ようこそ藍越学園へ   作:TAKUMAKI?

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今回のスポットは埼玉県の某所をモデルにしました


第四十二話 デートの最終スポット

ゲームセンターを後にした一夏とシャルロットは再び千羽谷の街を散策していた。

基本的に2人のデートは目的地を定めるということはしていない。

ただ2人でブラブラと歩いて気になる場所ができたら寄ってみる。

これが彼らのデートスタンスだった。

このデートスタンスが彼らに思わぬ幸運をあたえるのであった。

 

今2人がいるのは千羽谷駅から少し離れたところにある小さな商店街。

目的地を決めるでもなくブラブラと歩いていた2人はいつの間にか駅からちょっと離れたところまで足を伸ばしていた。

都心に近い千羽谷だが2人が訪れたこの商店街は少し趣が違っていた。

車道の両脇に長屋づくりの古い建物の中にある数々のお店が軒を並べている。

店並みも駄菓子屋、饅頭屋、煎餅屋、乾物屋、呉服屋などそれなりの店がそろっている。

ちょっとした京都のようなものだ。

まるで江戸の面影を彷彿させるような感じだった。

 

「うわぁ~!凄いよ一夏!本当に江戸時代みたいだよ!!」

 

目の前に広がる街並みを見て、シャルロットは目を輝かせていた。

結構日本贔屓なところがあるシャルロットだが、こういった江戸の街並みなんかはテレビでしか見たことがなく、実際に自分の目でこういった街並みを見るのは初めてだった。

 

「俺もこんな場所があるなんて知らなかったなぁ。これはいい場所見つけたかもな」

 

一夏自身もこの街並みにちょっとした驚きと感動を覚えていた。

何故このような場所にこのような商店街ができたのかはわからないが今の2人にはどうでもいいことだった。

突然訪れた幸運に2人は大いに乗っかることにした。

 

「一夏!ちょっとここを回ってみようよ!」

 

「そうだな!せっかく見つけたんだし、回ってみるか!」

 

「うん!」

 

2人は商店街へと歩き出した。

 

「ねぇねぇ一夏!あのお店なんだろうね!?」

 

組んでいた腕で一夏を引っ張ってシャルロットははしゃぎながら一夏を連れ回していた。

 

 

1.煎餅屋

 

「あちっ!あちちっ!!」

 

「もう一夏、落ち着いて食べなよ」

 

煎餅屋で買った出来立ての煎餅を2人で齧る。

一夏は慌てて食べたせいで熱さにやられちゃっていたのでシャルロットが「落ち着いて食べて」と嗜める。

 

「だってこういうのは熱々のうちに食わないとさ」

 

「でも子供じゃないんだから。ちょっと落ち着いて。ね?」

 

「わかったよ」

 

シャルロットは一夏の言う事も凄くわかった。

煎餅は醤油がいい感じに染み込んでいてとても美味しかった。

 

「よーし!もう1枚行くか!」

 

「えっ!?まだ食べるの!?」

 

「だってほら!このおこげ黒胡椒ってやつも美味そうだぞ!奢ってやるから食おうぜ!」

 

「う~ん、確かに美味しそうだけど、一夏今日はお金結構出してくれてるから何か悪いよ・・・」

 

煎餅1枚は大した値段ではないのだが今日は一夏に何かとお金を出してもらっているシャルロットは少し気が引けていた。

 

「遠慮なんてしなくていいのにな。あ、だったら半分こにしようぜ」

 

「ええっ!?」

 

「それだったら1枚買うだけで済むし、2人で食べられるだろ?おじさーん!おこげ黒胡椒1枚ねー♪」

 

シャルロットの返事も聞かずに一夏はおこげ黒胡椒煎餅を注文する。

一夏の提案に根負けしたのかシャルロットは大人しく従い、2人で仲良く半分こにした煎餅を口にするのだった。

 

2.陶器屋

 

「ひゃ、ひゃくまん・・・」

 

「高いねぇ・・・」

 

輪島塗の陶器を眺めていると物凄い高い商品があった。

 

「あの絵は金三十三万って書いてあるよ」

 

「もう重要文化財クラスとかなんじゃないのかこれ」

 

この店は茶碗や箸なども置いてあって値段も手ごろで販売されているがショーケースに並べられていたそれは確かに重要文化財クラスの陶器だった。

 

「お?こういうのいいな」

 

一夏が手に取ったのは茶碗。

茶碗の底に色々な絵が描いてあってそれを見るだけでも結構楽しめるのであった。

 

「お?これは夫婦碗だってよ。同じ柄で揃えてあって正に夫婦って感じするな」

 

夫婦。

そう聞いたシャルロットはその茶碗を使って仲良くご飯を食べている一夏と自分をを想像した。

 

(いいなぁ、将来はこんな感じで仲良くお揃いのお茶碗で食事するのも悪くないかも。って、何考えてるんだろうね僕は/////)

 

そんな想像をしながら一夏と色々な茶碗や箸などを眺めていた。

 

 

3.呉服店

 

「お!この柄いいなぁ」

 

一夏がひとつの着物の生地を手に取って見ていた。

生地は海を表すかのような青で、波を表すような曲線が描かれていて、波間にはフリーハンドによる幾何学的な丸や四角が浮かんでいる。

 

「一夏って色は青が好きなの?」

 

偉大な海のような色彩に魅入れていた一夏にシャルロットが疑問を投げかける。

 

「色?そうだなぁ。派手な色じゃなきゃ何でも好きだぞ。まあ、強いて言うなら白かな?清楚って感じするし」

 

「そうなんだ。一夏は白が好きなんだ」(ボソッ)

 

一夏に聞こえないようにシャルロットが呟く。

いい事聞いちゃった的な笑顔でコクコクと頷いている。

今度から一夏の好みに合わせた服装をしてみようと心掛けるシャルロットだった。

 

「お!こっちの柄もなかなか良いな。シャルはこの柄どう思う?」

 

「ん?どれ?」

 

その後も次々と着物の柄を物色する2人であった。

 

4.ガラス細工店

 

「一夏、これ可愛いよ~」

 

「へぇ、凄いな。ガラス細工ってこんなのまでできるんだな」

 

ガラス細工で作られた器や花瓶や小物が立ち並ぶお店で2人は商品を物色していた。

色とりどりガラス細工があって、シャルロットが目に留めたのは猫や犬や鳥などの動物達を模ったミニチュアのガラス細工だった。

 

(とても可愛く作られていて凄くいい。いいなぁ、ちょっと欲しいかも)

 

「シャル、それが欲しいのか?」

 

シャルロットが物欲しそうな目でミニチュアを眺めていると一夏がそう声をかけてくる。

 

「えっ?う~ん・・・、欲しいけどちょっと値段が・・・」

 

「どれ?うわっ、意外とするんだな・・・」

 

ちょっと高校生には高い金額が値札に書かれている。

『ミニチュアアニマル どれでもおひとつ15000円』

さすがに高校生が手を出すには高い値段だ。

一夏もよかったら買ってあげようかと思ったのだがちょっと予想外の値段だったので尻込みしてしまう。

ぼったくりじゃないかと思ったほどだ。

 

「あ!ねぇ一夏、あっちに綺麗な色のガラス細工があるよ!」

 

どうやらシャルロットの興味は別のものに移動したようだ。

一夏も内心ちょっとホッとしつつシャルロットの後に続いた。

 

 

その後も一夏とシャルロットはこの商店街の数あるお店を網羅しながら散策を楽しんだのであった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

アイキャッチしりとり

 

一夏「すっとばしていこばい!」

 

 

 

シャル「いけないなぁそんなこと」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

商店街を一通り回り終えた一夏とシャルロットは甘味屋に立ち寄って一休みしていた。

 

「ふぅ~。結構時間かけて回ったな」

 

店の前の長椅子に腰掛けてお茶を飲みながら一夏が言う。

空をみればもう太陽が傾きかけ夕方になろうかという時間だった。

 

「そうだね。僕もちょっと時間忘れてはしゃいじゃったかな」

 

シャルロットも笑ってお茶を飲みながら一夏の言葉に同調する。

時刻はもう17時過ぎだ。

千羽谷から藤川まではシカ電でおよそ40分ほどかかり、この分では帰りは19時近くになってしまうだろう。

藍越学園の寮は門限が20時なのでシャルロットはそれまでに帰らなければならないのでもうそろそろ帰る時間が迫っていた。

 

「そろそろ時間も時間だし、ここの抹茶アイス食ったら帰るか」

 

「うん、わかった。残念だけどそうしよう」

 

シャルロットは少し残念そうに声を漏らす。

楽しかった時間ももうすぐお開きとなってしまうのが寂しかった。

 

「お待ちーっ。抹茶アイス2つになりまーす」

 

威勢の良いおばさんの店員が一夏達の座る長椅子のところに抹茶アイスを運んできた。

 

「ごゆっくりどうぞーっ」

 

手際良く抹茶アイスを一夏達の側に置くとそそくさと店の中に引っ込んだ。

 

「よし、じゃあ頂こうか」

 

「一夏、ちょっと待って」

 

シャルロットが待ったをかける。

一夏はスプーンを止めてシャルロットの方を見る。

 

「何だ?どうしたシャル?」

 

「いや、ね、またお願いしようかと思って」

 

「へ?お願いって・・・」

 

この日の一夏はシャルロットのお願いを何でも聞く約束をしているのだが、この状況でお願いを持ち出された一夏はちょっと嫌な予感がした。

「お願い、約束、アイス、スプーン」

恐らく解る人はこの4つのキーワードでわかるであろう。

 

「お、おい、お願いってまさか・・・」

 

どうやら一夏もピンと来たようです。

シャルロットは抹茶アイスをスプーンで掬うと一夏の方へ差し出す。

 

「はい一夏、あ~ん♪」

 

「やっぱりかーー!!」と一夏は思った。

昼食時のキュービックカフェでやったときは他に客もいなかったのでまだよかったのだが、この甘味屋は大きな通りに面している上に一夏達が座っている長椅子は店先なので大通りから丸見えになる。

 

(こ、これはさっきと比じゃないほど恥ずかしいぞ!!)

 

恥ずかしさのあまりに差し出された抹茶アイスを口にするのを渋る一夏。

しかし、シャルロットには一夏を逃がさない奥の手があるので、その札を躊躇い無く切る。

 

「一夏、男に二言はないんだよね?」

 

もはや退路は断たれた一夏。

 

「わ、わかったよ・・・」

 

最早覚悟を決めた一夏であった。

 

「はい、あ~ん♪」

 

「ぐっ!・・・、あ、あ~ん」

 

(パクッ)

 

「おいしい?」

 

「ああ、うまいよ・・・」

 

まるでさきほどキュービックカフェの焼き増しのように一夏はそっぽ向きながら答える。

もちろん一夏は味はほとんどわからなかった。

 

「じゃあ、今度は一夏が僕に食べさせて」

 

「やっぱり、そうなるんだな・・・」

 

「うん♪」

 

キラキラ光る笑顔でシャルロットが微笑む。

こうなってしまっては一夏に勝つ手段はない。

 

「じゃあシャル、あ、あ~ん」

 

「あ~ん」

 

(パクッ)

 

「ど、どうだ?」

 

「うん、美味しい」

 

頬を赤く染めて可憐に微笑むシャルロットに一夏はちょっとドキドキしてしまう。

最初は渋るものの、やてみれば意外と悪くないと思ってしまう一夏であった。

 

「君達、ちょっといい?」

 

「「はい?」」

 

突然2人は声をかけられた。

声をかけられた方を見るとそこには20代中盤くらいだろうか、眼鏡をかけたキャリアウーマンといった感じの女性が立っていた。

 

「君たち高校生?」

 

「え?あ、はい、そうですけど。何か御用ですか?」

 

「ああ、ゴメンなさい。私はこういう者なんだけど」

 

女性は胸ポケットから小さな紙切れを出して渡してくる。

おずおずと受け取った名刺には『○○社 インフィニット・ストライプス 副編集長 黛 渚子』書かれていた。

『インフィニット・ストライプス』は中高生、ティーンエイジャー向けのファッション雑誌で、ファッションに敏感な若者から絶大な支持を受けている雑誌だ。

なぜ、そんな人気ファッション雑誌の副編集長が2人に声をかけてきたかというと。

 

「今度うちの雑誌で街中にいるカップルの特集を組むことになってね。君達が仲良く食べさせあいっこしてたからいいモデルになるかと思って」

 

「み、見てたんですかっ!?」

 

衝撃の事実に顔を赤くして驚く一夏。

シャルロットも真っ赤になっていた。

 

「黙って見ててごめんなさい♪で、よかったら写真撮らせてくれない?」

 

と、カバンからデジカメを取り出して片手であげる。

一夏は正直こういうのは苦手なので丁重にお断りを入れようかと思っていた。

が、服の袖が引っ張られた。

 

「記念に撮ってもらおうよ」

 

シャルロットが覗き込むようにして小声で言ってくる。

 

「記念って、何の?」

 

「今日のデートの記念に」

 

「で、でも、いいのか?」

 

「僕はいいよ」

 

シャルロットは乗り気のようだった。

シャルロットにこう言われては一夏も断ることはできずに渋々ながら取材に応じた。

 

「彼女の方は日本人じゃないわよね?何処の国の人なの?」

 

「えっと、出身はフランスです」

 

「へぇ~、彼女かわいいわねぇ。彼としては自慢じゃない?」

 

「はぁ、まぁ」

 

「付き合ってどのくらい?」

 

「え?いや、俺達は―――――」

 

「1ヶ月ぐらいです」

 

「えっ!お、おいシャル!?」

 

シャルロットは笑いながら一夏の腕に自分の腕を絡めてそう言った。

 

「いいじゃん。そういうことにしておこう。ね♪」

 

小声でシャルロットがそう告げてくる。

彼女がそう言うの一夏もそれに頷いておくことにした。

 

「じゃ、撮るよ。ハイ、チーズ」

 

まぶしいフラッシュが2人を照らす。

 

「もう一枚お願い。ハイ、チーズ」

 

二度目のフラッシュが2人を包む。

 

「いい画が撮れたわ♪ありがとうね♪」

 

一通り撮り終わった女性はカメラをカバンに仕舞った。

 

(顔ひきつってたかな?)←一夏

 

(やっぱり、ちょっと恥ずかしい・・・)←シャルロット

 

「最後に名前教えてもらってもいい?フルネームじゃなくていいけど」

 

「ああ、俺はイチカです」

 

「ぼく―――、私はシャルロットです」

 

2人は無難にファーストネームを名乗った。

シャルロットは僕と言いそうになったのを私と言い直した。

 

「イチカくんとシャルロットちゃんね。ご協力ありがとうございました!それじゃ、本当にありがとうね」

 

そう言って女性は去っていった。

 

「雑誌、載ったりして」

 

「載らないだろ」

 

「だよね」

 

載る訳無いと顔を合わせる2人。

それは雑誌が発売されてからのお楽しみだ。

正直、載って欲しくはないと思う一夏と載ったら恥ずかしいと思っているシャルロットだった。

 

「さて、食い終わったし、そろそろ帰ろうぜ」

 

「うん、そうだね」

 

日も暮れかけてきたので、一夏とシャルロットはその場を後にして帰路に着いた。

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