ようこそ藍越学園へ   作:TAKUMAKI?

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どうも。
すっかり月一更新が染み付いてしまったTAKUMAKI?です。

今回は山田真耶さんにスポットを当てたお話です。


第七十二話 山田真耶の情熱

side 真耶

 

「では、皆さん気をつけて行ってきてくださいねー!」

 

「「「「「「は~い、行ってきま~す!!!」」」」」」

 

林間学校二日目の朝。

この日は生徒達が自由に行動する事を許される日で、生徒達もすごく楽しみしていた日と言えると思います。

しかし、はしゃぎすぎて怪我をしてしまっては大変なので一応注意をしてから生徒の皆さんをお見送りします。

私もたった今最後に出発した生徒達をお見送りしました。

これで私達教師のこの日の最初の仕事は終わりです。

 

「全員出発したようだな」

 

「あ、織斑先生。今最後の生徒達が出発しましたよ」

 

やってきたのは私が副担任をしているクラスの担任をしている織斑千冬先生です。

織斑先生と私は中学時代からの先輩後輩の間柄で、私は昔からよくお世話になっている人でもあります。

 

「では、他の先生達も集めてミーティングを始めよう。それが終わったら交代で見回りだ」

 

「はい」

 

生徒達を見送っても私達教師の仕事は終わりではありません。

今後の予定のことで念入りにミーティングを行い、それが終わったら生徒達の見回りにも行かなかければなりません。

こういう観光地や温泉地に来たといっても教師としての仕事がある以上お遊び気分にはなれません。

まあ、自分が望んで教員になった訳ですし、文句を言ってもしょうがないですよね。

私は千冬先輩の後に続いてミーティングに向かいました。

 

 

 

 

(数時間後)

 

 

 

 

「では山田先生、次はあなたの番です。くれぐれも生徒達が問題を起こさぬようしっかりと見回りをお願いしますよ」

 

「はい、わかりました」

 

あれから時計の針は数時間の時が進んで私の見回りの番がやってきました。

学年主任の須賀先生に出発前に念を押されましたけど、それはさっきのミーティングでも散々言われた事なので百も承知です。

こういうのもなんですが、須賀先生って自分は学年主任で偉いんだぞって上から目線でくどくどと物事を言ってくるので私自身あんまり好きではありません。

だからもう42歳なのに結婚できていないんでしょうね。

私もあんな旦那様はゴメンです。

やっぱり旦那様になってもらう人は不器用でも優しさがある人がいいですよね。

それこそ百春先輩のような人が・・・、って、私ったら何を考えて/////

 

「山田先生、これから見回りか?」

 

「ひゃうぅぅっ!!」

 

突然声を掛けられて飛び上がりながら振り返るとそこには今頭の中で想像していた人物である百春先輩が怪訝そうな表情で立っていました。

 

「声を掛けただけで何故そこまで驚く?」

 

「へっ?あ、いえ、ちょっと考え事をしていましたのでっ!!」

 

まさか今考えていた人に向かって「あなたの事を考えていました」なんて言えないのでそう言って誤魔化しました。

でも、本当にビックリしました・・・。

 

「そうか。で、これから見回りか?」

 

「は、はい。生徒達が羽目を外しすぎていないかちゃんと見回りをしないといけませんから」

 

「観光地に来たといっても教師として来たからには遊ぶ暇はないようだな」

 

「そうですね。でもこれが仕事ですから。あっ、そういえば百春せんぱ―――――」

 

「おい、今は学校行事の最中だぞ。先輩って呼ぶのは止せ」

 

「あっ!す、すみません百春先生・・・」

 

あうぅ・・・、私って何故か百春先輩の前だと学校にいる時でも先輩って呼ぼうとしちゃうんですよね・・・。

千冬先輩の事はちゃんと織斑先生って区別できるのに何でなのかな・・・?

 

「まあそれはいいとして、言いたいかった事は何だ?」

 

「いえ、大した事じゃないんですけど、百春先生はどうして今回の林間学校に同行する事になったんですか?」

 

「ああ、その事か」

 

そう言うと百春先輩は少し苦笑い見せました。

 

「一言で言うなら理事長の計らいでな。たまには温泉にでも行って日頃の疲れを取ってこいとの事だ。まあ、さすがにそのまま付いて行くというだけではマズイから保健医して立場として同行するということになったんだが」

 

実は百春先輩は理事長とはかなり親しい仲のようで、先輩がウチの学園の保健医なったのも理事長の推薦があったからみたいです。私は数える程しかお会いした事はないのですが。

 

「まあ、急な怪我人がいつ来るかもわからんし、腑抜け過ぎない程度にのんびりさせてもらっている」

 

「そうですね。それがいいと思います」

 

「ところで山田先生、見回りには行かなくていいのか?」

 

「へっ?ああっ!いけない!!早く行かないと!!」

 

つい百春先輩とお話するのに夢中になっていて時間を忘れていました!

須賀先生にバレたら厄介なお説教が待っているので早く行かないと!

 

「引き止めて悪かったな。じゃ、仕事頑張ってな」

 

「はい!」

 

百春先輩に頑張れって言われたので私も気合が漲ってきました!

好きな男の人に応援されただけでこんなにやる気が出るなんて我ながら単純ですね♪

 

「それじゃ、行ってきま―――――、キャァ!!」

 

(ズッテーーーンッ!!)

 

「イタタタ・・・」

 

張り切って見回りに行こうとしたのも束の間、私は何かに足を取られて派手に転んでしまいました。

 

「一体何が・・・?」

 

視線を巡らせると何やら黄色い物がそこに鎮座していました。

 

「バナナの・・・、皮・・・?」

 

何でこんな所にバナナの皮が?

うわ~ん・・・、それよりこんな格好悪いところを百春先輩に見られちゃったよ~・・・。恥ずかしい/////

 

「感動だな」

 

「へっ?」

 

顎に手を当てながら百春先輩がうんうんと頷いていました。

 

「俺はバナナの皮で転んだ奴を初めて見た。真耶、お前スゴイ奴だな」

 

「先輩~、ちょっとは心配してくださいよ~(泣)」

 

よっぽど感動したのか百春先輩は私を名前で呼びました。

っていうか、そんな事で感動なんてしないでくださいよ~・・・。

やる気に満ち溢れていた私は早くも心が折れそうになったのでした・・・。

 

side out

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

アイキャッチしりとり

 

真耶「け、決していつも転んでるわけではないですよ!!」

 

 

 

百春「よっほど転んでるんだな」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「只今戻りました」

 

「ご苦労様です、山田先生」

 

真耶が旅館に戻ってきたのはもうそろそろ夕方と呼べる時間だった。

大したトラブルも無く、真耶としても見回りも安心してする事ができたのであった。

 

「では、今後の事もありますので、山田先生も休憩を取ってください」

 

「はい、わかりました」

 

学年主任の須賀(42歳独身)に帰還報告を終えると休憩を言い渡されたので真耶も何の憂いもなく休憩に入る事にした。

 

「山田先生、見回りご苦労」

 

「あっ、織斑先生」

 

休憩に向かう道すがら、千冬と遭遇した。

 

「織斑先生も休憩ですか?」

 

「まあな。さっきまでちょっとそこの湖の畔を散歩してきたところだ。百春の奴もあそこにいるぞ」

 

「そうなんですか?」

 

「気が向いたら行ってみろ。私の見た限りでは今なら邪魔者はいないぞ」

 

「じゃ、邪魔者ってなんですか?」

 

「さあな。どれ、私は自室に戻ってゆっくりさせてもらうとしよう。ではな」

 

「あ、はい。お疲れ様です」

 

千冬は手を振ってその場を去り、真耶も頭を下げてそれを見送った。

 

「じゃ、じゃあ、ちょっと、湖の方に行ってみようかな・・・?」

 

心の中で「別に千冬先輩に言われたからとかじゃないですよ」と誰に言い訳をしているのかわからない真耶は旅館のそぼの湖へと向かった。

 

 

 

真耶が湖の畔にやってくるとすぐに百春の姿を見つける事ができた。

百春は畔に小さめのレジャーシートを敷いて静かに湖を眺めていた。

 

「百春先輩」

 

「真耶か。休憩中か?」

 

「はい、それでちょっとお散歩に来ました。隣いいですか?」

 

「構わんぞ」

 

「じゃあ、お邪魔します」

 

靴を脱いでレジャーシートの上に上がり、真耶は百春の隣に腰を下ろした。

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

暫し、お互い無言の時が流れる。

百春は元よりそれほど口数は多い方では無いし、真耶も何を話せばいいのか迷ってしまっていて口を噤んでしまっている。

 

「ふあぁぁ~」

 

そんな状態が数分続いた頃、百春が大きく欠伸をした。

 

「先輩眠いんですか?」

 

「ん・・・、ああ・・・、ちょっと最近新しい論文の作成に取り掛かっていて夜あまり寝ていなくてな・・・」

 

「そうなんですか?お医者さんになるためとはいえ大変ですね」

 

「まあな。医者の不養生という言葉もある。気を付けてはいるが、どうにもな・・・」

 

百春は喋りながらもうつらうつらっと船を漕ぎ出していて、目も若干閉じかけていた。

 

「(な、なんか・・・、なんか・・・、こ、こっちに倒れてきそう////// こ、こっちに倒れてきたら・・・、先輩の頭が、か、肩とか・・・、ひ、膝とか////// ひ、膝!?ひ、膝枕!!?に、なった・・・り//////)」

 

真耶は思わず自分の膝をパタパタと手で払う。

 

(こつん)

 

「っ!!!!!」

 

抗えない未知の力に吸い寄せられるように百春の頭が真耶の肩に乗っかり、真耶の心臓がドッキーッンと跳ね上がった。

 

「(ほ、ほほ、ほほほ、本当に来ちゃった・・・、ど、どど、どどど、どうしよう//////)」

 

真耶は身動きひとつしていないが頭の中ではSD化した真耶がアタフタアタフタと右往左往しながら必死にこの状況をどうするべきか思考しているが、恥ずかしさと嬉しさの板ばさみに思考回路が焼き切れるんじゃないかと言うほどに大パニック状態だ。

 

「んぅ・・・、あ、すまん・・・」

 

「い、いえ、大丈夫ですから//////」

 

意識を持ち直した百春が真耶の肩から頭を離した。

真耶は離れてしまった百春の温もりが少し残念に感じたが、ずっとあのままの体勢が続いていたら自分がどうなっていたかわからないので少しほっとしたような複雑な胸中であった。

 

「あ、あ、あのぉ、せ、先輩・・・、え、え~っと・・・」

 

真耶は左右の人差し指同士をちょんちょんと突きながら恐る恐る切り出す。

 

「よ、よよ、良かったら・・・、こ、こんな私で良かったら・・・、あ、あのぉ・・・、ひ、ひ、膝枕をしてあげましょうか?//////」

 

ありったけの勇気を振り絞ってそう提案を切り出した真耶は百春の方へ視線を戻すと――――

 

「zzzzzz」

 

「あ、あれ?」

 

――――百春はすでに横になって静かに寝息を立てていた。

 

「っ!? はぁ~・・・」

 

間抜けな声と共に真耶は脱力した。

 

「せっかく勇気出して言ったのに~・・・」

 

がっくりと肩を落としながらも真耶は姿勢を戻す。

そんな真耶の気も知らずに百春は安らかに寝息を立てて眠っている。

 

「そ、そんなニブイ先輩には・・・、こ、こうしちゃいますぅ/////」

 

すすっと百春の頭のそばに寄ると、その頭を持ち上げてその下に真耶は自分の足を滑り込ませた。

 

「の、のっけちゃった/////」

 

あっという間に膝枕状態の完成だ。

真耶は心臓が早鐘を打つのを自覚しながらも膝に乗っけた百春の寝顔を見下ろす。

 

「zzzzzz」

 

「(キュンッ)」

 

普段は無愛想な百春が見せる安らかな寝顔に真耶はキュンとなる。

 

(なでなでなで)

 

そのまま百春の頭を軽く撫でる。

 

「こ、これは、かなり幸せかも/////」

 

きれいな湖畔でのんびりとしながら好きな人に膝枕というシチュエーションに表情も自然と笑みが浮かび、百春の頭を撫で続ける。

 

(なでなでなで)

 

「zzzzzz」

 

「うふふっ♪」

 

真耶はこの状況にすっかり陶酔していた。

 

「・・・・・・(じー)」

 

「ふえっ!!?」

 

故に今まで気づかなかった。

ある人物にこの状況を見られている事に。

 

「そろそろうちの生徒達も戻ってくる時間だし、お前達を呼びに来たんだが、これはこれは(ニヤニヤ)」

 

「ち、ち、千冬先輩・・・」

 

「真耶、お前意外と積極的なんだな(ニヤニヤ)」

 

「へっ!?え、え~っと、これはそのぉ!!」

 

ニヤニヤとしながら千冬はその状況を見つめていた。

動揺のあまり真耶はオロオロとする。

 

「じっとしていろ。あと大きな声を出すな。百春が起きてしまうぞ」

 

そう言われてしまうと真耶は百春が起きてしまわないように黙ってじっとする他にない。

 

「まあ、幸いまだ少し時間はある。こいつも日頃の疲れが溜まっているみたいだし、もう少しそうしておいてやれ」

 

「は、はぁ・・・」

 

思わぬところで千冬からのお許しが出た事に真耶は少し困惑しながらも頷いた。

 

「またあとで呼びに来る。それまでにはそいつも起きているだろう。ではな」

 

「は、はい・・・。ふぅ~・・・」

 

千冬は背を向けて旅館の方へと歩を進める。

真耶はその背を見送ると大きく息を吐き出す。

 

「あ、そうだ。真耶」

 

「は、はい?」

 

途中で千冬は歩みを止めて真耶の方へ振り返る。

真耶も咄嗟に返事をすると―――――

 

(カシャッ)

 

「へっ?」

 

そこにはカメラをこちらに向けている千冬の姿があった。

もちろん、そのカメラに収められたのは膝枕をしている真耶とその真耶に膝枕されている百春の姿だ。

 

「せ、先輩っ!!い、 一体全体何を!!?」

 

「安心しろ。あとでちゃんと写真は渡してやる」

 

「い、いや、そういう事ではなくてですね!!」

 

「いやぁ、久しぶりに良い写真が取れた。はははははっ」

 

「満足満足っ」と言いながら千冬は今度こそ旅館の方へと戻っていった。

 

「うぅ・・・・・」

 

残された真耶は羞恥に顔を赤くしながら百春に膝枕をし続けているのだった。

 

「zzzzzz」

 

百春の安らかな寝息だけが真耶の耳に届いていたのだった。

 




駄文にお付き合い下さってありがとうございます。

百春狙う女性は今はセシリアと真耶の二人だけしか描いていませんが、もう二人ほど彼を狙っている人を登場させようと考えています。このペースでは何時になるかはわかりませんが・・・。

今年中に林間学校編を終わらせたかったけどこの分じゃ無理そう・・・。
頑張ってはみますけどね・・・。

ではまた次回に~
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