ようこそ藍越学園へ   作:TAKUMAKI?

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第二十八話 友誼結束、仏英同盟

昼休み。

いつものメンバー+セシリアで昼食を取りながら一夏はセシリアと初めて出会った頃の話をしていた。

 

「セシリアの両親とうちの両親はとても親しい間柄だったらしくてな。俺や千冬姉達がイギリスに赴いたときにセシリアの両親から入院中のセシリアの話し相手になってあげて欲しいって言われたんだ」

 

「今から7年前の8月の事でしたわ。わたくしはその頃ちょっと重い病に罹っておりまして、入院中は誰もいない個室で過ごしておりましたので少し寂しい想いをしておりましたの。そこに来てくださったのが織斑家の皆様という訳です」

 

「それからイギリスに行くときはセシリアを見舞うのが習慣になってな。でも次の年にうちの両親は亡くなっちまってセシリアとは会う機会は減っちまったんだ」

 

「わたくしは病弱の身でしたので日本へ赴く事もできませんでした。ですからわたくしは両親に頼んで手紙を書くようになりました。わたくしも病気と闘って絶対元気になりますから一夏さん達もどうか負けないでくださいと」

 

「セシリアの両親は俺達兄弟の事を凄い気に掛けてくれたから両親が亡くなったあとも何かと世話になってたんだ。手紙の遣り取りもその一環だったな。シャルや箒や鈴みたいにそんなに長い時間を一緒に過ごしたわけじゃないけどさ、セシリアは俺達兄弟の恩人の娘で俺のフォース幼馴染という訳だ」

 

一通り説明が終わり一夏はぐるっといつものメンバーを見渡した。

 

「これで一通り俺とセシリアの関係は説明したけどわかってくれたか?」

 

確認するように一夏は全員に説いた。

特にシャルロットと箒はやたらとセシリアとの関係を聞いてきたので2人には念を押す。

 

「う、うん、わかったよ・・・」

 

「い、一応な・・・」

 

なんだか歯切れが悪いシャルロットと箒だが一応わかってくれたようなので一夏はよしとしておいた。

何で2人がそこまでセシリアとの関係を知りたがったのかは一夏は微塵も理解はしていないが。

 

「しっかし、お前ってスゲーよな」

 

「ん?何が?」

 

「これだけの面々と幼馴染なんだからさ」

 

弾が少し呆れたように口を開く。

 

「確かに、デュノアさんに篠ノ之に鈴。これだけでも多いのにさらにはオルコットさんまで加わったからな。お前はこれから夜道を歩くときは背中に気をつけた方がいいかもな」

 

からかいの笑みを浮かべて数馬がそんなことを言ってくる。

 

「背中に気をつける?何で?」

 

一夏はハテナ顔で数馬に問う。

 

「はぁ~、これだから一夏は」

 

鈴が呆れたようにため息を漏らす。

 

「あんたねぇ、これだけの美少女4人を侍らせておいたら男子だって嫉妬くらいするわよ。しかも全員あんたとは幼馴染なんだから余計によ」

 

「侍らせるって、人聞きの悪い事言うなよ」

 

「あんたはそんなつもりなくても周りからはそう見えるってことよ。おぼえておきなさい」

 

「ってゆーか何気に自分を美少女だって言いやがったぞ鈴の奴」

 

「うるさいわよ弾」

 

(ゲシッ)

 

弾の向こう脛に蹴りを入れる鈴。

弾はしばらくの間、悶絶していた。

 

「でも、シャルロットさんも箒さんもご安心して下さい。わたくしと一夏さんはそういうのではありませんので」

 

「う、うん。そうだね・・・」

 

「それなら、別にいい・・・」

 

一夏とセシリアの間に恋愛関係がないことにようやく納得したシャルロットと箒であった。

 

 

時は少し進んで六限目。

一年一組の授業は体育だ。

男子はグラウンドでサッカー、女子は体育館でバスケをやっている。

今回は女子にスポットを当ててみよう。

 

「箒、パス!」

 

「任せろ!」

 

「おーっと!そうはいかないわよ!」

 

いつぞやのソフトボールのようにシャルロットと箒は同じチームで鈴が別チームになって試合を行っている。

試合は一進一退の攻防が続いて同点のまま試合時間は残り1分。

鈴のチームのボールで試合が再開する。

 

「よーし、もらったわ!」

 

チームメイトからのパスを受けて鈴がシュート体勢に入る。

しかしそれを遮る様に影が2つ鈴の前に現れる。

 

「させるか!」

 

「打たせないよ!」

 

シャルロットと箒が鈴のシュートをブロックしようと立ち塞がる。

小柄な鈴では平均並みに身長のある2人の頭上を越すシュート打つのは少し難しい。

そこで鈴は一瞬の判断をする。

シュート体勢を止めて後ろを振り向く。

 

「何っ!?」

 

「フェイント!?」

 

シュートをすると思っていた2人はブロックするべくジャンプをしていたので瞬時に身動きが取れない。

そこに鈴はフェイントを仕掛けて2人を引き付けてる。

そして、フリーだったチームメイトにボールを投げる。

 

「セシリアッ!」

 

「はいっ!」

 

セシリアだ。

彼女は元々病弱だったが決して運動音痴であった訳ではない。

ここ数年で体力もある程度はついたのでこうして体育にも参加している。

最近では自ら率先してスポーツに取り組むようにもしているのである。

 

鈴から絶好のパスを受けたセシリアはフリーのままゴール下へ。

そしてそのまま跳躍してレイアップシュート。

するとボールは綺麗にゴールのリングに吸い込まれた。

 

(ピーッ)

試合終了の笛が鳴った。

 

「やりましたわ!」

 

「ナイス!セシリア!!」

 

ハイタッチを交わす鈴とセシリア。

 

「やられたな」

 

「いい連携だったね」

 

敵チームの箒とシャルロットも鈴とセシリアの連携に賛辞を送る。

 

「ふふ~ん、今回はあたしのチームの勝ちね♪」

 

勝負事にはムキになる鈴が今回の勝ちに気を良くしたのか上機嫌に胸を張る。

 

「今回(・・)は負けだ」

 

「うん、今回(・・)はね」

 

鈴に感化されたのか最近ではシャルロットと箒にも負けん気が出てきたようで体育で何かの試合をするたびに何かと競い合っている。

 

「ふん、返り討ちにしてやるわ♪」

 

「「「あははははっ」」」

 

笑い合う3人。

傍から見るととても仲の良い親友が笑い合ってとても微笑ましい光景だ。

セシリアも3人の傍らで微笑んでいた

 

が、不意にセシリアの身体が揺れる。

よろっといった感じで体勢が崩れかける。

 

「セシリア、どうしたの?大丈夫?」

 

素早くシャルロットがセシリアの身体を支えた。

 

「ええ、大丈夫です。ただの貧血ですわ・・・」

 

「しかし、ちょっと顔色が優れないようだが」

 

箒もセシリアを支える。

 

「わたくしは元々病弱だった為か激しい運動後に貧血を起こす事がよくあるのです。病気が快復してからは体力もそれなりに付けたのですがなかなか・・・」

 

「まあ、バスケは絶えず動き回るからねぇ。結構身体にこたえたのかもしれないわね」

 

鈴もセシリアの顔を覗き込む。

 

「保健室行こう」

 

「だ、大丈夫ですわ。今日の授業はこれで終わりですし、これくらいなら少し安静にしていれば・・・」

 

「こういうときは無理しちゃダメだよ」

 

「そうした方がいい」

 

「ここは素直に従っておきなさい」

 

「うぅ、わかりましたわ・・・」

 

3人に説得されてセシリアも観念したのか保健室に行くことに従った。

 

「僕が付き添うよ。箒と鈴は先に教室に戻ってて」

 

「うむ。織斑先生には私達から言っておく」

 

「気をつけて行って来なさいよ」

 

箒と鈴に見送られてシャルロットが付き添いながらセシリアは保健室に向かうのであった。

 

 

「申し訳ありません・・・」

 

「いいよ。これくらい気にしないで」

 

「しかし、ご迷惑では・・・」

 

「全然迷惑なんかじゃないよ。それに同じ一夏の幼馴染のよしみだし」

 

シャルロットはにっこりとセシリアに微笑みかける。

セシリアは少しだけきょとんとするがすぐに顔を綻ばせる。

 

「本当に、一夏さんの言うとおりですわね」

 

「え?」

 

「シャルロットさんが一夏さんが仰っていた通りのお人なので」

 

「それってどういう事なのかな?」

 

「ええ、一夏さんは病弱で入院していたわたくしによく話してくれましたの。自分にはとても仲の良いフランス人の幼馴染がいると。その子と自分はとても仲が良くてまるで生まれた国が違うとは思えない程だと」

 

「一夏はセシリアに僕の事を何て言ってたの?」

 

「自然と相手を気遣い気持ちを落ち着かせることに長けていて、笑顔が素敵な方だと仰っていましたわ」

 

「へ!?」

 

シャルロットは驚いた顔でボワっと赤くなる。

 

「今日初めてお会いして、接してみてわかりましたわ。やはり貴方は一夏さんが仰っていた通りの方だと思いましたわ」

 

「そ、そうなんだ。一夏がそんな事を」

 

「一夏さんは他にも箒さんや鈴さんの話もしてくれましたわ。箒さんと一緒に剣道をしていた事や鈴さんが小学校のときに男子に混じってドッジボールで大暴れした事なんかも話してくれましたわ。ですから、話で聞いていた皆さんとこうして同じクラスになって共に学校に通えるのが夢のようですわ」

 

「夢なんかじゃないよ。セシリアはもうこの学園の生徒で僕達の仲間だよ」

 

優しい笑顔でシャルロットはセシリアに声を掛ける。

こういう優しさが一夏が語ったシャルロットの魅力の1つと言えるであろう。

 

「そんなセシリアに言っておくことがあるんだ」

 

「まあ、なんですの?」

 

「ようこそ藍越学園へ!!」

 

かつて一夏が言ってくれた台詞をシャルロットはセシリアに送った。

あのときに一夏が見せてくれた笑顔に負けぬ程の笑顔で。

 

「はい!!」

 

セシリアもそんなシャルロットに負けないほどの笑顔であった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

アイキャッチしりとり

 

シャル「割れ物注意!」

 

 

 

セシリア「如何ともし難いですわね・・・」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「失礼しまーす」

 

保健室にやって来たシャルロットとセシリアは声を掛けて入室する。

 

「百春先生いますか?」

 

「ん?どうした?怪我人か?」

 

相変わらずの仏頂面で保険医の百春が2人を出迎えた。

 

「セシリアが体育のあとに貧血を起こしてしまったらしくて」

 

「そうか。とりあえず診て見よう。こっちに座らせろ」

 

「はい。セシリア、行くよ。――――――セシリア?」

 

支えながら移動しようとするシャルロットだがセシリアはその場に固まったまま動こうとしなかった。

ふとセシリアの顔を見ると驚いた表情で固まっていた。

 

「どうした?」

 

百春も怪訝そうにセシリアを見る。

 

「も、も、も・・・」

 

「も?」

 

「・・・百春さまっ!?」

 

いきなり素っ頓狂な声を上げるセシリア。

 

「うわっ!どうしたの突然!?・・・って、モモハルサマ?」

 

これにはシャルロットも驚いてしまう。

 

「ななななな、何で百春さまがここにいらっしゃりますの!?」

 

「何でも何も、俺はこの学園の保健医だぞ。保健室にいてもおかしくないだろ」

 

「そ、そんなのわたくしは聞いておりませんわ!!」

 

セシリアは急にオロオロし始める。

 

「おい。あまり保健室で騒ぐんじゃない。それより貧血を起こしたんだろ。診てやるから早く来い」

 

「わ、わかりましたわ・・・」

 

セシリアは顔を真っ赤に染めながら百春が指示した椅子に座る。

百春は保健室の奥で何やら棚を弄っている。

その間、セシリアはモジモジと落ち着かない様子で百春をじーっと見つめていた。

 

「ねぇ、セシリア」

 

「な、何ですのシャルロットさん?」

 

「セシリアって、もしかして百春さんのことす―――」

 

「きゃああああっ!それ以上言ってはダメですわ!!」

 

超特急の勢いでセシリアはシャルロットの口を押さえ込む。

急に口を封じられてシャルロットは苦しそうにもがく。

 

ここまで来れば察しの悪い方でもわかると思うが、セシリアは百春に惚れています。

イギリスでセシリアが病床に着いていた際、彼女の相手を最もしていたのは百春であった。

彼はその頃から医者を目指していたので病床に着くセシリアを放っておくことができなかったのだ。

セシリアもそんな百春と接している内にいつの間にか彼を好きになっていたのだった。

 

「おいお前達。騒ぐんじゃないと言っただろう。追い出されたいのか?」

 

「も、申し訳ありません。静かにしますわ・・・」

 

じろりと睨まれて大人しくなる。

 

「さっきの時間は体育だったようだな。授業は何をやっていた?」

 

「バ、バスケットボールですわ」

 

「バスケか。絶えず動き回るスポーツだからな。お前の身体には堪えたのかもしれんな」

 

「す、すみません・・・」

 

「別に謝らなくていいが。顔色はそんなに悪くはないようだし少し安静にしていればいいだろう。そこのベッドを使え」

 

「い、いえっ!もう大丈夫ですわ!そ、それに汗を掻いたままの体操着で百春さまの前にいるのも・・・(ボソッ)」

 

「こういうときは無理をしない方がいい。それと、何だか顔が赤いようだが熱でも出たか?どれ?」

 

百春はいきなりセシリアのおでこに手を当てた。

 

「ひゃぁ!!」

 

セシリアはいきなりおでこを触られて心臓が飛び跳ねるのを感じた。

しかも顔が凄く近い。

距離にしておよそ5cmほど。

 

(何だろう、ちょっとデジャヴが・・・)

 

シャルロットが感じたデジャヴは以前に似たようなことを一夏にされたからであった。

それを今、一夏の実兄である百春がやっている。

このときにシャルロットは百春はやっぱり『あの』一夏の兄なんだなぁと改めて実感した。

 

「熱はなさそうだが、念のために測っておこう。体温計持ってくる。ベッドに横になっていろ」

 

百春はセシリアのおでこから手を離して体温計を取りに行ってしまった。

 

「あっ・・・」

 

心残りがあるような声を漏らすセシリア。

恥ずかしがっていたが好きな男性が真近に感じられていたのにそれが去ってしまって寂しいのであろう。

 

「セシリア、ベッドに行きなよ。何なら手を貸すよ」

 

「いえ、もう支えは大丈夫ですわ」

 

セシリアは自分の足でちゃんとベッドに向かった。

セシリアがベッドに横になるとシャルロットは横にあったパイプ椅子に座る。

 

「すまないがちょっと出なきゃいけなくなった。すぐに戻ってくるが、それまでは大人しくしていろ。ほら、体温計だ」

 

「あ、はい」

 

「セシリアには僕が付いていますので」

 

「悪いな。では行ってくる」

 

百春は保健室を出て行った。

 

「はい、これ体温計」

 

「ありがとうございます」

 

シャルロットから体温計を受け取るとセシリアは自身の脇に体温計を挟む。

 

「ねえ、セシリア」

 

「何ですの?」

 

「さっきは聞き損ねちゃったけど、やっぱりセシリアって百春さんのこと好きなの?」

 

「はうっ!え、ええ・・・、その通りですわ」

 

「そっか。やっぱりね」

 

「そういうシャルロットさんこそ、一夏さんの事好きでいらっしゃるのでしょう?」

 

「ふえっ!え~っと、う、うん・・・。そうだよ」

 

「そうですか。お互いに厄介な相手に懸想したものですわね」

 

「そ、そうだね」

 

互いの懸想人のことを考えると苦笑いが出た。

想いを届けるには一筋縄ではいかない相手であるのは間違いないであろう。

でも、それでもやはり好きなのだからしょうがないのだ。

 

「シャルロットさん」

 

「何?」

 

「お互い頑張りましょうね」

 

「うん」

 

エールを送りあう2人。

この時2人は同時にこう思った。

 

((僕 (わたくし)達は凄く仲良くやれそう(ですわ)!!))

 

仏英間で少し可笑しな友情が芽生えたのであった。

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