ようこそ藍越学園へ   作:TAKUMAKI?

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第二十七話 フォース幼馴染

「初めまして、セシリア・オルコットと申します。イギリスからこの学園に留学しに参りました。皆様、どうぞよろしくお願いします」

 

白人特有のブルーの瞳と煌びやかな地毛の金髪が映える転入生の少女。

優雅という感じが彼女からは窺い知れ、その立ち振る舞いは英国淑女という言葉がよく似合う。

クラスの大半の生徒が彼女の高貴なオーラに見惚れていた。

 

「オルコットはデュノアに続いて我がクラス2人目の留学生だ。この時期に転入となったのは家庭の事情だそうだ」

 

千冬が簡潔にセシリアを紹介する。

その間もセシリアは英国淑女の姿勢を保ちながら微笑んでいる。

 

「オルコットの席は後ろの空いている席だ。そこに座るように」

 

「わかりましたわ」

 

頷いてからセシリアは後方の空いている席に移動した。

 

「えー、GWも明け、新しいクラスメイトもやって来た。全員気持ちを新たに勉学に励むようにしろ。では、朝のSHRを終わる」

 

 

 

ホームルームが終わったあと

 

「案の定、質問攻めか」

 

遠巻きに眺める一夏の言うとおり、セシリアの周囲には人だかりができていた。まぁ定番と言えば定番だが。

 

「転入生の宿命だな。まあ、話なら後でもできるしな」

 

そういって一夏は視線を戻して1限目の授業の準備を始める。

 

「ちょっと、よろしくて?」

 

「ん?」

 

授業の準備をしていた一夏に話しかけてきたのはさっきまでクラスメイトに質問攻めにされていたセシリアだった。

いつの間にか包囲網を突破して一夏の席に近づいてきたようだ。

 

「お久しぶりですわね、一夏さん」

 

「ああ、久しぶり、セシリア」

 

どちらからともなく手を差し出して握手をする両者。

2人の会話から両者には面識があることが窺い知れる。

それもかなり親しげだ。

周りのクラスメイトが少しざわつく。

 

「驚いたぞ。いきなり転入してくるなんてさ。言ってくれれば空港まで迎えに行ったのに」

 

「あら?先月の終盤に織斑家にはお電話をしてお知らせしましたのに聞いていらっしゃらないんですの?」

 

「初耳なんだが?」

 

「おかしいですわね?その時に電話に出た十秋さんが皆様にお伝えしておくと言っていらしたのですが」

 

「ああ、なるほど。そういう事か」

 

「?どうしましたの?」

 

「十秋姉はわざと俺には教えなかったみたいだな」

 

「まあ、何故ですの?」

 

「大方、セシリアが転入生だってわかったときに俺がビックリすると思って黙ってたんだと思うぞ」

 

「そのようなサプライズを演出なさるとは、十秋さんも随分お茶目ですわね」

 

「実際ちょっと驚いたからな。しかし、会うのはこれで何年ぶりだ?」

 

「およそ3年ぶりですわね。あの頃はわたくしもまだ身体が弱かったのですが」

 

「そうだったな。でも、もう大丈夫なくらいに快復したんだろ?」

 

「はい。だから飛行機に乗ってもヘッチャラですわ」

 

ははははっと互いに声に出して笑いあう。

まるで3年間の空白を埋めるかのように会話に花が咲いている。

 

が、会話に花を咲かせる2人を尻目に心中穏やかではない者達もいた。

 

(あの娘誰だろう?一夏と随分親しそうだけど・・・)

 

一人目はシャルロット・デュノア。

幼少期から一夏に想いを寄せるフランス少女。

その一夏が自分の知らない女子と親しげに会話をしているので心中は穏やかではない。

 

(なんなのだ、あいつは!)

 

二人目は篠ノ之箒。

シャルロット同様、一夏に好意を抱いている剣道少女。

その一夏が以下同文。

 

「積もる話もあるが、そろそろ授業が始まるぞ」

 

「そうですわね。では、続きはまた後で」

 

「おう」

 

セシリアは自分の席に戻って行き、一夏も手を振ってそれを見送った。

 

「・・・一夏、なんなのだあいつは?知り合いか?えらく親しそうだったな?」

 

「い、一夏!?あの娘とどういう関係なの!?」

 

セシリアが一夏の席から離れるとシャルロットと箒は怒涛の勢いで一夏の元へ殺到する。

 

「ど、どうした2人とも?」

 

凄い剣幕で詰め寄ってきた2人に一夏はたじろぐ。

 

「ってゆーかもう授業始まるぞ。席に着いた方がいいぞ」

 

「そんな事より質問に答えてよ!」

 

「そうだ!質問に答えろ!」

 

「いや、だから1限目は―――」

 

「「一夏っ!!」」

 

(バシンバシン!!)

 

「いっ!!」

 

「だっ!!」

 

「―――織斑先生の世界史だぞ」と一夏は言おうとしたが遅かった。

 

「席に着け、馬鹿者ども」

 

千冬の出席簿アタックが火を吹いた。

頭を押さえながら渋々といった感じで2人は席に戻って行った。

 

「では、授業を始める。日直、号令」

 

日直の号令と共に今日の授業が始まりましたとさ。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

アイキャッチしりとり

 

千冬「だから席に着けと言っているだろ!」

 

 

 

セシリア「ロイヤルミルクティーが欲しいですわ」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「うぅ・・・」

 

1限目が終わり休み時間となった。

頭を押さえて机に突っ伏しているのはシャルロット。

結局授業中でも一夏とセシリアの事が気になって授業に集中できなかったので再び千冬に出席簿アタックを食らってしまったのだ。

ちなみに箒さんも授業中に1発食らいました。

 

「痛そうだったな・・・。シャル大丈夫か?」

 

一夏が痛々しげな表情でシャルロットの席に近づいてくる。

 

「誰のせいでこうなったと思ってるのさ・・・」

 

「え?何だって?」

 

「な、何でもないよっ!」

 

思わずボソッと恨み言を言い放っってしまうが一夏が聞き返してくると即座に手をブンブンと振る。

頭がまだちょっとズキズキするのでシャルロットの目はまだ少し涙目だ。

 

「頭、瘤(コブ)になってないか?大丈夫か?」

 

一夏はシャルロットの頭を優しく撫でた。

 

(なでなで)

 

「瘤にはなってなさそうだな」

 

「う・・・ぁぅ・・・」

 

「ん?どうした?痛かったか?」

 

「い、いや、平気だよ!大丈夫!」

 

僅かに頬に赤みが差しているシャルロット。

大人しく撫でられる表情はどこか嬉しそうだった。

 

(何でだろう?一夏に撫でられたら不思議と痛みが引いちゃったなぁ)

 

不思議と痛みも引いてニコニコ笑顔のシャルロット。

一夏はさきほど涙目だったシャルロットがもうニコニコ笑顔になっている事に首を傾げていたがもう大丈夫だと思い安堵の表情をする。

 

「一夏・・・」

 

「おう箒。お前も大丈夫か?」

 

箒も頭を押さえながら側に寄って来た。

 

「大丈夫なものか。まだ頭がズキズキするぞ・・・」

 

「そっか。千冬姉の一撃は強烈だからな。今度から千冬姉の授業はちゃんと聞いてた方がいいぞ」

 

「・・・・」

 

「ん?何だよそんなに睨んで?」

 

「何でもない!・・・何故私の頭は撫でないんだ(ボソッ)」

 

「?」

 

シャルロットが頭を撫でられているの見て羨ましくなった箒は不器用にまだ頭が痛むから撫でて欲しいのをアピールしようとしたが素直じゃない彼女の意図は鈍感な一夏には伝わらなかった。

一夏も箒は頭を撫でられるなんて子供扱いされたみたいで嫌がるだろうという配慮をしたのだがそれも箒には伝わっていない。

ちなみにシャルロットの頭を撫でたのは子供扱いしている訳ではなくこの前のデートのときに頭を撫でて嬉しそうにしていたからである。

 

「あら、何やら楽しそうですわね」

 

髪を後ろに流しながら噂の転入生、セシリア・オルコット嬢が穏やかな笑みを浮かべてやってきた。

 

「おう、セシリア。そんなに楽しそうに見えたか?」

 

「ええ、とても」

 

いかにもお嬢様という感じでそれでいて嫌味を感じさせない笑みでセシリアが一夏をからかう。

一夏もこれには苦笑いだ。

 

「ねぇ一夏、そろそろその娘とどういう関係なのか教えて欲しいんだけど」

 

「そうだぞ!一夏、まさかこの転入生と付き合っているなんてことはないだろうな!?」

 

シャルロットと箒は一夏に詰め寄る。

他のクラスメイトも興味津々とばかりに聞き耳を立てている。

 

「おいおい、何でそんな話になるんだよ。セシリアはただの幼馴染だよ」

 

「うふふ、わたくしと一夏さんが。それは面白い冗談ですわね」

 

一夏は少し驚いたような、セシリアは心底愉快といった感じの顔をしていた。

 

「「幼馴染・・・?」」

 

怪訝そうに聞き返すシャルロットと箒の2人。

 

「あー、話したこと無かったかな。イギリスに住んでる病弱な女の子の事。イギリスに行くときは必ずその娘のお見舞いするのが習慣で、その病弱な女の子がこのセシリアだ」

 

「あの頃は織斑家の皆様には大変お世話になりましたが、今はもう病気も快復してこうして留学に来れるほど元気になりましたわ」

 

「まあ、早い話が俺のフォース幼馴染ってやつだな。ファーストがシャルでセカンドが箒、サードが鈴だな」

 

表現がまるで野球のポジションのようだが一夏はこのように幼馴染にファーストやセカンドといったものを付ける習性がある。

 

「・・・、ファースト」

 

はっきり言って喜ぶ所ではないのだが、少し嬉しそうにそう呟いたシャルロット。

 

「・・・、セカンドか・・・」

 

箒は少しがっかりしたようにそう呟いた。

何か2番目の女って感じがして凄く嫌だった。

 

「で、セシリア。前に話したけどこっちの金髪の娘がシャル。フランス出身で俺の1番最初の幼馴染だ。この学園にはお前と同じで留学生として来てるんだ」

 

「シャルロット・デュノアです。よろしくねオルコットさん」

 

「こちらこそよろしくお願いしますわ。それと、わたくしの事はセシリアとお呼びください」

 

「うん、よろしくセシリア。僕のこともシャルロットでいいよ」

 

「はい、シャルロットさん」

 

お互い同時に手を差し出して握手を交わす留学生の2人。

国は違えど同じ欧州から来た者同士。

日本人ではない2人の握手する様は実に華があるものであった。

 

「ンンンッ!私を忘れてもらっては困る。私は篠ノ之箒だ。よろしくな」

 

大げさに咳き込んだ箒がセシリアに自己紹介した。

 

「もちろん忘れてなどいませんわ。よろしくお願いしますわ篠ノ之さん」

 

「私も箒で構わない」

 

「はい、箒さん」

 

箒とセシリアも握手を交わす。

 

「あ、そうだ。おーい、鈴!」

 

一夏は鈴を呼んだ。

 

「んー?何よ?」

 

身軽な動きで鈴は一夏達のいる場所に寄ってきてシュタッといった感じで一夏達の前に着地する。

 

「セシリアに紹介しようと思ってな。セシリア、こいつが俺の3番目の幼馴染の鈴だ」

 

「凰鈴音よ。よろしくねセシリア。あたしの事は鈴って呼んで」

 

「はい、よろしくお願いしますわ鈴さん」

 

セシリアは鈴とも握手を交わす。

ここに今一組に在籍する一夏の幼馴染が全員集まった。

仏・日・中・英の4ヶ国の少女と幼馴染。

しかも全員が誰もが羨むほどの美少女だ。

世界中の男を敵に回してもおかしくない状態の一夏であった。

現に心なしか男子の中には一夏に嫉妬の眼差しを向けている者もいる。

 

「仲が良いのはいいことだなぁ」

 

そんな嫉妬の視線に気付きもしないで一夏は目を細めて爺臭い笑みを浮かべていた。

まるで、孫が庭で遊んでいるのを縁側で見ながら微笑んでいるかのようだった。

 

「「「「一夏(さん)」」」」

 

「ん?」

 

「「「「爺臭いよ(ぞ)(わよ)(ですわよ)」」」」

 

「んぐ・・・」

 

幼馴染4人から総ツッコミが入りましたとさ。

 

こうして新たに一夏のフォース幼馴染、セシリア・オルコットが一年一組の仲間に加わったのであった。

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