いやですね・・・、わりとマジでリアルが今大変な状況でして・・・。
side 一夏
試験なんてものは一度期間に入ってしまえば、その時間は恐ろしいくらい速く流れていくものだ。
少なくとも俺は今まで約十六年間生きてきて試験の度にそう思っている。
「・・・・・」
今日は藍越学園の期末試験最終日で、今はこの試験期間の最後の科目の試験中だ。
周りからはカリカリとシャーペンを走らせる音が聞こえて来ていて、試験独特の緊張感が室内を覆いつくしている。
「・・・・・まあ、こんなもんかなっと」
解答用紙を全て埋め、最後の見直しを終えた俺は周りの迷惑にならない程度の声でそう言うと、そっと解答用紙を裏返しにして置いた。
「ふぅ・・・」
これであとはチャイムが鳴るのを待つだけだ。
今回は試験直前に林間学校があったから少し勉強不足が心配だったけど、解答に詰まる事は割りと少なかったし、まあ上々の出来にはなるだろう。
(キーンコーンカーンコーン)
「よし、それまで。全員筆記用具を置け」
チャイムが鳴るのと同時に、試験官の千冬姉が手をパンパンと叩いた。
「それでは、解答用紙を後ろから順番に前に回せ」
「んー」
解答用紙を前に回してから大きく伸びをひとつする。
周りのクラスメイトも俺と同じく伸びをしている奴や試験の解放感に溜め息をつく奴など人それぞれの反応だ。
何はともあれ、これで今回の期末試験の日程は全て消化しきり、みんな試験後独特の解放感に身を委ねていたのだった。
「では、このままHRも引き続き行うので、全員もうひと踏ん張りしろ」
試験官が担任の千冬姉なのでそのままクラスはHRへと移行した。
「さて諸君、これで今回の期末試験は終了だ。お疲れさまと言っておこう」
千冬姉の労いの言葉を聞くとクラスから歓声が上がる。
「静かに!試験は終わったが、この学園はテスト返却後も夏休みまでは通常授業が行われる。世の中には意地の悪い教師もいるから、あえて試験直後に小テストをする教師もいたりするぞ」
クラスから「えーっ!!」というどよめきが起こる。
試験が終わって安心しきっていたところでそんなこと言われたらそれはそうだろう。
ってゆーか、今ここでそんな事言わなくていいだろうに・・・
「静かに!きちんと自己採点をして復習するも良し。試験の解放感に感けて思い切り遊ぶも良し。諸君らの人生、好きに生きるといい。だが、ゆめゆめ油断はしないように。自分にとって何がベストなのか。それを踏まえて行動するように。では、これにてHRを終了する。諸君、さようなら」
HRが終了し、千冬姉がスタスタと教室を後にした。
すると、教室の空気が緩み、一気に騒がしくなる。
「やっほーーっ!終わったぁーーっ!!色んな意味で終わったぞっ!!!」
「いやいや、ダメでしょそりゃ!」
千冬姉が教室を出て行ったのと同時に俺の左後方からそんな言葉が飛び込んできた。
そちらを向けば田島さんが立ち上がってバンザイをしており、その田島さんの右後ろに座っていた谷本さんがツッコミを入れているようだった。
「あははっ・・・、終わったぁ・・・。真っ白に燃え尽きちまった・・・」
「何か、あながち間違いにも見えないわね・・・」
田島さんはバンザイの体勢からいきなり椅子にガックリと項垂れた。
田島さん、そんなに試験の出来悪かったのかな?
「織斑」
「ん?」
今度は右後ろから声を掛けられ、振り向けば桐生がいつもの上品な笑みを浮かべていた。
桐生とは林間学校で一緒の班になったし、席も俺のすぐ右後ろなので結構話す機会は増えた。
「どうだった、試験の出来は?」
「ああ、今回は直前に林間学校があったから少し勉強不足が心配だったけど、出来は上々だと思うぞ。多分だけど、平均で90点くらいは行くと思う」
「おお、そいつは凄いね。ねぇ、鏡さんはどうだった?」
「えっ、わたし?」
桐生は俺の右隣の席の鏡さんに話し掛けた。
鏡さんは鞄に教科書やノートを詰めていた手を止めてこちらを向いた。
「わたしは今回は自分の中では結構良い出来だと思うかな。文系科目は問題無いし、理系科目は得意じゃなかったけどヤマが結構当たってくれたしね。平均で80点くらいは取れると思う」
「そうなんだ、凄いね。ボクなんて今回は平均で70点くらい取れれば良い方だと思うけど」
「別に成績上位を目指すわけじゃないんならそれでいいだろ」
「まあ、それはそうだね」
「でもさ、成績上位を目指してる訳でもないのに平均90点を取れる織斑君は凄いと思うなぁ」
「俺の場合は悪い成績を取ろうもんならすぐにバレたらいけない人にバレるからな」
「あ、織斑先生ね。身内が担任だと隠しようがないって訳なんだね」
「そういう事だ」
鏡さんが苦笑いを浮かべていた。
赤点なんか取ったら千冬姉に何を言われるかわかったもんじゃないからな・・・。
想像するだけで恐ろしいぜ・・・。
「それじゃ、無事に試験も終わったし、僕は音楽室に行くとするよ」
「吹奏楽部って今日から部活再開なのか?」
「今日は個人練習さ。さっき織斑先生も言ってたでしょ。自分にとって何がベストなのかを考えて行動しろってさ。ボクにとってはそれがベストって事さ」
「そういう事か。まあ、頑張れよ」
「うん、またね。鏡さんも、それじゃあね」
「うん、バイバイ桐生君」
音楽室に向かう為に教室を出て行く桐生の背中を俺と鏡さんは見送った。
「それじゃ、わたしももう行くね。ちょっと欲しい本があるから本屋さんに行かなきゃいけないんだ」
「そっか、わかった。それじゃあね、鏡さん」
「うん、バイバイ織斑君」
手を軽く上げて挨拶すると鏡さんも軽く手を振ってから教室を出て行った。
「おい、一夏」
「ん?」
鏡さんを見送ると、今度は別の奴が話し掛けてきた。
振り返ると、そこには赤みのかかった長い茶髪にバンダナを巻いている男子がいた。
「・・・・・」
「ん、どうした?」
「お前誰だっけ?」
(ズコォッ!!)
その男子はオーバーリアクションでずっこけた。
おいおい、周りの迷惑考えろよ。
「お前いきなりそれはないだろう!?」
「いや、すまん。何かお前の顔見てたら自然とさっきの言葉が出ちゃって」
「酷っ!!」
「で、お前誰だっけ?」
「しかもそこに戻るんかい!?俺だよ俺!」
「詐欺なら他を当たってくれ」
「俺俺詐欺じゃねぇよ!俺だよ俺!弾だよ!五反田弾!!」
「・・・・・、ああそっか、お前弾か」
「今、思い出すのにちょっと時間掛からなかったか?」
「気のせいだ」
「まったく、長い間出番がなかったからって冗談キツイぜ・・・」
「出番って何の事だ?」
「なんでもない。気にするな」
う~ん、訳のわからん奴だな。
まあ、気にしないでおこう。
「で、用件は一体なんだ?」
「おお、そうだった。お前がキツイ冗談のおかげですっかり忘れたぜ」
「それは悪かった。で、用件は?」
「久しぶりに帰りにゲーセン行こうぜ。試験も終わったんだし、今日は遊びまくろうぜ」
「お、ゲーセン行くのか?それなら俺もご一緒させてもらうぜ」
弾のからの誘いの後にまた別の奴が話し掛けてきた。
振り返ると、そこにはツンツンに跳ねた黒髪の男子がいた。
「・・・・・」
「ん、何だよ?」
「お前誰だっけ?」
(ズコォッ!!)
さっきの弾と同様、その男子はオーバーリアクションでずっこけた。
おいおい、だから周りの迷惑考えろって。
「一夏、その冗談はキツ過ぎるって・・・」
「いや、さっきと同じような展開だったからここはそう言うしかないと思ってさ」
「天丼ってやつか?お笑い芸人じゃないんだからそんな事せんでいいって」
「それは悪かったな。で、お前もゲーセン行くのか数馬?」
「おう。久しぶりにゲームでもして気晴らしをしたくてな」
「おいー!ちょーとまてーい!!」
「「ん?」」
数馬が合流してちょっと話をしているといきなり弾が会話に待ったを掛けた。
「何だよ弾?」
「一夏、お前俺の事は思い出すのに時間掛かったくせに何で数馬はそんなにあっさり思い出すんだよ!こいつだって最近出番なかっただろうが!!」
「なあ、数馬。さっきから弾が出番出番ってうるさいんだけど何なんだ?」
「まあ、気にしてやるな。弾は馬鹿なんだよ」
「それもそうだな」
「それで納得するなよ!」
「「いや、だって弾だし」」
「ハモるなぁ!!」
おお、なんか凄い久しぶりにこんな馬鹿をやってる気がするぞ。
こういうのも中々楽しくていいもんだ。
「はぁぁ、ったくよぉ・・・。馬鹿な事やってないでさっさとゲーセン行こうぜ」
大きく溜め息をついた弾が早くゲーセン行こうと促してくる。
今日は夕飯の買出しの必要もないから俺も付き合うとするか。
「じゃあ、早速向かうとするか」
「おうよ」
ゲーセン行きも決まり、俺達は連れ立って教室を後にした。
side out
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アイキャッチしりとり
一夏「ぞくぞくするんだろう?弄られてさ」
弾「するかあぁぁぁ!!」
数馬「あーあー、無理な嘘ついちゃってwww」
弾「だから違うっつーの!!」
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「さーって、今日はパーッとやるぜ☆」
「そういや、あのゲーセン何か新作入ったのか?」
「いや、今回はリベンジだぜ☆」
「リベンジってエアホッケーか?」
「それもあるが、今回は格ゲーもリベンジさせてもらうぜ☆」
ゲーセンに向かう道中、一夏達は適当に駄弁りながら目的地に向けて歩を進めていた。
「格ゲーはともかく、エアホッケーはお前凄ぇ下手くそじゃん。前回なんて自殺点ばっかだったし」
「フッフッフッ、前回までの俺と思ったら大間違いだぜ☆」
「どーでもいいけど、語尾に☆を付けんな。うぜぇ」
「似合わんから止めとけ」
「確かに、弾のキャラでそんな事されたら確かにうざいわね。というか、うざいというよりキモイ」
「確かにキモイな。弾、お前ちょっと離れて歩け」
「あたし達から半径三メートル以上は離れてなさいよね」
「半径三メートル以内に入ったら燃やすからな」
そそくさと弾から距離を取る面々。
「お前ら酷過ぎだろっ!てゆーか燃やすって何!?」
「昔から言うだろ。『ウザイものには放火しろ』ってさ」
「言わない絶対言わない!それと『臭いものには蓋をしろ』だろ!」
「実際、料理では臭みを取るためにフランベとかする事あるよな?」
「弾、あんたちょっと汗臭くない?」
「ちょっ、鈴さん!?その発言はどんな展開を望んでいるんだ!!?」
「弾に火を」
「放つか?」
「弾(
「(燃)じゃねぇよ(燃)じゃ!!それ絶対臭みが取れる前に死んじゃうだろ!!」
「馬鹿だなぁ。冗談だって冗談」
「相変わらず弾を弄るとリアクションが良くていいな」
「弄られキャラってやつね。でもそのキャラは飽きられたらただの痛い子だから気を付けなさいよ」
「久しぶりにゲーセン行くからテンションが上がってただけなのにこの仕打ちは何!?・・・・・って、鈴!?お前いつの間に!!?」
そこでようやく弾がいつの間にか会話の中に鈴が入り込んでいる事に気が付いた。
ナチュラルに会話に入り込んでいたので気付かなかったようだ。
「ん?あたしだけじゃないわよ」
そう言って鈴は後ろを指差す。
「まったく、騒がしい奴だな」
「まあまあ、でも、ゲームセンター楽しみだね」
「わたくしは行くのは初めてですわね」
「私も初めてだ。結構ワクワクしてるぞ」
そこには箒、シャルロット、セシリア、ラウラの四人が揃っていた。
「いつの間にこんなに増えた!?」
「俺達が教室を出た時から一緒にいたぞ」
「ってゆーか弾、気付いてなかったのか?」
一夏と数馬は鈴達が付いて来ている事には気付いていたようで、気付いていなかった弾に向かって「お前何言ってんの?」みたいな顔をしていた。
「あんた達が教室でゲーセン行くって話をしてたのを聞いてたからね。テストも終わったんだし、せっかくだから皆で行こうと思って来たわけよ」
「なら一声くらい掛けてくれよ」
「何言ってんのよ?ちゃんと一夏と数馬には声掛けたわよ」
「俺には?」
「二人に声掛けたから別にいっかと思って。とゆーか、二人に声掛けた時に気付かないあんたもどうなのよ」
「俺か?俺が可笑しいのか?」
弾の場合、テストの解放感と久しぶりにゲーセンに行く事でテンションが上がっていたので鈴達が一夏と数馬に声を掛けたときに気付かなかっただけなのだが。
「それでは、しゅっぱ~つ♪」
状況に付いて来れていない弾を他所に残りのメンバーはぞろぞろとゲーセンに向かって歩き出した。
「って、俺を置いていかないでぇ!放置プレイはいやぁぁぁ!」
ゲーセンに向かうメンバーの背中を弾は追いかけていった。
弾弄りを楽しんだ一行は藤川駅前にあるゲームセンターに到着した。
ここあるゲームセンターは話題の新作のゲームや人気ゲーム、定番ゲームを数多く取り揃えており、ゲームの他にもボーリングやビリヤードといったスポーツを興じる事も出来、さらにはカラオケも出来る施設なっている。わかり易く言えば「ラウンド○ン」みたいなところなのだ。
「さてさて、戦いの前にまずはのどに潤いを」
「賛成~」
遊ぶ前に猛暑の中歩いてきた為に少しのどが乾いていたメンバーは入り口のそばにある自動販売機でそれぞれ飲み物を調達する。
ちなみに一夏と箒はお茶、数馬はスポーツドリンク、弾はコーラ、セシリアは紅茶、ラウラはココア、シャルロットはオレンジ、鈴は烏龍茶を購入した。
「そういえば、この八人メンバーでゲーセン来るのって初めてだな」
「あ~、そういえばそうね」
スポーツドリンクを飲みながら数馬がふとそう言うと鈴も数馬に同意する。
実はこの八人、学校ではよく一緒に昼食を取ったり、休み時間に集まって雑談をしたりはよくあるのだが、放課後に全員でどこかに遊びに行くというのは今回が初めてなのだ。
「わたくしはこういうところには初めて来ましたけど、皆さんはよくいらっしゃるんですの?」
「男三人と鈴とは中学時代に結構来てたな」
「そうなのですか」
「そこまで頻繁に出入りしてたわけじゃないけどな」
紅茶を手にしながらセシリアが訊ねると、お茶を飲んでいた一夏が返答する。
「私はあまりこういう所は好きではないんだがな・・・」
一夏と同じくお茶を飲んでいた箒がそう呟いた。
元来、箒はこのような娯楽施設には自らすすんで来るような性格ではなく、中学時代もほとんどが一夏や鈴に誘われて付いて来る事が殆どであったが、幼い頃に一夏や鈴の家でTVゲームなどで遊んでいた事もあるので、箒自身ゲームは案外嫌いでは無い。
「ドイツにいた頃に仕えていたメイドがこういう所に詳しかったから話は聞いていたんだが、結構凄いのだな」
ココアをくぴくぴと飲んでいたラウラはセシリアと同じで今回初めてゲームセンターにやってきたのだが、場内から漏れてくる音や立ち並ぶゲームの数々に暫し圧倒されていた。
「ラウラ、この前ゲーセンに初めて来た時のシャルと同じ反応してるな」
「うん?シャルロットは一度来た事があるのか?」
「えっ?あー、うん、一度だけ・・・」
オレンジジュースを飲んでいたシャルロットが少し口篭りながら答えた。
「ラウラが藍越に編入してくる前に俺とシャルの二人で千羽谷まで遊びに行った事があってな。そのときにゲーセン寄ったんだ」
「ほら、前に僕と一夏が雑誌の記事に載った事があったでしょ?あのインタビューをされた日に行ったんだよ////」
「あ、そういやあの日だったっけな////」
シャルロットはちょっと顔を赤くして答えると一夏も頬をポリポリと掻きながらほんの少し顔を赤くしていた。
どうやら『編集部満場一致の超お似合いカップル』と書かれていたインタビュー記事の事を思い出してしまったようだ。
あの雑誌記事の詳細はもう説明してあるのでここにいるメンバーはもう事情を理解しているが、箒だけはどこかつまらなそうな顔でお茶を啜っていた。
「ぷはーっ!さて、のどに潤いが戻った事だし、そろそろ行こうぜ!」
コーラをゴクゴクッと飲み干し、ゴミ箱に空き缶を入れながら弾が気合充分の声を上げる。
それを合図にそれぞれ飲み物を飲み終えてゴミ箱に捨て、ゲーセンの中へと足を踏み入れた。
テストも終わった解放感に身を任せながら彼らはゲーセンを満喫する事になった。
駄文にお付き合いくださってありがとうございます。
今回は試験を終えた一夏達が馬鹿をやりつつゲーセンを訪れるところまで描かせてもらいました。
本来はゲーセンで遊び終えるところまでを一話分に纏めたかったのですが、前書きにも書きましたが、リアルが今マジで忙しい状況にあるので二分割にすることになりました。
話自体にモデルが存在するのですが、執筆に入る気力が湧いてこないのが現状です・・・。仕事が終わった後にどうしても疲れと眠気に屈してしまう・・・。休日も色々やる事があったりで・・・。
次回はゲーセンで遊ぶ一夏達を描かせいただきます。では、また次回に。