ようこそ藍越学園へ   作:TAKUMAKI?

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サブタイはフランス語で二度目のデートという意味です。


第三十七話 Le deuxieme rendez-vous

私鉄(してつ)芦鹿島電鉄(あしかじまでんてつ)芦鹿島線(あしかじません)。通称「シカ電」。

それは一夏達が住む町に流れる私鉄の名前だ。

そして一夏達の住む町の最寄り駅、藤川(ふじかわ)

シカ電の駅の中で最も大きな駅であり、他の路線に接続している。

駅周辺には「レゾナンス」をはじめ、繁華街が広がり若者から年配までを網羅する複合施設が存在し、毎日賑わいを見せている。

その藤川駅のホームに2人組の男女がいた。

 

「本当に今日は遠出でいいのか?」

 

「うん。たまにはこういうのもいいかと思って」

 

2人組とはもちろん一夏とシャルロットである。

先日の約束通りに2人は2度目のデートの出掛けるところである。

シャルロットの申し出により、今回は藤川駅周辺で遊ぶのではなく少し遠出をすることになったのである。

理由として前回のGWのときのデートでは箒と鈴に尾行され、数人の知り合いに目撃されていたからである。

シャルロットはデート現場を見られるのは恥ずかしいらしく知り合いがあまりいないであろう事を想定して遠出を申し出たのだ。

一夏も特に反対する理由もないのでこれに従い、この日は少し遠くまで足を伸ばしてみようという事になったのである。

 

「さて、電車も来たし行きますか」

 

「うん」

 

休日で賑わうホームに電車が滑り込んできてホームに止まる。

それはまるで2人を楽しい場所連れて行ってくれる遊園地のアトラクションのように感じられた。

それに誘われるように2人は手をしっかりと繋いで電車に乗り込んだ。

 

 

side シャルロット

 

今日は僕と一夏の2度目のデートの日。

僕のたっての希望で今日のデートは少し遠くに足を伸ばしてみようという事になった。

電車に揺られながら一夏と他愛のない会話をしながら目的地に向かう。

一夏と話しているだけでこんなにも楽しい気分になるのはなんでなのかな。

以前一夏は僕と一緒にいるだけで楽しいと言ってくれた。

それは僕も同じで一夏と一緒にいるだけで楽しい。

こうして2人でデートできる事も凄く幸せ。

でも、僕たちの関係は未だ恋人同士というわけではない。

一夏はこうして僕とのデートを楽しんでくれている。

待ち合わせ場所で合流して駅に歩き出すと手を繋いでくれる。

そのことは凄く嬉しい。

でも、一夏にとって僕はまだ幼馴染。

一夏は鈍感だから、僕の想いは恐らく伝わってはいない。

だけどいつかはこの想いが届く日が来ると僕は信じている。

手に伝わる一夏の温もりが僕に温かな想いと嬉しい気持ちをくれる。

それだけでこの想いを信じていける気がした。

 

「次は~、芦鹿島~、芦鹿島~」

 

電車のアナウンスが次に止まる駅の名前を読み上げる。

僕たちが向かう目的地は『千羽谷(ちはや)』はまだ先みたいです。

 

「そういえば、芦鹿島といえばさぁ~」

 

「ん?なぁに?」

 

何かを思い出したように一夏が口を開いた。

僕はそれに耳を傾ける。

 

「芦鹿島といえば夏に大花火大会かあるんだよなぁ」

 

「大花火大会?」

 

聞いたことないイベントに僕はちょっと首を傾げる。

 

「ああ、そういえばシャルは日本に来たときは花火大会が開催される前にフランスに帰っちまってたから知らないんだったな。毎年8月の終わりに芦鹿島で開催されてる花火大会なんだけど、海に近い景勝地だから花火映えがバッチリでこの近辺じゃ夏の一大イベントって感じなんだよなぁ。祭りの会場なんかはカップルで賑わうし、異性を誘って見にいくデートイベントとしても有名なんだぜ」

 

「そ、そうなんだ・・・」

 

子供の頃に僕が一夏に会いに日本に来ていたときは良くても8月の20日くらいまでしか滞在していなかったのでその花火大会のことは知らないのも無理は無いと思った。

でも僕がフランスに戻ったあとにそんなイベントがあったんだ。

むぅ、ちょっと悔しい。

 

「じゃ、じゃあさ!その花火大会今年は僕と一緒に行かない?」

 

「ああ、いいぜ。シャルにもあの花火大会の花火は見せてやりたいしな」

 

「いいの!?ありがとう!!」

 

「?礼を言うほどか?」

 

快くOKをくれた一夏に思わず僕はお礼を言ってしまう。

でも言いたかったんだから別にいいよね。

また先の楽しみが増えちゃったなぁ。

 

「どうせならさ、箒や鈴達も誘ってみんなで行こうぜ。やっぱこういうイベントは大勢で行った方が楽しいもんな」

 

「・・・・・・・」

 

「アレ?急に暗い顔になったけど、どうしたんだシャル?」

 

「なんでもないよ・・・」

 

僕は2人きり(・・・・ )で行こうと思って提案したのにぃ・・・。

もう、一夏のバカァ・・・。

 

「シャル、具合でも悪くなったか?大丈夫か?」

 

何か勘違いしている一夏は僕の顔を覗き込んできたけど僕はぐいいっとその顔を押し返した。

 

「・・・・・・・」

 

僕は無言で目で訴える。

 

「シャル、あの―――――」

 

「一夏」

 

「お、おう?」

 

「乙女の純情をもてあそぶ男は馬に蹴られて死ぬといいよ」

 

つい僕はそんな過激なことを口にしてしまう。

でも一夏が悪いんだからそれは許されてもいいはずだよね。

 

「何だよ急に?――――――まあ、確かにそんな奴は死んだ方がいいとは思うけどな」

 

「鏡を見なよ」

 

「えっ?・・・ん~っとぉ」

 

電車の窓を鏡代わりにして一夏は急に身だしなみチェックを始めた。

そういう意味で言ったんじゃないんだけど・・・。

 

「はぁぁぁぁぁ~~~・・・・」

 

今日のデートの滑り出しは僕にとってはあまり良いスタートとは言えなかった。

 

side out

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

アイキャッチしりとり

 

シャル「果報は寝て待て」

 

 

 

一夏「天を(うら)みず人を(とが)めず」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

side 一夏

 

「千羽谷~、千羽谷です。お忘れ物の無いようご注意ください」

 

電車アナウンスが目的地の千羽谷に到着した事を告げている中、シャルがさっさとひとりで電車を降りて先に行ってしまう。

 

「お~いシャル、待てって!」

 

駅の改札を抜けたところで俺はシャルの手を取ってその場に止める。

シャルは千羽谷のことは詳しくないから逸れたりしたら大変だ。

けど、シャルの表情はまだちょっと不機嫌そうだった。

 

「なぁ、何をそんなに怒ってるんだよ」

 

「・・・・・・」

 

うっ、何か無言の圧力を感じる・・・。

俺、本当に何か気に障るような事言ったのかなぁ・・・。

 

「なあ、シャル。理由はわからないけど、何か気に障るような事言ったなら謝るから。ごめん!だから機嫌直してくれって」

 

千羽谷まで足をのばしてのデートだからこのままシャルが不機嫌だとせっかくのデートも暗くなってしまう。

シャルにそんな想いはさせたくないし俺もそんなのは嫌なので何とかシャルのご機嫌を取ろうと俺は必死に謝った。

 

「なら、僕のお願い聞いてくれる?」

 

おっ、必死の謝罪が功を奏したのかシャルの顔が少しイタズラっぽい笑顔になった。

理由はわからないけど俺のせいでシャルが機嫌損ねたみたいだし、ここは甘んじて受けようではないか。

 

「おう、いいぜ!何だって聞いてやる!」

 

「本当に?」

 

「男に二言は無い!!」

 

俺は自分の胸をどんっと叩く。

さあ!シャルのお願いとやらを叶えてしんぜよう!!

 

「わかった。それじゃぁ、えいっ!」

 

「おぅっ!?」

 

シャルは俺の横に来ると唐突に俺の腕に抱きついてきた。

今は2人で腕を組んで密着している状態だ。

 

「あ、あの~、シャル?」

 

「僕のお願いを聞いてくれるんでしょ?」

 

「えっ?あ、ああ・・・」

 

「なら、今日は1日僕と腕を組んでいる事。これがひとつめのお願い♪」

 

「う、うん」

 

密着しているからかシャルの温もりを感じる。

そ、それにシャルの胸が・・・。

 

「な、なあ、そのぉ・・・あ、当たってるんだが・・・」

 

意識してしまってどうしようもない俺は我慢しきれずにそれを口にしてしまう。

 

「何が?」

 

「い、いや、何がって・・・」

 

「ん~?」

 

確信犯な笑顔でシャルはさらに強く俺の腕に抱きついてくる。

やばい!ヤバイ!!YABAI!!!俺、ピンチ!!!!

し、しかし、腕に当たる胸の柔らかさに顔が思わず緩んでしまいそうになる。

ああ、男って悲しい生き物だ・・・。

 

「お、お願いなら、仕方ない、よなぁ・・・」

 

コレも俺が招いた事態だ。

やってやろうじゃないか!

 

「うん!じゃあ行こう♪」

 

「お、おう!」

 

シャルに腕を引かれて俺達は歩き出す。

 

「♪~♪~」

 

どうやらシャルの機嫌も直ったようで嬉しそうに鼻歌を歌いながら歩いている。

俺もシャルの機嫌が直ってくれてホッとした。

シャルのひとつめ(・・・・)のお願いもちゃんと聞いたし・・・

 

 

 

ひとつめの・・・・

 

 

 

 

ひとつめっ!?

 

 

 

「ちょぉっと、シャルロットさんや?」

 

「ん?なぁに一夏?」

 

眩しい笑顔でシャルが俺を見つめてくる。

その笑顔があまりにも清々しいのでちょっと惚けてしまう。

 

「あ、いや、あのさ、さっきひとつめのお願いって言ったか?」

 

「うん、言ったよ」

 

「お願いってひとつじゃないのか?」

 

「一夏はひとつで許してもらえると思ったの?」

 

「うぅ・・・」

 

な、なんだろうか・・・。

シャルの顔は笑っているのだが、何かほんの少しだけ怖い・・・。

俺ってさっきの電車でお願いひとつじゃ許されないほどマズイことを口にしたのだろうか・・・。

 

「一夏、男に二言は無いんだよね」

 

「お、おう」

 

「だったら、僕のお願い最後までちゃんと聞いてね」

 

「わ、わかりました」

 

「うん!えへへ♪」

 

嬉しそうにシャルがはにかむ。

そんなうれしそうな顔をされたらお願いされるのも悪くないと思えてしまうあたり、やっぱり俺はシャルのこの笑顔を見るのが好きなんだなぁと改めて思ったのであった。

 

晴れ渡る5月終わりの日曜日。

こうして、俺達の2度目のデートは始まったのであった。

 

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