「これは・・・凄いね・・・」
シャルロットは周囲を見渡しながら、感心半分、驚き半分といった感じで呟く。
「まあ、初めて来るやつにはそうかもな。俺は弾たちとたまに来るけど、不慣れのやつは雰囲気に圧倒されるかもな」
「う、うん、本当に凄いね、ここ・・・」
キョロキョロと辺りを見回すシャルロットの姿は一夏の目には何だか微笑ましく見えたのであった。
さて、一夏とシャルロットがどこにいるのかというと。
side 一夏
「ねぇ一夏、あそこは何のお店なの?」
千羽谷でのデートも結構色んな場所を回ってそろそろ行く場所に悩み出していたころにシャルが一軒の建物を指差した。
「ああ、あそこはゲームセンターだ」
「へぇ、あれがゲームセンターなんだ・・・」
「アレ?シャルってゲーセン入ったことなかったっけか?」
「え?あ、うん。入った事は一度もないよ。フランスではそういうお店は少ないし、日本に来てた時でも寄り付かない場所だったし」
う~む。
そういえばそうかもしれない。
シャルは日本に来てた時は俺や箒や鈴に付き合って遊ぶのが常だったからな。
箒も鈴も結構活発だったから遊びはアウトドアが多かったからゲーセンなんて寄り付かなかった。
まあ、その頃はゲーセンに行くほどの金を持ち歩いてはいなかったんだけどな。
「入ってみるか?」
興味があるようだし、入ってみるのも悪くないかと思って俺はゲーセンに入るか訊いてみた。
「え?いいの?」
あんな興味あり気な瞳で見てたのに遠慮なんかしなくてもいいのになぁ。
「いいからいいから。ほら、入ろうぜ」
「う、うん・・・」
組んだ腕でシャルを引いて俺達はゲーセンの中へと入っていった。
入ってから少しの間はシャルが雰囲気に圧倒されていた。
店の規模自体はそれほどではないし、藤川にもここより大きい規模のゲーセンはいくつかある。
が、初めて入るシャルはまるで別世界にでも迷い込んだかのようで辺りをキョロキョロと見回していた。
「音が凄いね。ちょっと騒がしいかも・・・」
「まあ、それがゲーセンだしな。慣れれば気にならなくなるけど」
ゲーセンなんてうるさいくらいがちょうどいいくらいの場所だ。
シャルもそのうち慣れるだろう。
「何かやってみるか?」
「え!?いいの!?」
「せっかく入ったんだし、遠慮すんなって。何かやりたいのはあるか?」
「うぅ~ん・・・」
シャルは困った表情で辺りを見渡す。
ゲーセンに初めて来たシャルにとっては選ぶのは難しいのかもしれない。
「ねぇ、あれは何のゲームなの?」
シャルはひとつの筐体を指差していた。
それはクレーンゲームの筐体だった。
「ああ、あれはクレーンゲームって言ってな。クレーンを操作して中にある景品を取るゲームだ」
「へぇ、うん、あれをやってみたい」
「よし、行くか」
シャルの腕を引いて俺達はクレーンゲームの方へ向かう。
クレーンゲームの筐体はいくつかあって、その中でもシャルが興味を引かれたのはぬいぐるみを取るマシーンのようだ。
「この機械をやってみるよ。可愛いぬいぐるみがいっぱいあるし」
「そっか。じゃ、ほいこれ」
そう言って俺は100円玉を数枚シャルに手渡す。
「え!?いいよ一夏!お金なら自分で出すから!」
「遠慮すんなって。初めてやるんだしこれくらい俺が出してやるよ。それに俺も男だしな。これぐらいはカッコつけさせてくれって。な?」
デートなんだしゲーム代くらいは男の俺がドーンと出してやらないとな。
「う、うん、わかった。ありがとう」
お礼を言うとシャルはクレーンゲームにお金を入れた。
「これってどうやればいいの?」
「簡単だよ。そのレバーを操作して、欲しいぬいぐるみの上に持っていくんだ。位置を決めたら隣のボタンを押す。するとクレーンが下がって拾いあげてくれる」
まあ、うまくいけばの話だけどな。
「わかった」
シャルは真剣な表情でレバーを動かしはじめた。
クレーンの動きに四苦八苦しながらも目的のぬいぐるみの上にクレーンを移動させる。
どうやらシャルはテディベアを狙っているようだ。
「え~っと、ここかな?もう少し右かな?」
レバーで微調整をしながらクレーンを動かす。
「よし、ここだ」
シャルはボタンを押した。
クレーンが下がってぬいぐるみのところまで下がっていく。
うむ、初めてのわりには位置取りは悪くない。
しかしもちろん、そんな簡単に景品が取れるはずもなく、クレーンは景品を掴んだものの落としてしまった。
「あっ・・・」
残念そうな声を漏らすシャル。
位置取りは悪くなかったんだけどなぁ。
もしかしたらクレーンのアームが少し弱く設定されているのかもしれない。
「一夏、この機械、欠陥だよ」
「へ?」
突然シャルがそんな事を言い出すので俺は呆気に取られてしまう。
「だって、掴んだのに落としちゃったよ」
ああ、そういうことね。
「あはははっ」
「な、何で笑うの!?」
「毎回掴めたらゲームにならないだろ?」
「じゃ、じゃあ、何回も挑戦するの?」
「そうそう。だから何枚か100円玉渡したんだし」
「あ、そうだったんだ」
初めてだからわからないのも無理ないのかもしれないな。
クレーンゲームは取ったり取れなかったりするから面白いんだし。
まあ、いくら注ぎ込んでも取れないときは取れないけど。
「じゃあ、もう一回やってみるよ」
「おう。頑張れよ」
シャルは再びお金を入れて操作を開始する。
俺は見ながら応援することにした。
あれからシャルは5回ほど挑戦したがぬいぐるみを取ることはできなかった。
「う~」
恨めしげな声で筐体を睨む。
『クレーンゲームは貯金箱だ』なんて格言があるくらいだし、そう簡単にはいかないんだよな。
あれ?UFOキャッチャーだっけ?
まあ、どっちも似たようなモンか。
「一夏~」
シャルがちょっと瞳を潤ませて俺を見つめてくる。
う~む、そんな瞳で見つめられると何とかしてやりたくなるなぁ。
「ちょっと俺がやってみるか。俺もあんまり得意じゃないんだけどな」
「わかった。頑張って一夏」
「おう。あのくまのぬいぐるみでいいのか?」
「うん。あれをお願いね」
さて、シャルの為に頑張りますか。
「シャル、横の方から見て、クレーンの位置を確認してくれないか?」
「うん、わかった」
シャルが脇に回ってスタンバイする。
ひとりでだめならふたりで挑戦すればいい話だよな。
よし!チャレンジ開始だ!
俺はお金を入れてレバーを動かす。
「シャル、そっちはどうだ?」
「もうちょっと・・・一夏から見て前かな」
「おう」
俺は慎重にレバーを動かす。
「あ、ちょっと行き過ぎたかも」
「ああ」
ほんのちょっとだけ戻す。
この微調整が難しいんだよな。
「うん、そこでいいと思う」
「そうか、よし!じゃあ、下ろすぞ」
ボタンを押すと、クレーンがじれったいほどゆっくり降下していく。
それは、狙ったぬいぐるみをとらえて・・・
一気に持ち上げた。
「やった!」
シャルが喜びの声を上げる。
だが、まだ油断してはならない。
「待て待て、まだ途中で落とすかもしれないだろ?」
「そ、そうだね」
シャルは真剣な眼差しでターゲットの行方を追う。
そして、景品はポケットの中へと吸い込まれた。
「よし!成功だ!」
「うん!やったね一夏!!」
シャルは手を叩いて大喜びしている。
「ほらシャル。お前にやるよ」
俺はゲットしたぬいぐるみをシャルに差し出す。
「え!?一夏が取ったのに僕が貰っていいの!?」
この遠慮深さはシャルの美点なのかもしれないけど欠点でもあるよな。
こういうときは素直に受け取ってくれていいのに。
「男の俺が持ってたら気持ち悪いだろ。それにシャルにあげようと思って取ったんだし、遠慮しないで受け取れって」
くまのぬいぐるみを持ち歩く男。
想像しただけでも気持ち悪いぞ・・・。
「うん!ありがとう一夏!!」
シャルは嬉しそうにぬいぐるみをギュッと胸に抱きしめた。
うんうん、喜んでくれて何よりだ。
そのぬいぐるみもシャルに持ってもらった方が嬉しいだろう。
「さて、次は何やろうか?」
「え?うぅ~ん、そうだねぇ・・・」
またシャルが周囲をキョロキョロと見回す。
別に焦る必要はないんだけどなぁ。
まあ、今はシャルとゲーセンを楽しむとしよう。
side out
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
アイキャッチしりとり
シャル「泣くほど嬉しくなんかないだからぁ・・・グスッ」
一夏「すっかり、ハマッてます」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
side シャルロット
クレーンゲームを終えた僕と一夏は体感ゲームコーナーに移動していた。
色んなゲームの筐体があって僕はついキョロキョロしてしまう。
「何かやってみたいのはあるか?」
一夏が僕に訊ねてくる。
正直、パッとやりたいものは思いつかなかった。
「じゃあ、一夏が選んで」
「え?俺が?」
一夏に選択を委ねる。
正直、僕はどれがいいかなんてわからないから、一夏が選んだのをやってみようと思った。
「そうだなぁ・・・」
一夏が筐体を見回す。
「う~む、格ゲーは無理だよな。音楽体感系やレーシングゲームも初心者には酷だろうし・・・。あっ、シャル、あれはどうだ」
一夏が指差したのは大型のディスプレイとその前に拳銃のようなものが置いてあるゲームの筐体だった。
ガンシューティングゲームって言うらしい。
「あれだったら初心者にも比較的楽だと思うぞ。2人で協力プレイも出来るし。どうする?」
「うん。じゃあ、あれをやろう」
「よし!」
一夏に連れられて筐体の前へ向かう。
「これってどうやるの?」
「簡単だよ。画面に出てくる敵をこの銃で撃てばいいだけだ。普通に引き金を引けば弾が出る。引きっぱなしにすればフルオートになるんだよ」
「弾が切れたらどうするの?」
「画面の外を撃てばリロードになる。あと、敵はテロリストだけど、民間人も出てくるぞ。民間人を撃ったらマイナスポイントになる。画面の上のライフが無くなったり民間人を撃ち過ぎたりしたらゲームオーバーだ。わかったか?」
「うん。大体は・・・」
「じゃあ、やるか」
そう言うと一夏は2人分のお金をゲームに入れようとする。
「ああ一夏、僕の分は自分で出すからいいよ」
「いいっていいって。1回分くらいなら出してやるよ。コンテニューするときは自分で出してくれよ」
「う、うん」
一夏って変なとこで強引なんだから・・・。
「始めるぞ」
「う、うん」
コインを入れるとゲームがスタートした。
「わ、わわ、勝手に前に進んでるよ」
「そういうもんだって。撃つことに集中してればいいの」
「わ、わかった」
うぅ~、何だか緊張するよ~。
「ほら、敵が出たぞ」
「えっ?わ、わっ!」
いかにもテロリストといった感じの黒服の男が数人画面に現れてこっちに発砲してくる。
この人たちを撃ち倒せばいいんだね。
よ~し!
(バァンッ!バァンッ!バァンッ!)
意を決して銃を構えなおすとテロリストたちは撃たれて画面から消えた。
「こんな感じで」
どうやら一夏はお手本を見せてくれたみたい。
「う、うん、僕も頑張るよ」
「よし!ほら次が来たぞ!」
画面に目を戻すと新たに黒服の男が数名現れていた。
よ~し!頑張ってクリアするぞ~!
「うわっ!撃たれた!」
「ドンドン敵が出てくるぞ。慎重に狙いを定めながら、ガンガン撃っていかないと」
「う、うん」
僕は慎重に狙いを定めながらテロリストたちを撃ち倒す。
慎重になりすぎて撃つまでに時間掛かってるけど一夏がカバーしてくれていた。
「一夏、凄く上手いね」
「そうか?これぐらい普通だぜ。弾と数馬はもっと上手いしな」
画面に目を向けながら会話をする。
目を逸らすとたちまち敵の銃弾の的になっちゃうから目は画面に向けたまま。
僕と一夏は協力して敵を打ち倒していく。
何かこういうのいいなぁ。
2人で協力してひとつの事に夢中になるのって。
2人の共同作業って言うのかなぁ。
僕はチラッと横目で一夏の方を見る。
その表情は真剣そのものだった。
的確に敵を撃ち倒していく姿が、まるで映画の主人公のようで―――――――――――凄く格好良い・・・。
そういえば、昔見たアクション映画でヒーローがヒロインと協力して巨大な悪の組織と戦う映画を見た事があったなぁ。
まるで一夏がその映画のヒーローで、僕がヒロインになったみたい。
2人で幾多の困難を乗り切って最後は組織を壊滅させることに成功して、それが終わってからはヒーローとヒロインがお互いに抱いていた想いを打ち明けあってキスシーンで締めくくり。
これが終わったら僕と一夏も――――――――――――――――――――――――――――って!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ぼ、僕は一体何を考えてるんだぁ!!!!!
ち、違うんだよ!!
決してハリウッド映画のヒーローみたいな格好した一夏とそのヒロインのような格好した僕がキスしようとしてたところを想像した訳じゃないんだよ!!
とゆーか僕は一体誰に向かってこんな言い訳みたいな事言ってるのかなぁ!!?
「おい、シャル」
「ふえっ!?な、何かな!?」
「お前、民間人撃ち過ぎ。あとひとり撃ったらゲームオーバーになるぞ」
「へ?」
画面に目を向けるとライフの下にこう書かれていた。
『Civilian Kill 9 persons(民間人を撃った人数 九人)』
「うわぁ!」
どうやら考え事してたせいで引き金握りっぱなしでフルオートになってたからそのまま民間人も撃っちゃってたみたい。
い、いけないいけない。
集中しないと。
「ほらシャル。ジュースだ」
「あ、ありがとう」
結局ガンシューティングは3ステージくらいで僕も一夏もゲームオーバーになっちゃったのでそのままそのゲームを切り上げてきた。
一夏は「コンテニューするか?」って聞いてきたけど僕は結構楽しめたからもういいかと思って辞退した。
今は近くにあったソファーに腰を下ろして一夏が買ってきてくれたジュースを飲んでいる。
「あとはどうする?他にも何かやりたいのあるか?」
「う~ん・・・。どうしよう」
三たび僕はキョロキョロと辺りを見回す。
このフロアにはドラムみたいなやつを演奏するゲームとかレーシングカーのコックピットみたいなゲームなんかがあるけど僕は初心者だからああいうのがうまくできるとは思えないなぁ。
何かいいのないかなぁ。
「ん?」
僕の目は一台の大きな筐体に向けられていた。
そこから一組のカップルが出てきたからだ。
その筐体の周辺には同じような筐体が並んでいてカップルの比率が高かった。
「ねぇ一夏、アレは何をするゲームなの?」
僕は筐体を指差した。
「ん?ああ、アレはシールプリントだな。撮った写真でシールを作る機械だよ」
「写真?シール?」
「やってみるのが手っ取り早いか。行こうぜ」
「あ、うん」
一夏に手を引かれてシールプリント機のところへと向かった。
「ほらシャルここに立って」
「う、うん」
一夏と2人揃って仕切られた中に入る。
一夏は僕の隣に立つと機械にお金を入れた。
「よくわからないんだけど・・・、どうすればいいの?」
一夏との距離が近くて結構落ち着かない。
「まずは・・・、この中から好きなワクを決めて、それからカメラの前に立つだけ。簡単だろ?」
画面に記された色とりどりのワクを一夏が指を指して説明してくれる。
そのときに肩と肩が少し触れ合う。
なんだろう、狭い空間の中だからだろうか?
一夏を近くに感じてやっぱりちょっと落ち着かない。
「このペンみたいなのは何?」
「それで画面に絵や文字を書くと写真に写るんだよ」
「写真なのに絵や文字が入るの?変わってるね」
「まあ、それは人それぞれだと思うぞ。ほら、シンプルにこんな感じでいいだろ?」
一夏が決めたワクは白いシンプルなデザインのものだった。
「うん。それでいいと思うよ」
「それじゃあ、さっそく写ろうか」
画面に僕と一夏が並んで映し出される。
画面の端と端いっぱいだった。
「シャル、もうちょっと真ん中に寄ってくれ」
「う、うん」
真ん中に身を寄せるとより一層、一夏と身体が密着する。
一夏の匂いが少しだけ感じられてドキンとした。
「シャル、ちょっと表情カタイぞ。もう少し笑ってくれって」
「え?あ、う、うん」
「せっかく記録に残るんだ。だったら、笑顔の方がいいだろう。それにシャルは笑ってた方が可愛いぞ」
「ふえっ!!か、か、か、かわ、可愛い!!?」
突然の不意打ち!
こんな至近距離で可愛いって言われた!!
「ん?どうしたんだ?」
僕にあんなこと言っておいてハテナ顔の一夏。
やっぱり自覚無しで言ってたんだ。
でもやっぱり気になったので訊いてみるこtに。
「あ、あのさ、笑ってた方が可愛いって、嘘じゃない・・・、よね?」
「嘘じゃないって。信じろよ」
即答だった。
あまりにもしれっと言ってくる一夏にちょっとだけドギマギしちゃうよ。
で、でも、可愛いって思ってくれてるんだ。
それは凄く嬉しい!
「ほら、撮るから笑えって」
「う、うん。こう?」
ニッコリと笑ってみせる。
だ、大丈夫かなぁ?
変じゃないよね?
「・・・・・・」
「ど、どうしたの一夏?」
「へ?い、いや、別に」
「も、もしかして、僕の笑顔変だった?」
うぅ~、一夏に変だって思われたら僕立ち直れないかも・・・。
「い、いや!そんなことはないぞ!すごくかわ――――――」
そこまで言うと一夏は口を押さえてしまった。
えっ?一夏は今なんて言おうとしたの?
「かわ――――」って言ってから次に続く言葉って・・・。
「シャ、シャル。もう一回、笑ってくれるか?」
「え?もう一回?」
「う、うん。写真撮り損ねちまった。すまん」
そう言う一夏の顔は少し赤かった。
なんか誤魔化そうとしている感がありありと伝わってきた。
もしかして一夏、僕に見惚れてドキドキしてくれたのかな?
そうだと凄く嬉しい。
そう思うと緊張がスッとほぐれていった気がした。
「わかった。それなら、仕方ないね。今度は撮り損なわないでね?」
「お、おう」
また僕はにっこりと笑ってみせる。
一夏も画面の側にあるボタンを押した。
すると数秒後に「パシャッ」という音が聞こえた。
「ほら、終わったぞ」
「うん♪」
僕と一夏は機械の外へと出た。
side out
一夏とシャルロットはシールプリント機の中から出て、今は出来上がりを待つ状態だった。
「だけど、凄いんだね」
「ん?何が?」
「日本ではこんなことができるんだね。僕知らなかったからさ」
「まあ、他にももっと色んな機能あったりするみたいだけどな。俺も全然やった事無いから詳しくは知らないけど」
そこに出来上がった写真がシールプリントとなって出てきた。
「おっ、出てきたな。ほら、シャル」
一夏は出来上がった写真を手に取ると、シャルロットに差し出す。
「・・・・・」
シャルロットの目には仲良く並んで写真に写る自分と一夏が映っていた。
それを見るシャルロットの表情は嬉しさ半分、恥ずかしさ半分といった感じだった。
「どうした?もしかして写りでも悪かったか?」
「いや、そうじゃないよ」
「そうか?」
「ま、まるで僕と一夏が本当に恋人同士みたいで凄くいいなぁと思ったくらいで」(ボソッ)
「ん?何だって?」
「な、何でもないよ!!」
手をブンブン振るシャルロット。
恥ずかしい事を小声で口走っていた。
それを一夏に聞かれなかったのは幸いなのかはわからない。
「よし、じゃあこれは半分ずつな」
一夏は近くにあった鋏でシールプリントを半分に切り分けた。
「ほい。シャルの分だ」
「あ、ありがとう」
シャルロットは切り分けられたシールプリントを受け取り、もう一度それを確かめた。
そこには一夏とシャルロット。
まるで、恋人同士のように仲良く並んで写っていた。
シャルロットはしばらくこの写真を大切に保管しようと固く決めるのであった。
「さて、あとはどうする?」
一夏がシャルロットに訊ねる。
正直、シャルロットはこの写真を撮れただけで満足だった。
「そろそろ出ようか?あんまりこれといってやりたいゲームとかもないし」
「そうだな。とりあえず、またブラブラするか?」
「うん♪」
一夏とシャルロットはゲーセンを後にした。
シャルロットの腕は一夏の腕に回されて腕組み状態だ。
その反対の手には一夏がゲットしてくれたクレーンゲームの景品のテディベアの入った袋が提げられていた。
そして、2人で撮った写真は大切に大切にシャルロットのバッグに仕舞われていた。