side セシリア
皆様御機嫌よう。
セシリア・オルコットですわ。
登場してから十話以上も出番がありませんでしたが今回はわたくしが主役のお話ですわ。
このままずっと出番がないかとハラハラしていましたけどよかったですわ。
存分にわたくしの活躍をお楽しみなってくださいまし。
AM6:30
今日は日曜日と言うことで学園もお休みですわ。
かといっていつまでもベッドでゴロゴロしていてもだらしないのでそろそろ起きると致しましょう。
あんまり遅くなるとチェルシーがシーツの洗濯ができないと怒ってしまいますからね。
さて、着替えも済ませたところでちょっと朝のお散歩にでも参りましょう。
わたくしは幼き頃は病弱であったために外を出歩くということはあまりできなかったのですが、最近は身体の調子も良いという事で休日の朝はこうしてお散歩をするのが日課のようになっていますわ。
これもわたくしが最もお慕いするお方である百春様に薦められて行っているものですわ。
「朝に散歩してみるのはどうだ?健康にもいいし、この町に慣れるという意味でもいい事だろう」と以前に言われましたわ。
お医者様を目指すあのお方の言う事なら間違いはありませんわよね。
「お嬢様、おはようございます」
「ええ、おはようチェルシー」
わたくしの専属メイド兼幼馴染のチェルシーが顔を見せに来ました。
どうやら起こしにきてくれたようですわね。
でも、わたくしはも目覚めておりましたので少々お手間となってしまいましたわね。
「お嬢様、これから朝のお散歩に出られますか?」
「ええ、20分ほどで戻りますわ」
「わかりました。私は朝食の用意をしながらお待ちしております」
「ありがとうチェルシー。では、行って参りますわ」
「いってらっしゃいませ」
うやうやしく頭を下げるチェルシーに見送られてわたくしは部屋をあとにして寮の外へと出ました。
「ん~。今日もいいお天気ですわ~♪」
ひとつ伸びをしてから清々しい朝の空気を吸い込む。
これから日本は夏に向かって暑くなっていくみたいですがまだまだ朝は気温も穏やかで気持ちが良いですわね。
「これで隣に百春様がいてくださったら最高なのですが」
わたくしはちらりと織斑家の方に目を向けてみます。
さすがにこのような時間に呼び鈴を鳴らすのはご迷惑なので諦めてわたくしは足を踏み出しました。
「今日も良い日になるといいですわね」
こうしてわたくしのこの日の一日は始まりましたわ。
side out
朝の散歩が済むとセシリアはシャワーを浴びてスッキリとしてからドレッサーの前に座って髪の手入れをする。
毎日欠かさず手入れを続けてきた煌びやかな長い金髪は彼女の自慢のひとつでもある。
それもこれも好きな人に美しい自分を見てもらうためだ。
「髪がうまくまとまった日は気分が良いですわね♪」
上機嫌のセシリア嬢。
今日は何か良い事が起こりそうと気分が弾む。
「お嬢様、朝食の用意が整いました」
「わかりました。早速頂きますわ」
「それと、今朝パソコンの方にメールが届いておりました。おそらく旦那様からだと思います」
「お、お父様から・・・。わかりましたわ。朝食を取ったら確認します」
「はい」
若干、苦虫を噛み潰したような顔をするセシリア。
先ほどの良い気分が台無しなったみたいな顔だった。
ジェームズ・オルコット。
世界を股にかけるイギリスの名家であるオルコット家の現当主でセシリアの父。
各分野で非凡な才能を発揮し、彼の妻であるレイチェル・オルコットと共にオルコット家を一代で築き上げた男。
しかし、そんな彼にも大きな欠点がある。
それは『超』が10個くらい付くほどの親馬鹿だということだ。
飴と鞭という諺(ことわざ)があるが、彼はその飴を体現したような人物で、オルコット家の財力を『セシリアのセシリアによるセシリアのための財力』と公言しているほどの親馬鹿っぷりだ。
セシリア自身も父がそう公言しているのである程度は自由に財力を使わせてもらっている。
あんまり使いすぎると父共々、母のレイチェルに血祭りに上げられかねないからほどほどではあるが。
父のジェームズが飴なら母であるレイチェルは鞭。
それがオルコット家なのだ。
まあ、藍越学園の寮を増改築してしまうほど金を使っても何も言ってこないのはそれだけオルコット家の財力がぶっ飛んでいる証拠なのである。
さて、話が逸れたが先ほどセシリア宛にそのジェームズからメールが届いたそうな。
実のところ、ジェームズは1日に1回は必ずメールをしてくる。
遠い異国の地にいる愛娘のことを心配しているといえば聞こえはいいが、ジェームズは結構度が過ぎている。
セシリア自身も病弱だった自分を見捨てずここまで育て、愛してくれる父には感謝はしているが最近は少しそれを鬱陶しく思う事もあるのだ。
15歳になったということもあって、親の愛情を少し疎ましく思う時期でもあるのかもしれない。
「さて、メールを確認しませんと・・・」
朝食が済んだのでセシリアはノートパソコンを立ち上げる。
メールの受信ボックスを開くと確かにジェームズからのメールが1通届いていた。
件名にこう書かれていた。
『マイスィートドーター セシリアへ』 ※本来は英文ですが和訳文でお届けしています。
(バタンッ!!)
ノートパソコンを閉じた。
「お嬢様、そのように力を込めて閉じてはパソコンが壊れてしまいます」
「ごめんなさいチェルシー・・・。ちょっと眩暈が・・・」
メールの件名を見ただけで辟易とする。
何が悲しくて朝からこんな親馬鹿メールを読まなくてはいけないのかと疑問を持ってしまう。
「とりあえず目を通しておくだけでもしておいてはどうですか?これでも旦那様はお嬢様のことを思っての事ですし」
「わかっていますわ。はぁ・・・」
大きくため息をしつつ、仕方無しに内容を見てみる。
『マイスィートドーター セシリアへ ※本来は英文ですが和訳文でお届けしています。
私の可愛い可愛いセシリアよ、元気にしているか?
もうお前が日本へ旅立ってから1ヶ月近く経とうとしている。
お前が旅立ってからというもの、私は日夜に限らずお前の事を想っている。
最近では目に入れても痛くない程大切な娘であるお前を心配するあまりに毎日吐血をしてしまうほどお前の身を案じている。
しかし、日本には「可愛い子には旅をさせよ」という言葉があるように、これも目どころか口の中に入れても痛くない程可愛い可愛いお前のためなのだと私も必死に耐えている。
私も辛いがお前も辛いだろうということはわかっているので親として耐えて耐えて耐えぬいて、お前と次に会える日を心から楽しみにしているぞ。
本当は1日に1通ではなくて30分・・・、いや、10分に1回はお前へメールを送りたいくらいなのだが、レイチェルに「ちゃんと仕事をしなさい!!」と怒られてしまうので1日1通で我慢している。
だからお前も寂しいだろうが我慢しておくれ。
おお、そうだ!聞いておくれマイドーターよ。
今こっちではとんでもないことに――――――――――――』
メールを削除した。
「お嬢様、さすがにそれはちょっと残酷なのでは?メールも最後まで目を通しておりませんし」
「これ以上はもうわたくしの方が耐えられませんわ・・・。はぁ、お父様にも困ったものですわ・・・」
額に手を当てて天を仰ぐセシリア。
朝の良い気分はすっかりとセシリアの中から抜け出てしまっっていたのであった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
アイキャッチしりとり
セシリア「助けてください」
チェルシー「いいえ、無理です」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
side セシリア
コホン、お父様のメールを見終えたわたくしは、現在机に向かって勉強中ですわ。
留学生というのもありますが5月からの転入ということで少々遅れ気味のわたくしは自習をしておかなければ学園の授業にもついていけなくなってしまいますわ。
元々わたくしは勉強がそれほど苦手というわけではありません。
病弱だった幼少期は学校にはあまり通えてはいなかったのですが、お母様が厳しくわたくしに勉学をご教授してくださっていたので勉学が疎かになるということはありませんでした。
今は日本に留学しているわけなので日本の学校の授業にもちゃんとついていかなければなりません。
どうも近々テストがあるようなのでそれに向けて勉強しておかないといけませんわ。
「しかし、テストも近いということですのにシャルロットさんは余裕ですわね」
わたくしの盟友であるシャルロットさんは本日は一夏さんとデートにお出掛けになるそうですわ。
お聞きした話によれば一夏さんもシャルロットさんも成績は優秀なそうなのでテスト勉強はそれほど切羽詰ったりはしないそうですわ。
一夏さんはともかく、シャルロットさんはわたくしと同じで留学生なのにどうしてあんなに余裕でいられるのか不思議ですわ。
やはり1学期の頭から授業に出ているからなのでしょうか?
何にしても愛しき方とデートに出かけられるのは羨ましいですわ。
わたくしも百春様と素敵なデートに出かけてみたいですわ。
ふたりきりでクルージングなんていいですわね。
それで夜景をみながらディナーを一緒するというのも素敵ですわね。
日本には夜景が綺麗な場所も多いそうなので今度お父様に頼んでクルーザーを用意してもらいましょう。
それで百春様をお誘いしてふたりきりの素敵なディナーを。
うふふっ♪なんだか考えただけで楽しくなってきましたわ。
「はあ、何だか無性に百春様にお会いしたくなってしまいましたわ」
想像していたことがことなだけに百春様への想いが募ってどうしてもお会いしたくなってしまいましたわ。
思えば日本に来てからというもの、百春様とお会いする機会をあまり持てていませんわね。
休日になっても百春様はお忙しくて中々わたくしのお相手をしてくれませんし。
寂しいですわ・・・。
「ちょっと、家をお訪ねしてみようかしら・・・?」
今日は日曜日ですし、百春様もお家にいらっしゃると思いますし。
ちょっと勉強でわからないところがあるという口実でお訪ねしてみましょうか?
テストも近いのですし、勉強を教えてもらいに行くのは別に不自然ではありませんわよね。
「そうと決まれば早速実行ですわ!」
わたくしは手早く勉強道具をまとめると自室を後にした。。
「チェルシー、ちょっと出かけて参りますわ。夕食までには戻りますので留守を頼みますわ」
部屋のお掃除をしていたチェルシーに一言掛けてからわたくしは部屋をあとにしようとする。
「承知至しました。その前にお嬢様。少しよろしいでしょうか?」
「はい?」
チェルシーに呼び止められましたわ。
一体なんでしょうか?
「百春様の元へ行かれるのですね。頑張ってください」
「え?」
何故チェルシーはわたくしが百春様の元へ行く事がわかりましたの?
本当にチェルシーは人の心が読めるのではないかと思ってしまいますわ・・・。
「いえ、私にはそのような能力はありません」
ええっ!?
わたくし今のは声に出してませんのに!
本当にチェルシーはエスパーか何かですの!?
「失礼ですがお嬢様。お嬢様はの考えていることは大体見ていればわかります。お嬢様は結構わかりやすいので」
「そ、そうなんですの・・・」
チェルシーの前ではうかつな事は考えられませんわね・・・。
「と、とにかく出掛けて来ますわ。家の事は頼みましたわよ」
「はい、いってらっしゃいませ」
気を取り直してわたくしは部屋をあとにしました。
出掛ける直前に少々面を食らう出来事もありましたが、愛しい方にお会いできると思ったら自然と足取りも軽いものになりますわね。
表情と自然と笑みが浮かんできますわ。
あ、だからチェルシーにわかりやすいと言われるのですね。
side out