仗助に双子の姉がいたらというもしも パート5  第6部へGO!   作:蜜柑ブタ

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どこに入れるのか迷って、5部と6部の間の時間軸なのでココに入れました。




生まれ故郷にある亡き母の墓に婚約報告をしに行くナランチャとミナミ。

でも本当の目的は別にあり……?

という話です。


ナランチャの元友人の名前と、実父の名前をオリジナルで付けています。
(元友人→『ベン』。実父→『ロメオ』)


ざまあ要素を目指して書きました。


ナランチャとミナミのイチャつき描写あり。
後付けみたいなミナミの恋人への甘え方とかがあります。



あと最後の方に、後の娘の花梨の存在を軽く描写しています。

それと少しだけメーラのキャラ崩壊?










それでもOKって方だけどうぞ。







いいですね?







特別番外  『お片付けと、夫婦の門出』(5部と6部の間。オリジナルエピソード)

 

 

 雲が転々とある青空と、程よい風が吹き抜ける。

 

「良い天気で良かったね。」

「ああ。」

 

 ミナミは花束を抱えて舗装されていない道をナランチャと歩いていた。

 やがて薄汚れた塀に囲われていて、最近付け替えられたらしいやや新しい感じの門を開けて霊園に入った。

 

「……………………初めまして。ナランチャのお母様。」

 

 大きくない集落の霊園なので、他の家のお墓とあんまり変わらない可も無く不可もない感じの十字架と慰霊碑には、ナランチャの実母であるメーラの名前が刻まれている。

 メーラが眠る墓にここへ来る途中で購入した花を供え、ミナミがしゃがみ込んで祈りを捧げた。そんなミナミの隣で、ナランチャもしゃがんで目を閉じて祈っていた。

 

 ここは、イタリア。

 そしてナランチャが産まれて、ある程度育った生まれ故郷であった。

 今日はナランチャの実母が眠る故郷へ報告に来たのだ。

 ナランチャがミナミと婚約をしたことについて、早くに亡くなった母へ。

 

「田舎だろ?」

「それ言ったら杜王町だって田舎じゃない?」

「そっちは観光地だしもっと都会だろ。」

「それもそっか。」

 そんな会話をしながら霊園近くに止めていたレンタカーに乗る。

 集落から離れた霊園の道は、分かれ道でそのまま公道にも続いており、ナランチャが運転するレンタカーはそのまま公道に出て故郷から幾分か離れた場所にある宿の駐車場に着いた。

「そのまま行くの? 夕飯は頼んどく?」

「ああ、頼む。」

「何かあったらすぐ連絡するから。」

「分かった。」

「いってらっしゃい。」

 レンタカーから降りる前にミナミが宿での夕食のことと、連絡について話してから降りて、ナランチャはミナミが降りるとすぐに駐車場から車を発進させて来た道を戻っていった。それをミナミが見送り、車が見えなくなってから宿の部屋に入っていった。

 

 ミナミは、ナランチャが生まれ故郷に来た理由については詳しくは聞いていない。あえて聞いていない。

 亡き母への婚約報告はほとんどついでみたいなものだった。そのことには気づいている。

 

 伊達に修羅場の場数は踏んでいない。

 だから触れない方がいいことにズカズカと触らないし、よっぽどことがない限りソッとしておく。

 ナランチャは、現役のギャングだ。ミナミの親族には仗助と承太郎とジョセフを除いてほぼ知らせていない。東方家が一般家庭だというのもあるし、ナランチャが愛する人と結ばれて生きる上での隠れ蓑としての面もある。ギャングなんて裏社会にどっぷりの沼を生業に選んだナランチャは、それが一般社会で受け入れられることではないと理解しつつも足を洗うつもりは欠片もない。ミナミもそれは承知の上でナランチャとの婚約を受け入れた。

 結婚の約束をした2人だったが、結婚という人生の大イベントはすんなりいかないものである。

 今回、メーラの墓参りに来たのも結婚の向けての『片付け』が目的だった。

 ミナミは、『片付け』というぐらいにしか聞いていない。何をするのかは深くは聞いていない。聞かなかった。

 聞かない方が。足を踏み込まない方が良いことがあることがあることを知っているから。

 

 

 

 

 

 

 田舎と言えば田舎だが、必要な物は車などの足さえあれば苦労せずに手に入る程度の田舎の集落は、当然だが娯楽は少ない。

 小さな酒場は地元住民と何らかの理由でこの土地へ一時滞在している人間が酒と道を聞くために来る程度の場所だ。

 そういう場所であるから、当然だがその集落を始め、周辺の情報が集まる場所でもある。

「そう言えば、俺ナランチャを見たぜ?」

「はあ?」

「見間違いじゃないか?」

 集落の若い男達が安酒を飲み、つまみのジャーキーを噛みながらそんな会話をした。

「そいつホントにナランチャか?」

「んー…?」

「ちょっとー、ベン!」

 そこへ酒場で働く地元の女性が怒った顔で若い男達の方へ来た。

「あんたこれで何回目!? いい加減ツケ払ってよね!」

「あ、やべー! 領収を出すの忘れてた!」

「そろそろバレるんじゃないか?」

「だいじょうぶだって! ナランチャは良い奴だからな!」

 ベンと呼ばれた若い男は笑ってそう言い、グビグビと遠慮なく酒を飲んでいた。

「しっかし…、お前も悪い奴だよな~。」

「何が?」

「あれ…、お前の仕業だったんだろ? まさかナランチャのせいにするって…、悪酔いしたお前が言うまで知らなかったぜ?」

「俺らは知ってたぜ?」

「はー?」

「お前だけあの頃いなかったろ?」

 そう話して懐かしいな~と笑っている彼らに、唯一最近まで知らなかった男は絶句した。

「いやー、まさかナランチャがギャングに入ってるなんてなー。おかげで酒代浮くし、ナランチャの名前出したら街で安くしてくれたりでメチャクチャ良い。」

「おいおい…。」

 絶句していた男が僅かに青ざめて、ベンを見て声を漏らした。

 他の男達は、ベンの言葉にそんな裏技あるならもっと早く教えろと言っている。そんな彼らに男は手にしていた酒のジョッキの持ち手が震えた。

 その時だった。

 酒場の扉が開き、仕事仲間の男が入って来た。

 男の姿を見て、遅いぞーっとベン達が声をかけるが、男は俯いていて、開けた扉のところで棒立ちになっていた。

 その様子を訝しんでいると、ふらりと男が前に倒れ、木製の床に顔から倒れてピクピクと僅かに痙攣するだけになった。

 

「昼間酒かよ。」

 

 倒れた男の後ろに隠れる形になっていた人物が、呆れたように言った。

 最初は誰なのか、何が起こっているのか分からなかったベン達だったが、やがて……。

「ならんちゃ……………………?」

 確認するように、ナランチャの過去の濡れ衣を知らなかった男がナランチャの名前を口にした。

「久しぶり。」

 ナランチャは、ニッと明るい印象の笑顔を浮かべた。

 だが次の瞬間、ベンが座っていた椅子を倒しながら足をもつれさせかけながら酒場の裏口へ向かって走って行こうとした。

 酔いも一瞬で冷めたのか、思ったより速い足を止めたのは、ナランチャが投げたナイフだった。

「ひっ!」

「なんだよー。人の顔見て、お化けでも見るような逃げ方しやがって。」

「あ…ぅ…ぁ…。」

 足下に刺さるナイフを前に、ヘナヘナと腰を落とすベン。

 他の者達は、冤罪を知らなかった男を除いて青ざめて固まっていた。

 そんな店内の中で、倒れている男の横を通り過ぎたナランチャが彼らが酒を楽しんでいた席の傍に来た。

「えーと……、15?」

「…………は…?」

「俺への郵便で着払いで届いたツケの枚数?」

「あ…。」

「最初はな、間違いかなって思ったんだわ。もしくは、酔って記憶が飛んだのかって。実際あったし。」

 ナランチャは、果実酒が入ったコップに刺さっていたストローを摘まんで取り、指で器用にクルクルと回しながら足を組んで空いている座りながら言った。

「あとで聞いたら、こういう心当たりのない請求って払ったもん負けなんだってさ。だから俺の負け。けど、いくら馬鹿な俺でも懲りるってこと知ってるし。」

 ナランチャがフーッと疲れたように息を漏らした。

「けど、まあ、昔の生まれ故郷のよしみっての? 俺も色々とそこら辺は痛い目見たし、見る目は養ったつもりだけど。仕事にクレームが入ったら、さすがに俺一人の問題じゃないだろ?」

 なにが言いたいのか分かるよな?っというのをよっぽどの馬鹿で鈍感でもない限り察っせる感じでナランチャが視線だけを彼らに向けた。

「なー、ベン? 聞いてるか?」

 ひとり離れた場所に座り込んだままの、ベンにナランチャが顔を向けて聞いた。

 ベンは、ビクッとあからさまに反応し、ガタガタと震えだした。

 その彼の様子と、他の面々の様子を見て、ナランチャはヤレヤレと肩をすくめた。

「いや別に? 俺はお前らのこと始末しに来たわけじゃないぞ?」

「えっ?」

 冤罪を知らなかった男が驚いて思わず顔を上げた。

 構わずナランチャは言葉を続けた。

「俺のツケじゃないなら払わなきゃいいわけだし、無視するつもりだったんだ。でも、整理はしておけって言われたからこうやって来ただけだ。だからさ、もうヤメロよ?」

 同い年の子供同士が友達のイタズラを止めるようにナランチャはそう言った。

 冤罪を唯一知らなかった元友人は驚いた。

 ギャングの怖さを人伝には知っているが、故郷を捨ててギャングで身を立てている者が昔のよしみで見逃すと言っているのだ。

 これは警告だ。

 それは理解できた。ナランチャに罪を被せたかつて親友であったベンや他の面々が理解できているかは分からないが。

「それだけ。…………じゃ、もうコッチには仕事じゃない限り来ないから。」

 用事が終われば本当に二度と生まれ故郷には帰らないことを告げ、ナランチャはまるで知人より先に家に帰るような気安い感じで店から出て行った。

 ナランチャが去った後、数分程度して、硬直から回復した者達が過呼吸になったり、汗をだらだらかいたり、極度の緊張によるストレスで突っ伏したりしていた。

「ビビったー……。」

 やっと立ち上がったベンが席に戻ってきた。

「マジで…ナランチャだったな……。アイツ見た目あまり変わらないのな…。」

 童顔とか老けにくいのは体質だろうが、最後に見た姿よりも背が伸びてたくましくなったような印象はあったが、基本はあまり変わってない印象だったナランチャの姿のことについてベンが感想を口にした。

「アレならこっちが言えば買い物とか付き合ってくれそうじゃなかったか?」

 そう口にしたベンに、冤罪を知らなかった男は思わず吹き出した。あまりにも怖い物知らずで、身の程知らずで、過去の罪の反省の欠片もないベンの言葉に。

「お、お前…!」

「今度電話してみよーかな? たぶんコッチ来てるって事は近くの宿にいるだろうし、あとで連絡先聞きに行くか。」

「俺らも行って良いか?」

「その方がアイツも懐かしくなって教えてくれるんじゃないか? そうしよう。」

 ベンの言葉に便乗する者達に、冤罪を知らなかった男は、青ざめてワナワナと震えた。

 このままじゃ巻き添えを食う!

 そう感じた男は自分の分の飲み代を置いて、店から飛び出して行った。

 冤罪を知らなかった男が自宅へ走って行く途中で、知らない人間とすれ違ったがそんなことを考える余裕は無かった。自宅に逃げ帰った男は家族に事情を説明し、心配した家族は集落の相談役や近所の知人に話を広め、ベン達に村八分することが決定するが本人達が知るのはだいぶ後のことになる。

 そうなった理由は、酔った勢いに任せてナランチャ相手ならと調子に乗ったベン達が飲酒運転でナランチャがいる宿を探しに行き翌日になっても帰ってこず、季節が巡ってやっと帰ってきた時には家族でさえ見間違えるほど変わり果てていたというほどボロボロな有様だったからだ。

 なお地元警察に行方が分からなくなった彼らの捜索を家族が求めたが、何かと理由を付けて警察は真面目に対応せず、その後間もなく集落内でベン達の家族が村八分されていることに気づきその原因がベンが過去に犯したナランチャへの冤罪と手酷い裏切り行為であることを知り、ベン達を憎悪してある者は集落を離れ、離れられない者達は帰ってきたベン達に因果応報だと何かしら不幸を与えたという結末となるが、それは集落の中での些細な出来事程度に処理され故郷に帰らない決意をしたナランチャの耳に入ることもなかったという。

 

 

 

 

 かつての友人達に警告と共に故郷へ帰るのはこれっきりだと伝えたナランチャは、酒場を離れたあと、集落から車で移動し、1階建てだが歴史を感じさせる様式の建物に来た。

 ここは今も昔も病院として使われている場所で、地元の住民が通院したり、不治の病の患者が入院して最後を迎えるまで過ごす病院のひとつとして数えられていた。しかしこの病院は金が無い人間がホームレスを免れて運良く国の保障を受け取ってたどり着く終着点なんて周辺住民から噂され、口の悪く性根の腐った人間は死にかけ人間を金にする建物なんて言うことがあるとかないとか。

 ナランチャは受付で手続きをしてから、入院患者がいる病室のひとつに来た。

 病室の前の戸にかけられた病室にいる患者のネームプレートには、『ロメオ・ギルガ』と記されていた。

 街中の総合病院のような清潔で美しい内装ではないが、古めかしい汚い色こそ目に付くものの病院は病院なので掃除と消毒が行き届いていて不潔な悪臭はないが、さすがに寝たきりでオムツが外せない患者の近くからは排泄物の匂いが微かにする。

 病室は狭いが看護師による介助は十分できる面積はある。病室のベットには、ひとりの男が寝ていた。

 栄養補助のための点滴をされ、掛け布団の足の方の横から細いチューブが濃い黄色の液体の入ったビニール袋と繋がっている。

 この男こそ、ロメオ・ギルガ。ナランチャの実父である。

「…………久しぶり。」

「……………………な、ら、ンチャ?」

「覚えてたんだ? 親父…。」

 痩せ細ったロメオは病のため実年齢より老けて見える。医療知識には詳しくないが、人の死に多く触れてきたナランチャの目から見ても、実父の余命が短いことは理解できた。

「医者から聞いた。手術しないと来年まで無理だって。」

 ナランチャがそう言うとロメオは目を見開いた。

「知らなかった…。」

 ナランチャのその言葉をロメオは少なくとも都合良く受け取った。病気で最悪になっていた顔色が少し明るくなったのだ。

「ナランチャ…、仕事…してるんだろ…?」

「ん? ああ、まあ…。」

「なら話は早い、金が…いるんだ。」

「手術費用だろ? たいした稼ぎないから貯金も無かったんだろ?」

「あ、ああ…。」

 ばつが悪そうに返事をする彼に、ナランチャは目を細めた。

 少しの間沈黙が流れる。

 するとナランチャはため息を吐き、懐からパンパンに厚みがある封筒を取り出してベットの横にあるテーブルに置いた。

「コレ、好きに使って。」

「い…いいのか?」

「当たり前だろ?」

「……すまない。」

「………………………アンタも謝ることできたんだ。」

 意外だとばかりにナランチャが声を漏らした。

「これっぽっちも俺のことなんて興味も欠片もない人だって思ってたけど。どれぐらいぶり? 俺の名前をちゃんと呼んでくれたの。」

「そ、そうか…?」

「うん。全然記憶ねー。こうやって話をしてるのもどれぐらいぶり? 母さんがまだいたっけ?」

 ナランチャが腕組みして思い出そうと頭を捻る様に、ロメオは気まずくて目を泳がせた。

「ま、いっか。ああ、それと…。親父に伝えなきゃいけないことあって、今日来たんだけどさ。」

「なんだ? どうした?」

「俺……………………、結婚する。」

 ナランチャのその言葉にロメオは大きく目を見開いてナランチャを見た。

「いつ!? いつの間に…!?」

「それと、もうひとつ。俺、もうコッチには来ないから。」

「………………は?」

「親父が死んでも帰らないから。母さんには最後の挨拶したし、最後はアンタにだよ。」

「は…? へ…?」

「手切れ金っての? 手術の金と入院費包んどいたから。じゃあ、俺、帰る。嫁(予定)待たせてるから。」

「ぉ…あ…、な…、なっ、ナランチャ! ま、ま、待ってくれ!」

 病気で痩せ衰えた身体を無視して勢いで起き上がったロメオは、病室から出て行こうとするナランチャの背中に向けて手を伸ばすが届かない。

 その伸ばした手と口からは、ナランチャにその後の生活の援助を求めたい意志がこもっていた。学がなく肉体労働で生計を立てていた彼には、国からの微々たる保障以上の生活費がない。手術をしても通院と経過観察の診察費用と薬代など諸々、とにかく金が無かった。

 それまで実の息子が冤罪で逮捕されても、檻の中にいても、釈放されてから浮浪者生活を経てギャングに入ってからも一切目を向けずにずっと放置してきた男が、今その息子にたいして、地獄に垂らされたクモの糸に縋るように手を必死に伸ばそうとしている。

 だが……。

「……………………バイバイ。親父。」

 寂しさと、身内への思い入れを断ち切る意志がこもった息子のその最後の言葉を耳に残し、息子に絶縁された現実を受け入れられず病室から出ていった息子に見苦しく縋ろうとして自分自身がベットから落ちて床に激突する衝撃と、息子が一度も振り返ることなく後ろ手で病室の戸が閉まる音を聞いた。

 その後巡回に来た看護士が床に上体を打ち付けて呻くロメオ見つけ、すぐに医者が呼ばれて身体の状態を調べられたり何があったのか聞こうとしたが、壊れたように顔から出る液体を流しながら絶望による呻き声ばかりを上げる彼の様子について勤続期間長いベテラン看護士が自身の経験から彼が頼れる肉親に切り捨てられた(絶縁された)のだろうと推測し、そしてテーブルにまとまった大金があったことと病院から出る前に彼の息子であるナランチャが実の親である彼の手術費用と、退院までの入院費用などを置いてきたという伝えていたことが分かり、切り捨てられたのは間違いないと判断された。末期の患者が余生を過ごす病棟があるこの病院でこういうことは決して少なくなかったから職員達の対応は早かった。

 そしてナランチャが最後の親孝行として残した金によって手術費用と術後の治療費が払われ、退院までの入院もそれで払われたが、ほんの少しだけ残った。

 すっかり希望も平穏も無くなり、もっと老け込んでしまったナランチャの実父は退院後、人の管理がなくホコリを被って寂れ始めていた自宅に帰された。

 その後は引き籠もり、食料の買い出しにも出てこないでいたので、まさか孤独死をしているのでは?と近所の人間達が心配していた時、清潔な介助員としての動きやすい格好をした人間達が介助用の設備を備えたワゴン車でやってきて、折りたたまれた車椅子を運びながら家に入っていき、少しして車椅子に乗せたロメオを連れてきて車に乗せた。

 何事かと集まってきた近所の人間達に、介助員達と共にいたスーツの男が広告チラシを彼らに配り、自分達が最近起業した介護事業の会社と施設の運営をしていることを営業スマイルで説明した。分かりやすく引き込まれる営業トークにより、彼らがロメオを自分達の施設に入所させるために来たのだと集落の人間達は信じた。

 ロメオに一人息子のナランチャがいたことを集落の人間達は知っている。最近まで姿を消し、音沙汰なかったが、街に行った者がナランチャらしき人間を見たということと、彼がギャングに所属しているという噂があった。

 ギャングは、時に政治にさえ関与するほどの強大な裏社会の力だ。それは田舎でも周知の知であり、ギャングによっては組織の教えで義理人情を重んじる者達もいる。だから彼らからの後ろ盾は警察以上の力だ。

 ロメオは息子のナランチャをネグレクトしていた。だがそれでも親子なのだから。そんな家族愛の理想を抱く者達は、きっとナランチャが介護施設に父親が入れるように手配したのだろう考えた。

 こうしてロメオは、介助車に乗せられて集落を離れた。

 ロメオが家庭を顧みない仕事人だったが、最後には息子のおかげで衣食住が保障された施設に入れてよかったと、集落の人間達は勝手に喜んだ。

 それから間もなく、ナランチャが故郷に帰ってきた別件の話が広まり、ナランチャの元友人達による過去に犯したナランチャへの仕打ちのことと、もしナランチャの怒りを買えば遠慮無く始末をつけるという警告をナランチャがしたことが集落の住民達に知れ渡り、元友人達とその家族への村八分が始まってしまった。

 ロメオが施設に行ったことについては、村八分で忙しない事態になったこともあり、住民達の記憶から忘れられていった。

 

 

 翌年、掃除をしていて引き出しから出てきた、あの時の介護事業の会社の広告チラシを見つけ、老年で、なおかつ認知症などの介助が必要な家族がいる家では家族の介護では限界を感じており、施設に入所させることを考え始めていたため、広告に記された入所費用などを見て、まず電話してみようと電話をかけたが、『現在は使われていない番号です』という自動電話音声が受話器から聞こえた。

 

 ロメオ・ギルガの行方を、誰も知らない。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 ナランチャは、ギャングになった自分を利用しようとしていた元友人達への警告と、実の父親への絶縁を済ませ、再びレンタカーで道路を走りミナミがいる宿へ帰った。

 宿の夕食の時間は過ぎてしまった。さっさと終わらせるはずが、思ったより生まれ故郷と決別するための片付けが多くて時間がかかってしまった。

 宿の経営者である老夫婦がナランチャが借りた部屋に行く途中で、ミナミが連れの分の夕食を弁当みたいにして部屋で食べれるようにしてもらえるかと頼んできたから頼み通りにしてお部屋で待ってますよと伝えてきた。

 ぼろいけど部屋の壁は厚いから安心してお楽しみなよ、と、老夫婦の妻の方がにやけ顔で言い、更にはゴム欲しかったらサイズも取り揃えてるよ?と言っていてナランチャは苦笑した。

 ナランチャが宿の部屋の鍵(ミナミも持ってる)を開け、中に入った。

 狭すぎないが広くはない宿の部屋には、ベットの横にテーブルと内線電話と、ユニットバス、小さな冷蔵庫とゴミ箱ぐらいしかない。

 二つあるベットのひとつの掛け布団が膨らんでおり、寝返りを打ったのかモゾモゾと動いて、その際に布団の隙間から滑らかな健康的な肌色で程良い筋肉のついた、しなやかで綺麗な素足が出た。

 ミナミは女だが父親の遺伝なのか筋肉が付きやすく骨も太い方だ。羞恥心が薄く、異性への意識も薄かったこともありそれまで美容とかファッションとか女らしさというものへの興味が薄かった。初恋はともかく、ナランチャと恋人になってからというもの初めて自分が女らしくないのでは?と意識するようになり、細身のモデルや儚さを感じさせたりとか守ってあげたくなるようなタイプではまったく違うことを自覚し、胸と尻はデカいと周りに評されるが、抱き心地悪いし外見も厳ついのではないかと悩んでいた。何が言いたいかと言うと、ミナミは自分がナランチャの彼女としてふさわしい女かもしれないのでは?と不安になり、お付き合い期間も婚約したときもその心配と不安を口にしているぐらいだ。

 だがナランチャはミナミが好きだ。大好きだ。愛していた。

 骨太で筋肉質? それがどうした? 変にブヨブヨに柔らかかったり、すぐ折れそうなひ弱と違って女性の力強い生命力を感じさせる弾力のある抱き心地と、地元で喧嘩最強だった腕っ節に苦しくないよう気遣われながら抱きしめて貰えると自分を大切にしてくれていると分かってものすごく嬉しい!

 一番好きなのはミナミの綺麗な綺麗な青い瞳だ。どんな宝石も自然界の美しい青い色より綺麗だとナランチャは思っている。双子の弟の仗助も同じ目の色で、そして姉弟のこの目の色が、顔以外の容姿も父親であるジョセフ・ジョースターの遺伝であることを知ったのは婚約の挨拶に行った時だった。

 ……………………挨拶に行った時のことは、正直チビるかと思ったほど怖かった。実の父親のジョセフはもちろんだが、不倫でできた娘とはいえ、正妻や他の親族からも受け入れられた大切な親族なのだ。ナランチャがギャングであることも一部を除いてすでに知られているので、そのことを含めてあれこれ聞かれたりしたが、最終的には、ミナミを不幸にして泣かすようなことをしたら殺す、あらゆる手段を使って社会的にも物理的にも殺すと言われ、誓約書も書かされた。もちろんナランチャは、恐怖を乗り越えて絶対にミナミを裏切らないことと生涯愛することを強く誓った。

 なおその後に、シーザーからも似たような状況になりなぜかジョセフを超える殺意と威圧と共に、ナランチャの隣にいるミナミに、ナランチャが不貞を働いたら即俺を頼れ、世界の果てだろうと追い詰めて罰を与えて後悔させるという本気の言葉などを聞かされ、ナランチャは、真に恐れるべきは実父のジョセフよりも、シーザーとミナミの弟の仗助だと理解したのだった。東方家で唯一ナランチャの本職を知っている仗助だ。そして仗助は家族愛が強い。大事な姉の婚約者になったナランチャへの睨みはすごい。けれど本心では姉の婚約を祝福したいのは分かっているので、大事な姉を取られたという嫉妬によるふて腐れで態度が悪くなっているだけなのだ。ナランチャはそれが分かってるから将来の義弟になる仗助に遠慮なく仲良くなりたいと意思表示して積極的にコミュニケーションを持ちかけて、歳も近いし打ち解けるまでそんなに時間はかからなかった。それでも姉を不幸にしたら無機物と融合させるからと睨まれてはいるが。

 承太郎は、割と放任だが、叔母のミナミ(※承太郎は東方姉弟の異母姉の息子であるため、家系図で見ると歳の離れた甥っ子)を不幸にするマネはするなと釘は刺された。それ以外の知人達からもミナミを不幸にしたら許さないぞと言われた。

 

「………………………おかえりー……。」

 

 寝ぼけたミナミの声が聞こえ、ナランチャはハッと我に返った。

「た、ただいま!」

「おなかすいてるー? 夕飯包んでもらって冷蔵庫入れてるよ~…。」

「ありがとな。」

「先に…シャワー…?」

「そーする。」

 寝ぼけながらも気を遣ってくれるミナミにクスッと笑ったナランチャは、ポンポンと布団で隠れているミナミの頭に手を置いてからユニットバスに行きシャワーを浴びてきた。

 上半身裸で頭をタオルでガシガシと拭きながらバスルームから出ると、いつの間にか起きていたミナミが冷蔵庫からラップを被せられた料理の乗った皿をテーブルに置いて、更に飲み物を出そうとゴソゴソとしていた。

 ちなみに今のミナミは下着だけの身体にバスローブを着ただけの格好なうえに、小さい冷蔵庫の前で四つん這いみたいな状態で尻を突き出す格好は……。

 まあ、これは付き合って、それから身内からの証言で分かったことだがミナミは寝るときは肌を多く出す。素っ裸とまではいかないが冬であろうと関係なく寝るときは肌を晒す。ミナミの母親と祖父も弟も口酸っぱく年頃の娘に注意していたそうだが、意識してパジャマを着衣して寝ていても朝起きるといつの間にか肌を出しているのだとか。なのでもう直らないと諦めているとか。しかし最近では寝ているときに起きなければならないと寝ぼけながらもバスローブとかで肌を隠してから人前に出るようにはなった。ちゃんと着れてないことは多いが。

「ならんちゃ~…、ジュ~ス~? 炭酸? ……水ぅ?」

「あー、無理に起きなくてもよかったのに。眠いなら寝てろよ。」

「や~だ~。」

 上からナランチャが手を伸ばし、ミナミが手に取った炭酸水のペットボトルを奪い、ポヤポヤな駄々コネするミナミにナランチャは顔をほころばせた。

 ミナミの家は父親がおらず、祖父は警察官、母親は教師として働いていて、育て親であるその二人がいないことも多かった家庭であった。俗に言う鍵っ子というやつであるが、幼い頃から双子の仗助と共に、あるいは一人での留守番は普通にあった。だから一生懸命働いている家族のために家事などの手伝いや、気遣うことを自然と覚えた。今だってこうしてナランチャのために尽くそうとしていて、良い方をすれば自立している良い子であったがそれゆえに甘えるという当たり前なことを無意識に遠慮もしていた。ミナミは赤ん坊の頃からそういうところがあり、手がかからないよう無理をするのが普通のことだったという奇妙な部分があった。

 本質は怖がりなくせに奇妙なほど強がりで意地を張り、限界まで耐えようとする。怖がりなのに大切な人の為に自分のことを犠牲にしようともする。

 文通から距離を縮め、恋人になって、婚約して、恋人(夫)特権というやつか、身内も知らなかったミナミの側面が分かった。

 酒が入ったり寝ぼけるなど無意識が強いと子供みたいに駄々コネるのだ。ただし酷いものではなく、寝ぼけているのでポヤポヤしていて、駄々コネの際のワガママも普段からもっとそうすればいいのにと思わせるような可愛い範囲だ。例えば一緒にいたいとか、抱きしめてとか、……チューしたいとか。

 成人して初めて酒で酔ったその日に甘え上戸かつキス魔を発揮して、寝室に運んだナランチャが捕まりマウント取られて服も脱がされて全身キスマークだらけにされたが一線は越えないよう頑張ったナランチャは偉い!っと、ミナミの祖父や母親や後にブチャラティとかに褒められた。ちなみにこの一件以降ミナミは飲酒を禁止された。それでもアルコール成分が強く残っているお菓子や料理をうっかり食べて初めての飲酒ほどじゃないが人肌恋しいとばかりにナランチャの寝床に潜り込んで来ることはあった。しかも全裸で。幸いなことと言って良いのか、酔っ払った時に寝床に潜り込み事件はナランチャ限定で起こる。

 ミナミが初恋であったナランチャは恋の悩みを仲間に相談したことは一度や二度じゃない。ナランチャよりは女性の扱いを知っているミスタや頭脳派フーゴ、ブチャラティ、あと女性目線でトリッシュが一緒に考えて、ナランチャ限定のそのミナミの行動は酒や眠気で緩んだ理性によって暴かれた愛する恋人への素直な気持ちの表れじゃないかという答えが出た。

 その結論を聞いて、ナランチャは1分ほど思考停止の間を置いて声を掛けられて正気に戻り結論を頭で理解して色々と噴火して真っ赤になって鼻血を吹いて倒れた。余談だが鼻血が止まらなくて緊急搬送されて輸血の血をジョルノが作ってやり、仲が良いのは良いことですが無駄な仕事を増やさないでくださいとジョルノからのお叱りを受けたのだった。

「んふふ~。」

「どうかしたか?」

「んーん、ただ今考えると今回のことって久しぶりのお出かけだなって思って。二人きりの。」

「お! そ、そうだな!」

「どしたの? 急に恥ずかしくなった?」

 眠気が無くなったミナミがニヤーっと笑って顔を赤くするナランチャを見る。

「ナランチャ。」

 食事を終えて寝る態勢に入ろうとした時。

「一緒に寝よ。」

「お…、おうっ。」

 ミナミに手を引かれてナランチャはミナミが使ってる方のベットに導かれた。

「シングルベットだといつも思う。」

「なに?」

「ナランチャが線が細くてちょうど良かったって。」

「……俺泣いていい?」

「悪口じゃないよ。ベット狭くても窮屈しなくていいなって思っただけ。私が…デカいから。」

「ジョースターの遺伝子マジでスゲーよな…。」

「ホリィ姉さんはそうでもないんだけどね…。」

 成長期の終わりは人それぞれ個人差があるが、25歳まで伸びる場合もある。どうやらミナミはその少ない例だったらしい。さすがに今年になってからは身長の伸びは止まったようだが。

「……ナランチャ。」

「なに?」

「………結婚相手、本当に私で良かったの?」

「しつこいなー。」

「ごめん……。」

「俺ってそんな不安要素ありまくり?」

「そういうことじゃないんだけど…、私よりもっと良い人いるんじゃないかって思うと…。」

「俺はミナミがいい。ミナミじゃないとヤダ。」

「……結婚しても、たぶんずっと聞くと思うよ?」

「じゃあ、何回でも答える。」

「………ナランチャ。私はね……。」

「うん。」

「自分を幸せにしてもらうより、自分が相手を幸せにしてあげたいって思ってる。そうしないと誰もいなくなっちゃうんじゃないかって怖い。……改めて聞くよ。こんな怖がりな私でイイですか?」

「もちろん!」

「……………………ナランチャ。」

「ん?」

「……………………好き。……………愛してる。」

「俺も!!」

 涙ぐんで俯き、弱々しい声で気持ちを伝えてくるので、辛抱たまらないとばかりにナランチャはミナミを力一杯抱きしめてた。

 

 生まれ故郷との決別という片付けを終えたナランチャは、宣言通りこれ以降故郷へ足を踏み入れることはなかった。

 結婚式をしても、子供が授かり生まれてからも。

 なのでナランチャの耳に、元友人達と実父のこととその結末が伝わることもなかった。

 父からの無関心と信じていた友に裏切られたこともあり、交友関係に敏感なところがあるナランチャが少しも彼らの情報を知ることが無かった裏には、ナランチャをギャングに関わらせるきっかけを作った仲間のひとりが影で動いていたことに原因があったが、上司であるジョルノとブチャラティは気づいていたもののナランチャの過去の交友関係を知っているので組織に迷惑がかからなければ問題なしと黙認したとか。

 

 後年、その仲間であるフーゴが自分の携帯に送信された架空の介護業者のメールを確認し、やっとすべての『片付け』が終わったとメールを削除してポケットに携帯にしまい、テーブルに置いていたナランチャから送られたナランチャの家族写真を眺めて微笑んだ。

 ナランチャの娘が写った新しい写真は、フーゴの手で丁寧に綺麗にアルバムに収められた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 超絶な余談であるが、後に生まれる二人の娘がある年の両親の結婚記念日にナランチャの実母であるメーラの霊魂を連れてきてしまい騒ぎになったが、落ち着いてから死後のメーラが会話したくてもできなくて積もり積もったものを発散するように息子と息子嫁との会話をたっぷりしてスッキリして天国に帰ったという一件が起こるのであった。

 メーラからメチャクチャ散々というぐらい良いお嫁さん扱いされ褒められ可愛い息子嫁として自分の義理の娘になってくれたことを感謝されて、メーラが帰った後のミナミは恥ずかしくて夫のナランチャの顔をまともに見れず若い頃に戻ったような初々しい夫婦仲が展開されたとか?

 

 

 

 

 




ナランチャが実父と元友人達への引導を渡してはいません。あくまで絶縁と故郷に二度と帰らないことを伝えて彼なりに過去へのケジメをつけて結婚に向けた身辺の片付けをしました。
そんなナランチャのことを気遣ってフーゴが裏で行動し、懲りてない元友人達(一人除く)と、実父を……という感じです。


ミナミの恋人への甘え方などは後付けです。
酔っ払って甘え上戸かつキス魔も。ナランチャは犠牲に……。(※その時点ではまだ一線は越えてない)
父親がいない、育て親達がみんな働いていて家を空ける家庭で育ったので早く自立する力は身についているけど気を遣ってベタベタに甘えるというやり方を知らない。
自分が相手から尽くしてもらって幸せになりたいといより、自分が相手に尽くして幸せにしてあげたい、そうしないといけないと脅迫概念みたいに感じている。
怖がりだから不安になってしつこく本当に自分で良かったのかと聞いてしまう。
肉親以外への恋と愛を育んで、愛する人限定で酒の力とか寝ぼけなどの理性が緩むと肉親にさえ見せなかった甘えたいが故のワガママをするようになった。

あと、ミナミはジョセフの遺伝子が相当に強いので、4部と6部の間で10センチ以上は背が伸びたということにしました。さすがにジョースター男性陣ほどじゃないけど。

最後の方で幽霊のメーラを花梨が連れてきてナランチャ達に会わせてみました。
早くに亡くなったのもあり、天国から息子の様子を見守ってたからもしできることなら話をしたかったというのが花梨によって叶い言いたかったことや話をしたかった欲求を満たして天国へ帰った。
もしかしたらお盆とかにたまに来るかも?

ミナミとナランチャの子供の名前候補(活動報告でも募集中)

  • 乗上(ノア)
  • ローゼ
  • 花梨(カリン)
  • マールナ
  • ノワ
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