ようこそ藍越学園へ   作:TAKUMAKI?

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また約一ヶ月も更新が遅れてしまいました・・・。

執筆ペースってどうやったら上がるんでしょう?

まあ、今回は自分の作品では珍しく一万字を超える文量になったんですが。

では、林間学校編最終話をどうぞ


第七十四話 林間学校終幕

side 一夏

 

「暑ぃ・・・、ちょっとはしゃぎ過ぎたなぁ・・・」

 

箒のバースデーパーティ兼林間学校お疲れ様会をちょっと抜け出して俺は外の空気を吸いに来た。

ふらふらっと歩いていると昨日の晩に箒に誕生日プレゼントを渡した庭園にたどり着いた。

池には夜空に浮かんだ満月が綺麗に映し出されていて、水面が僅かに揺れるとその映し出された月がほんの少しだけ歪む。

 

「よっと」

 

俺は池のそばに腰を下ろして目一杯空気を吸い込んだあと、夜空に浮かぶ綺麗な星空と月を眺めた。

 

「・・・一夏?」

 

「ん?」

 

後ろから声を掛けられて俺は振り向く。

そこには月明かりに照らされた箒の姿があった。

 

「おう。お前も外の空気吸いに来たのか?」

 

「まぁな」

 

「でも、いいのか?パーティの主役がこんな所に居て?」

 

「少し外の空気を吸いに来ただけだ。しばらくしたら戻るから問題ない」

 

「そっか」

 

「隣いいか?」

 

「おう」

 

箒は俺の隣に腰を下ろし、俺と同じように空を見上げた。

 

「やっぱりこの辺は星と月が綺麗に見えるな」

 

「そうだな。こと座の一番明るく見える星がベガで、わし座の一番明るいのがアルタイル。その二つの恒星が七夕の伝説における『織姫』と『彦星』だ。二つともよく見えるぜ」

 

俺は夜空に見える織姫と彦星を指差した。

ここは街の灯りも殆ど無いから両方綺麗に見えていた。

 

「この天気なら織姫と彦星も無事に出会えただろうな」

 

「ああ、そうだな。年に一度しか会えないのだからやっぱり会えた方が良い」

 

うんうん、やっぱり箒もそう思うよな。

やっぱり会えるなら年に一度でも会えた方が良いに決まってる。

でなきゃ、あまりにも可哀想だ。

 

「そういえばさ」

 

「な、何だ?」

 

「箒の名前ってさ、確か『箒星』から取ったんじゃないんだよな?」

 

「あ、ああ。『箒』は女性にとって特に重要な『安産の神』が宿る神聖な祭具と神道では考えられているからな。あと、『箒』は魂を『掃き集める』ことや邪を『払う』ことなどと結びついた民間信仰なども見られる。うちは神社だから両親がそれを考えて付けたんだと聞いた。七夕生まれだから『箒星』から取った名前と思われがちだが、私が七夕生まれたのはただの偶然に過ぎない」

 

確かに、七夕生まれで『箒』って名前聞くと絶対に『箒星』から取ったように思うよな。

まあ、俺も最初はそうだと思ってたし。

でも箒星って昔は凶兆の前触れって言われるほど縁起が悪い事だったらしいからそこから取ったらどんだけ縁起の悪い子なんだよってことになっちまうよな。

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

それから数分の間、話題も尽きて俺達はただ夜空に浮かぶ星と煌々とした月を眺めていた。

昼間の暑さも今は少し鳴りを潜め、適度に夜風も吹いていて心地いい。

ふっと箒の方に視線をやると、俺がプレゼントした白いリボンが目に映った。

うん。やっぱり箒に似合ってるな。

 

「な、何だ、こっちをじっと見て?」

 

見ていたのに気付いた箒が俺にそう聞いてきた。

 

「いや、やっぱりそのリボン似合うと思ってさ。俺のセンスも捨てたもんじゃないな」

 

「あ、ああ。せっかく貰ったものだしな。私も気に入っている」

 

「そっか。気に入ってもらえて俺も嬉しいよ」

 

シャルにブレスレットあげた時もそうだったけど、やっぱりプレゼントしたものを気に入ってくれるのは嬉しいもんだよな。

う~ん・・・、しかし、シャルの時はブレスレットで箒にはリボンか。

俺っていつの間にか女の子にアクセサリーを贈る趣味が身についてたらしいな。

まあ、喜んでくれてるみたいだからいいんだけど。

 

「改めて、誕生日おめでとうな箒」

 

「う、うむ・・・。あ、ありがとぅ////」

 

少し顔を赤くしながら箒は小さい声でありがとうと言った。

幼馴染にお礼を言うくらいでそんなに照れなくてもいいと俺は思うんだけどな。

 

(なでなで)

 

無意識に俺は箒の頭を撫でていた。

 

「っ!? な、何をする!?」

 

驚いたように箒がさらに顔を赤くして俺の手を払った。

 

「いや、何か今のお前見てたら自然と、さ」

 

「お前って奴は・・・。いつもそうやって女の頭を撫でるのか?」

 

「いやいや、俺だって無闇矢鱈に女の頭を撫でてる訳じゃないぞ」

 

撫でるのシャルとラウラくらいだ。

ラウラは自分から撫でてくれって言ってくるし、シャルは、まあ、さっきのように自然と撫でてしまう事があるな。

 

「とにかく、あんまり気軽にそういう事をするな。恥ずかしいだろう////」

 

「箒が気にし過ぎなんだと思うけどなぁ」

 

う~ん、これってやっぱりセクハラになるのかな?

だとしたらやっぱり控えるべきなのかな?

 

「べ、別に嫌という訳じゃないんだが・・・(ボソッ)」

 

「うん?何だって?」

 

「な、何でもない!」

 

ボソッと何かを言っていたけど何だったんだ?

まあ、聞こえなかったから別に気にする事でもないのかもな。

 

「そういえば、前に剣道部って夏休みにインターハイの選考会あるって言ってたよな?」

 

「あ、ああ。それに合格すればインターハイに出場できる。中学の時は準優勝に終わったが今回は絶対優勝を取るぞ」

 

「もしかしたらそん時に負けた相手ともまた巡り会うかもしれないな」

 

俺も会場に応援に行って見てたけど、確か東京の中学の奴だった気がするな。

ピンク色の長い髪をしていて、名前のどこかに花の名前が入ってた気がするけどその辺はもう忘れた。

結構目立つ容姿してたから多分会えば一発でわかると思う。

 

「巡り会えたならそれはそれで僥倖だ。あの時の雪辱を果たすまでだな」

 

「そっか。リベンジ果たせるといいな」

 

「うむ」

 

凛々しく箒が頷いてみせた。

やっぱり箒って剣道の事に関しては熱くなるよな。

かつての同門生でライバルであった俺としても箒のこういう姿を見れるのはとても嬉しい。

 

「俺で良ければいつでも鍛錬に付き合うから遠慮なく言ってくれ」

 

「ああ、その時は頼むぞ」

 

俺達はお互いの拳と拳をコツンと付き合わせた。

これは俺と箒が昔からやる挨拶みたいなものだ。

 

「私はそろそろ戻るぞ」

 

「おう。俺はもうちょっとここにいるから」

 

「うむ。じゃあな」

 

そう言って箒はスタスタと旅館の方に戻っていった。

俺は箒を見送ってからその場にゴロンと横になって再び夜空を見上げた。

 

side out

 

 

side シャルロット

 

「日本国民の三大義務といえば、勤労・納税だけどあとひとつは知ってる?」

 

「うん知ってる~♪え~っとね~、食欲~♪」

 

「それは三大欲求のひとつだ!」

 

「「「「「あはははははっ!!!」」」」」

 

パーティも結構時間が経って今は入れ替わり立ち替わりでクラスの皆が出し物をやっている中、のほほんさんと谷本さんが見事な漫才を披露してる。

他にも弾と数馬と桐生くんが得意のベースとギターとフルートを演奏したり、その演奏に乗っかって皆でカラオケ合戦を行ったり、ラウラが父親に教わったというナイフアクションを披露したり、斉藤くんと松戸くんと矢島くんの三人で即興のお芝居を見せてくれたりもした。

こういうクラスメイト皆でのドンチャン騒ぎっていうのも結構楽しいものだね。

一応このパーティは箒の誕生日パーティという体裁で行っているんだけど、もう皆が楽しければ何でもいいみたいになってるんだよね。

 

「って、あれ?」

 

そこで僕は気付いた。

さっきまで一番奥の席に座っていた箒が居なくなっていた。

会場に顔を巡らせてもどこにも姿が見えない。

お手洗いにでも行ったのかなとも思ったけど、そこで僕は一夏も居なくなっていることに気付く。

もしかして二人だけで何処かに?

そう思うと少しだけ胸が奥が痛んだ。

 

「どうしたのだシャルロット」

 

「あ、ラウラ」

 

僕の隣で漫才を眺めていたラウラが声を掛けてきた。

 

「何か浮かない顔をしていたが何かあったのか?」

 

「う、ううん。なんでもないよ」

 

「そうか?それなら良いが」

 

「心配してくれてありがとうね」

 

いけないいけない・・・。

せっかくのパーティなんだし、暗い顔してちゃいけないよね。

 

「さてさて皆様~、お次はこの田島祭ちゃんがとっておきのmagicをご披露しちゃいま~す♪」

 

今度はどうやら田島さんが手品を見せてくれるみたいだね。

う~ん・・・、見てみたい気もするけど、ちょっとそとの空気が吸いたくなってきたからちょっと外の空気を吸ってリフレッシュしてこよう。

 

「ラウラ、僕ちょっと外の空気吸ってくるね」

 

「うむ。気をつけてな」

 

ラウラにそう告げてから僕は会場を後にした。

 

 

 

「あ、箒」

 

「シャルロットか?」

 

外に向かう途中の廊下で僕は箒とばったり出会った。

 

「会場で姿が見えなかったけど、何処に行ってたの?」

 

「ん、まあ、ちょっと外の空気を吸いたくなってな。それでちょっと外に出ていた」

 

「そうなんだ。一夏の姿も見当たらないんだけど何処に行ったのか知ってる?」

 

「ああ。私と同じで外の空気を吸いに外に出ているぞ。庭園の方に居るはずだ」

 

箒は少し顔を赤くして、どこか嬉しそうにそう言った。

そっか、やっぱり箒と一夏は一緒にいたんだ・・・。

箒がこういう顔をするって事は外で一夏と何かあったのかもしれない。

 

「そう。じゃあ、僕もちょっと外の空気を吸ってくるから」

 

「うむ」

 

軽く手を上げて僕は箒の横を通って外に向かう廊下を歩き出す。

 

「それと箒。改めてお誕生日おめでとう」

 

すれ違う瞬間に僕はそう箒に言った。

 

「あ・・・、ああ、ありがとう」

 

箒は少し驚いた様子だったけど、ちゃんと僕に聞こえるくらいの小さい声でお礼を言ってくれた。

ここで普通の声でお礼を言えないのが箒らしいよね。

そんな事を考えつつ、僕は外へ向かう廊下を再び歩き出した。

 

side out

 

 

 

「え~っと、一夏は何処かな?」

 

外に出てきたシャルロットは旅館の庭園にやってきた。

先ほど箒から聞いた話では一夏が庭園にいるということで、彼と話をするために彼を探した。

そして、探し人はすぐに見つかった。

庭園の池のそばで寝転んでいる男子が一名いた。

遠目からでも一夏だとわかったシャルロットはそのまま彼に近づいた。

 

「・・・・・」

 

何か考え事をしているのか、一夏はシャルロットが近づいてきた事に気付いていないようだった。

 

「一夏?」

 

「ん?」

 

シャルロットは一夏に声を掛けながら寝転んでいる彼の顔を覗き込んだ。

一夏もようやくシャルロットの存在に気付いたようだ。

 

「こんな所に寝転んで何してるの?」

 

「ああ、ちょっと考え事・・・を・・・、っ!!!」

 

一夏は寝転んだままシャルロットの方に視線を向けると突然ガバッと身体を起こして目線を逸らせた。

 

「ど、どうしたの?」

 

「い、いやぁ・・・、そのぉ・・・、なぁ・・・」

 

「?」

 

突然しどろもどろする一夏にシャルロットは首を傾げる。

よく見ると一夏は顔が真っ赤だった。

 

「あのな、シャル・・・、少し無防備過ぎるぞ・・・」

 

「え?無防備って・・・?」

 

そう言われて再び首を傾げたシャルロットだったが、そこでふっと気付いた。

一夏は先ほどまで寝転んでいて、彼のそばにシャルロットは立っていた。

シャルロットは今風呂に入る前ということで私服を着ていて彼女は今スカート姿だ。

そして、彼が寝転んだまま視線を彼女に向けると必然的に彼の視界に入ってしまうのは―――――

 

「っ!!!!!!」

 

―――――彼女のスカートの中だ。

ようやくそれに気付いたシャルロットは一瞬でボッと顔を真っ赤に染めてスカートを手で押さえた。

 

「・・・・、み、見たの?」

 

スカートを押さえたままシャルロットはそう訊ねた。

 

「い、いや、あのだな!コレには深いワケがありまして!コレにはマリアナ海溝よりも深く、未開の地アマゾンのジャングルのように入り組んだそれはそれは複雑な理由が色々と!!」

 

必死に言い訳しようとする一夏だが、言い訳すればするほど見たとシャルロットは確信していく。

 

「・・・・、見たんだね」

 

「・・・・・・・・・・・・・・、ごめんなさい、ばっちりと」

 

一夏はシャルロットの抗議の視線に耐えられなくなったのか、ようやく観念して白状した。

今彼は見事な土下座をしている。

シャルロットも今回は自分も不注意だったと心の中で反省した。

彼女は一夏にスカートの中を見られた事に恥ずかしさはあったが嫌悪感は抱かなかった。

もちろん、他の男子には絶対に見られたくないという思いもあるのだが。

 

「・・・、隣、いいかな?」

 

「お、おう・・・」

 

一夏の許可を得るとシャルロットはそのまま彼の隣に腰を下ろした。

 

「・・・・・・・」

 

「・・・・・・・」

 

お互い恥ずかしさに顔を赤く染めたまま、池のそばに腰を下ろしてかれこれ五分ほど経ったであろうか。

妙な気まずさが二人の間に横たわっていて、お互いに会話の切欠も掴めないでいた。

 

「あー、えっと・・・、そういえばさ」

 

「な、何・・・?」

 

埒が明かないとふんだ一夏がシャルロットに声を掛けた。

シャルロットも少し驚きながらも返事をした。

 

「林間学校どうだった?楽しかったか?」

 

「う、うん。楽しかったよ。フランスでは出来ないような体験もしたしね」

 

この空気を振り払うように一夏がシャルロットに今日の自由行動の話題を振る。

 

「シャル達の班は今日何をしてたんだ?」

 

「僕達の班はハイキングコースを通って山登りをしたよ。山の景色を歩きながら楽しみたいってラウラが言ったから皆でその案に乗っかったんだけど」

 

「でも山登るの大変だったんじゃないか?」

 

「それほどでもなかったよ。途中までバスを使って行ったし、コースもセシリアの事を考えて一番楽なコースを通ったしね。コースを登りきったあとは足湯カフェっていうところにも行ったよ」

 

「足湯か。確かに山を歩いてきたあとなら足湯は最高だろうな」

 

「うん。足だけ温泉に浸かるなんて変わった温泉だと思ったけど結構良かったよ。そこで班の皆でお茶を飲みながら雑談もできて楽しかったしな。一夏達は何をしてたの?」

 

「うちの班はまず頂上付近まで山岳鉄道を使ったぜ。ちょっとしたアトラクション気分が味わえて楽しかったな。それから駅を降りたところで人力車サービスがあったから皆でそれに乗ったぞ」

 

「人力車って京都とかで乗れるっていうアレの事?」

 

「まあ、京都とかで乗るのが有名だけどな。風情があって良いもんだったよ。その後は渓流で釣りやったぜ」

 

「へぇ、釣りしたんだ。どんな魚が釣れたの?」

 

「ニジマスだよ。ニジマス釣り専門釣り場だから釣れるのはニジマスだけだったな。六人で十匹くらい釣ってその後皆で調理して食ったよ」

 

「そうなんだ。自分達で釣った魚なら凄く美味しかっただろうね」

 

「まあ・・・、な・・・。最後ののほほんさんの一言が無ければだけど(ボソッ)」

 

「ん?どうかしたの?」

 

「い、いや、別に・・・」

 

自分達以外の班が何処で何をしていたのかはお互いに気になっていたので話も弾み、それから少しの間、一夏とシャルロットはお互いの班が自由行動時に何をしていたのか楽しかったことなどをお互いに語り合った。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

アイキャッチしりとり

 

一夏「嬉しいときはハッピーって言ってみよう」

 

 

 

シャル「美しきかな 夏の月夜」

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side 一夏

 

シャルがやってきてからは今日のお互いの班がどのように過ごしたかで話が弾み、気付けば俺が外に出て来てから結構な時間が経過していた。

そろそろパーティに戻ろうかとも思うんだけど、こうしてシャルと二人で話しているのも悪くないと思って俺は腰を下ろしたままシャルと話を続けていた。

 

「そういえば一夏、さっきは寝転んで何を考えていたの?」

 

「ん?ああ、その事か」

 

シャルがやってきて話し込んでたから中断してたけど、俺はシャルが来るまではちょっと考え事をしていた。

 

「まあ、別に大した事じゃないんだけどな」

 

俺は再びゴロンと寝転んで星空を見上げた。

 

「こうやって寝転んで星空を見てたらさ、この空の向こうには一体何があるのかって考えてたんだ」

 

「この空の向こう?」

 

そう言ってシャルは視線を俺と同じように星空へと向ける。

 

「前に束さんにこんな事を言われた事があったんだ」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「ねぇいっくん、いっくんはこの空の向こうには何があると思う?束さんはね、あの空の向こうにはきっと誰も想像すらし得ない凄い事が起こっていたり、凄い物が数限りなくあると思うんだ。だから束さんはいつか行ってみたいんだ。この無限に広がる果てしない空の向こうへ。『インフィニット・ストラトス』へ」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「インフィニット・・・、ストラトス・・・?」

 

「『どこまでも広がる空』って意味らしい。何かこうやって星空見上げてたらその事思い出してさ。この空の向こうには何があるのかなって考えてたんだ」

 

「束さんって昔から変な研究とか発明とかいっぱいしてるけど、ひょっとして本当は宇宙飛行士になりたいのかな?」

 

「う~ん・・・、多分違うんじゃないか?宇宙飛行士になりたいというよりは自分で宇宙の謎を解き明かしたいって感じだと俺は思う。まあ、実際その辺りは束さんに聞いてみないとわからないけどな」

 

この前のように俺の身体を一時的に小さくするような薬を作ったり、昔俺達を振り回した訳のわからない発明をするのは本当に束さんの単なる気まぐれや遊び心なんだろうな。

それに振り回されるこっちはたまったもんじゃないけど・・・。

 

「そうなんだ?何か難しい事考えてるんだね?」

 

「あはは、そうだな。自分でも何でいきなりこんな事考えたのかわからないよ」

 

でも何でか俺には束さんの言った『インフィニット・ストラトス』という言葉が鮮明に耳に残ってるんだよな。

なんか俺にとってそれは無関係じゃないような気がする。

何でかはわからないけど。

 

「よっと。しかしあれだな、明日にはもう藤川に帰っちまうんだって考えると少し寂しい気もするな」

 

俺は寝転んだ状態から上半身だけを起こして話題を帰る事にした。

 

「そうだね。日本に来てこんな風に学校行事で旅行するのって初めてだったから凄く新鮮で楽しかったよ」

 

「そっか。そういえばシャルは初めてなんだよな。こうやって学校の行事で旅行に来るのは」

 

昔シャルが日本に遊びに来ていたときは俺達の家族とシャルで旅行をする事もたまにあったけど、学校行事で旅行に来るのって学校の友達とかと一緒に旅行するから家族での旅行とは楽しさがあるからシャルとしてもかなり新鮮だっただろうな。

 

「凄く楽しかったけど、やっぱり僕は一夏と同じ班なって一緒に楽しみたかったなって思うよ」

 

そうだな。

やっぱり、今回の林間学校で唯一悔やまれるとしたらそこだ。

箒や鈴とは小・中学校で一緒に修学旅行なんかは行ったけど、シャルとは今回が初めてだったし、やっぱり一緒に楽しみたかったてはあるな。

 

「まあ、今回は残念だったけど、二年生になれば修学旅行があるし、そん時は同じクラスで一緒の班になれるといいな」

 

「そうだね。進級時に同じクラスになれるように千冬さんに袖の下送っとこうかな」

 

「いや、千冬姉はそういうの嫌いだから辞めとけって」

 

出席簿でもかなり痛いのにマジゲンコツなんて喰らったら脳細胞が幾つ死ぬかわかったもんじゃないぞ。

それに千冬姉も一介の教師にすぎないわけだしクラス割をどうこうできるのかどうかもわからないしな。

百春兄だったら多少は聞いてくれるかもしれないけど、保健医ってその辺に融通は利かなそうだし。

 

「そっか。残念・・・」

 

ちょっとだけしゅんっとするシャル。

なんかおもちゃを取り上げられた子供みたいで可愛いな。

 

(なでなで)

 

気が付けば俺はシャルの頭を撫でていた。

 

「はわっ!?い、一夏!?」

 

「あっ、わりぃ」

 

「べ、別に嫌だった訳じゃないんだけど、いきなりでちょっと恥ずかしいよ/////」

 

さっき箒に注意されたばっかなのについやってしまった。

いかんいかん、幼馴染からセクハラで訴えられるなんてシャレにならんし、やっぱり意識して直すべきか?

 

「やっぱり一夏ってズルイ・・・(ボソッ)」

 

「ん、何か言った?」

 

「う、ううん、何でもない!」

 

う~ん、何かボソッと聞こえたような気がしたんだが、シャルがそう言うなら気にしないでおこう。

 

「ね、ねぇ一夏!」

 

「ん?」

 

「あ、あの・・・・ね/////」

 

何だ?

シャルが急に顔を赤くしてモジモジし始めたぞ?

指を弄びながら横目で俺の方を見てくる。

 

「さっき、僕の・・・、見たよね・・・?」

 

「へっ?見たって・・・、あっ!!!」

 

何を言っているのか察した俺はシャルと同様に顔を赤くした。

故意ではないとはいえ、俺が見てしまった白くて清楚なアレ(・・)を思い出してしまう。

 

「だ、ダメ!今思い出したでしょ!!」

 

「そ、そんな事言われても・・・」

 

思い出した原因は話を振ってきたシャルにあると俺は思うぞ・・・。

 

「ホントごめんって!決して見るつもりはなかったんだって!!」

 

さっき土下座までして謝ったのにまた俺は謝っている・・・。

何でこうなったんだよ・・・?

 

「じゃあ、許してあげる代わりにひとつお願いを聞いてくれる?」

 

むぅ、そう来たか。

この前のデートの時の腕組み然り、「あ~ん」然り、シャルのお願いは恥ずかしい事をさせられる事が多い。

別に嫌ではないのだが、やっていて恥ずかしいからできれば勘弁して欲しいんだけど。

 

「それで許してくれるんだったら聞くけどさ・・・」

 

見てしまった以上悪いのは俺な訳だし、ここは素直にお願いを聞くべきだろう。

 

「じゃあ、ちょっとだけ肩を貸して」

 

「はいっ?肩を貸すって・・・?」

 

「こういう事」

 

そう言ってシャルは自分の座っている位置を少し俺の方にずらし、そのまま俺の方に身体を寄せてからこてんと頭を俺の肩に頭を預けてきた。

 

「シャ、シャル・・・」

 

「一夏はそのままだよ」

 

「う、うん・・・」

 

困惑する俺をよそにシャルは目を閉じて俺に寄りかかる。

前にデートの帰りの電車の中で似たような状況があったけど、あの時はシャルが眠っていたのであまり意識はしていなかった。

シャルの身体がぴったりとくっ付いているので物凄く照れて落ち着かない。

落ち着かないんだけど・・・、何て言うんだろうか・・・?

照れの中にも嬉しさみたいなものが俺の中にある・・・。

まあ、シャルほど可愛い娘に寄りかかられて悪い気になる男はいないとは思うけど・・・。

 

「・・・・・・・」

 

「・・・・・・・」

 

この気恥ずかしい状態が何分続いただろうか?

話す事もなく、俺はシャルの身体を受けて静かに空を見つめている。

シャルも言葉を発せずに目を閉じて俺に寄りかかっている。

シャルの奴、もしかして眠っちまってるんじゃないだろうな・・・?

 

「ねぇ、一夏」

 

「ひゃ、ひゃいっ!!?」

 

物凄く声が上擦らせてしまった。

格好悪いと思いながらも俺はシャルの方に視線を向ける。

 

「・・・・・・・」

 

視線と視線が重なり、シャルのアメジストの瞳が真っ直ぐ俺を見つめている。

その瞳は少し潤んでいるように見えた。

 

「あ・・・・・・」

 

見惚れて、しまった。

月明かりに照らされたシャルの顔は俺の心臓の鼓動を高鳴らせるほどに綺麗だった。

そのまま時間が止まったかのように、俺とシャルはお互いを見つめ合う。

 

「・・・・・・・、ん」

 

突然、シャルが目を閉じて唇を少し上向きに突き出した。

 

「・・・・・・・、へっ?」

 

ええええええっ!!?ちょ、ちょっと待って!!!コレってもしかして!!!!

 

「・・・・・・・」

 

驚きのあまりパニックになっている俺をよそにシャルは目を閉じて静かに俺を待っていた。

や、やばい・・・、これは、引き込まれる・・・。

無意識の内に俺はシャルの肩を抱いていた。

シャルの身体が一瞬だけ強張ったが、それも一瞬の事。

肩を抱いたまま、俺はゆっくりとシャルの顔に自分の顔を近づけて――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前達そこで何やってる?」

 

「「うわああああああああっ!!!!!!!!!」」

 

突如、後ろから声を掛けられて俺とシャルは驚いて同極の磁石が反発しあうような勢いで身体を離した。

 

「ち、千冬姉・・・」

 

「ち、千冬さん・・・」

 

そこにいたのは腕組みをしながら呆れ顔をしている千冬姉だった。

 

「邪魔をして悪いが、私もここに教員として来てる以上は外を出歩く生徒を注意しなければならん。早いトコ旅館内に戻れ」

 

「「は、はいっ!」」

 

見られた恥ずかしさからか、俺とシャルはそそくさと旅館内に戻ろうとする。

 

「ああ、それからお前達」

 

「「は、はいっ!?」」

 

千冬姉は脱兎のごとく旅館に戻ろうとした俺達を引き止めると―――――

 

(パァンッ!パァンッ!)

 

「織斑先生だ」

 

―――――どこからか取り出した出席簿が俺達の頭に炸裂した。

 

side out

 

その後、ズキズキとする頭を押さえながら一夏とシャルロットは旅館内のパーティ会場へと戻った。

頭を押さえていた事に数名が疑問を投げ掛けてきたが、そこは適当に誤魔化しておき、再びクラスメイト達と心行くまでパーティを楽しんだ。

 

 

 

翌日、藍越学園一行は旅館で朝食を済ませてから再び校外学習に赴いた。 

校外学習は初日のように現地の風習などを大いに学ぶ事となったがそこは割愛して、あとは帰るだけとなった。

ちなみに昼食は途中のパーキングエリアでを取る事になっており、今はそのパーキングエリアで昼食を済ませて出発まで少しの間だけ自由時間となった。

 

「ふぅ・・・」

 

トイレに行っていた一夏はトイレから出るとゆっくりと息をもらした。

 

(あともうちょっとで・・・、キス、しちまってたんだよなぁ・・・)

 

あれからクラスメイト達とドンチャン騒ぎをしてなるべく考えないようにしていたが、ひとりになると無意識の内に昨晩のシャルロットとの事を思い出してしまう。

 

(あそこで千冬姉が来なかったら・・・、って!俺は何を考えているんだ!!?)

 

自分の考えていた事に恥ずかしくなった一夏は頭をガーッと掻き毟って考えを振り払う。

 

「落ち着け落ち着け・・・。平常心だ平常心・・・。篠ノ之道場で習っただろう・・・」

 

胸に手を当て深呼吸をして心を落ち着かせる。

傍から見ていると突然頭を掻き毟ったり、胸に手を当てて深呼吸するなどとても挙動不審だ。

 

「・・・・、よし、落ち着いた」

 

何とか心を落ち着かせて一夏はバスに向かって足を進める。

 

「あ、あのっ!」

 

「えっ?」

 

そこに、ひとりの女子生徒が一夏に話し掛けてきた。

 

「あれ?君はたしか・・・」

 

その女子生徒に一夏は見覚えがあった。

髪はセミロングで内側に向いたハネのある癖毛が特徴的。

あとは長方形のメガネを掛けていて大人しそうな印象を受ける女子生徒だった。

 

「あの時は・・・、助けてくれてありがとう・・・」

 

その女子生徒は一夏が行きのバス移動の際に途中のパーキングエリアで不良に絡まれているのを助けた女子生徒だった。

 

「いやいや、お礼だったらあのときにも言ってくれたからそれでいいって」

 

一夏は手を振ってお礼を言ってくる女子生徒を諭す。

 

「あ、あの・・・、なまえ・・・」

 

「えっ?」

 

「名前・・・、まだ聞いてなかったから・・・」

 

「ああ、そっか。そういえばまだ名乗ってなかったな」

 

うっかりしてたとばかりに一夏は頭を掻くと改めて自己紹介をした。

 

「俺は織斑一夏。よろしく」

 

「織・・・、斑・・・?」

 

「ん?」

 

一夏が自己紹介をするとその女子生徒は少し驚いたような表情を浮かべた。

 

「もしかして、生徒会長さんの・・・?」

 

「あ、ああ、十秋姉は俺の実姉だけど・・・」

 

「そう、なんだ・・・」

 

「どうかした?」

 

「ううん、何でもない・・・」

 

「どっか具合悪いとか」

 

急に表情が少し暗くなった女子生徒を一夏は心配した。

 

「だ、大丈夫。わ、私バスに戻るね・・・」

 

「あ、ちょっと」

 

止める暇もなく女子生徒は一夏に背を向けて去っていってしまった。

 

「名前聞きそびれちまったな・・・」

 

頭を掻いて女子生徒が去っていった方向を見つめる。

その背中はもうパーキングエリアの人ごみで見えなくなっていた。

 

「何か十秋姉の名前を聞いてから様子がおかしかったけど、何だったんだ?」

 

どうやら彼女は十秋の事であのような反応したようだが、一夏にはその反応した理由がわからずに首を傾げる。

 

「俺もバスに戻るか」

 

考えても仕方ないと思い至った一夏はそのままバスへ向かった。

 

あの女子生徒が物語にかかわってくるのはもう少し先のことである。

 

 

 

 

こうして一夏達の林間学校は幕を下ろした。




駄文にお付き合いくださってありがとうございます。

箒とシャルロット、一夏を想う二人にスポットを当て、最後にちらっとだけあの娘が登場という回でした。
あの娘に関しては誰かはもうお分かりだと思いますが、本格的に物語にかかわってくるのはまだ先です。

ちなみに、箒が全国決勝で敗北しリベンジを誓った相手というのは某執事コメディに出てくるあの方がモデルです。わからない人は「高所恐怖症 負けず嫌い 貧乳」でググれば一発で出ると思います。

それと、一夏が話した束の『インフィニット・ストラトス』に関する件は特に深い意味はありません。一夏がシャルロットのスカートの中を誤って見てしまう理由を考えていたらそういう風になってしまっていたといった感じです。まあ、一応ISの二次なのでこういうのもありかと思いまして。


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