今月もまた忙しかったので月末に早足で執筆したので自分の中では出来がイマイチ感が拭えません・・・。
では、どーぞ
「諸君、知っての通り、来週からいよいよ期末試験が始まる。先日の林間学校から時間もそれほど経っていないうちから今回の試験を迎えることになる」
週末の土曜日。
一年一組は今、帰りのHRの最中だ。
担任である千冬の期末試験が迫っている発言にクラス内の雰囲気も少し騒がしくなる。
この日は期末試験前の最後の通常授業の日で、週末を挟んで週明けには試験が始まる。
藍越学園は進学校とはいえ、やはり試験というものはどこの学校でも憂鬱なものなのだ。
「静かに。赤点など取らぬように各自しっかりと勉学に励むように。赤点を取れば容赦の無い補習漬けの夏休みが待っているぞ。そうなれば私の仕事も増えてしまうからな。私の休みのためにも諸君らは頑張って勉強するように」
千冬の発言にクラス一同が「そっちかよ!」とか「おーいっ!」と心の内でツッコミを入れるが、誰も声には出さない。
千冬には逆らってはいけないというクラスの暗黙のルールがしっかりと守られているのだった。
「では、これにて帰りのHRを終了する。諸君、さようなら」
千冬はクラス一同の心の叫びを無視してHRを終わらせてスタスタと教室を出て行った。
「さすが千冬姉、誰にも文句を言わせない帝王っぷりだ・・・」
千冬が去るのを見送ってから一夏がぼそっと呟く。
試験前という事で部活動も一時的に休止となっているため、ほとんどの生徒がまっすぐに帰宅しようとする。
もちろん最後に少しでも点数を伸ばすため、この日ばかりは大半の生徒が早めに帰宅して勉強するだろう。
「さて、っと」
そして一夏もそのひとりで、いつもはほぼ置き去りにされている教科書達を鞄に入れているために、鞄の重さはいつもより自己主張が激しい。
「いぇ~い♪」
席を立って帰ろうとした一夏に、鈴がやたらとテンション高めにサムズアップしながら近づいてきた。
「ひとつご提案~♪来週の試験に向けて勉強会をしにゃいかにゃ~?」
「何だいきなり?それと何で猫みたいな喋りになってるんだよ?」
やたらテンションの高く、しかも変な猫言葉を使う鈴に一夏は少し怪訝な顔で訊ねた。
「なになに、勉強会するの?」
「勉強会か、それはいいな」
「そうですわね。今回の試験は直前に林間学校があったので少し心配ですものね」
「私はこの学園に来て初めての試験だ。やはり万全を期して臨みたい」
「お前ら、いつの間に集まってた・・・」
気付けば一夏の周りには幼馴染五人が集合していた。
「では、各人帰宅後速やかに用意して織斑家に集合せよ!」
「「「「おー」」」」
「ってウチかい!?」
「敵に部屋を片す暇を与えるなー」
「「「「いえっさー」」」」
「勉強会するんじゃないのかよ!?」
やけにノリが良い五人にツッコミ入れる一夏だが、全て無視されている。
こうしてトントン拍子に話は進み、織斑家で勉強会が行われることが決まったのだった。
時間はちょっと進んで放課後で場所は織斑家の前。
鈴の提案により、皆で織斑家に集まって勉強会をすることになったので、シャルロットは寮の自室に戻って用意を済ませてから織斑家へとやってきた。
(ピンポーン)
インターホンを鳴らして一夏が出てくるのを待つ。
すると、『トトト』と小走りの音が奥から聞こえてきた。
恐らく一夏の足音であろう。
「は~い」
玄関が開かれ現れた顔は、やはり一夏であった。
「おお、シャルか。早かったな。セシリアとラウラは一緒じゃないのか?」
シャルロットの姿を確認した一夏はシャルロットと同じ寮住まいの二人が一緒じゃない事を訊ねた。
どうやら一緒に来るものだと思っていたらしい。
「セシリアは父親から電話が来たからちょっとそれが終わってから来るって。ラウラはちょっと学園に忘れ物したみたいで一度学園に戻ってから来るって」
シャルロットは寮を出る前に二人の部屋を訪ねたのだが、ラウラは忘れ物をしたからと学園にとんぼ返りし、セシリアは父親から掛かってきた電話に出ていたので先に行ってくれとチェルシーの方から伝えられたのでひとりで先に来たという訳だ。
日本の時間は今のところ午後二時少し回ったぐらいで、イギリスではサマータイム込みで考えてもまだ午前六時ぐらいという朝っぱらだ。
そんな時間に愛娘に電話を掛けてくるとはジェームズも相変わらずの親馬鹿っぷりだ。
実際、セシリアはジェームズからの電話でどれほど時間を取られるかわからないし、ラウラも学園に忘れ物を取りに行っているのでちょっと時間が掛かるであろう。
「そっか。まぁ、入ってくれ」
「うん、お邪魔します」
一夏に招き入れられてシャルロットは織斑家へあがった。
「まあ、適当に座ってくれ」
「う、うん」
シャルロットが通されたのは一夏の部屋だった。
一夏を含めると総勢六人での勉強会になるので、広いスペースが取れるリビングで行う方いいかもしれないが、一夏の部屋はそれほど狭い訳ではない。
部屋の真ん中にはには大きめのテーブルが置いてあり、六人で勉強をしても申し分ないスペースが確保されていた。
「茶の用意してくるから待っててくれ」
「わ、わかった」
お茶の用意に部屋を後にする一夏の姿を見送ったシャルロットは視線を部屋に巡らせる。
(い、一夏の部屋にひとり・・・)
そうなのだ。ここは
シャルロットからしてみれば、好意を抱く相手の部屋という訳で、十代乙女の心を色々とくすぐる場所なのである。
『フフフッ、部屋を物色するなら兄様が居ない今がチャンスだぞ』
『そんな事をしてはダメですわ!はしたないですわよ!』
シャルロットの中で悪魔の格好をしたラウラと天使の格好をしたセシリアが囁く。
デビルラウラの言うとおり、意中の男子の部屋をちょっと色々見てみたい気持ちが無い訳ではない。
しかし、エンジェルセシリアの言う事も尤もだ。そんな所を一夏にでも見られたら最悪彼女の長年の恋はその瞬間に終わるかもしれない。
「一応言っておくけど、物色するなよ」
「そ、そんな事しないよぉ!!」
シャルロットがジレンマに駆られていると一夏が釘を刺しに戻って来た。
いきなりの事で、シャルロットは若干声が裏返りながらも慌てて否定する。
「じゃ、今度こそお茶用意してくるから」
「う、うん、いってらっしゃい・・・」
パタンとドアを閉めて一夏は今度こそお茶を用意しに行った。
そして、またも一夏の部屋にシャルロットがひとりという状況だ。
「(そういえば、一夏の部屋に来るのってゴールデンウィーク以来だなぁ)」
先ほど引っ込んだはずの好奇心が少し戻ってきてしまった。
再び視線を巡らせたシャルロットはベッドの上に気になるものを見つけてしまう。
「一夏の・・・、シャツ・・・」
ベッドの上には綺麗に畳まれた一夏のシャツが置かれていた。
恐らく学園に行く前に洗濯して干したものを学園から帰ってきた際に取り込んでおいたものだろう。
吸い寄せられるようにシャルロットはベッドの方へ移動する。
「・・・・・」
(ちょんっ)
指先でシャツを突いてみる。
汚れひとつ無いそのシャツは綺麗で透き通るような白色だった。
「・・・・・」
おもむろにそれを手に取るシャルロット。
「・・・・・はっ!!!! ぼ、僕は何を・・・!!!!」
自分のしている事に気付いたシャルロットはバッと腕を前に伸ばしてシャツを自分から遠ざける。
しかし、その手はしっかりと一夏のシャツを握り締めたままである。
「な、何を・・・」
何とか衝動に抗おうとしたシャルロットだったが、見えない引力に腕が吸い寄せられて―――――
(ぽふっ)
―――――そのまま一夏のシャツを胸にぎゅっと抱きしめた。
「(ああ、何か幸せ・・・)」
胸に抱きしめた一夏のシャツに何にか幸せを感じているシャルロット。
すると、今度はそっと目を閉じてその匂いを嗅ごうと―――――
「シャ、シャルロットさん・・・?」
(どっきぃ!!)
―――――突如、後ろから声を掛けられて肩をビクンッと震わせてシャルロットは後ろを振り返った。
「何をしているのだお前は?」
そこには困惑気味のセシリアと不思議そうに首を傾げたラウラがいた。
一夏のシャツに夢中で二人の来訪にシャルロットは全く気付けなかったのだった。
「え、え~っと・・・、シャ、シャルロットさん・・・」
「・・・・・(ず~ん)」
部屋の隅っこで壁の方を向いて俯きながら体育座りしているシャルロットに恐る恐るといった感じでセシリアが話し掛ける。
「あ、あの、心配しなくても、一夏さんには言いませんから・・・」
何とかフォローをしようとするセシリアだが、シャルロットは自己嫌悪スパイラルから戻って来そうにはなかった。
「一夏兄様のシャツか」
すると、先ほどまでシャルロットが持っていたシャツを今度はラウラが手に取る。
そして、そのシャツを顔の前まで持ってきて―――――
「んーむ(クンクンクン)」
―――――躊躇無く匂いを嗅いだ。
「ふえぇぇぇ!!ラ、ララ、ラウラさんまで何をー!?」
ラウラの奇行?に驚きの声を上げるセシリア。
「日の匂いの中に一夏兄様の優しい匂いが」
「ちょ、ちょっとラウラさん、はしたないですわよ!!?」
シャツの匂いを嗅ぎ続けているラウラにセシリアが詰め寄る。
「よし、次はお前の番だぞセシリア」
「はっ・・・?ふえぇぇぇ!!」
シャツを差し出されてセシリアは素っ頓狂な声を上げた。
「わ、わわ、わわわ、わたくしはけっこうですわよ!!」
「まあ、そんな遠慮せずに嗅いでみろ」
「だ、だだ、ダメですわ!さすがにそれははしたな過ぎますわよー!!」
シャツを持って狭い室内で追いかけっこを始めるセシリアとラウラ。
隅っこでそれを見ていたシャルロットも色々とツッコミを入れたかったが、話の矛先が自分に向きそうなので黙って静観を決め込んでいた。
「おい、何だか騒がしいけど何してんだお前達?」
そこに人数分の飲み物を乗せたトレイを持った一夏が戻ってきた。
「皆で兄様のシャツのニオ―――――むぐっ!!」
あっさりと何をしていたのかを喋ろうとしたラウラの口をシャルロットが全力で塞ぎに行った。
部屋の隅っこからラウラまでの距離を考えると尋常ではないスピードだった。
「あ?俺のシャツがどうしたんだ?」
「な、なんでもない!なんでもないよ!!ねぇ、セシリア!!」
「そ、そうですわ!なんでもありませんのよ!だから気にしないでくださいまし!!」
「そうか?」
全力で誤魔化すシャルロットとセシリアに一夏は首を傾げながらテーブルに飲み物が入ったコップを置いていく。
(ピンポーン)
「お、箒達も来たみたいだな。俺出てくるから」
「う、うん!」
「い、いってらっしゃいまし!」
箒達を出迎えに一夏は玄関へと向かった。
「「はぁ~・・・」」
ぐったりといった感じでシャルロットとセシリアが息を漏らした。
まだ勉強を始めた訳でもないのに物凄い疲れを感じる二人であった。
「むぐむぐむぐー!!」
そして、まだシャルロットに口を塞がれているラウラが苦しそうにもがいていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
アイキャッチしりとり
セシリア「にゃ~お♪」
ラウラ「にゃ、にゃ~ん・・・」
シャルロット「にゃー♪」
鈴「にゃお~ん♪」
箒「にゃ、にゃ・・・、わ、私はやらないぞ////」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
side 一夏
さて、何か色々とハプニング?があったがそれも落ち着いて勉強会に参加するメンバーも全員揃った。
後からやって来た箒と鈴を部屋に通してから二人の飲み物を用意し、早速勉強会をスタートさせようとテーブルに着いた。
「それじゃ、人数も揃ったし早速始めるか」
俺の掛け声に他のメンバーもコクンとうなずく。
すでにそれぞれノートや教科書を開いて準備は整っている。
だが―――――
「へぇ一夏、あんたこのゲーム結構やりこんでるわねー」
―――――その中で鈴だけが俺のベッドの上に寝転んで俺のP○Pを起動させて遊んでいた。
「おいコラ、なに人のP○Pを勝手に起動させてんだよ」
「別にいいじゃない。減るもんじゃないんだし」
そういう問題じゃねぇっての。
一応、減る減らないの問題で言うなら電池が減るわ。
まあ、それは充電すれば問題はないけどさ。
「ほら、早くテーブルに着けって」
「えー」
ベッドに寝転んだままでいる鈴に席に着くように促す。
鈴は何かつまらなそうに足をバタバタさせながら起き上がってベッドから降りた。
「あ、この漫画もう新しいやつ出てたんだ。ちょっと読みたいわね」
鈴はテーブルに着かずに今度は本棚にある漫画に興味を示す。
おもむろに漫画を手にとってパラパラとページをめくっていく。
「いい加減にしろ」
(パコンッ)
「あいたっ!」
俺は教科書を丸めて鈴の頭を軽く引っ叩いた。
「いやね・・・、冗談よ冗談・・・」
叩かれた頭を軽く押さえて苦笑いしながら鈴は漫画を本棚に戻した。
「いいからもう大人しく座れよ」
再び鈴に席に着けと促すが、鈴の席にはバッグが置いてあるだけで勉強の準備も何も出来てはいなかった。
まったく・・・、今日何をしに来たか本当にわかってんかよ・・・。
「さっさと勉強道具出せよ」
「あー、そう、ね・・・」
今度は大人しく席に着いた鈴だが、勉強道具を出そうとしない。
それに何だか珍しく歯切れの悪い言葉を漏らす。
何なんだよ、おい・・・。
「あのさー一夏、ちょっと言いにくいんだけどさー・・・」
「ん?」
「筆記用具と教科書と、あとルーズリーフ何枚か貸してん☆」
ぺロッっと可愛く舌を出しながら鈴はそうのたまった。
ちょっと待て・・・、こいつ今何て言った・・・?
「勉強会って言ったのはこの口だったかなぁ・・・?」
俺は鈴の両頬を摘んでぎゅっと抓った。
元々、こいつがうちで勉強会しようって言い出したのに、言いだしっぺの奴が何も勉強道具持ってこなかった事にさすがの俺もムカッと来た。
「ふぁ、ふぁなしあはいよ~(は、放しなさいよ~)・・・」
腕をブンブンと振って抵抗を試みる鈴だが、小柄な鈴と俺では腕のリーチが違うのでされるがままだった。
鈴の場合はこいつを間合いに入らせなければ抵抗は空振りに終わる事を長年の付き合いがある俺は熟知している。
「「あははは・・・」」
シャルとセシリアはそれを見ながら苦笑いをしている。
どうやら鈴の所業を考えるに、俺を止める気はないらしい。
「・・・いいなぁ、ほっぺ」
いやいや、ちょっと待ちたまえラウラよ。
何故頬を抓られている鈴を羨ましそうに見てる?
頭を撫でてるのとは意味が違うんだぞ?
「おい・・・、そろそろ本当に勉強会始めないか?いつまでもこんな事をしていたら何も出来ずに日が暮れてしまうぞ?」
少し呆れ混じりの声で箒が提言する。
「ああ、確かにそうだな」
箒の言うとおり、このままではいつまで経っても勉強会がスタートできない。
俺は鈴の両頬から手を放して解放してやった。
「痛たたたっ・・・。まったく、何すんのよ・・・」
頬を押さえながら鈴が俺を睨んでくる。
いや、今のは絶対にお前が悪いからな。
「鈴、書くものと教科書は私が貸してやる。あと、ルーズリーフも何枚かやるから大人しく勉強しろ」
何も持ってきていない鈴に箒が助け舟を出した。
まあ、親友として見るに見兼ねたのだろうな。
「ありがとー箒!やっぱ持つべきものはポニーテールの親友よねぇ♪」
「ポニーテールは関係ないだろ、ポニーテールは・・・」
じゃれついてきた鈴に苦笑いしながらツッコミを入れる箒。
うん、俺もポニーテールは関係ないと思うぞ。
「もうなんでもいいから、早く始めるぞ」
こうして、色々脱線を繰り返しながらも勉強会はスタートした。
side out
シャーペンがノートの上を奔る音が部屋に響く中、一夏達は黙々と勉強を続けていた。
何かわからない所が出たら誰かに聞いて、聞かれた者もそれを教え、互いに教え合いながら進めてきた勉強会もそろそろ四時間近くが経過しようとしていた。
「ふぅ・・・、今日はそろそろ終わりにするか?」
一区切りついたところで一夏は皆に今日はこれで終わりにしようと提案する。
窓の外をを見れば真っ赤に燃え上がる太陽がそろそろその一部を沈めようとしていた。
「そうだね、今日はこれでお開きにしようか?」
「賛成~」
反対意見も出なかったので今回はここでお開きとなった。
「はぁ~、疲れた~」
鈴はシャーペンを置くとそのまま後ろにゴロンと倒れて横になった。
勉強会を始める前は色々妨害紛いな事をしていた鈴も一度始めれば集中して勉強をしていた。
だが、四時間も集中し続けていればさすがに疲れる。
普段なら床にだらしなく横になる鈴を嗜めるメンバーも今回はさすがにちょっと疲れているので誰も何も言わなかった。
「俺ちょっとトイレ行ってくるから適当に寛いでてくれ」
「はいは~い、いってらっしゃい~」
一夏はトイレに向かうために部屋を出て行き、鈴も寝転がって手を振りながらそれを見送った。
「しかし、この分なら今回のテストも何とかなりそうね~」
「私は今回が藍越に来て初めての試験だからな。まだまだだな」
「そういえば、ラウラは中間の後に編入してきたんだったな」
「そうだ。だが、私は負けんぞ。試験ごとき乗り越えてみせる!」
ラウラがぐっと拳を握り締める。
なにやらRPGでラスボスを倒しに行くみたいな雰囲気がちょっと可笑しいが、そこはラウラのキャラもあってその場にいる者を和ませるものになっていた。
「テストが終われば夏休みだしね。あんた達何か予定とか立ててんの?」
鈴が身体を起こしながら全員にそう訊ねた。
そう、試験が終われば後は夏休みを待つばかりの期間となる。
常日頃から勉学という苦痛に耐え続ける学生にとって夏休みは正にオアシスそのものである。
進学校である藍越に通う生徒達とてそれは例外ではない。
来たるべき夏休みに胸を躍らせるのも無理もない話だ。
「わたくしは夏休みに入ったらすぐにイギリスへ帰省をするつもりですわ。何せお父様が早く帰ってきなさいと口を酸っぱくしておっしゃっておりますので。すでに夏休み初日のイギリス行きのチケットをチェルシーに手配させておりますわ」
頬に手を当てて苦笑いしながらセシリアがそう言った。
親馬鹿のジェームズは一秒でも早く愛娘に会いたいらしく、勉強会が始まる前の電話もその事だったらしい。
さすがに毎回電話がある度にその事を言ってくるのでセシリアとしてもうんざりとしているところがあるのだった。
「僕も夏休みに入って少ししたらフランスに戻るつもりだよ。お父さんとお母さんに色々とこっちで体験した事も話してあげたいしね」
「私もだな。兄様達と離れるのは辛いが、父様達にも会いたいのもまた事実だしな。なるべく早く戻って来るつもりではいるがな」
シャルロットとラウラも早いうちに帰省するつもりのようだ。
いくら日本の環境に馴染んでいるとはいえ、彼女らも母国の地が恋しくなる事もあるのだ。
「私はインターハイの選考会に出る以外に今のところ予定はない。それに向けての鍛錬も欠かす事はしないつもりだ。鈴、お前はどうなんだ?」
「あたしも今は特に何も無いわね。店の手伝いしながら適当に遊ぶってくらいかしら」
鈴と箒はこれまでと特に変わった事はあまりない。
箒は学校がないのでこれまで以上に剣道の鍛錬に時間を割けるし、鈴も普段よりは店の手伝いに入る時間が増えるだけだろう。
「そ・れ・よ・り、あんた達、
鈴がずいっと顔を寄せて全員に問いた。
「勿論、わかっていますわ」
「当然だな」
「私がその日を忘れる筈が無いだろう」
「うん、僕もバッチリだよ」
他の四人は鈴の問いに自信有り気に頷く。
そう、八月一日は彼女ら五人と深い縁がある者の特別な日なのである。
そのある者とは、今この部屋にはいない
「それじゃ、各自七月中に準備を進めておきなさい。海外組は必ず七月中には日本に戻ってくる事。いいわね?」
「「「「了解」」」」
鈴の指示に全員が了解の意を示す。
何があるのかは八月一日になればわかるでだろう。
「おーい、みんな」
話し合いを終えたところで一夏が部屋に戻ってきた。
「もういい時間だし、勉強会はもうお開きにするけど、せっかくだから全員うちで夕飯食っていってくれよ」
「それはいいわね。あ、でも家に夕飯いらないって連絡しないと」
「わ、私も家に連絡しなくては」
「わたくしもチェルシーに今日はこちらで夕食を頂く事を伝えなくてはいけませんわ」
「それなら心配はいらないよ。鈴ちゃんと箒ちゃんの家とチェルシーにはあたしから連絡しておいたから」
「あ、十秋さん」
夕食の誘いを受けて鈴、箒、セシリアの三人がそれぞれ携帯電話を取り出すが、そこに十秋が顔を出した。
五人は勉強に集中していて気付かなかったが、十秋も試験前という事で生徒会の仕事を早めに切り上げて帰宅しており、勉強会の邪魔をするのも憚れたので一夏の部屋を訪れてはいなかったのだ。
「夕食はあたしとチェルシーの方でもう用意してあるから」
「えっ?チェルシーがこちらに来ているのですか?」
「うん。連絡したらチェルシーもこっちに来るって言ってね。せっかくだから二人で夕食の用意を一緒にしようって事になってね」
「まあ、そういう訳だ。皆遠慮せずに食っていってくれ」
「それじゃ、ご馳走になろうかな」
「そうだな。せっかくの好意を無駄にはできないしな」
「よし、決まりだな。じゃ、皆一階に降りて夕飯にしようぜ」
一夏の掛け声で全員が一夏の部屋を出て一階のリビングへ降りていった。
その日、織斑家では総勢十人によるにぎやかな夕食会が開かれたのだった。
駄文にお付き合いくださってありがとうございます。
勉強会しようってタイトルなのに勉強してる描写は全スルーですが気にしない方向で・・・。
今回の話はあるアニメを見て、このネタをちょっとやってみたいなぁと思って描かせていただきました。何のアニメかはわかる人はすぐわかると思いますw今後もそのアニメのネタを少し入れていくつもりです。
ではまた次回に~。