ようこそ藍越学園へ   作:TAKUMAKI?

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第三十四話 小っちゃいって事は便利だねっ 中編

「ふぅ・・・、今日が日曜日でホントよかったよ・・・」

 

身体が幼少化するという事態が発生してから少しの時間が過ぎてお昼前。

もし平日だったら学校に行っていなければならない時間だ。

さすがにこの姿で学校に行く勇気は一夏は持ち合わせていない。

 

「まあ、制服も着れないし・・・」

 

身体が小さくなっても一夏はいつものように午前中は洗濯と掃除に精を出した。

知らない人が見たら一夏は家事を手伝う立派な おりこうさん(・・・・・・)な小学生に見えたことだろう。

 

 

「ん~む、お茶が美味い」

 

幼少化した事でコーヒーは飲めなくなったがお茶だけは普通に飲めることに一夏は物凄く安堵していた。

いつも爺臭いとか言われるがコレだけは一夏は何としても譲れないのである。

恐らく、酒やたばこをやめられない人の感覚に近いのかもしれない。

 

「しかしあれだな。小さくなった所為かこの家も普段より広く見えるんだよなぁ」

 

いつもより視線が低い位置にある所為かはわからないが一夏はそう感じていた。

普段は身長172cmの一夏だが、今はおよそ125cmくらいの背丈なのでそう感じてもおかしくはないのかもしれない。

約50cmの差とはそれほどまでに大きいのである。

 

(ピンポ~ン)

 

「お?」

 

来客を告げる軽い音のチャイムが織斑家に響いた。

ちなみに今1階のリビングには一夏しかいない。

他の3人はというと千冬は自室に戻っていて、百春は残っている仕事があるとの事で学園に行き、十秋は先ほど洗濯と掃除を終えてから友人宅へ遊びに行っている。

なので、客を出迎えるのは必然的に一夏が一番早い。

 

「はーい」

 

故に一夏は今の自分が幼少化してしまっていることをすっかり忘れて客を出迎えに行き、玄関を開けてしまう。

 

 

 

side シャルロット

 

5月も半ばを過ぎたとある日曜日。

僕は最近の休日では習慣になっている織斑家に遊びに行く事にしたのだけれどその織斑家に到着するととんでもない事態が待っていた。

玄関のチャイムを押して「はーい」という声と共にトトトと小走りの音が奥から聞こえてきて玄関が開かれてからそこにいた人物に僕は絶句してしまった。

 

「こんにち、わ・・・・」

 

「おお、シャルか。どうした?」

 

何故なら僕を出迎えてくれたのは7歳くらいの小さな男の子で、その男の子は僕の大事な記憶となっている初めて出会った頃の一夏に非常によく似ていた。

えっ?あれっ?今この子僕の事を「シャル」って呼んだ?

その愛称で僕の事を呼ぶのは一夏唯一人のはず・・・。

えっ、ええっ?ちょっと待って?

この子本当に僕が一夏と初めて出会った頃にそっくりなんだけど?

どうみてもこの子7歳くらいだよね?

一夏は僕と同じ歳だから15歳のはずだし、一夏の身長はこんなに低くないはず。

僕の身長は154cmだから一夏よりもおよそ20cmくらい低いはずなのにこの子は見た目125cmほどしかない。

だからこの子は一夏ではないはずなのに何故か僕の心は予感がする。

「この子は一夏だ」と。

 

「?どうしたんだシャル?」

 

ああっ!この子首を傾げてハテナ顔してるっ!!

やばいよ!凄く可愛い!!――って、違う違う!そうじゃないよ!!落ち着け僕!!!

 

「い、いち、か・・・なの?」

 

やっとの思いで僕の口から絞り出た言葉がそれだった。

 

「へ?俺以外の誰に見え――――あっ!!」

 

その男の子は僕に「何言ってんの?」と言いたげな表情から一変して「やべぇ!やっちまった!!」みたいな顔をした。

 

「しまった・・・。遅かったか・・・」

 

廊下の先に目を向けると千冬さんが頭に手を置いて困ったような顔をしていた。

千冬さんがあんな顔するのは凄く珍しい。

 

「ち、千冬姉・・・」

 

まるで助けを求めるかのように男の子が千冬さんに視線を向けていた。

ん?今この子、千冬さんを「千冬姉」って・・・。

 

「まあ、なんだ。とにかく、せっかく遊びに来たのだろう?シャルロットを上がらせろ。事情も説明してやらんとな」

 

千冬さんがそう男の子に指示した。

 

「わ、わかった。え~っとっ、とりあえず・・・いらっしゃい、シャル」

 

そこで、僕の予感は・・・確信に変わった。

間違いなく、この男の子は・・・一夏だと。

 

「・・・っ・・・」

 

「えっ?」

 

「ええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!」

 

僕の叫び声が織斑家の中に木霊した。

 

side out

 

 

 

「という訳だ。理解できたか?」

 

「はい、あの束さんがすることですし・・・」

 

シャルロットを家に招き入れた千冬は今朝起こった事を彼女に説明した。

にわかには信じがたい内容だが、あの篠ノ之束のする事だとシャルロットは納得した。

シャルロット自身も幼少期に織斑家と箒を通じて束とは何度か会ったことがあるのでその辺の理解は早い方だ。

一夏達がまだ小学校2年生の冬の頃、年末休みを利用してシャルロットが日本に遊びに来ていたときに一夏を通じて仲良くなった箒の家にご招待された日があった。

そこでシャルロットは束に初めて会ったのだがその時に起こった出来事が強烈なインパクトを残していた。

篠ノ之神社の庭先で一夏、シャルロット、箒の3人で遊んでいたところに束がやってきて

 

「じゃじゃーん!!見て見て!!これぞ束さんが作った泥棒対策用ロケットランチャー!その名も「怪盗キ○ドもデストローイ!」だよ!!」

 

当時まだ高校生だった束だがこの頃から意味不明な発明品を作っていて周りからは変わり者扱いされていた。

そのロケットランチャーを持ってきた時もシャルロットは唖然としたのを憶えている。

 

「ではさっそく試射してみるね♪ファイヤー★」

 

何と束はその場でロケットランチャーの試射を始め、その銃口の矛先にあった神社の納屋を大炎上させたのだ。

 

「やっちゃった、てへっ♪」

 

それで済ませた束に驚いていると箒の父親が怒鳴り込んできたので一夏と箒に手を取られてその場から逃げ出した。

その後篠ノ之神社は納屋の消火作業にてんてこ舞いとなったのである。

しかし、その数日後に何故か納屋は元通りになっていた。

どうして元通りになったのかは未だに謎である。

 

そんなこんなで、シャルロットは束に対する理解は篠ノ之・織斑両家の次に理解しているのでこの事態も受け止めることができたのであった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

アイキャッチしりとり

 

一夏「自己紹介しよーぜ!」

 

 

 

シャル「前略、シャルロット・デュノアです」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

side 一夏

 

俺の身に起こった出来事をシャルに説明し終えてシャルも事態を受け止めてくれたらしい。

シャルはリビングのソファーに座りながらお茶を飲んでいて、千冬姉もリビングテーブルの側のクッションの上に座ってお茶を飲んでいる。

だが、俺にはひとつ気になることが。

 

「あのさ・・・、ひとつ訊いていいか?」

 

「ん?なぁに一夏?」

 

「何で俺、シャルの膝の上に乗せられてるんだ?」

 

そう。俺の座っている位置は何故かシャルの膝の上だった。

いやな、俺はシャルの隣に座ろうとしたんだが何故かシャルが膝の上にポンポンと手を置いて「一夏、ここに座って♪」と言ってきた。

俺は「恥ずかしいからいい!」と断ったんだが、シャルが物凄い良い笑顔で「その拒否権は一夏にはありません♪」という、意味不明な強引な理屈を展開してきていつの間にか膝の上に座らされていたのだった。

 

「理由なんてどうだっていいじゃない。僕がそうしたいからじゃダメ?」

 

「いや、そう言われても俺が恥ずかしいんですけど・・・」

 

「ふっふー、ダ~メ。子供は膝の上で大人しくしてないと」

 

「子供って、俺は同じ歳だろうが・・・」

 

なんだろうか?

今にもポワポワという音が聞こえてきそうなシャルのこの笑顔を見ていると勝てる気がしないは何故・・・?

というか、俺の膝の上に乗せてそんなに上機嫌になるのも何故・・・?

それとさっきから千冬姉がニヤニヤしながらこっちみてるんですけど・・・。

 

「ほら、一夏。せっかくだから、僕の事をお姉ちゃんって呼んでみて」

 

「は、はぁ!?な、なんでそんなこと言わないといけないんだよ!?」

 

突然の要求に思わずシャルの膝の上から立ち上がろうとするが

 

「あん♪一夏、立っちゃダメ~」

 

「おわっ!ちょ、ちょっとシャル!」

 

バッとシャルの手が伸びてきて再度膝の上に座らせされた。

しかも今度は後ろから抱きしめられた状態でだ。

マ、マズイ!この状態は非常にマズイ!!

だ、抱きしめられてる所為か、こう、シャルの良い香りが――――――って何考えてんだ、俺は!

そ、それと、後ろから抱きしめられて密着状態だから、シャ、シャルの、そ、そのぉ・・・、む、胸が、俺の背中に当たってて・・・。

前に腕を組まれた時も思ってたんだが、普段は制服や服の下に隠れててわからなかったけどシャルの胸って意外と大きくて――――ええい!消えろ!消え失せろ煩悩!!

 

「ほらほら、言ってみて。ね♪」

 

そうだ!余計な事を考えるからダメなんだ!!

ここは恥ずかしがってないでさっさとシャルの言うとおりにして早いトコ解放してもらおう!

 

「お、お姉ちゃん・・・」

 

ぬああっ!!は、は、ハズイ!!!!これ何の拷問だよ!!!!!

俺ぜってぇ今顔真っ赤だよ!!!

で、でもこれで要求は呑んだしそろそろ離れても――――

 

「ん~♪一夏かわいい~っ!!」

 

「むぐっ!」

 

いいっ!!?

ちょ、いきなり体勢を変えられたと思ったらまたシャルの手が伸びてきて俺の頭がシャルの胸に抱き寄せられた!!?

おかげで俺の顔面がシャルの柔らかな胸に埋もれてしまう!!

おおっ!!な、何か背中で感じてた感触とは比べ物にならないほどに柔らかい!!

恥ずかしさだとかと得体の知れない嬉しさだとかが何かゴッチャ混ぜ状態なんだけど・・・。

キツク抱きしめられているせいで呼吸が出来ない!!く、苦しいっ!!さ、酸素が足りない・・・。

へ、ヘルプミープリーズ・・・!!

 

side out

 

 

(本当にあの頃の一夏だ♪)

 

シャルロットは一夏の頭を強制ベアハッグしながら幸せに浸っていた。

その様子はヒトデの彫刻に囲まれたCLA○NADの伊吹○子のようであった。

恋する一夏が初めて出会った、しかも恋を自覚した頃の姿になっていたことにシャルロットは胸が温まる思いだった。

ちょっとした悪戯心を働かせて一夏に「お姉ちゃん」と呼ばせてみたが、顔を真っ赤にして恥ずかしそうに呼んでくる一夏が猛烈に可愛くて思わずギュッと頭を自身の胸に抱き寄せて愛でる。

シャルロットの幸せパーセンテージはすでに某宇宙戦艦の主砲充填エネルギー並の数字であるに違いない。

 

「くぉ、くぉきゅーんがぁ~(こ、呼吸が~)」

 

結局一夏はしばらくシャルロットが満足するまでの間、強制ベアハッグをかけられ続けて朦朧とする意識の中で綺麗なお花畑を垣間見ることになった。

彼は危うく美少女の胸に埋もれて窒息死という、ある意味「男のこの世で一番幸せな死に方」を実践してしまうところであった。

 

 

 

ちなみに側にいた千冬がシャルロットを止めなかったのは完全に面白がっていたからであった。

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