ようこそ藍越学園へ   作:TAKUMAKI?

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にじファンに掲載していたのはこの回までです。

次回から新作になります。

いつ更新できるかわかりませんがよろしくお願いします。


第六十八話 痛む胸とメシマズ襲来

一夏が箒のご機嫌取りに四苦八苦しているその裏では、各班ごとにカレー作りが着々と進められている。

中には料理に不慣れな者達のみが集合した班もおり、少し出来がイマイチなカレーを作る班もちらほらといるが、それはこういう行事ならではの愛嬌というものであろう。

が、学年全体を通してみても1班だけ誰も食べる事のできないカレーを作った班が存在した。

さて、今回はその班の様子をちょっと見てみよう。

 

 

 

 

「切る!」

 

(ダン!!)

 

強烈な音がキャンプ場に響く。

それは振り下ろすではなく振り落とす。

読んで字の如く高々度から叩き落された鋭利な一撃。

真上から、まるで剣でも振り落とすように、いっそそのまま俎板(まないた)まで両断しそうな勢いで人参を真っ二つにした。

それは正に一刀両断の境地であった。

 

「ラ、ラウラ、そんなに勢いよく包丁を振り下ろさなくてもちゃんと切れるよ!」

 

ラウラの包丁捌きを見たシャルロットが慌ててラウラを諭す。

 

「む、そうか?昔父様に連れられてサバイバルキャンプをした時はこうやって父様は材料を切っていたぞ?」

 

娘とサバイバルキャンプをしながら材料を叩き切るドイツ軍最高司令官ってどんな奴だよと思わずツッコミを入れてしまいたくなるが、ワイルドたっぷりのその切り方には危険性を感じるので止める様に諭す。

 

「いい、ボーデヴィッヒさん。左手はこうして包丁はこうすれば、ほら、簡単に切れるでしょ?」

 

静寐がラウラに包丁捌きの手本を見せる。

手際良く刻まれた人参は正確に均等に切られていた。

 

「おおっ!確かに簡単に切れるな。よし、私もやってみるぞ」

 

ラウラは包丁を握り直して、俎板の上の人参と格闘をする。

 

「んー、こうか?」

 

ドン、ドン、とラウラが包丁を入れる度にそんな音がする。

 

「ちょっと力入れ過ぎね。もうちょっと軽くやってみて」

 

「う、うむ・・・、こ、こうか?」

 

トン、トン、と少し間隔をあけて刻む音が鳴る。

 

「そうそうその調子。ちょっと切り口が歪だけど、それは慣れてないから仕方ないわね。とりあえず、今みたいに慌てずにゆっくりと切っていってね」

 

「了解だ。うむ、段々わかって来たぞ。これが明鏡止水というものか・・・」

 

そのまま黙々と人参を切っていくラウラ。

 

「鷹月さん、教えるのうまいね」

 

シャルロットが感心したように唸る。

料理部に所属して料理の腕を磨いているシャルロットが見ても静寐の教え方は実に的確だった。

 

「まあ、料理を教えるのは妹達で慣れてるから。ボーデヴィッヒさんも飲み込みが早くてウチの妹達より手が掛からないわよ」

 

チラリとラウラを見れば、もう熟年主婦もビックリなくらいの包丁捌きで残りの野菜も刻んでいた。

その包丁捌きは先ほどの一刀両断のやり方から信じられないほど進歩だ。

 

(ラウラって一夏と同じで一度飲み込めば上達が早い天才型なのかもね。さすがは兄妹かも)

 

生まれた国は違えど、そういう部分は共通している事にシャルロットは驚きと感心を抱いていた。

 

「シャルロット、鷹月、こっちは全部切り終わったぞ」

 

「こっちももう済んでるわよ。デュノアさんは?」

 

「うん、こっちオーケーだよ」

 

「それじゃ調理に入るわね」

 

班長の静寐の指揮の下、刻んだ材料を持って調理が開始となった。

 

 

「いい?私の場合はここで隠し味を入れるんだけど――――」

 

「ふむ、なるほど、それが鷹月の家の味なのだな」

 

鍋の前では静寐がラウラに教えながら調理している。

その様子は優しい姉が妹に料理を教えているようで微笑ましい。

まあ、ラウラは織斑家の三女を自称しているだけにすっかり妹雰囲気を見につけており、今ではクラスメイトからもそんな扱いを受けていたりする。

 

「申し訳ありませんわ。わたくしだけ見ているだけだなんて・・・」

 

そのふたりの背中を見つめながらしょんぼりとセシリアが呟いた。

 

「まあまあ、セシリア。体調が優れないんじゃ仕方ないよ。その状態で料理するのは危ないしね」

 

簡易椅子に座り、パラソルの下で日差しを避けているセシリアにシャルロットが声を掛ける。

実はセシリアは校外学習の最中にちょっと体調を崩してしまい、カレー作りには参加せずにパラソルの下で安静にしているのだ。

 

「そういえば、セシリアって料理経験ってあるの?名家のお嬢様ならキッチンに立つことなんてなかったんじゃないの?」

 

「まあ、そうですわね。家にはお抱えのシェフがいましたし、入院する事も多かったですから料理をする機会はなかったですわね」

 

「あ、ゴメンね。聞いちゃマズかったかな・・・」

 

「いえ、大丈夫ですわ。これを機会に料理の方を覚えてみようかと思っていましたけど、次の機会に取っておく事にしますわ。やはり女性の嗜みとして料理は出来た方がいいでしょうし」

 

「やっぱり、料理を覚えるのは百春さんのため?」

 

「へっ!?い、いや、それはその、別に・・・」

 

顔を赤く染め、目を泳がせてオロオロとするセシリア。

反応で丸わかりで、シャルロットはちょっと笑ってしまう。

 

「あっ!ヒドイですわシャルロットさん!笑うなんて!!」

 

「ゴメンゴメン、なんかセシリア可愛くって」

 

「もう!」

 

ふくれっ面になるセシリアとそれを見てクスクス笑うシャルロット。

お互いを盟友と呼び合うふたりの金髪美少女のじゃれあいは静寐とラウラの様子とはまた違った微笑ましさが垣間見えた。

 

 

side シャルロット

 

「よし、あとはルーを入れてじっくりと煮込めば完成ね」

 

調理も滞り無く進んであとはルーを入れて煮込めばカレーは完成だ。

 

「じゃあ、僕がお鍋見てるからふたりとも休憩してていいよ」

 

僕は途中からセシリアとお話してたから調理のほとんどは鷹月さんとラウラに任せちゃったのでお鍋を見てかき回すのを自ら申し出る。

 

「そう?なら、デュノアさんにお願いしようかしら。じゃあ、私はお米の方を見てくるからあとはお願いね」

 

「うむ、シャルロット任せたぞ。私は兄様の所に行って来るぞ」

 

鷹月さんは第四班男子メンバーが担当している飯盒炊爨を見に、ラウラは一夏に会いに行くと言ってその場を離れた。

 

「さて、ルーを入れて焦げないようにしっかり混ぜないと」

 

お鍋にルーを投入してお玉でかき混ぜる。

出来上がりまでにはまだじっくりと煮込まないといけない。

煮込んだ時間が長ければ長いほどカレーは美味しくなるって一夏も十秋さんも言ってたしね。

 

「あれ?」

 

そこで僕はふと視線を横にずらすと一夏と箒がふたりでどこかに行こうとしているのが目に入った。

ラウラは一夏に会いに行ったのにこれでは会えないだろうとかそんな考えは僕の頭には無く、僕にはふたりが手を繋いでいるのが目に付いた。

そしてふたりは人があまりいない湖畔の方に向かって行った。

 

(ズキッ!)

 

胸の奥が痛んだ。

この感覚は前にも一度だけ感じたことがあった。

それは先月に一夏と鈴がふたりで碧海ホームに行くために待ち合わせをしていたのを目撃したときだ。

結局、あのときは杞憂に終わったけど、今回はちょっと状況が異なる。

鈴のときは一夏に好意があるとは思っていなかったための困惑が大きかったけど、箒の場合は一夏に好意を抱いているのは僕も知るところなので胸の痛みは鈴のときよりも強く感じた。

箒とはお互いに恋敵と認識し合ってライバル宣言もしてる間柄だけど、やはり一夏とふたりでいるのを目撃してしまうと気になってしまう。

でも、今の僕はここを離れるわけにはいかない。

何せ、僕の前にはカレーのお鍋があり、もうルーを入れてしまったのでかき回していないと焦げてしまうからだ。

でも、一夏と箒の事が気になってしょうがない。

 

「シャルロットさん、どうかなさいましたの?何か妙に落ち着きが無さそうですけど?」

 

板挟みに右往左往しているとパラソルの下から出て来たセシリアが声を掛けてきた。

顔色もだいぶ落ち着いているし体調ももう心配はいらないのかもしれない。

 

「セシリア、お願い!ちょっとカレー見てて!」

 

「は、はいっ?」

 

「焦げないようにじっくりとかき回してくれてればいいから!じゃあ、お願いね」

 

「えっ、ええっ!?ちょっと、シャルロットさん!?」

 

僕は半ば強引にセシリアにカレー煮込みを頼んでその場を去った。

あとはかき回すくらいの作業しかないからセシリアに任せても大丈夫だよね。

後ろめたさはあるものの、僕はそのまま一夏と箒の後を追った。

 

 

ただ、そのとき僕はカレーをセシリアに任せた事を後に後悔する事になるのをまだ知らなかった・・・。

 

side out

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

アイキャッチしりとり

 

ラウラ「大貧民になって泣きべそかくな!」

 

 

 

静寐「なしのつぶて」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

突然シャルロットからカレー煮込みを任されたセシリアは状況に着いて行けずにその場にポカンと立ち尽くしていた。

 

「え~っ、とぉ・・・」

 

目の前には煮込み途中のカレーの入った鍋。

右手にはお玉。

エプロンは無し。

 

「か、かき回していればよろしいんですわよね・・・?」

 

恐る恐るといった感じでお玉を鍋に入れてかき回す。

手付きが物凄く及び腰というか、かき回す様は実に弱々しい。

 

「う~ん、何か、思ってたより茶色くなりませんわね」

 

鍋を覗き込むと中には具材と薄く茶色く染まった液体が入っているだけだった。

もっと鍋の底までお玉を入れて混ぜなくてはいけないのだが、及び腰のセシリアは鍋の上の方だけ混ぜていたのでルーが沈殿して徐々に溶けているだけなのでそれはそれは薄いのだ。

 

「え~っと、もっとカレーっぽくできるようなものはないのでしょうか?」

 

セシリアは辺りをキョロキョロと見回す。

この薄色カレーを普通のカレーの色にできる画期的なものはないのかと。

 

「あ、これカレースパイスって書いてありますわ。これを入れましょう」

 

セシリアは近くにあった容器を取ってフタを開けてカレー鍋に投入した。

 

(ドボボボボッ!)

 

「あ、ちょっと入れ過ぎてしまいましたわ・・・。ま、まあ、ちょっと辛めになるだけですわよね・・・」

 

このとき、セシリアは手にした容器に書かれていた文字をちゃんと読んではいなかった。

その容器にはこう書かれていた。

 

『本格カレースパイス 激辛の元×∞』

 

この容器に満杯に入っていたスパイスが半分以上鍋の中に投入された。

 

「ん~?何でしょう?もうちょっと香りを良くした方がいい気がしますわ」

 

今度は何か香りの良くなるものを探すセシリア。

そこで、セシリアが目を付けたのは

 

「これは何でしょう?あ、これシナモンですわね。これなら香りも良くなるでしょう」

 

見つけたシナモンパウダーを投入。

 

「う~ん、なんか粉っぽいですわね。もっとトロミがないといけませんわ」

 

粉っぽいのはセシリアが入れた大量のスパイスとシナモンパウダーの所為だが、それがわかっていないセシリアは次の一手を加える。

 

「マヨネーズとケチャップとソースを加えればとろみが出るでしょう」

 

ディスペンサーを手に取ったセシリアはそのままマヨネーズとケチャップとソースの3種を大量投入。

 

「あ、そういえば先ほどカレーのスパイスを入れすぎてしまいましたし、ちょっと辛味を和らげた方がいいかもしれませんわね。ちょっと砂糖を入れておきましょう」

 

砂糖を大さじ三杯ぶち込んだ。

 

「ちょっと水気が飛んでしまいましたわね。この液体は茶色ですし、これを入れましょう」

 

止めに飲用の麦茶を鍋に流し込んだ。

 

「これでよし!あとは煮込むだけですわ♪」

 

及び腰から一転、自信を付けた様にセシリアは鍋のカレー?をぐりぐりとかき回す。

何故かはわからないが見た目は普通のカレーで香りもそれほど気になるほどではない。

むしろ、客観的に見る限りでは普通に美味そうなカレーが出来上がっている。

しかし、中身は混沌としている・・・。

 

 

side シャルロット

 

一夏と箒を追ってきた僕は木の陰に隠れてふたりの様子を窺っていた。

一夏が箒に頭を下げたり両手を肩に置いたりしてたけど距離が離れているので会話を聞き取ることはできない。

遠目からでも一夏の表情は真剣だった。

一夏がそんな真剣な表情をするほどの事をふたりは話しているのだろうか?

疑念と不安がぐるぐると僕の心に渦巻いていく。

それと同時にまた胸が痛み息苦しささえ感じた。

僕は木の幹の背を預けて痛む胸を押さえて俯く。

 

僕は一体何をしているんだろうか?

 

罪悪感と胸の痛みに僕はその場で俯き、呆然としてしまった。

気が付けば一夏と箒ももう姿が無くなっていた。

 

「はぁ・・・・、僕も戻ろう・・・」

 

トボトボと僕は来た道を戻ってキャンプ場へ向かった。

 

side out

 

 

「あ、シャルロットさん、お帰りなさい」

 

キャンプ場に戻ったシャルロットをセシリアが笑顔で迎えた。

 

「急にカレーを頼まれたのでビックリしましたわ。どちらにおいでになっていたのですか?」

 

「う、うん・・・、ちょっとね・・・」

 

「もしかしてシャルロットさんもどこか具合が悪いのですか?だったら無理はなさらない方がよろしいですわよ」

 

「ううん、大丈夫。僕なら全然平気だから・・・」

 

「そうですか?なら、よろしいんですけど・・・」

 

「心配掛けてごめん。あ、カレーの方ありがとう。代わるね」

 

セシリアの気遣いに感謝しつつも、シャルロットは先ほどの事を話す気にはなれず、気を取り直してセシリアに任せていたカレー?煮込みに戻った。

 

「結構良い感じに煮込めたみたいだね。僕がいない間に何か変わった事はなかった?」

 

「はい。大丈夫です、完璧ですわ!」

 

「そっか。じゃあ、ちょっと味見してみようか?」

 

「そうですわね。ではその役目はわたくしが務めますわ。これくらいしか役に立てそうにありませんし」

 

「わかった。ちょっと待ってね」

 

シャルロットは小皿を出し、そこにカレー?を少し盛ってセシリアに差し出す。

 

「はい、セシリア」

 

「ありがとうございます。いただきますわ」

 

小皿を受け取りそこに盛られたカレー?を口にした。

 

「どうかな?」

 

シャルロットが味はどうかと質問する。

 

「・・・・・・・・」

 

が、セシリアはその場で硬直した。

 

「あれ、どうしたの?」

 

硬直したセシリアにシャルロットは首を傾げる。

 

「・・・・・・・・」

 

すると、セシリアの身体がわずかに震え出す。

欧州人特有の白い肌が徐々に真っ赤に染まり出し、最後に真っ青になってセシリアは意識を手放してその場に倒れた。

 

「えっ、ええっ!?ちょ、ちょっと、セシリア!!?」

 

倒れたセシリアを慌てて介抱する。

その顔色は悪く、冷や汗が大量に出ていた。

 

「た、大変!だ、誰かー!!」

 

危機感を感じたシャルロットは声を上げて助けを求めた。

 

「何かありましたかデュノアさん?・・・・って、オルコットさん!?どうしたんですか!?大丈夫ですか!!?」

 

シャルロットの声を聞きつけて真っ先に駆けつけたのは副担任の真耶だった。

 

「や、山田先生、セシリアが急に倒れて!」

 

「と、とにかく、オルコットさんを旅館の医療部屋へ運びましょう。デュノアさん手伝って下さい!!」

 

「は、はい!」

 

真耶とシャルロットはセシリアを支えて医療部屋に急行した。

 

 

「まったく・・・、カレーを作っていただけでどうしてこんな状態になるんだ・・・」

 

旅館の一室を医療部屋にした部屋に保健医として林間学校に同行していた百春が呆れ顔で言った。

セシリアは今、部屋に敷かれた布団で横になっている。

 

「あ、あの、百春さ・・・、百春先生・・・、セシリアは一体どうしちゃったんですか・・・?」

 

眠るセシリアに付き添っていたシャルロットが百春に訊ねた。

 

「まあ、事情を聞く限り、恐らくではあるがそのカレーを食べたのが原因だろうな」

 

「た、確かにカレーを味見した直後にセシリアは倒れましたけど、調理は僕とラウラと鷹月さんがしましたし、見てた限りでは食べたら倒れちゃうような出来ではなかったはずですけど・・・」

 

「確かに、普通のカレーだったらな」

 

そこに担任の千冬が入ってきた。

 

「あ、ちふ・・・、織斑先生、それって?」

 

「デュノア、お前の班が作ったカレーを私と山田先生で確認してみたが、あれは食えたものではなかったぞ」

 

「で、でも、普通に作ったはずですし、どうしてそんな事に・・・?」

 

「それについては今から説明する。デュノア、お前カレーを煮込んでいる途中でオルコットに煮込みを押し付けてどこかに行っていたらしいな」

 

「は、はい・・・」

 

「まあ、どこに行っていたのかは聞かんが、その間にオルコットはそのカレーに大量のスパイスや何やらをぶち込んでいたらしい。山田先生が確認したところ、半端に減ったマヨネーズやらケチャップやらの容器が見つかったのでそれらをカレーに入れたと見て間違いないだろうとの事だ。一応、鷹月とボーデヴィッヒにも確認したがあいつらはそんなものは入れていないと言っている。お前はどうだ、デュノア?」

 

「い、いえ、僕もそんなものを入れた憶えはないですけど・・・」

 

「なら、間違いなくそこのバカが考えなしに入れたものだろう。まったく、おかげで私も少し気分が優れないぞ・・・」

 

千冬は顔を顰めて、顔色も若干悪そうだった。

 

「尋常じゃなく辛いくせに何故か後から妙な甘さが来たり、ねっとりしてるかと思えばぐにゃっと粘り気があったり、最後に麦とシナモンの香りが鼻を衝いたり、どうしたらあんなカレーができるんだ・・・」

 

愚痴るようにその場に座り込んで頭を押さえる千冬。

どうやら想像を絶するカレー?の味にやられてしまっているようだ。

 

「し、失礼します・・・」

 

か細い声と共に医療部屋に入ってきたのは真耶だった。

 

「山田先生、どうかしましたか?」

 

百春が入室して来た真耶に訊ねる。

 

「す、すみません・・・、ちょっと、気分が優れなくて・・・。胃薬か何かを貰えないかと・・・」

 

フラフラとした真耶は足取りがおぼつかなく、顔色も千冬より悪く見えた。

どうやら千冬以上にあのカレー?にやられているらしい。

 

「私も少し胃薬をくれ」

 

千冬も真耶と同様に、胃薬を要求する。

 

「ちょっと待ってくれ。今用意する」

 

百春は胃薬を用意する。

 

「デュノア、オルコットは私と山田先生が見ておくからお前はキャンプ場に戻れ。まだ夕食も食べていないだろう?」

 

「あ、はい・・・」

 

「それと、お前たちの班のカレーは食べられそうにないからこっちで廃棄しておいた。カレーは他の班のを分けて貰って食べろ。いいな?」

 

「わかりました。それじゃ、失礼します・・・」

 

3人の先生に頭を下げてシャルロットは医療部屋をあとにした。

 

「もしかして、僕があの場を離れなかったらこんな騒動起きなかったのかな・・・?」

 

良心の呵責とあの時感じた胸の痛み、複雑な胸中でシャルロットはしょんぼりとしながらキャンプ場に戻って行った。

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