頭ベレトかよ 作:ザマーメダロット
修道院内の浴場がサウナベースであることに耐えられなかったベレトが”ふざけるな!!!!!1!!”と叫び、その衝撃波で浴場が全損、蚊ほどの罪悪感を感じたベレトによって誰も見たことがない全く新しい完全オリジナル様式の浴場(※日本式銭湯)として2時間で再建されるという劇的ビフォーアフター事件から3週間の時が流れた。
なお、この頃リシテアはこのマジカルカタストロフィック咆哮を使いこなし始め、自走式不発弾として他の生徒たちに恐れられていた。リミッターを外された薄命天才キャラの末路であった。
ベレトは浴場での奇行と破壊の責任を追及され3週間の謹慎を言い渡されていた。この3週間という期間は賞罰を差し引きした結果であり、新設した浴場の評価が高かったことで減刑を賜っていた。
新設の際に魔法を利用した給湯装置を作るのには時間がかかりすぎるからと温泉を掘り、それが美容を始め様々な効能を持っていたことが減刑に関係しているかは今や闇に葬られており、知ろうとすれば今生の救いは失われることは必至であった。被害者は例外なく直近の記憶を失っていた。
ともかくベレトに掛けられた謹慎という鎖が外され、奇行ゲージが溜まる恐ろしさを関係各位が思い出し始めた時、ベレトの最初の行動はセテスに向かっての全力疾走だった。
完全な視界外からパルクール(という言葉では微妙に説明がつかない理不尽な動き)で一直線に迫り、スーパーヒーロー着地が石畳を砕いた。セテスは舞い上がる破片を一瞥し、そしてまだ動じていなかった。人間とは慣れる生き物であった。
「何の用かね」
「部活動を創設したいです。顧問教師の監督下で、放課後に特定の分野の活動を行うというものです」
「分かるような分からないような説明だな……活動形態の具体的な定義はないのかね?」
「こちらに」
渡された紙に目を通したセテスは教師にかかる負担が多少気になったが、至極真っ当な提案だと感じた。ベレトの有り余るエネルギーがどんな形であれ消費されるのであれば歓迎すべきだとも思った。
「いいだろう。レア様には私から報告しておく、やってみたまえ」
「ありがとうございます。では」
セテスの手元にある紙には、確かに活動時間帯や予算調達計画案、入退部の仕組みなどが整然と記されていた。だが、ベレトが何の部活動を創設するつもりなのかは書かれていなかった。
……
それから3日間、突如帝国領のいくつかの村で少人数のグループによる略奪が急増し、修道院はその調査を進めていた。調査の結果、多くの襲撃において犯人グループは逃げる際に多額の金銭を落としていったことが判明した。その金額は必ず被害総額を上回り、行われたのは略奪や作物荒らしのみで、火付けなどによる家屋への被害はなく、人的被害は軽傷以下に抑えられていた。
むしろ、犯人の落とし物で潤っている程であった。
無力化の手際から犯人は手練と推測されたが、不可解な点が多く、その正体は未だ明らかになっていなかった。そんな折、ベレトが自首した。セテスは胃を切り裂かれる痛みに呻きながら個室へ移動し、事情聴取を開始した。人間とは慣れるにも限界がある生き物であった。
「君が村を回って略奪を繰り返した事実に相違はないのだな?」
「ありません」
「動機はなんだ。……いや、そもそもこれは略奪なのか? 何度も金が詰まった袋を落とす程、君は間抜けではないはずだ。これは、何なんだ?」
「先日申し入れた部活動です」
「これがか!? 一体何の部活動なのかね! 説明次第では謹慎では済まんぞ!」
セテスが机を叩いた。ベレトは眉ひとつ動かさなかった。
「略奪部です」
「略奪部!?!?」
「村を襲う盗賊の気持ちになることで、それらの討伐をよりスムーズに行う知見を身につけることが目的です」
ベレトは真顔で言い切った。一方でセテスは顔に汗を滲ませ、ガタッと椅子から立ち上がった。
「くっ……処分が下るまで自室で待っていたまえ!」
この後ベレトには3ヶ月の謹慎処分が言い渡されたが、それ以降に略奪部部員が参加した盗賊討伐はいずれも無血無破壊で完了したため修道院側が有用性・正当性を認めざるを得なくなり、3週間に短縮された。