ようこそ藍越学園へ   作:TAKUMAKI?

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第三話 よろしく、1年1組

先ほどまで手を繋いでいた2人だったが下駄箱で内履きに履き替える際に手は離していた。名残惜しいと思いながらも内履きに履き替えて2人は並んで教室に向こう。それでも2人の距離は肩が触れ合いそうなほどに近い。この距離はいつも2人が並んで歩くときには1番自然な距離なのだ。

 

一夏とシャルロットは1年1組の教室前までやってきた。

 

「ここだね」

 

「ああ」

 

(クラスメイトってシャルしか確認しなかったなぁ。何人か知り合いがこの学校に来てる筈なんだけど。ま、教室入りゃわかるか。あ、そういえば担任の名前も見てねぇや)

 

ここで一夏そうは思っていたが『ま、いいや』と教室のドアに手をかける。1-1のプレートが掲げられた教室の中には既に大半の生徒がいた。

 

黒板には始業式のプログラム時間と席順が書かれた紙が貼られてあった。席順は入学初日なので出席番号順だ。席は廊下側から縦に六席の列が窓側に向かって五列ある。そして黒板にはこうも書かれていた。

 

『新入生の皆さん、ようこそ藍越学園へ』

 

「よぉ、一夏」

 

「一夏、おはようさん」

 

一夏に2人の男子が話しかけてきた。1人は赤みのがかった茶髪を長髪にしていてもう1人はツンツンに跳ねた黒髪に少々キツイ目をしている。

 

「おう弾と数馬か、おはようさん」

 

茶髪の方が五反田弾で黒髪の方が御手洗数馬だ。この2人と一夏は中学時代からの友人だ。入学式当日に知り合って以降やたらと馬があって3年間揃って同じクラスだった。そのこともあって中学時代はよく3人でつるんでいたのだ。

 

「高校に来てもお前らと同じクラスとはな」

 

「どうやら俺たちの友情は切っても切れないみたいだな」

 

「まさに運命だな」

 

男子同士のユーモアある会話で盛り上がる3人。だが、2人が一夏の隣にいるシャルロットに気がつく。

 

「ところで一夏、その金髪美人さんは誰だよぉ?」

 

「そんな美人と2人で仲良く登校かぁ?」

 

興味あり気にシャルロットを見る数馬と弾。

 

「この娘はシャルロット・デュノアだ。ほら前に話しただろ?フランスにいる俺の幼馴染の女の子の事。それがこの娘だ。ここには留学生として来たんだと」

 

「シャルロット・デュノアです。よろしく」

 

人懐っこく挨拶をするシャルロット。

 

「シャル、こいつらは中学からの友達で茶髪のが五反田弾で黒髪が御手洗数馬だ」

 

「五反田弾だ。よろしく」

 

「御手洗数馬だ。よろしく頼む」

 

2人も紹介され挨拶を交わす。社交的なシャルロットのことだからこの2人とすぐに友人になれるだろうと一夏は思った。

 

「しかし仲良いねぇおふたりさん。さっきも仲良さ気に教室に入ってきたし」

 

「もしかして2人はお付き合いしてるのかなぁ?」

 

ニヤニヤしながら聞いてくる男子2人。突然そんな事を聞かれて顔を赤くする一夏とシャルロット。

 

「俺たちは、『まだ』そんなんじゃないけど・・・」

 

「う、うん。『まだ』そういうのじゃないよね・・・」

 

俯いてモジモジするシャルロットに顔を逸らして頬をポリポリかく一夏。

 

「「『まだ』ねぇぇぇ」」

 

さっきより8割はニヤニヤが増加した2人はからかいの視線を一夏達に向ける。居心地悪い視線を向けられて落ち着かない一夏はチラッとシャルロットを見ると彼女も目だけを一夏の方を向けていた。視線が交錯してバッと目を逸らす一夏とシャルロット。その顔は先ほどより赤く染まっている。弾と数馬の視線に耐えられなくなり一夏は強引に話を変えようとする。

 

「そ、それより他に同じ中学のやついるのか?俺掲示板でクラスメイトちゃんと確認してないんだよ!!」

 

「逃げたな」

 

「ああ、逃げたな」

 

「う、うるせぇ!!」

 

一夏は声を張り上げる。

 

「うるさいわねぇあんた達。廊下まで声響いてるわよ」

「そうだぞ、入学式という晴れの日に何を騒いでいる?」

 

そこに2人の女子が入ってきた。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

アイキャッチしりとり

 

箒「なます切りしてやろうか?」

 

 

 

鈴「片付けるの大変だからやめて」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「おお、噂をすれば」

 

「同じ中学出身者のお出ましだ」

 

そういって登場した女子2人は篠ノ之箒と凰鈴音(ファンリンイン)の2人だった。長い黒髪をポニーテールにしているのが箒で色の濃い茶髪をツインテールにしているのが鈴音だ。ちなみに鈴音は日本人ではなく中国人でみんなからは『(リン)』という愛称で呼ばれている。

 

「鈴に箒か、おはよう」

 

「うむ」

 

「おはよ」

 

この2人はシャルロットと同じで一夏の幼馴染だ。

箒は実家が神社兼剣道場で一夏は小学生のときはそこの剣道場の門下生だったのだ。箒とは小学校6年間は全部同じクラスだったのだが中学に入ってからはずっと別のクラスだった。

鈴は一夏と箒が小学校3年の頭に一夏達のクラスに転入してきて意気投合したのがキッカケで親しくなった。鈴とは小学校3年から中3まですべて同じクラスだった。鈴の実家は『鳳凰(フォンファン)』という中華料理屋を経営していて弾の実家である『五反田食堂』と並んで一夏がお世話になっている店のひとつなのだ。今では箒と鈴は親友となっている。

 

「箒、鈴、おはよう。それと久しぶりだね」

 

シャルロットが2人に挨拶をする。箒と鈴は一夏を通じてシャルロットとは面識があるのだ。シャルロットが日本に遊びに来たときに4人でよく遊んだものなのだ。

一夏にとってシャルロットがファースト幼馴染でセカンド幼馴染が箒、サード幼馴染が鈴といった感じだ。

 

「シャルロットか、久しぶりだな。掲示板でお前の名前を見つけてビックリしたぞ」

 

「ホント水臭いわよね、言ってくれれば空港まで行ったのに」

 

「みんなを驚かしたかったからね。あと鈴と同じ事を一夏にも言われたよ」

 

「何?一夏も知らなかったの?」

 

「ああ、今朝掲示板の前で会ってビックリしたさ」

 

「あのときの一夏の驚いた顔はおかしかったなぁ」

 

「シャル、俺そんなに変な顔してたか?」

 

「してたよ。もう鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔してたよ」

 

「それは不覚だった・・・」

 

「ふん、情けない奴だ。鍛えていないからそうなるのだ」

 

「いやいや箒さん、鍛えてるとか鍛えてないとか関係ないからな!」

 

「ふん」

 

「・・・なんなんだよ」

 

途端に不機嫌になる箒。

一夏は訳分からんとため息を漏らす。

 

「でも一夏はすぐに僕だってわかってくれたよ」

 

「そんなのは当然だろ?シャルの事ならすぐにわかるよ」

 

「やっぱり一夏は優しいね」

 

「そんな事ないだろ?」

 

「そんな事あるよ。僕は凄く嬉しかったよ。ありがとう、一夏!」

 

そのお礼の言葉に一夏は照れてしまう。そして周りに誰もいないかのようにいい雰囲気を漂わす2人。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

それをムスっとした顔で箒が睨んでいる。箒の視線に気付いた2人は慌てて話を戻す。

 

「あはは、でも懐かしいねぇ4人揃ってこうやって話すのも」

 

「そうね。だいたい3年ぶりになるのよね」

 

「前にシャルロットが日本にきたとき以来だからな」

 

「そうだな。俺はメールでやりとりしてたけどやっぱり顔を合わせる方がいいよな」

 

久しぶりの幼馴染との再会に旧交を温める4人。

 

そしてすっかり蚊帳の外となっている男子が2名。

 

「「俺たちすっかり忘れられてね?」」

 

少しいじけていた。そしていじけている2人に箒が言葉を放る。

 

「何だお前達、まだいたのか?」

 

「「それひどくねっ!!」」

 

「うるさいぞ」

 

「「すみません・・・」」

 

箒に睨まれて萎縮する2人。一夏もそうだが男性陣は箒に睨まれると何も言えなくなるのだ。男子3人で馬鹿をやり箒がそれを怒り鈴がそれを宥めるというのが中学時代からの図式なのである。

 

「何はともあれ皆改めてよろしくね」

 

シャルロットが笑顔を見せる。この笑顔を見た他の5人もつられて笑う。シャルロットの笑顔のお蔭かこの場は収拾となった。

 

「ほらそろそろ席着かないと担任の先生が来るわよ」

 

「そうだな」

 

「ではまたな」

 

「おう」

 

鈴の言葉を合図にそれぞれ割り振られた席に向かう4人。

 

一夏とシャルロットは顔を見合わせて微笑むと自分の席へと向かった。

 

それを見ていた箒がまたしてもムスっとして一夏を睨んでいたのを一夏は知る由もない。

 

席に着くと教室のドアが開く。

 

担任の先生が教室に来たようだと顔を上げる一夏だがその担任の顔をみてポカンとしてしまう。

 

だってそこにいたのは自分にとって家族と言える人だったからだ。

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