ようこそ藍越学園へ   作:TAKUMAKI?

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第二十四話 2人のデートと2人の追跡者

仲良く手を繋いで駅前を歩く一夏とシャルロット。

駅前には多種多様な店がずらりと並んでおり、GWということもあり若干であるが開店を早める店があるので10時前というこの時間でも開いている店は少しはある。

 

「さて、映画は14時からだからまだ時間たっぷりあるし、どこから回るか?」

 

「う、うん。一夏はどこか行きたいところとかない?」

 

「そうだなぁ。一応下調べはしてきたけどこの時間じゃまだ開いてない店もあるだろうから、まずは適当にぶらついてみるか?」

 

「そうだね。じゃあ行こうか」

 

「おう」

 

まずはアテもなくぶらつく事になり2人は手を繋いだまま駅前をゆっくりと歩いていく。

 

 

 

「むむむ、なんだかいい雰囲気だな・・・」

 

追跡者の片割れである少女が物陰から顔を出しポニーテールを揺らして一夏とシャルロットの背中を見つめる。

言わずもがな、篠ノ之箒である。

 

「そうみたいねぇ」

 

気だるそうに箒の後ろからツインテールの小柄な少女が顔を出す。

言わずもがな、凰鈴音だ。

 

「何がどうしてこういうことになってしまったのやら」

 

深々と鈴はため息をひとつ。

そうして横を見れば真剣な表情で一夏とシャルロットが歩いていった方を見つめる親友の少女。

 

「ね、箒」

 

「なんだ、鈴」

 

「・・・ん~ん、なんでもなーい」

 

もう一度ため息をひとつ。

 

「今日も良い天気ねぇ」

 

見上げれば快晴の空。

現実逃避にはうってつけ?の空模様だった。

 

 

何故箒と鈴が一夏とシャルロットのデートを尾行しているかと言うと、この2人は今日は買い物に行こうという約束をしていたのだ。

本当はシャルロットも誘って女子3人でGW最終日ということもあり夏服でも見に行こうと計画していたのだがシャルロットには「明日はちょっと用があるから」と言って断られたので仕方なくシャルロット抜きで行こうということになったのだが、一夏とシャルロットが2人で仲良く手を繋いで歩いているのを箒が発見。今日の予定はすべてキャンセルして尾行することになったのだ。鈴は反対したのだが箒に半ば強引に引っ張られてきたというわけだ。

 

「とにかく気付かれないように後を追うぞ」

 

「ラジャー・・・。夏服、見たかったのになぁ・・・」

 

買い物に未練たらたらの鈴は仕方なく箒に従って尾行に参加するのであった。

 

 

「ん~?」

 

一夏とシャルロットはある店を覗いていた。

覗いている店はどうやら雑貨屋のようだ。

 

「小学校の頃に図工でこんなの作ってる奴がいたような・・・」

 

一夏がそう言って手にしたのは木彫りの像だった。

何やら動物のようだが何の動物かはわからない。

よく見ると顔はキリンで角はシカ、足がウシで尾はトラと名称もわからない動物だった。

 

「木彫りでこの完成度・・・」

 

「ねぇ一夏、ちょっとこっち来て」

 

シャルロットが手招きして一夏を呼ぶ。

一夏は木彫りの像を元の位置に置いてシャルロットの方へ向かう。

 

「ほら、見てこれ」

 

そう言ってシャルロットが指差したのはぬいぐるみだった。ぬいぐるみなのだが・・・

 

「デカイな」

 

「うん、大きいねぇ」

 

そのぬいぐるみはとにかくデカかった。

高校生の平均身長を上回る一夏の身長よりも高く、横幅も一般家庭の冷蔵庫並にある。

 

「これって何のぬいぐるみだ?」

 

「さぁ?」

 

世間一般の可愛いから逸脱した変なぬいぐるみがそこにはあった。

そのぬいぐるみは何やら熊っぽいのだが目と目の間が妙に近くて鼻が異常にデカい。口も大きく開いていて欠伸でもしてるかのようにだらしなく開いていた。

胴体の腹の部分にハート型のワッペンが縫い付けてあった。

それはもう何だかわからない何かとしか言いようがないぬいぐるみだった。

 

(何かデートで来るような店じゃないよな此処。まだ時間が早いから適当に開いてる店に入ったけど失敗だったかな・・・)

 

2人が入った雑貨屋は変なアンティークがこれでもかと陳列された店だった。

一夏は内心この店に入った事を後悔していた。

こんな可笑しな物ばかりが並んでいる店では雰囲気もあったもんじゃない。

しかし

 

「あはははっ!一夏、このぬいぐるみすっごく可笑しな顔してるよ!」

 

シャルロットは可笑しそうに笑っていた。

 

「ほら、こっちには妙な形の像があるよ!」

 

「見て見てこれ。花瓶みたいだけど本当はティーカップらしいよ」

 

「あ、あっちには変な絵があるよ。ちょっと見に行こうよ」

 

一夏の手をぐいぐい引っ張ってシャルロットは店の奥へと進んでいく。

どうやらシャルロットはこのお店を自分なりに楽しむ事にしたようで、目に付いた物を可笑しそうに見たり触ったりしている。

 

(何か店選び失敗したっぽいけどシャルが楽しんでるみたいだし、いっか)

 

一夏もあれこれ考えることは止めにして楽しむ事にした。

気付けばシャルロットと一緒に店に並べられた風変わりな商品を見ながらシャルロットと一緒に笑っていたのだった。

 

 

一方、追跡コンビは

 

「う~む、デートにしては店のチョイスが悪いのでは・・・」

 

「あのさぁ、もう夏服見に行かない?」

 

「いやまだだ!ここは追跡ののち、2人の関係がどのような状態なのかを見極めるまでは行かんぞ!」

 

「そう。はぁ~・・・」

 

追跡はまだ続くようである。

 

 

「悪いな、何か変な店入っちまって」

 

「ううん。結構面白かったよ」

 

10時を少し回ったところで一夏とシャルロットは雑貨屋を出た。

 

「もうそろそろどの店も開店してる頃だろう。シャルはどこか行きたい店とかあるか?」

 

「特に決めてはいないかな?こうやって適当にぶらつくのも結構楽しいよ」

 

「そうか。じゃあまた適当にぶらつくか」

 

「うん」

 

まだ若干ギクシャクはしていたものの、2人は自然と手を握り合う。

そしてまたアテもなく歩き出した。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

アイキャッチしりとり

 

一夏&シャル「仲良く手を繋ごう♪」

 

 

 

箒&鈴「鬱陶しい奴らだ・・・」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

その後の2人は本当にアテもなく適当に駅前をぶらついていたのだった。

 

例えば、ぶらりと駅前の通りの一角にあるアロマショップに入ってみたり

 

「こういう店は男は入りづらいんだけど・・・」

 

「今は男性用のアロマグッズもあるから大丈夫だよ」

 

一夏はちょっと入るのを渋ったがシャルロットに促されて観念して入る事にしたのだった。

店内に入ってからはアロマテラピーに関するちょっとした雑学を教わりながら店内を物色する。

 

「そういえば、『アロマテラピー』の発祥地ってフランスなんだよな?」

 

「うん。20世紀初頭に南フランスのプロヴァンス地方で香料の研究者が提唱したのがはじまりなんだよ。その後は美容方面に活用できる技術として研究されてイギリスに伝わっていったんだ。現在のアロマテラピーには大きく分けてフランス系とイギリス系の二つの流れがあって、フランス系のアロマテラピーは医師の指導のもと精油を内服するとか医療分野で活用されているんだ。イギリス系のアロマテラピーはアロマセラピストと呼ばれる専門家によって施されて、心身のリラックスやスキンケアに活用されているんだよ」

 

「アロマテラピーって聞くと美容のイメージがあったけどフランスでは医療で使われるのか」

 

「日本にはイギリスから伝わっていったから美容イメージが強いんだと思うよ。といってもフランスでも100%医療で使われてるわけでもないから美容のためにアロマテラピーをするフランス人もいるんだよ」

 

「へぇ~」

 

こういったものにさほど興味がない一夏だがシャルロットの説明は聞いていてなかなか面白いと感じていた。シャルロットが説明をしながら2人は店内を色々と見て回ったのであった。

 

 

例えば、ぶらりとレゾナンスの一角にあるメガネショップに入ってみたり

 

「どうかな?」

 

「おお、似合うなぁ」

 

シャルロットはシンプルなデザインの赤縁のメガネをかけてみせた。

 

「なんか一気に大人っぽく見えるな」

 

「メガネかけただけで?」

 

「ああ、それかけてスーツ着てたら立派なキャリアウーマンに見えると思うぞ」

 

「そうなんだ。じゃあ、一夏はこれをかけてみて」

 

「お、おう」

 

一夏はシャルロットに渡された銀縁のメガネをかける。

 

「兄弟だからかな。ちょっと百春さんに似てるね」

 

「そうかぁ?俺は百春兄ほど目つき悪くないと思うぞ?」

 

「あはははっ・・・。目つきじゃなくて雰囲気っていうのかな?うまく説明できなけどなんか似てると思うよ」

 

「ふ~ん、まあいいや。よし、シャル。次はこれかけてみてくれ」

 

一夏が手にしたのはサングラスだった。

 

「それってサングラスだよね?僕に似合うかな?」

 

「いいからかけてみてくれって」

 

「うん」

 

シャルロットは渡されたサングラスをかけた。

 

「一夏、どう?」

 

「Une jeune dame, les lunettes de soleil sont bien convenables(よくお似合いですよ、お嬢さん)」

 

「あ・・・、C'est agreable (それはどうも)」

 

ユーモアを交えてフランス語でやりとりする2人。

その後も2人は色々なメガネをかけて遊んでいたのだった。

 

 

例えば、ぶらりとレゾナンスの一角にあるペットショップに入ってみたり

 

「うわ~♪」

 

シャルロットは目を輝かせていた。

 

「シャルって猫とか好きだったよな?こういう所も悪くないと思うぞ」

 

「Oui!C'est tres bon!(うん!凄く良いよ!)」

 

興奮のあまりかフランス語で返答してきた。

シャルロットの顔はずっと小動物達に釘付けで子供のように目を輝かせていた。

そんなシャルロットの反応が可愛くって一夏もにこやかに笑っていた。

 

「そういえば、シャルの家って猫飼ってたよな」

 

「うん!『シャルトリュー』ってフランス原産の猫をね!」

 

「名前は確か、『コレット』だったっけ?」

 

「そう!よく覚えてるね!」

 

「よくシャルがコレットの事を話してくれたからな。実際に俺もシャルの家に行ったときに会ってるしな。まだ飼ってるのか?」

 

「うん!あの子はもう高齢期に入ってるんだけどまだ元気だよ!」

 

いつになく饒舌なシャルロットだった。

色んな小動物に目移りしながらはしゃいでいる。

一夏もシャルロットと一緒に小動物達を愛でるのであった。

 

 

 

一方、追跡コンビは

 

「・・・むぅ」

 

「あいつらはいいわねぇ楽しそうで・・・」

 

相変わらず不機嫌そうな箒と疲れきった表情の鈴がいた。

 

「しかし本当にあの2人・・・、その・・・。つ、付き合っているのだろうか?」

 

「さあ?そこまでは・・・。でもあいつらの仲の良さは普段から目の当たりにしてるし、もしかしたらもしかするかもよ?」

 

「もしかしたら・・・」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

※ここからは箒の妄想です。

 

『シャル、俺は初めて会ったときからお前の事が好きだ』

 

『僕も一夏と初めて会ったときからずっと好きだよ』

 

『シャル、嬉しいよ』

 

『ちょっと、一夏。いきなり抱きしめるなんて』

 

『俺はもうお前を一生離さない』

 

『でも、本当に僕でいいの?』

 

『何を言っているんだシャル。俺の運命の女性はお前しか考えられない』

 

『一夏・・・』

 

『シャル・・・』

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「だぁぁぁっ!破廉恥だっ!不埒者共めぇぇぇ!!」

 

「ちょっと落ち着いて箒!あんたどんな妄想走らせてるのよ!?」

 

暴れる箒を必死で押さえる鈴。

その様子は周囲の視線を一手に集めているが2人は往来の視線に晒されながらも騒ぎ続けていた。

 

「まったく、突然取り乱さないでよ・・・」

 

「すまん・・・」

 

鈴は何とか箒を落ち着かせた。

箒も取り乱した事を反省したのかしょぼんとする。

ため息をつきながら2人は一夏達が居た方へ視線を戻す。

が、

 

「「あれ?」」

 

視線の先にはすでに2人の姿はなかった。

慌てて周囲を見やるがどこにも見当たらない。

 

「見失った……!?」

 

「まああれだけ騒いでたし、気付かれた可能性もあるわね・・・」

 

鈴の言葉に箒は愕然とするしかなかった。

 

「え~っと、どんまい?」

 

鈴の言葉も慰めにはならなかった。

 

 

 

 

「どうしたんだシャル?いきなり慌てて店を出ようなんて」

 

一夏とシャルロットは先ほどのペットショップを後にしてレゾナンスから駅前通りに出ていた。

 

「いやその、そろそろお昼ご飯の時間だから何か食べに行こうと思って」

 

「そんなに慌てるほど腹が減ってたのか?」

 

「ふえっ!?ち、違うよ!ほら、あんまり時間が遅いとどのお店も混んじゃうから」

 

「ああ、そういうことか。悪い。気付かなかった」

 

「う、うん」

 

シャルロットが慌ててペットショップを出てきたのは箒と鈴の存在に気付いたからである。

先ほど追跡コンビが店先で騒いでいるのをシャルロットが偶然見つけたのであった。

一夏は気付かなかったようで突然手を引いて店をあとにするシャルロットにハテナ顔だったのだ。

 

「じゃあ飯食いに行くか。俺ちょっと良い店知ってるんだけどそこでいいか?」

 

「う、うん。それじゃ行こう」

 

「おう」

 

一夏の方からシャルロットの手をそっと取るとそのまま一夏はシャルロットの手を引いて歩き出した。

 

(箒達には悪いけど、やっぱりこれはデートだから一夏と2人だけでいたいよね)

 

繋いだ手を見ながらシャルロットは心の内でそんなことを思っていた。

甘えるように少し強めに握ってみれば一夏もそれに応えるように強く優しく握り返してくる。

ふと目を一夏の顔に向けてみると恥ずかしそうにしながらも笑顔をシャルロットに向けている。

 

(だって、こんなにも一夏が僕のことを見ていてくれるんだから)

 

一夏とシャルロットは互いの手のぬくもりにドキドキしながら目的地へと歩き出すのであった。

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