の毛を研ぐのをやめず、ゆっくりと丁寧に、玉にならないようにほぐしていく。そして、いつの間にか、たまにシャワーから落ちる水の音、そして、静かに、それでいて楽しそうなこころの鼻歌以外に聞こえなくなる。それこそ、まるでこの空間だけが、時間が遅くなっているような感覚に陥る。それから、突然鼻歌が止まったかと思ったらもう一度こころがこちらを肩越しに見て来る。
「……みさき、抱きついていい?」
「……どうぞ、ご自由に」
研ぐのを辞めると、こころが器用に私の上で反転して私と面を合わせる。それから私がこころの脇の下に手を入れて抱いてあげると同じようにこころもしてくる。密着したお互いの体の心の鼓動を感じ取りながら、私はさっき市ヶ谷さんと話した時に感じた心の奥底で蠢く黒い何かから逃げるかのように安心感を得る。そして、ゆったりとした時間だけが過ぎていくのであった。