ようこそ藍越学園へ   作:TAKUMAKI?

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第六十五話 第四班の交流

side シャルロット

 

林間学校の移動中のバスの中。

僕はぼんやりと窓の外を眺めている。

周りからはクラスメイト達の賑やかな声が聞こえてくるけど、僕はあんまり騒ぐ気分にはなれなかった。

それは僕も林間学校は楽しみにしてたよ。それは間違いないんだけど・・・。

やっぱり僕は一夏と同じ班で楽しみたかったなぁと思う。

一夏は第一班で僕は第四班。

バスの座席もそれぞれ班ごとに固まるような席順になっているので席も離れてしまっている。

 

「よっしゃ!革命よ!!」←鈴

 

「何だとっ!?」←箒

 

「え~?」←本音

 

「うわっ、マジかよ~!」←一夏

 

「あははっ、やられたねこれは」←悟史

 

「・・・・・・・・・」←俊樹

 

前の方の座席から第一班の声が聞こえて来る。

どうやらトランプやってるみたいだ。

 

「はっはっはっ!これからあたしを美少女革命リンインと呼びなさいっ!!」

 

鈴、その名前は正直どうかと思うよ僕は・・・。

 

「ん」←俊樹

 

「なっ!?革命返し!!」←鈴

 

「よし、でかした!」←箒

 

「せっとん、な~いす♪」←本音

 

「サンキュー瀬戸!」←一夏

 

「意外な救世主の登場だね」←悟史

 

聞いているだけで楽しそうだ。

僕も混ざりに行きたいけど無闇に席を離れると織斑先生に怒られるのでそれも出来ない。

はぁ、神様ってイジワルだなぁ・・・。

 

「あ、あのぉ・・・、デュノアさん、さっきから浮かない顔してるけど、どうかしたの・・・?」

 

「へっ?」

 

隣の席に座る矢島勉くんが恐る恐るといった感じで話しかけてきた。

彼とはそれほど話をしたこともないので僕は少し驚いた。

 

「ああ、ごめんね。隣で暗い顔してたら気になるよね」

 

「い、いや、それはいいんだけど・・・、も、もしかしたら具合が悪いんじゃないかとか、酔っちゃったんじゃないかとか思ったから。で、でも大丈夫なら安心したよ」

 

「ありがとう、心配してくれて」

 

「へっ?い、いや、ぼ、僕はそのぉ・・・、人として当たり前の事を・・・」

 

「くすくす♪」

 

いきなりモジモジし出した矢島くんが少し可笑しくて僕は少し笑ってしまう。

 

「せっかくの林間学校だもんね。暗い顔してたら勿体無いよね」

 

「う、うん。せっかくなんだから、楽しんだ方がいいと思うよ」

 

「うん、そうするよ」

 

一夏と同じ班になれなかった事をいつまでも引き摺ってても仕方ないよね。

それなら、こっちはこっちで楽しむ事にしよう。

 

「へぇー、珍しいな。勉が女子と普通に会話してるなんて」

 

「あ、優希・・・」

 

後ろの座席から身を乗り出して顔を出したのは松戸優希くんだった。

松戸くんは矢島くんと仲が良くてよく一緒にいる男の子だ。

彼とは普段接点がないのは矢島くんと一緒だ。

だから、今回の林間学校で初めて接点を持つことになる。

 

「対人恐怖症で親しい奴以外とはあんまり関わりを持たないお前が、しかも女子と普通に話してるとはなぁ。どういう風の吹き回しだ?」

 

「べ、別になんでもないよぉ・・・」

 

タイジンキョウフショウ?

なんかそんな言葉が聞こえたけど、どういうことかな?

 

「何だぁ、顔赤くして?もしかしてデュノアに惚れたか?」

 

「そ、そんなわけないだろぉ!!」

 

「冗談だよ、そんなに怒るなよ」

 

「まったく・・・、ごめんねデュノアさん、優希が変な事言って・・・」

 

「ううん、大丈夫。僕は気にしないよ。それよりさっき松戸くんが言ってた対人恐怖症って?」

 

「あ、そ、それは・・・」

 

矢島くんが口篭る。

聞いちゃいけない事だったかな?

 

「ああ、こいつ小学生のときに酷いイジメに遭ったせいで人と関わるのが怖くなってるんだよ。だからさっきデュノアとこいつが普通に話してるの見て正直驚いたぜ」

 

矢島くんに代わって松戸くんが説明をしてくれた。

それにしても、イジメか・・・。

確かにそんな経験があるなら矢島くんがそうなってしまっても無理ないのかもしれない。

そういう問題があるのは日本でもフランスでも変わりはないんだね・・・。

 

「対人恐怖症か・・・。過去に私も似たような状態に陥っていた事があったな」

 

「あ、ラウラ」

 

松戸くんの横からラウラが顔を出した。

ラウラの席は松戸くんの隣なので今の話が聞こえていたみたい。

ラウラは生まれ持ったオッドアイと家柄のせいで人間不信になっていたけど一夏達のおかげで立ち直ったという過去を持っている。

そう考えるとラウラと矢島くんの境遇は少し似ているのかもしれないね。

 

「そ、その話はもういいよぉ・・・。僕だってそれを克服するために努力はしてるつもりだよ」

 

「そうだな。お前は過去の私とは違って周囲の人間全てに絶望してるようではないらしいな。お前を気に掛けてくれている人間もいる。その存在は必ずお前をすくいあげてくれる。大事にしろよ」

 

「う、うん・・・」

 

矢島くんはラウラの言葉に少し困惑しながら返事をした。

ラウラは自分をすくいあげてくれる存在のありがたさをその身でよく知ってるから矢島くんの事も放っておけなかったのかもしれない。

僕は今まで矢島くんとは接点はなかったけど、松戸くんとうちの班のもうひとりの男子の斉藤くんとはかなりくだけて話しているのを見かけたことがあるから彼らがいれば矢島くんは大丈夫だと思うな。

 

 

ところで、ラウラも僕と同じで一夏と一緒の班になれなくて少しふてくされ気味だったけど、今は普通に松戸くんと矢島くんとも会話をしてる。

 

「ドイツの映画史の始まりは19世紀後半まで遡る。第一次世界大戦の勃発で一時は低迷を見せたが、映画産業の国営化のはじまり、軍の保護下でプロパガンダ映画の製作が行われるようになると大衆はそれを受け入れ、ドイツ映画はヨーロッパ最大規模に成長していったというわけだ」

 

「そ、そうなんだ。そ、そういえばさ、最近のドイツ映画って芸術性を追求した作品だけじゃなくて質の高い娯楽作品もコンスタントに製作されてるよね?」

 

「おうおう。最近のドイツ映画は凄いのが多いぜ。近年はアカデミー外国語映画賞を3回獲得するほど活況してるからな。この間もドイツ映画1本見たんだけどさ――――――」

 

今は映画の話題で会話が盛り上がっている。

僕自身はそんなに映画を見る方じゃないけど、聞いてて中々面白いと思った。

意外なことにラウラが映画史に詳しかったのでドイツの映画史について僕と松戸くんと矢島くんでご教授を頂きました。

なんか普段はあまり話さない人達ともこうして何か話題を見つけて一緒に会話をするっていうのも林間学校の醍醐味というのかもしれないね。

 

 

 

バスは一度、パーキングエリアに立ち寄って休憩時間になった。

お手洗いに行く人や飲み物を買いに行く人達が一斉にバスを降りていく。

前の座席に視線を移すとちょうど一夏がバスを降りていったところだった。

この休憩時間の間だけでも一夏と話せないかと思ってたんだけど仕方ないね。

さっきまで一緒に話をしてたラウラ達も今は席を立ってしまっているので手持ち無沙汰になってしまう。

 

「シャルロットさん、お暇でしたらこっちで一緒にお話でもどうですか?」

 

そこにセシリアが声を掛けてくれた。

セシリアの席は僕のいる席から通路を挟んで向こう側のひとつ後ろの座席に位置している。

隣に斉藤くんが座っていてその隣には補助席を出して鷹月さんが座っている。

特にすることもないので僕はちょっと席を立ってその輪に混ざることにした。

 

side out

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

アイキャッチしりとり

 

勉「わわわっ!ぼ、僕、矢島勉です!!」

 

 

 

優希「好きなものは映画、松戸優希だ」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

side シャルロット

 

僕は同じ班のセシリア、クラス委員の鷹月静寐さん、矢島くんと松戸くんの友人の斉藤くんの3人のグループに入ってお話をする事になった。

 

「デュノアさんもひとつ食べるかい?」

 

斉藤くんが包装紙に包まれたお饅頭を差し出してくる。

僕はこう見えて和菓子には結構目がない方だ。

日本に来るようになってすっかりハマっちゃったんだよね。

 

「ありがとう、頂くね」

 

僕はそれを受け取って包装紙を開けて一口齧る。

 

「あ、凄く美味しい」

 

皮もしっかりしていて甘さもしつこくなく、皮と餡子のバランスが絶妙で口に残らない。

お茶と一緒に食べればもっと美味しそうだ。

どうしたらこういうもちっとしていながらしっかりとした皮が作れるのかな?

何か材料に秘密があるとか?

って、何か僕一夏みたいなこと考えてるなぁ・・・。

 

「俺の知り合いに老舗の和菓子店をやってる人がいてね。今日の林間学校に合わせて取り寄せたんだ。気に入ってくれたならよかったよ」

 

学校行事で持ってくるお菓子に老舗の和菓子を選ぶなんて凄いこと考えるなぁ斉藤くんって。

うーん、それにしてもこのお饅頭美味しいなぁ。

あとで斉藤くんにお店のこと聞こうかな。

夏休みに帰省するときにお父さん達にお土産に持っていくのも悪くないかも。

 

「そういえば、3人は何の話をしてたの?」

 

お饅頭をしっかりと食べ終えたところで僕はそう3人に訊ねた。

 

「まあ、これまでそんなに接点を持たなかった者同士、まずはお互いの人となりを知る意味も兼ねて簡単に趣味や好きなものの話なんかをしていたよ」

 

斉藤くんがにこやかな表情でそう答えた。

僕がお饅頭を美味しいって言ったのが嬉しかったのかな?

 

「でも、鷹月さんの趣味にはちょっと驚きましたわ。読書というのは鷹月さんらしいとは思いますが、まさかあのような本を読んでいるとは思いませんでしたわ」

 

セシリアがそう言って鷹月さんの方に視線を向ける。

 

「そう?読んでみると結構面白いわよ。特に『軍人たる者かくあるべし』なんて読むと気分がスッとするし」

 

そういえば、鷹月さんって結構ユニークな本を読むのが好きって前に聞いたことあったな。

 

「他にもホラー小説とか推理小説も結構好きだし、最近ではライトノベルも少し読むようになったわね。最近のお気に入りは『IF〈インフィニット・フォーチュン〉』っていう作品がお気に入りよ」

 

「それってどんな作品なの?」

 

「男性にしか扱えないパワードスーツ『インフィニット・フォーチュン』、通称IFを動かしてしまった主人公の女の子が、男性しかいないIF操縦者育成学校であるIF学園に入学させらてしまうっていうお話。まあ、SFと学園ラブコメを合わせたような作品かな」

 

「それって面白いの?」

 

「面白いわよ。主人公の女の子が天然で色んな男子をオトしていくんだけど、この主人公が鈍感で自分に向けられてる好意にまったく気付かないで男子を振り回す様は見てて結構笑えるわよ」

 

う~む・・・、なんだろう?

初めて聞く作品なんだけど、何故だか聞き覚えがあるような作品だなぁ。

というより、その作品で起こってる様なことを僕が体験したことがあるような不思議な感覚が・・・。

 

 

僕が性別を偽ってとある学園に入学して、学園の寮で同室になった男の子に正体が露見して、彼に真相を告げて学園を去ろうとするけど彼の真摯な説得を受けて思いとどまって、同時に自分の居場所を作ってくれた彼の事を好きになって、だけど彼は呆れるほど鈍感で気持ちに気付いてくれなくて、天然でこっちをときめかせるような言動をして振り回される。

 

 

そんな話をどこかで体験したような・・・。

 

まあ、気のせいだよね。

僕そんな体験した事ないもん。

 

「あとは一応弓道部に所属してるから弓道を少し嗜むくらいね。家では両親が共働きだから家の事は私がやってるし、弟や妹達の面倒も見てるわよ」

 

「へぇ、鷹月さん偉いんだね」

 

「そんなことないわよ。私お姉ちゃんだからね」

 

そう言って微笑む鷹月さんはちょっと大人びて見えた。

さすがは「クラス一のしっかり者」という事なのかもね。

 

「私の事はこれくらいにして、斉藤くんも結構本を読んでるって言ってたわよね」

 

今度は鷹月さんが斉藤くんに話題を振る。

彼とは矢島くんや松戸くんと同様、あまり接点を持てなかった人なので少し興味がある。

 

「まあね。演劇部所属だから読むものは戯曲が多いけど、小説も結構見るよ。俺が読むのは結構ドラマ化や映画化される本を読むことが多いかな。見てみた時に原作との違いとか役者の細かい演技を見るのが結構好きなんだよね」

 

「やっぱり将来はその道に進むの?」

 

「まあ、そうだね。藍越を出たらそうしたいと思ってるよ」

 

「なら今のうちにサインとか貰っておいた方がいいかな?もしかしたら凄い大物になるのかもしれないし、初期サインって貴重かも」

 

「・・・・・・・、あははっ、そうかもね」

 

ん?

一瞬斉藤くんが目を瞬かせていたけど、僕何か変な事言ったかな?

 

「まあ、サインは俺が本当に大物になった時に書くよ。フランスのカンヌ国際映画祭なんかに呼ばれたりしたらフランス人のデュノアさんにも書いてあげられるかもしれないしね」

 

「でも僕の実家ってフランスの片田舎にあるからカンヌからだとちょっと遠いよ」

 

「それじゃ、そん時は頑張ってカンヌまで来てくれ」

 

「ええっ!?こっちが出向かないといけないの!?」

 

「俳優は忙しいのだよデュノアくん♪」

 

斉藤くんなりの冗談なのか、ちょっとおどけて見せる彼は楽しそうだった。

 

「では、続いてわたくしのお話を――――――」

 

「―――――みなさーん、席に戻ってくださーい!そろそろ出発の時間ですよー」

 

副担任の山田先生の声がバスの中に響いた。

時計を確認すると確かにもう休憩時間が終わりに近づいていた。

 

「さっさと席に着け、ガキ共。さっさと席に着かんと宿まで歩いて行かせるぞ」

 

織斑先生の掛け声で騒がしかった車内は一瞬にして静まり、全員が迅速に席に着く。

宿まであとどれくらいの距離があるのかわからないのに、歩いて行かされるなんて冗談じゃないしね・・・。

 

「り、理不尽ですわ・・・」

 

何かセシリアが落ち込んでる。

そういえば、何か話そうとしてたみたいだけどそれを先生達に遮られちゃったみたいだ。

セシリアの話は次の機会ということにしておこう。

 

「戻ってくるのが遅い!馬鹿者!!」

 

「すみません・・・」

 

前の方で一夏が怒られていた。

どうやら集合時間に遅れてバスに戻ってきたみたい。

織斑先生の怒鳴り声と、「バシン!」という一夏の頭を何かで叩いた音がバスに響いた。

 

そして、バスは再び宿に向かって走り出しました。

 

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