頭ベレトかよ 作:ザマーメダロット
エピローグ 廻り来て遷ろわざるもの
はじめて彼が剣を取ったのは、とても前向きな理由で、きっと夢が叶うと思っていたからだった。
彼は、二又の分かれ道で第三にして最善の選択を採った者を知っていた。だから、自分のよく知る名前を与えられたのは、同じように運命に挑めというメッセージなのだと、そう思い剣を取ったのだ。
いつか見た戦いの記憶を手繰りながら、自分を鍛え、仲間を集めた。敵をより深く知り、仲間をより善く助け、戦乱の世を最後まで生き残るために奔走した。
5年余りの歳月が経ち、人々が平和を手にした頃。英雄と讃えられ持て囃された彼の前には、よく知る光景、結末があった。彼は、変えられなかった未来に絶望していた。
剣を取った当初に夢見たすべてが、指の間からすり抜け、こぼれ落ちて、すっかりなくなった後、その手の中に残された希望は過去だけだった。だから、次こそは、次こそはと、そう信じて繰り返して抗い――それでも、尽く呑み込まれ、敗北した。
世の中ではいつも誰もが、彼のことを、たった1人で戦局を変えてしまう英雄だと言うが、彼自身は、その程度では運命と戦うにはあまりにも非力なのだと悟らざるを得なかった。
間違いなく、挫折に瀕していた。非力という言葉が、頭の中をぐるぐる回っていた。
非力、非力、非力――
――"非力は無力とは違う"
遠い昔に、脳裏に焼き付いたその言葉が、屈服した先にある平和な未来を享受させなかった。
それから彼は、血を流させるための力ではなく、願いを叶えるための力を求めて、戦いを始めた。この戦いはこれまでと違い長らく決着がつかず、その終結には、以前にも増して数え切れないやり直しを要した。
前に進み続けられたのは、以前の戦いと異なり、やり直してもゼロにはならないからだった。わずかな一歩を積み重ねてゆけるからだった。
非力に打ちひしがれ、砕かれようとしていた彼はもう、消えない炎となっていた。
尽きることなく生まれる灰は積もり続け、彼の伸ばした手が光に近づいていった。
果たして、彼は勝利した。はじまりをも越えた先にあるものを掴み、それそのものになった。
かつて戦いを繰り返す時は、艱難辛苦の記憶と傷だけが心に刻まれていた。しかし今のそれは、あらゆる祝福や、限りない喜びなどと
かつて戦いを繰り返す時は、ゼロに向かって落ちていくことしかできなかった。しかし今の彼は、限りなき高みへ飛翔することができる。
今や、運命さえもが、勝利者たる彼の前に跪いている。