ようこそ藍越学園へ   作:TAKUMAKI?

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第四十九話 ミッション「迷い兎を見つけ出せ」

現在、四限目の授業中。

あれから教師陣+一夏はまだラウラを見つけることができないでいた。

学園の敷地が広い上にラウラ自身が身軽でちょろちょろ動き回っている所為もあって未だ発見することができないでいた。

と言っても動ける教員にも限りがある上にそれほど人員が割けるわけでもない。それが授業時間にもなれば尚更だ。

 

(あいつは兎かよ・・・)

 

授業を受けなが一夏がひとりごちる。

学園内に迷い込んだ兎捜索に少しだけ辟易とした様子だった。

一応、十秋と百春にも連絡して協力はしてもらっているいるが成果は出ていない。

 

「ラウラちゃんにも困ったものだね♪」

 

「まったく・・・、しょうがない子だな・・・」

 

そんな事を十秋と百春は言い漏らしていた。

 

とにかく一夏は今、早く昼休みになってくれる事と早くラウラが見つかることだけを祈るしかなかった。

 

 

 

一方、その頃ラウラは

 

「おー・・・」

 

校舎の屋上に来ていた。

藍越学園の屋上は少し遠めにではあるものの海を眺めることができる。

昼休みには屋上で昼食を取る者も多い人気スポットだ。

 

「うーむ、これは良い景色だ」

 

ラウラはまるで子供のように屋上から海を眺めていた。

 

「しかし、あそこからならもっと良い景色が見られそうだな」

 

ラウラは時計塔に目を移した。

藍越学園の時計塔は屋上よりも高い。

確かにあそこならば屋上から見る景色よりもっと良い景色を見ることは可能であろう。

しかし、あの時計塔は生徒は立ち入りを許されてはいない。

生徒の間では、あの時計塔には色々な噂がある。

『あそこには教員しか入る事ができない娯楽施設が存在する』、『昔、この学園で殺人事件が起きてその死体を隠蔽するために立ち入りを禁じられている』、『入ると異次元に迷い込んで二度と戻って来れなくなる』などなど他にも色々ある。

が、それはラウラの知るところではない。

 

「あの時計塔に登ってみるか」

 

ラウラは時計塔に向かう為に屋上を後にした。

 

 

side 一夏

 

「それじゃ、ちょっと早いが今回の授業は終わりにする」

 

四限目が終わる時間までまだ五分以上残した時間で授業が終わった。

よし。これでラウラを探す時間がちょっと伸びたぞ

俺はは内心ガッツポーズをした。

少しでもラウラを探す時間が伸びるのは今の俺にとっては幸運だ。

 

「まだ授業中のクラスもあるからあまり騒がないように。ではな」

 

男性教師が教室を出るとクラスメイト達は寛いだり席を立って他のクラスメイトとおしゃべりをしたり昼食の準備をしながらもまだチャイムが鳴っていないこともあってあまり騒ぐことはなかった。

 

「よし」

 

俺も素早く教科書やノートを片付けて駆け足で教室を出ようとするが

 

「待て一夏」

 

突然後ろから声を掛けられつんのめりそうになりながらも急ブレーキを掛けて振り向く。

そこには箒が仁王立ちしていた。

 

「何だ箒?何か用か?」

 

「何処に行くのだ?うちのクラスは授業が終わったとは言えまだ授業時間だぞ。それにさっき先生も「まだ授業中のクラスもある」と言ってただろう。教室から出るのは感心せんぞ」

 

う~ん・・・。

まあ、箒の言う事は正論なんだが今は時間が惜しい。

 

「いや、ちょっと用事があって・・・」

 

箒には悪いが言葉を濁してこの場を乗り切ろる事にする。

 

「それに今日は授業が終わって休み時間になるとすぐに教室出て行ったな。それと関係があるのか?それに昼休みに飯も食わないで行くなんて何の用事だ?」

 

「いや、それはその・・・」

 

「言えないような用事なのか?」

 

「う・・・」

 

箒がギロリと鋭い目で俺を睨み付けてくる。

 

「大体、休み時間のたびに私はお前の所に行こうとしてたのにお前は・・・」(ボソッ)

 

「ん?何か言ったか?」

 

「な、何でもない!!」

 

何か箒のやつ、やたら絡んでくるな・・・。

今は一秒でも時間が惜しいのに・・・。

 

「なになに?なんかあったの一夏?」

 

「どうかなさいましたの?」

 

「一夏、どうしたの?」

 

鈴にセシリア、それにシャルまで集まってきちまった・・・。

う~ん、どうするか?

もうちゃっちゃと事情を話して早いトコ解放してもらうしかないか?

 

――――――ん?待てよ?

そこで俺はふと思った。

ここはこいつらにちゃんと事情を説明して探すの協力してもらった方がいいんじゃないか?

そんな考えが浮かんだのだ。

明らかに人手が足りてないんだしここは協力を頼むべきなのでは?

うん、それがいいかもな。

 

「わかった説明するよ。おーい!弾に数馬、お前らも来い」

 

「ん?」

 

「どうした?」

 

俺は手招きをして弾と数馬を呼ぶ。

数馬は一度ラウラを目撃しているし、弾も人探しなら役に立つだろうしな。

 

「おい、何か失礼なモノローグが流れてないか?」

 

「気のせいだ」

 

弾のクセに鋭いじゃないか・・・。

まあそれは今はいい。

時間も惜しいからさっさと説明しよう。

 

side out

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

アイキャッチしりとり

 

シャル&セシリア&箒&鈴「いかはいかがでしょう?」

 

 

 

一夏&弾&数馬「梅ってウメェなぁ♪」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

side 一夏

 

「なるほど。今朝俺が見た子はそういう訳だったのか」

 

説明を終えると納得したように数馬が頷いている。

 

「まあそういう事だ。俺はこれからその子を探しに行くんだけど皆手伝ってくれるか?貴重な昼休みだし無理にとは言わないけど」

 

説明を終えてから俺は皆にラウラ探しを手伝ってくれないかお願いをした。

この広い学園でラウラを探し出すには明らかに人手が足りていないのでここで皆が手伝ってくれると大助かりなのだが。

 

「僕は手伝うよ」

 

おお!

真っ先にシャルが笑顔で手伝いを申し出てくれた。

こういうときは率先して手伝ってくれるから頼りになるぜ。

 

「むっ・・・、し、仕方ない!私も手伝ってやる!感謝しろ!」

 

続いて箒も手伝いOKの返事をくれた。

 

「か、勘違いするな!お前の為じゃなくてその留学生を早く見つけないと大変だからだ!!」

 

いや、そんなことはわかってるって。

しかしな箒、人を指差すのはあまり感心しないぞ。

でもまあ、何だかんだで箒もこうして手伝ってくれるから良い奴だよな。

 

「いいわ。あたしも手伝ってあげるわよ」

 

「他ならぬ一夏さんからの頼みです。謹んでお受けしますわ」

 

鈴とセシリアも手伝ってくれるらしい。

やっぱり持つべきものは頼りになる幼馴染だなぁ。

 

「俺も手伝うぜ。俺はその子を一度見かけてるからな」

 

「仕方ねぇな。わかった、俺も手伝ってやるよ。その代わりあとで何か奢れよな」

 

数馬と弾も協力してくれるようだ。

う~ん、やっぱ最初から皆に協力してもらうべきだったな。

貴重な昼休みを潰してまで付き合ってくれるんだ。

全員にあとで何か奢ってやろうじゃないか。

 

 

説明に時間を食ったため、もうすぐ四限目が終わるチャイムが鳴る時間だ。

できればこの昼休み中には見つけておきたいところだ。

 

「じゃあ、校舎内、体育館付近、部活棟付近、時計塔付近に分かれよう」

 

手分けして4つに分かれる事にする。

 

「では、わたくしは校舎内を探しますわ」

 

セシリアは校舎内を探してくれるらしい。

 

「セシリア、校舎内は十秋姉も探してくれてるから連絡取ってみてくれ」

 

「わかりましたわ」

 

了解の返事をするとセシリアは去っていった。

 

「あたしと箒は体育館付近を見てくるわ」

 

「じゃあ、俺と弾で部活棟付近を」

 

「わかった。俺とシャルで時計棟付近を見てくる」

 

昼休みは有限なのだ。モタモタしてはいられない。

各班散り散りとなって捜索開始だ。

 

「行こうシャル」

 

「うん」

 

時計塔は学園の敷地の最奥にあるので下手をすると五限目が始まるまでには戻って来れない可能性があるので俺とシャルは教員に見つからないように走り出した。

 

「悪いな。何か付き合せちまって」

 

「ううん、気にしないで」

 

笑顔でシャルが答えてくれた。

う~む。やっぱりシャルはいいやつだなぁ

本当に俺は良い幼馴染を持ったよ。

 

「ねぇ一夏。ところでさ・・・」

 

「ん?何だシャル?」

 

走りながらシャルが何か聞いてきた。

 

「そのドイツの女の子と一夏ってどういう関係なの?」

 

「え?」

 

何だ?一瞬だが背筋に物凄い寒気が走ったような・・・。

 

「一夏、どうしたの?」

 

走りながら横に並ぶシャルの顔を見る。

その顔は笑顔だった。

笑顔なんだけど・・・、おかしいな・・・。

シャルが浮かべてる笑顔から妙にプレッシャーを感じるんですけど・・・。

十秋姉がやる「ブリザードスマイル」に似た雰囲気が今のシャルにあるぞ!?

なんだぁ!?何故シャルはこうなった!?

 

「え~っと・・・、俺とラウラの関係だっけ?」

 

「うん」

 

「まあ、あいつは『フィフス幼馴染』なんだけど、強いて言うなら―――――――、『妹』みたいなやつかな?」

 

「?」

 

首を傾げるシャルと共に俺達は時計塔の方へ向かって行った。

 

side out

 

 

 

「近場に来るとこの時計塔はより一層高いな」

 

時計塔のそばにやって来たラウラは天辺を見上げながらそう呟いた。

聳え立つ時計塔は小柄な体格のラウラを圧倒するほどに高かった。

何かと曰く付きのこの時計塔も今のラウラにとっては興味の対象なのだ。

 

「よし、じゃあ早速登ってみるか」

 

意気揚々とラウラは時計塔の入り口を探し始める。

 

「む?ここか?」

 

入り口はすぐに見つかった。

といても入り口はエントランスホールようになっているのでわかりやすかった。

しかし、入り口のドアの前には看板が立っていた。

その看板にはこう書かれていた。

 

『この時計塔は学園職員以外の立ち入りを禁じます』

 

「入れないのか・・・」

 

ショボンとするラウラ。

一応、ドアに手を掛けてみるが鍵が掛かっているのでビクともしない。

 

「うーん・・・、こじ開けみるか?」

 

物騒なことを言い出すラウラ。

 

「止めておきなさい。そんなことをしたら警備員が飛んできますよ」

 

「!?」

 

ラウラは驚いて背後を振り返った。

全く人の気配を感じなかった上にいきなり背後に人が立っていたのだ。

誰だって驚くだろう。

 

「ほっほっほっ、申し訳ありません。驚かせてしまいましたか?」

 

男性は温和な笑みを浮かべてラウラに驚かせてしまったことを謝罪した。

 

「いや、それは問題ない・・・。えっと、貴殿は?」

 

「私はこの学園の者ですよ。今この時計塔の清掃をしようと思いましてね」

 

「清掃?貴殿は用務員なのか?」

 

「ほっほっほっ、その通りですよ」

 

その男性は見た目は齢七十歳ほどの老人だった。

つなぎを着込んで総白髪の頭にはキャップを被っている。

彼の柔和さを感じさせる人柄は、親しみやすさから『学園内の良心』などと呼ばれている。

 

「ふむ。君はこの学園の生徒じゃなさそうですね」

 

「私は今度この学園に編入するドイツからの留学生だ。今は学園内を見て回っているのだ」

 

「なるほど。この時計塔に来たのは何故です?」

 

「この時計塔の天辺からの景色を見てみたくて来てみたのだが、この看板が立っていたのでな・・・。」

 

ラウラは看板を指差した。

心なしかその姿は悲しそうだった。

 

「ほっほっほっ、そういうことですか。だったら連れて行ってあげましょうか?」

 

「む!?よろしいのか!?」

 

用務員の申し出にラウラは少し驚きつつも嬉しそうな反応を見せる。

 

「私もこの学園の職員ですからね。ここを開けることはできるんですよ」

 

「しかし、学園職員以外の立ち入りを禁ずると書いてあるが・・・」

 

「その規則は元々、無闇やたらと塔の中に生徒が入らないようにというだけの規則ですので、そんなに厳しい規則ではないのですよ。では、付いて来なされ」

 

そう言って用務員はドアの鍵を開けて中へと入っていった。

ラウラもその後に続いて塔の中へと入っていった。

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