ようこそ藍越学園へ   作:TAKUMAKI?

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第五十話 兄妹の再会

「ん?今のは?」

 

「どうしたの一夏?」

 

一夏とシャルロットが時計塔に辿り着いたのはラウラが時計塔に入ろうとした直後だった。

一夏は時計塔に入っていくラウラらしき背中をチラリとだが目撃した。

 

「今、時計塔にラウラっぽいやつが入っていくのチラッとが見えたんだ」

 

「でも、時計塔って学園の職員以外は入れないんじゃ・・・」

 

「それはそうなんだけど・・・」

 

時計塔の入り口までやってくるがやはりドアは鍵が掛かっていた。

 

「ダメだな。鍵掛かってる・・・」

 

「見間違いって事は?」

 

「う~ん、そんなはずはないと思うんだけど・・・」

 

姿もチラッとしか見えなかったので一夏もだんだん見間違いだったかもと思い始めていた。

 

「ん?一夏にシャルロットか?こんなところで何をしている?」

 

「「うわっ!?」」

 

突然、背後から声を掛けられて一夏とシャルロットは驚きの声を上げる。

そこにはいつもの仏頂面を貼り付けた保険医がいた。

 

「も、百春さん?」

 

「ビックリした・・・。急に現れないでくれよ百春兄」

 

「何だその反応は。失礼な奴らだな・・・」

 

鋭い目つきで睨んでくる百春。

 

「で、お前達は昼休みにこんなところで何してるんだ?逢引きにしては場所が悪いんじゃないか」

 

「あ、逢引きぃぃ!!??」

 

「な、なんでそうなるんだよ!百春兄!!」

 

逢引きという単語に一夏とシャルロットが顔を赤くして狼狽える。

 

「まあ、それは別にどうでもいいが」

 

「どうでもいいなら訊くなよ!」と内心思う一夏とシャルロットであった。

 

「で、実際のところどうしたんだ?時計塔は基本的に生徒は立ち入り禁止だぞ?」

 

「いや、俺達はラウラを探しに来たんだけど」

 

「ラウラか・・・。あの子はまだ見つかっていないのか?」

 

「うん。それで、さっきこの時計塔にラウラらしい子が入っていくのを見かけたんだよ」

 

「ん?この時計塔にか?」

 

百春の目つきが少し変わり、時計塔を見上げる。

それからアゴに手を当てて少し考え込むような仕草を見せたあとに

 

「ならちょうどいい。俺は少し時計塔に用事があるからついでに中を少し探す。お前達も来い」

 

「え、俺達も入っていいのか?」

 

「で、でも時計塔は学園職員以外は立ち入り禁止なんじゃ?」

 

「学園職員である俺が許可してるんだ。問題は無い。それにその規則は元々、無闇やたらと塔の中に生徒が入らないようにというだけの規則で、そんなに厳しい規則じゃないだ。許可があれば入る事は許される。まあ、俺がここの生徒だったころから入ろうとする奴なっんて滅多にいなかったがな」

 

一夏とシャルロットは顔を見合わせる。

この学園に入学して二ヶ月になるがそんなこと微塵も知らなかった。

 

「ほら、さっさと行くぞ。飯を食う時間がなくなるぞ」

 

「あ、待ってくれよ百春兄」

 

「あ、待って僕も行くよ~」

 

すたこらと時計塔に入っていく百春を一夏とシャルロットは慌てて追いかけていった。

 

 

 

「おー・・・」

 

「ほっほっほっ、ここからの眺めはどうですかな?」

 

「うむ、素晴らしい!ありきたりな言葉かもしれないが、絶景だな!!」

 

ラウラは用務員に連れられて時計塔の最上階の部屋に通されていた。

通された部屋にあったテラスから外の景色を眺めたラウラはそこから広がる光景に目を輝かせていた。

街並みの上に広がる澄んだ空。

遠くに広がる青い海。

校舎の屋上から見た光景とは比べ物にならないほどであった。

 

「でもここからだと校内の様子がよく見えるな」

 

「そうですね。わたしもよくここでお茶を飲みながら学園の様子を見ていたりしますよ」

 

「左様か?しかしここは『理事長室』であろう?勝手に入ってしまってもよろしいのか?」

 

そう、ラウラが案内された部屋はなんと理事長室だったのだ。

学園職員とはいえ、このような場所に無断で入ってしまってもいいのかとラウラは思った。

 

「お気になさらずに。許可だったら取ってありますのでご心配は不要ですよ」

 

「そうか?」

 

ラウラはまだ少し疑問は残ったがそれ以上は追求せずに再びテラスからの眺めを見ていた。

 

「さて、お茶を入れましたのでちょっとこちらでお話でもしましょうか?」

 

「すまないな。ではいただこう」

 

ラウラは促されてソファーに座り用意された紅茶を口にする。

 

「ほっほっほっ。しかし、許可証も持たずに校内を見て回っている子がいるとは聞いていましたが」

 

「ん?何の事だ?」

 

「それほど悪い子ではなさそうですねぇ」

 

「?」

 

「いえいえ、こっちの話ですよ」

 

小首を傾げて用務員を見つめるラウラに用務員はまるで孫を愛でるかのように頭を撫でた。

 

「おっと、すみません。不躾でしたね」

 

「いや、別に嫌というわけではない。昔はよく兄様や姉様にも撫でててもらったものだ」

 

「ほう、御兄弟からも可愛がられていたのですね」

 

「ああ、私はひとりっ子だから正確には違うがな。だが、本当の兄様や姉様のように慕う人達はいるぞ」

 

「そうですか。その方達は今どちらに?」

 

「うむ。その方達は日本人でな。この学園にいるはずだ」

 

「ほう、そうなのですか?では、この学園に編入されたのは・・・」

 

「その方達と一緒に学園生活を送るためだ!」

 

胸を張ってラウラは自信あり気に断言した。

 

「ほっほっほっ、そうですか。それでその方達にはもうお会いになられたのですか?」

 

「いやまだだ。編入初日に会って驚かせてやろうと思ってな」

 

「おやおや、それはそれはお茶目なことですなぁ♪」

 

「うむ」

 

ラウラは用務員が用意した茶菓子を頬張りながら大きく頷く。

用務員もそんなラウラを穏やかな笑みを浮かべながら見ていた。

ラウラと話す用務員は心底楽しそうで可愛い孫と話をしているおじいさんといった感じにも見える。

和やかな雰囲気が理事長室を覆っていた。

 

(コンコンッ)

 

「ん?」

 

「おや?」

 

そこに誰かの来訪を告げるノック音が響いた。

 

「はい、どうぞ」

 

用務員がそう言うと理事長室の扉が開かれた。

 

「失礼します。理事長、この間の『全国保険医団体連合会』の学会のことでお話が―――――」

 

入ってきた人物は百春だった。

が、入ってきてすぐに百春は表情が固まった。

用務員、『轡木十蔵』のそばに座るラウラの姿を見た瞬間に。

 

 

一方、一夏とシャルロットは

 

「一夏、この階にはいないみたいだよ」

 

「そうみたいだな。じゃあ次の階に行こう」

 

百春と別れてから時計塔の施設内を隅々まで探していた。

 

「しかし、この時計塔初めて入ったけど、凄いなここ・・・」

 

一夏は驚きを通り越して呆れたような顔でそう言った。

 

「そうだね。ビリヤード場に卓球台、それに大浴場まであるんだもんね・・・」

 

「何か大人数が寝泊りできるような部屋もいっぱいあるし、ここはホテルか何かなのか?下手なホテルよりもいい施設揃ってるぞここ・・・」

 

何故こんなにもいい施設が時計塔に備えられているのかは一夏達にはわからなかった。

 

「噂では『教員しか入る事ができない娯楽施設が存在する』なんて話を聞いたことがあったけど・・・」

 

「強ち間違いでもない気がしてきたぞ・・・」

 

色々生徒の間では曰く付きのこの時計塔。

根も葉もない噂だと一夏達は思ってたいたが、実際に目の当たりにすると本当なのではないかと思えてきた。

 

「じゃあ、『昔、この学園で殺人事件が起きてその死体を隠蔽するために立ち入りを禁じられている』、『入ると異次元に迷い込んで二度と戻って来れなくなる』っていう噂も本当なのかな?」

 

「その2つはシャレにならないから出来ればデマであって欲しいんだが・・・」

 

そんなことを話しながらもラウラを探すために施設内を探し回る。

 

(ピリリリッ♪ピリリリッ♪)

 

「ん?」

 

突然、一夏の携帯電話が鳴り出した。

着信画面を見ると電話の相手は百春だった。

とにかく一夏は電話に出る事にした。

 

「もしもし?」

 

「あ、一夏か?」

 

「うん、どうかしたのか?」

 

「ああ、こっちでラウラを見つけたぞ」

 

「ええっ!!本当か百春兄!?」

 

「電話越しで大声を出すな・・・。とにかく、最上階の部屋まで来い。訳はそこで説明する」

 

「わかった!すぐ行く!!」

 

(ピッ)

 

「百春さん、何だって?」

 

電話を切るとシャルロットが訊ねてくる。

 

「百春兄がラウラを見つけたってさ」

 

「そうなの?」

 

「すぐ最上階の部屋まで来いってさ。早く行こう!」

 

一夏は走り出す。

 

「あ~、待ってよ~」

 

遅れてシャルロットも走り出した。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

アイキャッチしりとり

 

ラウラ「あ、茶菓子おかわり♪」

 

 

 

十蔵「リンゴ飴などいかがでしょう?」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

side 一夏

 

エレベーターに飛び乗って俺とシャルは最上階に辿り着いた。

着いたんだけど・・・

 

「ねぇ一夏、ここって・・・」

 

「え、あ、ああ・・・」

 

『最上階の部屋まで来い』って百春兄に言われてここまで来たはいいのだが・・・

 

「理事長室・・・、だよねここ?」

 

シャルが指を指した先を見るとドアの上の所に『理事長室』と記されたプレートがある。

ちなみに最上階に部屋はここだけしかなかった。

 

「う~ん・・・、まあ、百春兄が来いって言ってたし、とりあえず入ってみようぜ」

 

「う、うん・・・」

 

意を決して俺は理事長室のドアをノックした。

 

(コンコンッ)

 

「どうぞ」

 

聞きなれない年配の男性の声が耳に届いた。

は、入ってもいいんだよなぁ・・・。どうぞって言われたし・・・。

 

「「し、失礼しまーす・・・」」

 

おずおずとシャルと一緒に理事長室に足を踏み入れる。

 

「あ」

 

「お、来たか」

 

広い部屋に備え付けられたソファーには百春兄と茶菓子を頬張って紅茶を飲んでいる困った兎の姿があった。

 

「ラウラ、探したぞホントに・・・」

 

「一夏兄様・・・」

 

「まったく、心配させやがって・・・」

 

俺は呆れたように、しかし安堵の息を漏らしてラウラのそばに近づいた。

ラウラは驚いたような顔をしていた。

 

「・・・・・・」

 

「ん?どうしたよ?」

 

なんか俺の顔見て固まってるぞ?

俺の顔になんか付いてるのか?

そう思ったその時――――

 

「一夏兄様ぁ!!!」

 

「おわあっ!!」

 

いきなり輝くような笑顔になったラウラはそのまま飛び付くように俺に抱き付いて来た。

ラウラを抱きとめた俺は倒れそうになるのを防ぐために慌てて踏ん張った。

 

「ラ、ラウラ、急に抱き付いて来るな!ビックリするだろう!!」

 

「むぅ、久しぶりの再会なのだぞ?これくらいは許してくれ♪」

 

ラウラは俺の対応に少し不満の声を漏らすが、すぐ顔を綻ばせて俺の胸に顔を埋める。

 

「コラコラ、スリスリするな」

 

「止めて欲しかったら頭を撫でてくれ♪」

 

ラウラは俺の胸に顔をスリスリしておねだりしてくる。

俺は少しため息を漏らす。

 

「はあ、まったく・・・。しょうがないなぁ・・・。ほら」

 

そう言って俺はラウラの頭を撫でる。

そういえば、前はよくこうして俺はラウラの頭を撫でてやってたなぁ。

うん、久しぶりにラウラの頭を撫でたが相変わらず触り心地の良い髪だ。

ラウラの長くて綺麗な銀髪は撫でて悪くない気分だった。

 

「ん・・・」

 

見ればラウラも喉を鳴らして気持ちよさそうにしている。

うん、なんかこうしてると兎というより猫みたいだな。

 

「何はともあれ、久しぶりだなラウラ」

 

「ああ、会いたかったぞ、一夏兄様」

 

俺はそのままラウラの背中に手を回してポンポンと叩いてから抱きしめ返した。

 

 

 

 

「――――――――――――――――――――で、ふたりはいつまで抱き合ってるのかな?」

 

「っ!!」

 

・・・・血の気が引いた。

何故だろうか?今、シャルのいる方を見るのが凄く怖いんですけど・・・。

とりあえず俺は乱暴にならないように急いでラウラを引き離した。

 

「あ・・・」

 

ラウラが残念そうな声を漏らす。

悪いラウラ。これ以上は俺の身に危険が及ぶかもしれない・・・。

 

「あー、いや、シャル、これはそのぉ・・・」

 

俺は頬が引き攣るのを感じながらシャルの方へ向き直った。

見れば、『ブリザードスマイル』を貼り付けたシャルがいた。

 

「僕、驚いちゃったなぁ。一夏って僕の目の前で他の女の子と抱き合うんだぁ。へぇ」

 

「あ、あのなシャル・・・。これはあれだ・・・。友愛の証というか、可愛い妹に優しくしてやってるみたいな感じであってだな・・・」

 

「へぇ?、そうなんだ?」

 

「そ、そうだぞ。だから決してやましい事は・・・」

 

だからそんな怖い笑顔で睨まないで・・・。

 

「そうだぞ。久しぶりに兄妹が再会したのだ。抱き合うくらいいいではないか」

 

ラウラが口を挟んできた。

 

「君も何で急に一夏に抱き付くのさ!?」

 

「私と兄様が兄妹だからだ」

 

「理由になってないじゃないのよ!」

 

おお?

珍しくシャルが女言葉になったぞ?

それほどまでに取り乱してるのかな?

それとシャル、いくら取り乱してるからって人を指差すのはよくないんだぞ。

 

「私がそうしたいからそうしたのだ。それが悪いか?」

 

「・・・・、はぁ・・・」

 

ラウラは胸を張ってあっけらかんとそう言った。

そのもの言いに興が削がれたのかシャルはため息を付いた。

とりあえずシャルも落ち着いてくれたかな?

 

「ほっほっほっ、いやはや、若いっていいですねぇ」

 

声のした方を見るとつなぎを着こなした七十歳くらいのおじいさんが俺達のそばに立っていた。

この人いつの間に居たのか?

ってアレ?確かこの人って?

 

「貴方は確か・・・、用務員さん?」

 

この人がたまに校内を掃除してるのを見かけたことがあるけど、なんで用務員さんが理事長室にいるんだ?

 

「ほっほっほっ、まあ表向きはこの学園の用務員ですがね」

 

楽しそうに口に手を当てて笑う用務員さん。

表向きってどういう意味なんだ?

 

「一夏、この人はこの藍越学園の理事長の轡木十蔵さんだ」

 

「へ?」

 

理事長?

理事長って、この学園の最高責任者の?

この用務員さんが?

 

「・・・・・、ええっ!!??」

 

驚きの声を上げてしまう。

見ると、シャルも驚いた表情をしていた。

 

「んむ。やはり一夏兄様も私と同じ反応をするな。私も百春兄様から聞かされたときは驚いたぞ」

 

おいラウラ、お前はいつの間にソファーに座って茶菓子を食ってるんだ?

そもそもなんでお前はこの人と一緒に理事長室にいたんだよ?

 

「十蔵さんは普段は用務員の仕事をしながら学園の様子を見て回っているんだ。そのことは学園職員と生徒会メンバーしか知らないがな」

 

ということは千冬姉と十秋姉はこの人が理事長だって知ってるんだな。

まあ、用務員やってる人が理事長だなんて誰も思わないよな・・・。

 

「ほっほっほっ、なぁに。私は用務員の仕事をしながら学園を見て回るのが好きなだけですよ。学園の運営は妻に手伝ってもらっていますがね」

 

そう言った理事長さんの顔はいたずらに成功した少年のように輝いていた。

う~む、ずいぶんと茶目っ気のある人なんだなぁ。

 

「とりあえず、ラウラも無事に見つかったし、一件落着かな?あ、皆に見つけたって連絡しないと」

 

まだ先生達や箒達がラウラを探し回ってるだろうしな。

 

「うむ。百春兄様から事情は聞いた。迷惑を掛けてしまったな・・・」

 

申し訳なさそうにシュンッと項垂れるラウラ。

ちゃんと反省はしているようだ。

 

「そうだな。ちゃんと皆に謝らないとな」

 

「うん。ちゃんと謝るぞ」

 

「よし、良い子だ」

 

またラウラの頭を撫でてやる。

ラウラは気分が良さそうに目をつむる。

 

「あ、でも千冬姉に怒られるのは覚悟しとけよ?」

 

「なっ!!もう百春兄様にも散々怒られたのに・・・」

 

ラウラの表情が歪んだ。

どうやらその状況を想像してしまったらしい。

まあ、もう百春兄からも説教は食らったみたいだし、弁護はちゃんとしてやらないとな。

 

「一夏兄様と同じように抱き付いて頭撫でてもらおうとしたら説教食らってしまったからちょっとヘコんだぞ・・・」

 

「そ、そうか。はははっ・・・」

 

苦笑いが出てしまった。

シャルの方を見ると目が合った。

 

(コクコク)

 

お互いに頷いてアイコンタクトを取る。

とりあえずラウラが百春兄に抱き付こうとしたことはセシリアには絶対黙っておこうと俺とシャルは思った。

 

 

その後、ラウラを見つけたと先生達や箒達に連絡してこの騒ぎは収拾した。

ちなみに、この騒動で俺達は見事に昼飯を食い損ねて午後の授業は地獄を見る羽目となった。

おかげで俺はいつものメンバーに財布がすっからかんになるほど奢らされたよ・・・。

あ、もちろんラウラも千冬姉にキチンと怒られたよ。

 

side out

 

 

 

「改めて、ラウラ・ボーデヴィッヒだ。これからよろしく頼む」

 

放課後にいつものメンバーはラウラを紹介するという意味合いも込めてファミリーレストラン「ルサック」に寄っていた。

もちろん御代は全部一夏の奢りだ。一夏くん涙目・・・。

 

それぞれ他のメンバーも自己紹介が済み、会話に華を咲かせていた。

 

「それにしてもあんた、よくあの広い学園をちょろちょろ動き回ってたわね」

 

鈴が烏龍茶を飲みながらラウラに訊ねた。

 

「なぁに、大した事はない。戦場を調べるのは大事な事だ。何処にどんな施設があるのかを調べるのは当たり前の事だ」

 

「せ、戦場って・・・、日本は非戦争主義の国なのではありませんの?」

 

セシリアはラウラの戦場という言葉に顔を引きつらせる。

 

「何時どうなるかは誰にもわからんからな。調べるに越したことはないであろう」

 

「な、何か軍人みたいな事を言うのだな」

 

箒はラウラの言っていることがまるで軍人のように聞こえた。

 

「む?まあ私は親が軍人だからな。恐らくその影響だな」

 

「え?そうなの?」

 

「うむ。私の父上はドイツ軍の全軍を指揮しているからな」

 

「「「「「えっ?」」」」」

 

全員が箸を止めた。

その顔は「こいつ今なんて言った?」みたいな顔をしている。

 

「あっ、そうか。まだ言ってなかったっけ?」

 

そこに一夏が会話に入ってくる。

このメンバーの中でラウラの素性を知るのは一夏だけしかいない。

 

「ラウラはドイツ軍最高司令官の『アルベルト・ボーデヴィッヒ』のひとり娘なんだよ」

 

「うむ」

 

一夏の言葉にラウラは胸を張る。

 

「「「「「ええええぇぇっ!!!!」」」」」

 

一夏とラウラ以外のメンバーの声がファミレスに木霊した。

 

「何をそんなに驚いている?」

 

「だ、だってドイツ軍最高司令官のひとり娘って・・・」

 

「それはあまり気にしないでくれ。ただ父がそういう立場の人間というだけで私は私だ。あまりそういう色眼鏡で見られたくはないだ」

 

ラウラが少し沈んだ表情をする。

 

「ああ、この問題はラウラにとってはデリケートな事だからさ。あまり気にしないでやってくれよ」

 

空かさず一夏がフォローを入れる。

そうやってフォローする様は本当に妹を守る兄のようであった。

 

「とにかく、皆これからよろしく頼むぞ」

 

こうして新たにラウラが新しく藍越学園の仲間となりましたとさ。

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