頭ベレトかよ 作:ザマーメダロット
その反省を踏まえ、この最終話は内容を予定から大幅に修正しました。
前回の内容で不快にさせてしまった方々に、深くお詫び申し上げます。
「はあああ!ボルガノン!!」
「うわあああああああ!!」
人間大の火球が飛来・炸裂し、ディミトリは爆死した。
「いいぞリシテア!大いなる力には力が伴う!すなわち力こそ全てだ!!」
「はい先生!力こそ全てです!!」
「何をしているの!??」
倒れたディミトリを前に目を輝かせてはしゃぐベレトとリシテアに向かって、たった今訓練場に来たばかりのエーデルガルトが叫んだ。
「なんだエーデルガルト。見てわからないのか?訓練だ」
エーデルガルトを視界に入れた瞬間に、ベレトの顔から表情が消え、いつもどおりになった。
「明らかに訓練の度を越しているじゃない!」
「いや、エーデルガルト、俺なら大丈夫だ」
ディミトリがむくりと起き上がる。着ている服は焼け焦げて、裂けて、濡れてボロボロで、肌は砂で汚れてこそいるが、怪我はないようだった。
「……えっ?」
「先生の白魔法があるから、攻撃が当たっても平気さ。それに、先生の訓練はとても効率がいい。俺自身、かつてない程に手応えを感じているんだ、止めないでくれ」
「そうです、先生の訓練は完璧なんです。あんたら
他ならぬエーデルガルトこそ、リシテアの言が誇張ではないと知っている。
実際にベレトが教鞭を取ってからというもの、誰一人置き去りにせずに、本来の倍のペースでカリキュラムが進行している。
座学や苦手なカスパルや、口頭のコミュニケーションに若干の難を抱えるペトラが、手放しで絶賛していたことも、エーデルガルトの記憶に新しい。
(しかも、授業の間、ずっと教本を見ていないのよね……ページ数や文の行数、図の内容まで覚えているなんて)
「まあ、俺もこの訓練はちょっと、変だと思わないでもないが……」
ディミトリは、教えてもらう立場で気が引けるのか、遠慮がちにそう言った。
(あ、ちょっとは変だと思っていたのね)
エーデルガルトは、訓練所に来て初めて人間に会った心地になった。
「まあ、ちょうどいい時間だ。休憩にしよう。ほーら、新鮮な氷菓子だぞ」
訓練場の隅から木箱を持ってきたベレトが、折りたたみ式の椅子を3つ取り出して置き、さらにガラスの器とスプーンを2つずつ取り出して、エーデルガルトとリシテアに手渡した。
「あら、私も貰っていいの?ありがとう」
「わあい氷菓子!わたし先生の氷菓子大好き!」
「ゆっくり食べるんだぞ」
リシテアは椅子に座ってすぐ、シャーベットを素早く削ってかきこんだ。その直後、目を強くつぶりながら脚を小さくばたばたさせる。
「ああああ!先生、キーンってする!キーンって!!」
(リシテアは本当に大丈夫なのかしら、頭とか……あ、おいしい)
以前では考えられないほど素直にはしゃぐリシテアを心配しながら、エーデルガルトは桃のシャーベットに舌鼓を打った。
ベレトは続けて、ディミトリにも器とフォークを手渡す。中身は他の2人と異なり、豚肉の冷製だった。
「お前はこれ」
器の中を見て、ディミトリはわずかに首を傾げた。
「誰かから聞いたのか?俺が氷菓子が苦手だと」
「忘れたのか?お前から聞いたんだぞ」
「そ、そうなのか?すまない……おっ、美味いな」
……
静かで穏やかな間食の時間が流れ、3人がそれぞれ食べ終わった頃、ベレトはひとつ頷いて、3人に向かって口を開く。
「美味かったか?」
「はい!」
「ああ、美味かった。ありがとう」
「ええ、また食べたいくらいよ」
三者三様の返答に、ベレトはふたたび頷き、口元を緩める。
「そうか、美味かったか。じゃあ訓練を再開しよう。次の的役はエーデルガルトだ。よかったな2人とも、打ち込みの時間が増えるぞ」
「えっ」
「シャーベットの分は働いてもらうぞ」
エーデルガルトは助けを求める気持ちを込めて、ディミトリの方を見た。ディミトリはふっと笑った。
「エーデルガルト、お前もすぐに分かる。この訓練は効くぞ」
続いて、リシテアの方を見た。リシテアは腰に手を当てて、不敵な笑みを浮かべた。
「わたしの新しい魔法の実験台第一号にしてあげますからね!」
「そ、そんな……」
ここに人間はいない。エーデルガルトはそう思った。
「さあ始めるぞ!楽しい訓練の時間だ!」
ベレトの号令が2人を鼓舞し、1人に重くのしかかった。
……
その後、エーデルガルトは日が傾くまで剣と魔法で滅多打ちにされ、涙の数だけ強くなった。