ようこそ藍越学園へ   作:TAKUMAKI?

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第十話 体育の時間 男子編

今朝の彼は登校時にシャルロットと腕を組んで歩いているのを箒に見られて彼女から執拗な弾劾を受け、最後には竹刀を振り回して追いかけまわされたおかげで疲れていた。何で箒があんなにも怒っていたのかは一夏は相変わらずわかってはいないが疲れているには事実なのだ。それでいて一限目から体育なのだから煩わしいと思っても仕方がない事であろう。

 

「何だよ一夏、体育はじめる前から疲れた顔して」

 

「まるで人生に疲れたサラリーマンのように哀愁が漂ってるぞ」

 

話しかけてきたのは弾と数馬であった。いつものように軽い感じで話しかけてくる。

 

「実際に疲れてるんだよ」

 

「それって朝から篠ノ之がめっちゃ機嫌悪そうにしてたのと関係があるのか?」

 

「傍から見てるだけで機嫌悪そうだったしな。さっき鈴が必死で宥めてたぞ」

 

「まぁ、あるの、かなぁ・・・」

 

一夏は今朝の出来事を説明した。今朝シャルロットと一緒に登校してたらいきなり腕を組まれてそれを箒に見られたら箒が怒り出して竹刀で追い掛け回されたと。

 

「なるほどねぇ」

 

「そういう訳か」

 

「ん?箒が怒ってる理由がわかったのか?」

 

「「まぁな」」

 

弾と数馬の言葉がユニゾンした。

 

「理由はなんなんだ?」

 

「いいや、それは俺達の口からは言えんな」

 

「自分で考えてくれ」

 

弾と数馬は教えてはくれなかった。

 

「ん~」

 

一夏も腕を組んで考えるが思い当たる節はなさそうだった。

 

「「篠ノ之も不憫だなぁ~」」

 

そう思わずにはいられない弾と数馬だった。

 

 

 

 

今日の体育は男子はハンドボールをやることになった。

体育は二組が合同で行うのでこの時間は1組と2組の合同で行っているので一組2チームを作って自分とは違う組の片方のチームと対戦だ。試合時間は1試合20分で行われる。これを2試合行う予定。

 

 

「よーし、じゃあ男子は適当にチーム分けして試合をはじめろー」

 

体育教師が号令をかけるとともに適当にチームを作る。一夏、弾、数馬も同じチームに入っている。代表者のジャンケンの結果、第1試合は一夏達のチームが出ることになった。

 

「ふっふっふ、この『藍越の白い弾丸』と呼ばれたこの俺の実力を見せてくれるわ!」

 

「誰も呼んでねぇよ。それにこの前は『赤い弾丸』だっただろ。普通の3倍のスピードで玉を外したあの時の」

 

「ふんっ、一夏。あのころの俺と同じだと思うなよ。俺は生まれ変わったんだぜ」

 

「はいはいそうかよ」

 

「信じてないなぁ?よし、見てろよ!華麗にシュートを決めてやるぜ!」

 

「おー、頑張ってなー」

 

張り切る弾に疲れているの適当にやるつもりの一夏。かなりの温度差が2人にはあった。

 

「ふっふっふっ、女子も見ている事だしここで大活躍して女子の視線を独り占めしてやるぜ。ふっふっふっ。」

 

下心丸出しの呟きを漏らす弾。

 

「お前がそんなに活躍するわけないだろ。見当違いな妄想はほどほどにしとけ」

 

数馬がツッコミを入れる。彼も弾がそこまで活躍できる訳がないと思っているのだ。

 

「数馬、お前にも生まれ変わった俺の姿を見せてやるぜ!そして試合が終わった頃には俺はこの学園一のモテ男に!」

 

「おーい一夏、アホが壊れたぞ」

 

「アホって言うな!」

 

「元からだろ」

 

「否定しろよ!」

 

わいのわいのと3人が馬鹿話をしていると試合が始まった。

一夏はやる気があまりないのでディフェンスに回って敵が攻めてきたら相手をするといった感じだ。

数馬は中盤で動き回っていて積極的にボールを追っている。

弾も執拗にボールを追ってはいるもののなかなかボールをキープできずにいた。味方がボールを取ると「パスパスッ!」と言ってボールを要求するがパスが通らなかったり、すぐさま敵に奪われてしまったりと散々である。

数馬なんかは弾の要求をガン無視して別の奴にパスを出したりしてるくらいだ。

弾のヒーローへの道は険しいようだ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

アイキャッチしりとり

 

数馬「いいからあいつ無視しようぜ」

 

 

 

弾「絶対にヒーローになってやるから!!」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

あっと言う間に残り時間は1分。

点数は12対12で接戦であった。

ちなみに弾はまだ一度もボールに触っていない。

ヒーローどころか空気だった。

いや、動き回ってゼェゼェ息を吐いているのでこういう場合は無駄に二酸化炭素を撒き散らす害悪かもしれない。

 

「数馬パス!」

 

相手チームからボールを奪った一夏が数馬にボールをパスする。

 

「任せろ!」

 

ディフェンスの薄くなっていた左サイドからドリブルで切り込んでいく数馬。相手もこれに対応しきれずに数馬を自陣地の深いところまで行くのを許してしまう。

しかしゴール前には1人ディフェンスが残っていてこのままシュートに持ち込めそうにはなかった。

するとディフェンス1人が数馬の方に向かってきてゴール前にずっと張付いていた弾ががら空きになった。

 

「弾!」

 

数馬は初めて弾にパスを出した。相手のディフェンスとキーパーが驚いた顔をしている。弾はほぼ空気扱いだったので相手チームも気付いていなかったらしい。憐れなやつだ。

 

「遂にこの俺の出番が来たな!」

 

ボールを受け止めて相手キーパーと対峙する弾。

 

「残り時間はあと僅か。点数は同点。ゴール前でノーマーク。舞台は整った」

 

いちいち格好付けようとする弾。正直見ててウザイ。

 

「さぁ!この俺の華麗なシュートを受けてみろ!」

 

助走を付けて弾は跳躍した。

ジャンプシュートの体勢に入る。

 

「うおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

そして力の限り腕を振り下ろしてシュートした。

 

 

そしてボールはまるでそこに行く意思を見せるように飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1m以上離れたゴールの外に・・・。

 

 

(ピーッ)

「試合終了~。じゃぁ、別チームの試合するから準備しろー」

 

体育教師が笛を吹いて試合終了を告げ、試合をしていた2チームはコートの外へ出て次のチームにコートを明け渡す。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

弾はゴール前で固まっていた。

 

「「なぁ弾」」

 

一夏と数馬が声をかけると弾は首だけ動かして2人を見る。その顔は引きつった笑顔を浮かべていた。

 

「「お前、超ダセェ!!!!」」

 

「ぢぎじょーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」

 

一瞬でブワッと顔を泣き顔に変えた弾はそのまま何処かに走っていってしまった。

彼はヒーローどころか笑い者だった。

 

「「やっぱあいつって、ノーコンだな」」

 

一夏と数馬は揃ってそんなことを口にしていた。

 

そして弾はしばらく間戻ってこなかったとさ。

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