ようこそ藍越学園へ   作:TAKUMAKI?

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第六十一話 十秋と修吾の初デート 中編

side 十秋

 

「勝ったね」

 

「うん、勝った」

 

先ほど試合が終了して、あたしと二宮くんは次々とスタジアムから吐き出されてくる人込みと一緒に外に出てきた。

結果は1-0でブルードルフィンズの勝ち。

結局、序盤のあのゴールが決勝点となり、この1点をドルフィンズが守りきって勝ちを収めました。

 

「勝った事は喜ばしいんだけど、あのボールの支配率で奪えた点が1点だけなのはちょっと反省するところだと思うよ。終始押せ押せだったけど戦線が伸びきったところにカウンターを決められるところも何度かあったしね。今回はドルフィンズのGKが本当によくシュートを止めたと思うよ。今日のMVPを選ぶとしたらやっぱりドルフィンズのGKだろうね。相手側ももうちょっと左サイドを使った方がもっとボールの支配率上がった気がするよ。カウンターの時も右サイドから切り込むことが多かったからドルフィンズもDFが厚くなってたし、両サイドをもっと巧く使えばもしかしたら同点にできたかもしれない」

 

二宮くんは今日の試合を自分なりに分析してそれをあたしに熱く語ってくれている。

サッカーの戦術はよくわからないけど、サッカー選手なりの目線で見れば頷けるのかもしれません。

 

「二宮くん、本当にサッカーが好きなんだね」

 

サッカーの事を語る二宮くんはイキイキとしていて本当に楽しそうで、自然とあたしはその言葉を口にしていた。

 

「え?あ、う、うん、そうだね/////」

 

ちょっと照れ笑いを浮かべる二宮くん。

 

「俺、今まで本当にサッカー一筋で生きてきたからね。やっぱりサッカーの事になると熱くなっちゃうんだよね」

 

「そうなんだ。でも、いいんじゃないかな?二宮くんらしくて」

 

「そう?ありがとう。それにしても、織斑さんも結構熱くなって応援してたね?正直驚いたよ」

 

うん、それはあたし自身もそう思っている。

確かにサッカーはワールドカップとかのテレビ中継は観たりするけど、今日みたいにあんな熱くなって応援する事なんて今までなかった。

それなのに今日は今までに無い位熱くなって応援してしまった。

 

「うーん。それは多分、初めて生でスポーツ観戦したせいかな?あたしってこういう風に会場に足を運んでスポーツ観戦するのって今回が初めてなんだよね」

 

お父さんやお母さんがまだ居たころもこういったスポーツを生で観に行くこともなかった。

お父さんとお母さんは忙しい人だったしね。

そのかわり、色んな所に連れて行ってもらったんだけどね。

一夏がシャルロットちゃん達と出会ったのもお父さん達がよくあたし達を海外に連れて行ってくれたからだし。

あたしにも今でもメールとか手紙をやり取りしてる海外の友達はいる。

この前はアメリカに住んでいるファイルス家のナターシャから手紙が届いた。

なんでも向こうも夏休みに入ったら日本に遊びに来るとナターシャの手紙には書いてあった。

それが今から夏休みの楽しみのひとつでもある。

おっと、話が逸れてしまいましたね。

 

「やっぱり、テレビ中継で観るより生の方が迫力あるよね」

 

「うん、やっぱりテレビで観るのとは違うよ」

 

まあ、結論としては初めて生で観るサッカーの試合に思ったより刺激を受けてつい熱くなってしまったということなのでしょう。

 

「・・・・・そういえば、もういい時間だね。織斑さん、お腹空いてない?」

 

空を見上げると茜色に染まりつつあった。

 

「そうだね。いっぱい声出したからペコペコかも・・・」

 

あたしはお腹を押さえてちょっとおどけてみせる。

二宮くんも「あははっ」と笑ってくれた。

 

「それじゃ、どうする?どこか食べに行こうか?」

 

一夏に今日は夕飯はいらないと言ってあるのであたしはその申し出を受ける事にします。

 

「織斑さんは何が食べたい?」

 

「う~ん、そうだね~?」

 

「う~ん・・・」と考え込む。

もうお食事時だし、今からお店を探すにしても何処も混んでると思う。

あたしはあんまり待たされないところを考えているとある場所を思いついた。

 

「あっ!じゃあ、あそこ行かない?」

 

「あそこって何処だい?」

 

「ここからちょっと行ったところに藤川で有名な所があるじゃない」

 

「それって、もしかして?」

 

どうやら二宮くんもわかったらしい。

デートのチョイスにはちょっとどうかとも思ったけど、お腹を満たすには結構いい所だと思う。

 

「そう、藤川で有名な観光地のひとつ―――――」

 

それは日本で藤川にしかない場所。

 

「―――――カレー博物館だよ」

 

side out

 

 

カレー博物館。

有名なカレーショップを一同に集めた藤川にあるフードテーマパーク。

実際に色々な種類のカレーを食べる事ができ、お試し用の少量のメニューがあり、連日多くのカレーファンが詰め掛ける事で有名である。

入り口はインドを意識してか2頭のゾウのマスコットをあしらった看板がふたり出迎えてくれた。

フードテーマパークと言う事だけあって幅広い年齢層の客が列を成していた。

 

「結構身近にあるところなんだけど、あたし来た事無いんだよね。前々から行ってみたいとは思ってたんだけどね」

 

「そうなんだ?俺も来るのは初めてだからなんだか楽しみだよ」

 

ふたりは入場待ちの列の最後尾に並んだ。

夕食時なので少し待つ事も考慮していたが入場待ちの列は思ったほど少なく、これならそれほど待たずに入る事ができそうだった。

 

「織斑さんってカレー好きなの?」

 

「ん?まあ、そうだね。料理する人にとってはカレーって結構アレンジとか考えたりできるから楽しい料理だよ。その辺りは料理のできる弟の一夏もカレーには結構凝るしね」

 

「ああ、あの噂の弟くんね。彼も料理できるんだ」

 

「うん。家事は大体、あたしと一夏がやってるから」

 

「織斑先生達はやってないのかい?」

 

「百春兄さんはできない事もないんだけど、医学の勉強で忙しいからあまりしないよ。千冬姉さんは家事全くできないから料理なんて以ての外だし」

 

「そうなんだ?普段キリッとした人だから家事もできるかと思ってたけど」

 

「そんなの表面上だけだよ。家では凄くズボラであたし達は結構困ってるくらいだしね」

 

「へぇ、意外だなぁ」

 

「まあ、誰にでも苦手な事はあるって事だね」

 

織斑家の話題もそこそこにふたりはカレー博物館の入場口までやって来た。

 

「じゃあ、入ろうか」

 

「うん、思い切り楽しんじゃうよ♪」

 

ウキウキとしている十秋とそんな十秋を見て微笑ましそうにしている修吾はカレー博物館の中へと入っていった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

アイキャッチしりとり

 

十秋「がっつりいただきます♪」

 

 

 

修吾「すっごく抱きしめたいな!」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

博物館の中はインドの都市デリーの街並みをイメージした作りになっており、出店している店の外観は正にインドの市街地といった雰囲気だった。

 

「さて、最初はどの店に入ろうか?」

 

修吾は入場口で渡されたフロアガイドに目を落としながら行き先を思案する。

館内には数多くのカレーショップが立ち並んでいるため何処に入っていいか迷ってしまう。

修吾自身はサッカー部に所属しているしカレーも好きな食べ物なので全件回る自信はあるが、各店舗に少量メニューがあるとはいえ、さすがに全件回ってそれを食すのは女の十秋にはキツイだろうと修吾は思っていた。

 

「とりあえず、端から順に入っていこう。全件回ってみたいからその方がいいでしょ?」

 

「え!?全件回るのかい!?」

 

修吾が驚きの声を上げる。

 

「うん。だってせっかく来たんだし、全部の店のカレー味わってみたいからね」

 

「で、でも、大丈夫かい?途中で腹一杯になるんじゃ?」

 

「そのときはそこで止めればいいじゃない?じゃあ、行こうか」

 

「お、おう・・・」

 

やや気圧された修吾を引き連れて十秋は館内のカレーショップを一店舗ずつ回る事となった。

 

その一部をちょっとだけ見てみよう。

 

 

 

 

「すみませーん、このお店のオススメのカレーはなんですか?」

 

店に入って席に着くと十秋はすぐに店員を呼んでその店のオススメのカレーを訊ねた。

 

「はーい!当店ではバターチキンカレーが一番のオススメでーす!」

 

やたらテンションの高い店員がお冷を2つ持って十秋達のテーブルにやってきた。

店員が言うにこのお店のオススメのカレーはバターチキンカレーというものらしい。

 

「じゃあ、それを2つください」

 

「かしこまりましたー!少々お待ちくださーい!!」

 

注文を取った店員が厨房に引っ込むとものの数分で注文したカレーが運ばれてきた。

 

「お待たせしましたー!バターチキンカレーおふたつになりまーす!!」

 

ふたりの前にオススメのバターチキンカレーが置かれる。

 

「おおー!これは凄いなぁ!!」

 

「うん、美味しそう!」

 

その名の通り、ソースに絡まったチキンと香りたつバターが寄り一層食欲を引き立てる一品だ。

 

「「いただきます!」」

 

早速ふたりはそのクリーミーなカレーをスプーンで掬って口に運んだ。

 

「おおっ!美味い!!」

 

「ホントだ!凄いクリーミーで美味しい!!」

 

スパイス、生クリーム、バターの絶品コラボが織り成すソースが深い味わいを醸し出し、十秋と修吾を魅了する。

 

「バターチキンっていうけど、だいぶトマトの味が際立ってるなぁ」

 

「この一皿で結構な量のトマトを使ってるみたいね。クリーミーだけどトマトの酸味で後味はさっぱりで凄く美味しいね」

 

クリーミーなバターチキンカレーを十秋と修吾は心行くまで堪能した。

 

 

 

 

「当店は激辛系カレーを専門に扱っております。オススメはこの魚を使ったフィッシュ・マサラです」

 

「じゃあ、それを2つお願いします」

 

激辛カレーを専門に扱った店に入ったふたりは店員に勧められたカレーを注文した。

 

「お待たせしました」

 

運ばれてきたカレーを見ると

 

「スゲェ・・・、何だこの色は・・・」

 

「真っ赤だねぇ」

 

スパイスよりも唐辛子をたっぷりと使ったこのカレーはソースの色が恐ろしく真っ赤だった。

元より、南インドでは激辛のカレーが好まれて食べられるため、このように唐辛子をメインに使ったカレーも存在する。

ちなみにそのカレーはこの店の中でも№1の辛さを誇る超スペシャル激辛カレーでもある。

その赤いカレーに息を呑みながらもふたりはそのカレーを口にした。

 

「・・・・・・・」

 

一瞬の間、そして修吾は身体をワナワナと振るわせると

 

「うがーーーっ!か、かれぇぇぇぇっ!!」

 

あまりの辛さに一瞬で身体から大量の汗が噴出し、口から火炎放射が出せるのではないかと思うほどの辛さが修吾を襲った。

 

「み、み、み、みずぅぅぅ・・・」

 

ヒリヒリする口を和らげようと水に手を伸ばす修吾。

コップに入った水をそのままグビグビと飲み干す。

 

「あー・・・、死ぬかと思った・・・」

 

コップの水を飲み干した修吾がそう言葉をもらした。

未だに口の中に辛さが残っていてヒリヒリするほどだ。

 

「お、織斑さん、大丈夫?こんな辛いの食べられな・・・・」

 

視線を十秋の方に向けると、そこで修吾は固まった。

 

「う~ん、辛いことは辛いけど我慢できない程じゃないなぁ。もう少し辛いのを想像してたんだけど、ちょっと拍子抜け・・・」

 

そこにはケロッとした顔で激辛カレーをパクパクと食べている十秋がいた。

このとき、修吾のみではなく、店全体が平然と食べ続ける十秋に戦慄したという。

 

 

 

ふたりはその後も数件のカレーショップを回り、心行くまでカレー博物館を堪能した。

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