ようこそ藍越学園へ   作:TAKUMAKI?

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第六十話 十秋と修吾の初デート 前編

side 十秋

 

皆さんこんにちわ、織斑十秋です。

日曜日のお昼過ぎ。

あたしは今、藤川駅前のロータリーの一角います。

理由はとある人と待ち合わせをしているからです。

その待ち合わせの人とはここ藤川駅前で合流することになっています。

約束の時間は14時です。

今の時刻は13時40分です。

あたしは待ち合わせにはいつも20分は早く来るようにしているので遅刻はしません。

まあ、早朝集合の場合はちょっと自信ないんだけど・・・。

 

駅にまたひとつの電車が到着します。

時計を確認すると待ち合わせ15分前。

そろそろ待ち合わせ人も姿を見せるころだと思われます。

駅の入り口を目を向けると、待ち合わせをしている人が駅の構内から出てきました。

キョロキョロと辺りを見回してからあたしに気付いたようで手を振ってこちらに向かってきます。

あたしも手を振ってそれに応えます。

 

「こんにちわ、二宮くん」

 

「う、うん、こんにちわ、織斑さん」

 

あはは、何か二宮くん緊張してますね。

 

「ごめんね。待たせちゃったかな?」

 

「ううん。来たのは5分前くらいだからそんなに待ってないよ」

 

「そっか。でもこういう時って男が先に来るものだと思うからさ」

 

「うふふっ、二宮くんの家って澄空でしょ。藤川から8駅離れてるし仕方ないよ。そんなに気にしないで」

 

「そ、そうかな?ありがとう。ごめんね」

 

「いいよいいよ。じゃあ、そろそろ行こうか?」

 

「う、うん」

 

二宮くんを促して、あたし達は並んで歩き始めました。

 

こうしてあたしと二宮くんのデートは幕を開けました。

 

side out

 

 

歩きながら修吾と十秋は他愛ない会話に華を咲かせていた。

最初は緊張気味だった修吾も段々と落ち着きを見せていき、変なカタイ雰囲気は感じさせない空気となっていた。

雰囲気としては普段ふたりが学校で会って話をしている時と大差は無いであろう。

ふたりは手を繋いで歩いている訳でも、肩がくっつきそうな程寄り添って歩いている訳でもない。

傍目から見るとデートしている男女と言うよりは友達同士で話しながら歩いているとい感じである。

しかし、これは一応デートという名目なので、この後どう関係が進むのかは今後の展開次第であろう。

 

「それで、今日はどうするの?」

 

十秋は修吾に今日のデートは何をするつもりなのかを訊ねる。

幸い、藤川はショッピング街や娯楽施設は豊富なので遊ぶところに困る場所ではない。

その気になれば、ただブラブラしているだけでも時間は潰せる。

 

「う、うん、実は今日行くところは決めてあるんだ」

 

「そうなんだ。じゃあ、そこに向かおうよ」

 

「うん」

 

修吾のプランに乗り、ふたりは目的の場所目指す。

 

歩く事数分、目的の場所が見えてきた。

と言っても、十秋は歩いている最中からちょっと予感はしていた。

目的地周辺には大勢の人が溢れていて、その場所独特の楽しそうな雰囲気とこれから起こる出来事への期待に満ちた空気でにぎわっていた。

 

「ここって、サッカースタジアムだよね?」

 

ふたりが辿り着いた場所は「フジカワビッグブルースタジアム」という藤川にあるサッカーやラグビーや陸上競技などで使用されるスタジアムだった。

この場所は藤川に本拠地を置くプロサッカーチームの「藤川ブルードルフィンズ」のホームでもある。

そこにはファンの団体、親子連れ、友達同士、カップルなど多くのサッカーファンが列を作り、スタジアムの中へと吸い込まれていく。

 

「うん。実は親戚から今日ここで行われるサッカーの試合の特等席チケット譲ってもらってね」

 

修吾は財布からチケットを2枚取り出して十秋に見せた。

確かにそれはこの日行われるドルフィンズと他のチームとの公式試合の特等席チケットだった。

 

「なんか、俺の趣味丸出しの所なんだけど、良いかな?」

 

「うん、いいよ。観に行こうか」

 

ちょっと不安そうな顔をしながら訊ねてくる修吾に十秋はちょっと可笑しそうに見ながら了承の返事をする。

 

「そ、そう?良かった~。こういうのって興味ない人とかあと嫌がられると思ってたから」

 

安堵の息を漏らす修吾。

 

「あたしはそんなにサッカーに詳しい訳じゃないないんだけど、日本代表とかの試合がテレビ中継されるときはよく家族で見てるからね。そんなに興味が無いって訳じゃないよ」

 

織斑家ではオリンピックやワールドカップなどのテレビ中継は大概家族揃って見るのが常なので、十秋自身はそれほどサッカーの知識が乏しい訳でもない。

 

「でもそれって高いんでしょ?よく譲ってもらえたね?」

 

「ああ、本当は親戚の人が観に来るつもりだったらしいんだけど、急に別の用ができて来れなくなっちゃったらしくてね。だから無駄にするくらいならってことで譲ってもらったんだ」

 

「そうなんだ。それはラッキーだね!」

 

「おう!」

 

十秋がサムズアップをすると修吾もそのノリに応えてサムズアップを返す。

 

「それじゃ、早いトコ並んじゃおうか」

 

「そうだね。あんまりのんびりしてると席に着くのに時間掛かっちゃいそうだね」

 

十秋と修吾はスタジアムに吸い込まれていく人達の中に紛れてスタジアムの中へと入っていった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

アイキャッチしりとり

 

十秋「インディゴドルフィンズという案もありました」

 

 

 

修吾「たぶん、そっちは語呂が・・・」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

スタジアム内の売店で飲み物や応援グッズを買って客席に着いたふたりは今や遅しと試合開始の時を待っていた。

 

「あたしって生でスポーツ観戦するのって初めてなんだけど、結構ドキドキするんだね」

 

売店で買ったメガホンを握り締めながら十秋は自分でも意外なほどドキドキとしていた。

 

「そうだね。選手として試合をする時も緊張するけど、こうして観戦側に回ると違った緊張が味わえるね」

 

修吾はというと、いつの間にかドルフィンズのユニフォームを着込んで、手には十秋と同じメガホン、首には青いタオルを掛けていた。

凄い変わり身の早さである。

 

「あははっ、二宮くん張り切ってるね」

 

修吾は傍目から見るとドキドキしていると言うよりはそれを通り越してワクワクしている感じだった。

まるでクリスマスや誕生日のプレゼントを待ちきれない子供のようで、彼のそんな意外な一面を目にして十秋も少し楽しくなった。

 

「あ、選手達が出てきたね」

 

「ああ。あとはコートに散らばってキックオフのホイッスルが鳴るのを待つばかりだ」

 

スタンドはキックオフの瞬間、そのときを静かに見守っている。

選手、ファン共々キックオフ前独特の緊張感がスタジアムに走り、主審が時計を確認して笛を口にする。

 

(ピッピーっ!!)

 

キックオフのホイッスルがスタジアムに響いた。

同時にスタジアムにファンの声援が響いて一気にスタンドのボルテージが上がる。

ちなみに、キックオフはドルフィンズからである。

 

「いけっ!」

 

修吾もメガホンを口に声を張り上げる。

司令塔を起点にしてパスを繰り出されたと思うとキレイに繋がり、あっという間に前線に渡った。

 

「おっ、いきなりチャンスだね」

 

開始早々、ドルフィンズのFWが相手陣地のペナルティエリア内へ切り込んでいく。

十秋もいつの間にか試合を観るのに引き込まれたのかメガホンを強く握り締める。

 

「よし、いいぞ!そこだっ!!」

 

修吾の声援もより一層熱が入る。

しかし、そこに敵チームのDFが立ち塞がる。

 

「後ろから味方があがってるぞっ!!」

 

修吾が声を張り上げると、それが通じたのかボールを持ったFWが後ろからあがってきた味方のMFにパスを繰り出す。

パスを受けたMFはそのまま逆サイドにダイレクトパス。

 

「いいぞいいぞ!チャンスだ!!」

 

「わっ、わっ」

 

声援を送り続ける修吾に、十秋は首を動かして懸命にボールの行方を追っている。

めまぐるしく変化する情勢についていくのがやっとのようだ。

 

「織斑さん、あそこの左サイドの選手に注目して!」

 

「えっ?ええっ?」

 

修吾がその場所を指で指し示す。

 

「俺の予想が正しければあそこにパスが通るハズだから!」

 

「本当に?」

 

「俺の勘が正しければねっ!」

 

すると、修吾が示した場所にボールが舞い込んだ。

 

「わっ、凄い。ホントに来た!」

 

修吾の言ったとおりになり十秋は少し驚く。

修吾も思わずグッと拳を握り締めていた。

ボールを受け取った選手はノーマーク状態でシュートの体勢に入る。

そこにDF陣がなんとかカットに入ろうと走りこむ。

 

「放てっ!!」

 

修吾が身を乗り出して叫ぶとシュートが放たれる。

DF陣のカットは間に合わない。

 

「ああ!」

 

十秋も緊張の声を漏らす。

GKがシュートを止めようと跳んだ。

 

「ひやっ!」

 

十秋も思わずメガホンを握り締める手に力がこもる。

が、惜しくもボールはGKの手で阻まれてゴールにはならなかった。

スタンドから一斉にため息が洩れた。

しかし、GKはボールを弾いているのでこぼれ球となっている。

 

「でも、まだチャンス!」

 

こぼれ球にドルフィンズのFWが走りこんでいる。

GKは先ほどのブロックで体勢を崩している。

「今度こそイケる!!」とドルフィンズ側のスタンドに緊張が走る。

 

「あっ!?」

 

しかし、ボールは一瞬早く、DFによって場外にクリアされてしまった。

ほんのタッチの差だった。

でも、サッカーではコレが大きいのだ。

 

「はぁぁぁあああ」

 

大きなため息をもらして十秋は脱力する。

ふたりの周りのファン達もガッカリとしたため息をもらしていた。

 

「次はコーナーキックだからね。まだまだチャンスだよ」

 

次はドルフィンズ側のコーナーキックで試合が再開する。

まだまだドルフィンズ側の有利に変わりは無い。

 

「そうだね。今度こそきっと決まるよね!」

 

十秋も両手を振って気持ちを高めている。

まだ試合開始からそう時間はたっていないのに、すっかり十秋も試合に夢中になっていた。

ドルフィンズの選手がコーナーキックの体勢に入った。

再びスタンド内に緊張が走る。

一呼吸の後、コーナーからボールが蹴りだされた。

 

「一気に決めろ!!」

 

「行けーっ!!」

 

声援を送る修吾に唱和するように十秋もメガホンを使って声をあげる。

蹴り出されたボールはキレイな曲線を描いてそのままゴール前へと舞い込む。

そのボールを競り合うようにFWとDFが跳ぶ。

競り合いはドルフィンズ側のFWが競り勝ち、そのままボールをダイレクトでヘディングして相手ゴールへとねじ込む。

しかし、GKはこれに反応してギリギリのところでパンチング。

するとボールはポストに当たって弾かれる。

 

「ああっ!」

 

「いや、まだだ!」

 

こぼれ球となったそれを続けて別の選手が拾ってシュートを放つ。

「今度こそっ!!」と思うが今度はDFが身体を張ってゴールを阻止する。

 

「ああ、また!!」

 

「まだボールはこぼれてる!!」

 

再びこぼれ球となったボールは空きスペースに転がり、そこにFWとDFが走りこむ。

DF側はスライディングで再びボールをクリアしようとする。

でも、FW側がタッチの差でボールを拾いスライディングをかわす。

そのままシュート体勢に入る。

 

「っ!!」

 

十秋が息を呑む。

シュート放つ選手の動きがスローに見え、スタンド内の音が一瞬聴こえなくなったような感覚に十秋は襲われた。

やがて、ゆっくりとFWの選手から放たれたシュートは相手側のDFとGKの隙間を縫うように潜り抜けて―――――

 

(ザァンッ!!)

 

見事にボールは相手ゴールのネットへと吸い込まれた。

 

「よっしゃぁぁぁっ!!!」

 

「やったぁぁぁっ!!!」

 

ドルフィンズ側のスタンドが一斉に歓喜の声をあげる。

修吾も立ち上がって拳を突き上げ、十秋も手を叩いて喜びを顕にする。

 

「二宮くん、やったね!!」

 

「ああ、これで先取点だ!!」

 

「「イエーイ♪」」

 

ふたりは興奮冷めやらぬといった感じでハイタッチを交わす。

 

「いやぁ、今のはちょっと燃えたね!」

 

「そうだね!でも、良かったよ!織斑さんも楽しんでくれてるみたいで!!」

 

「あっ、う、うん、そうだね」

 

言われてから十秋も気付いた。

サッカーの事は詳しくないし、ここまで熱くなるほど夢中になるとは十秋自身も思っていなったので、正直自分でも驚いているくらいであった。

 

 

「さあ、まだ試合は始まったばかりだ!まだまだ試合がどうなるかはわからないよ!」

 

「うん、そうだね!頑張って応援しないとね!」

 

思いも寄らぬほど熱くなった十秋ではあったが楽しい事には変わりなかったので、このまま修吾と一緒にドルフィンズの応援を試合が終わるまで続けたのであった。

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