ざくざくアクターズ・ウォーキング   作:名無ツ草

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水着イベント3章クリア記念に投稿しました。
よろしくお願いします。
前半オリジナル、後半原作沿い

2022/11/26 大幅な文章校正を行いました。


序章【演者たちのお披露目-秘密結社と星の召喚士-】
その1.秘密結社副リーダー


 ――次元の塔。

 

 それは世界に開いた時空の裂け目から通じる謎の空間。内部では様々な世界が入り乱れて迷宮を形成する不思議な場所。

 

 生息する魔物は強力だが、そこで取得できる物資やスキル書の種類は豊富かつ良質。腕に自信のある冒険者ならば挑戦しに向かうべき、所謂(いわゆる)腕試しダンジョンである。

 

「宝箱発見っと。さて何が入って……、また魔法書かよ」

 

 そして今、宝箱を漁っているこの男も冒険者であり、名前をルークと言う。

 彼の恰好は黒地に紫色のストライプが入った礼服。帝都の商人などが着るようなそれは、お世辞にも魔物がひしめくダンジョンにおいては場違いとしか言えない代物だ。しかし彼はこう見えて歴戦の冒険者。当然この服もただのお洒落などではない、ダンジョンで入手した一級品素材が用いられた装備である。

 

「いい加減特技書も出てきてほしいんだがなあ、マジカル水鉄砲なんてもう4つ目だぞ」

 

 彼が引き当てたのはスキル書。

 特殊な製法によって特技、あるいは魔法の心得が書かれた書物であり、読むことでスキルが習得できる素敵なアイテムだ。特技と魔法どちらのスキルを習得できるかは個々人の適正によるが汎用性は高くそれなりに売れなくもない。

 

 ルークは特技タイプの自分が習得できない魔法書を引き当てたことに文句を言いながらも、しっかりとそれを魔法で容量拡張と重量軽減が施された冒険者大満足バッグ(商品名)に仕舞う。ちなみにこのバッグは帝都で5000Gで販売されている。売れ筋は好評で、予約するならお早めに。

 

 

「でもまあ、これだけあるならしばらくは大丈夫だろうな」

 

 

 突入前と比べものにならないほど増えたバッグの重みに満足して、彼は意気揚々と手近な階段を登っていく。

 

 途中、ダンジョン内を徘徊する魔物は出来る限り避けて進みながら、ルークは()()()()が次元の塔内部で拠点としている建物の扉の前へとたどり着いた。

 

「三回も登ってようやくか。まあボス部屋まで行くよりはマシだけどさ」

 

 何故か階段を登ると同じ部屋の別の場所に出たりする次元の塔の不思議な構造に愚痴をこぼしながら扉を開く。部屋の内側へと足を踏み入れると、照明の光が彼を出迎えた。

 

「ただいま帰りましたよ」

 

 冒険者としてパーティを組んでいる人物に拠点の留守番を任せていた筈だったが、口にした挨拶の返事は帰ってこない。

 視線を部屋の中央に向けると、そこにはその相方が椅子に座っていた。

 

 机に突っ伏しており上半身は見えず、近づいて顔を覗き込めば、端麗な顔立ちをした女性が目を閉じ、口の端から涎を垂らしているのが目に入った。

 

「はあ、起きてくださいよ。ヘルさん」

「うひゃあ!?」

 

 すぴょすぴょと気持ちよさげに眠る女性にルークが声を掛けると、ヘルさんと呼ばれた彼女は古典的なリアクションで飛び起きた。

 

 この女性の名前はヘルラージュ。

 数年前からルークとパーティを組んでいる風属性を主体とする魔法使いであり、その容姿は美女といって過言ではなくスタイルも抜群。おまけに回復魔法と支援魔法も使用できるとその実力も申し分なしだ。欠点は消費魔力が多い事と、高火力の魔法を扱うには時間がかかることで、前衛を務められるルークとの相性は良好だった。

 

「か、かかか帰っていたのならちゃんと挨拶してほしいですわ!?」

「挨拶しました。いつも起きないのはヘルさんでしょうに」

「うぎぎぎぎ」

 

 わなわなと震えるヘルラージュを後目に、ルークは戦利品の仕分けに取り掛かった。

 

 このヘルラージュという人物は男性が目のやり場に困るほどきわどい黒いドレスに身を包んだ、どこぞの妖精に言わせればサービスブラックな恰好をしているのだが、ルークは一切目もくれずスキル書を特技と魔法で分別している。もちろん彼が女性に興味がないのではない。彼女がこの格好をして一週間も経過したので見慣れただけである。

 

 彼らがパーティを組んで早二年弱、もはやこの程度のやり取りは何度目かもわからない日常風景である。

 

「ルーク君、それと私のことはリーダーと呼んでくださいといつも言ってますよね?」

「えぇ……まだ続くのかそれ。今日もこんな組織に加入しようとする人なんて来ないってのに」

 

 ヘルラージュの要求に、ルークが怪訝な顔をして振り向いた。

 

 そう、この二人はただの冒険者コンビではない。

 悪の秘密結社をつい先日立ち上げた悪人なのである。

 

 ……何を言っているのかわからない?

 ご安心いただきたい。ルークも全く同じ感想を最初抱いていた。

 

 一週間ほど前に秘密結社設立の宣言をした張本人であるヘルラージュは、自分の事をリーダーと呼ぶようにルークへ要求しているのだが、彼は一向に彼女をそう呼ぼうとはしなかった。つけ加えると、彼は秘密結社の結成自体は特に否定はしてはいない。だがリーダー呼びは頑なにしなかった。

 

「当然ですわ! 私は立派な悪になるために秘密結社を立ち上げました。簡単に諦めたりはしません!」

「……その発言がもう矛盾してると思うんですがね。何か悪事は思いつきましたか?」

「いいえ、全く!」

「威張んなよ」

 

 という訳でルークという男は現在、悪の秘密結社ヘルラージュの副リーダーであった。

 

 だがここで致命的な問題が発生する。

 実はこのヘルラージュという女、悪事のあの字も似合わないほどの小心者で善人なのだ。

 

 どれくらい悪事が出来ないかと言えば、ルークも自分が思いあたる()()()()()()()を提案してみたところ、

 

「そそそ、そんなことをしてしまったら大変なことになってしまいますわ!?」

 

 とガチでビビる有様。

 そして、

 

「貴方の提案は却下!しばらくは素材でも集めてきてください!」

 

 と次元の塔の探索という任務を下されたのが三日前の出来事である。

 

 そんなヘルの小心者っぷりに肩を竦めつつも、ルークは次元の塔3層に居座って、路銀稼ぎのための探索を繰り返す。そして「そろそろ何か思いついたかな?」と思った頃合いでアジトに帰還するのだが、依然としてヘルラージュは悪事を思いつくことはできないのだった。

 

 

 秘密結社ヘルラージュ

 現在構成員は二名

 絶賛戦闘員募集中

 ご連絡は次元の塔三層まで

 

 

 

 

 

 

 ハグレ王国は現在、最近解放されたばかりの次元の塔3層を探索中だ。

 

 記憶に新しいトゲチーク山での古代種の魔物との戦闘と決死の逃避行。

 各々の力不足を痛感した彼女たちは、鍛錬と軍資金稼ぎのためダンジョン周回に精を注いでいた。

 

 順調に魔物を蹴散らしつつ進むハグレ王国一行は、ある看板を前に立ち止まっていた。

 

『次元の塔、三層最上階の鍵は、

 秘密結社ヘルラージュが管理しております。

 塔の先を目指されるお方は、

 是非、一度ヘルラージュにご相談を!』

 

「ふむふむ……。先に進むための鍵は、この秘密結社が持ってるみたいでちね」

「鍵を奪われてしまっているのか……。こうなると、スルーはできないな」

 

 看板の内容に目を通すのは、おもちゃの王冠を頭に光らせ、鍵型の杖キーオブパンドラを持つハグレ王国の小さな君主デーリッチと、緑のローブを着た王国の参謀ローズマリー。

 彼女たちは次元の塔三層を秘密結社が乗っ取ったという、次元の塔案内役であるヘルパーさんが言っていたことを思い返す。階層の占拠自体は正直どうでもいいっちゃいいのだが、先の階層への鍵を握られているとなると無視もできない。

 

 とはいえ、こうして目の前に秘密結社と堂々と掲げられるとなんだか頭が痛くなる。胡乱が全力疾走で殴り掛かってきたような感覚だ。次元の塔1層ではこたつに入ったドラゴンとかいうも胡乱の権化がいたが、場合によっては記録が更新されるだろう。

 

「しかし、自分で自分の居場所をアピールするとは、この秘密結社、間抜けなのか、よほど自信があるのか……」

 

 間違いなく前者です。

 

「この先にある建物がヘルラージュみたいでちよ。一度よっていくでちか?」

「そうだね、油断せずにいこう」

 

 デーリッチの相談にローズマリーが同意し、秘密結社のアジト前へと歩みを進めていく。他にも6人ほど仲間を連れてはいるが、大人数で入ると流石に迷惑だろう。

 

「ローズマリーと様子を見てくるからちょっと待っていてほしいでち」

 

 王国パーティのメンバーを待機させて、国王と参謀はアジトに足を踏み入れる。中は特に変哲の無い居住空間が広がっており、誰かいないかと辺りを見渡すと、背中を向けて座っている女性を見つけた。

 

「どうしよう、何も悪いことが浮かばない……」

「あのー?」

「ひっ!」

 

 ローズマリーが声をかけると、女性はたいそう驚いた様子でデーリッチ達の方にふり向いた。この時点で相当なビビりであることがデーリッチ達に露見してしまったのだが、そのことを気にした様子はない。

 

「すみません。表の看板を見てきたのですがここ秘密結社ですよね?」

「あ、ああ、もしかして戦闘員の募集を見て……!?」

 

 女性は態度を一転させ、世の男性を魅了するような朗らかな笑顔を浮かべた。

 

「よろしく、私、ヘルラージュ。秘密結社のボスをやっているのよ。あなた達は?」

「デーリッチでち」

「あなたは?」

「ロ、ローズマリーです」

 

 元気よく返事を返すデーリッチ。まだ相手の素性もわかっていないのにと警戒するローズマリーだが、ヘルラージュの勢いに押されてつい名乗ってしまった。

 

 ヘルラージュは二人を品定めするように見る。

 

 どちらも女子。

 しかも年下で、うち片方はまだ幼さの抜けきらない少女である。

 とてもじゃないが悪の組織に入りに来たようには見えない。

 

「うーん。秘密結社の面接に来た割には、あんまり悪っぽい面構えじゃないわね」

「あなたが言えた義理ですか」

 

 自分が最も人畜無害を形にしたような雰囲気を醸し出している癖に、二人の人相に不平を述べているヘルラージュに対してローズマリーがツッコミを入れる。

 

 まあいいわ、とヘルラージュは気を取り直す。

 そして、

 

「今ちょっと一人いないけど、初仕事をお願いできるかしら。やる気はあるんでしょう?」

 

 と、デーリッチ達に指示を下した。

 

 そこにデーリッチは待ったをかける。別に鍵が欲しいだけで入団するつもりはない。そう言うと、初仕事と鍵を交換条件にしようとヘルラージュは言った。

 

 じゃあ仕方ないと言うことでデーリッチとローズマリーは秘密結社の一員として初仕事に臨むことになったのだが、肝心の仕事内容について訪ねると、

 

「悪いことは、今から考えます。あなた達が」

 

 と、何故か自信満々に秘密結社のボスはそう宣ったのである。

 

 曰く、どうしても悪いことが思いつかないということでアイディアを募集するという話なのだが、そもそもそんなことを人に頼む時点でどこか矛盾していることに気が付かないものだろうか。

 

(ダメだこの秘密結社、悪の適正ゼロだ……)

 

 呑気にデーリッチと話し合うヘルラージュを見て、ローズマリーは一人頭を抱えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 ルークが秘密結社アジトに戻ってくると、アジトの前には明らかに異様な光景が広がっていた。

 

 多種多様で統一感の欠片もない六人の人物(明らかに人間以外も混ざっている)が地面に敷物を広げ、野営をしている。

 ピクニックか? そんなわけがない。

 

(冒険者の集団か。とするとお目当ては最上階の鍵か……)

 

 人間以外の種族、つまりはハグレが混ざっていることから、それなりに腕の立つ者ばかりが集まっているだろうとルークは考える。

 

 仮に目的がこの階層の鍵であった場合、恐らくヘルラージュがパーティの代表者あたりと応対しているだろうと想定し、自分が積極的に関わるべき必要はないとルークは判断した。自分が動くなら、それは最悪の場合だろう。

 

「すいませんね。ちょっと通らせてもらいますよ」

 

 礼服に身を包んだ、明らかに場違いな男が歩いてくるのに一同が視線を向ける。

 ルークは自分に向けられた怪訝な視線を意に介さずアジトに入ると、予想通りにボスのヘルラージュが少女と女性の他二人と話をしていた。

 そこへルークは声をかけた。

 

「帰りましたよ、ヘルさん」

「あら、ようやく帰ってきましたわね」

 

 入ってきたルークを見るや否や、ヘルラージュはドヤ顔で出迎える。

 どうやら出ていく前に彼に言われたことを未だに気にしていた様子らしく、新入りが来たことを得意げにルークに話した。

 

「戦闘員が二人も加入しました、これで悪事も捗ること間違いありません!」

「……え、新人? マジで?」

「本当と書いてマジですわ」

 

 ヘルラージュの言葉にルークの取り繕ったような敬語も外れる。普段の彼の物言いは割と粗野で、丁寧な物言いは秘密結社の副リーダーとしてのペルソナである。

 こんな胡乱な組織に入ろうとする物好きが本当にいたとはにわかに信じがたく、ルークは信じられないといった目でデーリッチ達を見る。

 

「はい、そういう話になりまして……」

 

 曖昧に頷くローズマリーに、さらにヘルラージュがドヤる。その様子はルークからしても惚れ直しかねないぐらいに可愛らしいが、内容が内容なだけに素直に喜べない。

 ほう、とルークは指を顎に添えるポーズを取って少し考えるそぶりを見せる。このポーズには特に意味はない。ただ格好つけているだけである。

 

「見直しましたよヘルさん。立派に悪事ができるんじゃないですか」

「あれ?もう悪いことをしましたの私?」

 

 何かしたかしら?と可愛らしく小首を傾げるヘルラージュ。

 

「ええ、まさかこんな善人面をしている人達に詐欺をするとは思ってもいませんでした」

 

 どうやらルークはヘルラージュがこの二人を言いくるめて加入させたのだろうと思ったらしい。愛嬌と気立ての良さは他の追随を許さない彼女ならば、お人よしの嬢に付け込むぐらいは訳ないだろう。

 

「ひどい!? 詐欺じゃありません、ちゃんと鍵を渡すので加入してくださいって言いましたわ!」

「それはそれでどうなんでしょうねえ」

 

 などと漫才を繰り広げている二人に対してデーリッチが割り込んだ。

 

「その人が秘密結社の仲間なんでちか?」

「ふふ、彼は秘密結社ヘルラージュの副リーダー、ルークよ。これから彼も一緒に仕事をしてもらうわ」

「どうも。お二人も大変ですね。こんな零細組織に付き合わされて」

「デーリッチでち! ハグレ王国の国王でち!」

「どうも、この子の補佐役のローズマリーです」

 

 そうして三人は自己紹介を済ませると、ローズマリーがルークを目にしてから生じていた疑問を口にする。

 

「ルークさん、でしたっけ。失礼ですが、彼がいるのに悪事が考え付かなかったんですか?」

 

 彼女の疑問も当然だ。

 冒険者として仲間がいるのなら、言い方は酷いが悪事のアイデアなど幾つか出てくるだろうと考えたからだ。流石にこの男性まで底抜けの善人ではないはずだとローズマリーは思っていた。

 

 

 ……第一印象で、ルークが堅気な人物ではないと思ったのもあるのだろうが。冒険者とはそういうものだ。

 

「もちろん彼とも悪事を考えました。ですがちょっとスケールが大きすぎて今の私達では手が余るのです」

「ここに来る冒険者に素材を割高で売ってやろうと提案しただけでビビってるのでお察しください」

「あぁ……」

 

 一応ルークも悪事? を提案した上で却下されていた事実にローズマリーは合点がいったという風に息を吐いた。自分たちの仲間であるハーピー娘が過去に犯したせこい悪事と同レベルのものですら却下するほどのお人よしなら、確かに悪事なんて思いつけるわけがない。

 

 ルークは意気揚々なヘルの様子に活動内容が決まったのかと尋ねた。

 

「それで、仕事というからには決定したのですか?」

「ええ、『お一人様一つ限りのたまごパックを二回並んで二つ買ってしまう』よ!」

「……はい?」

 

 発表された内容を聞き、彼は思わず聞き返した。

 

 悪事というか、ただのマナー違反なセコいだけの行いなのだがヘルラージュは得意げだった。

 その様子にローズマリーがわなわなと震え出す。

 

「ちゃんと人数揃えて話し合うことは大事ね! みんなありがとう! じゃあ早速ユノッグ村に――!」

「いいわけないだろ!」

「ひっ!」

 

 あまりにあんまりなしょぼい悪事へ意気揚々と乗り出そうとするヘルラージュにローズマリーが我慢を超えて声を荒げると、悪もへったくれもない悲鳴が上がる。

 

「さっきから何なんだ君は!全然悪いことをする気がないじゃないか!私達だけならともかくルークさんまで付き合わせて!」

「ひえぇ、ですからたまごを、ふ、二つも……」

 

 それならつまみ食い常習犯のデーリッチは極悪人になるというローズマリーの反論にヘルラージュは恐れ慄いた。

 

「悪ガキ大将にすら負ける悪の秘密結社って……」

「言わないでくださいみじめになります!」

「十分みじめだ。俺含めて」

 

 涙目で睨むヘルラージュにルークは動揺を押さえつつあしらっていく。何だってこのようなちょい悪マウントの取り合いをせねばならない。

 

 ヘルラージュの性根が秘密結社に向いていないというのに、何故こんなことをしているのかとローズマリーが苛立ち冷めやらぬままに疑問をぶつけると、ヘルラージュは涙目になりながらも口を開く。

 

「わたくし、悪人になりたくて……」

 

 そしてヘルラージュは話し始める。

 復讐を遂げたい相手がいる、そのためには悪人になる必要があると。

 

 一応ローズマリーはそれで納得したが、それだけと彼が従っていることの説明がつかない。

 

「しかし、それでは何故ルークさんは秘密結社に?」

「元々二人で冒険者のパーティを組んでいたんですよ。そのままほっとけずに流れで手を貸しているというか、まあ腐れ縁ですよ」

 

 これがどうにもとお手上げの素振りを見せるルークに対して、苦労してるなと普段からわがまま国王に振り回されるローズマリーは共感を覚えた。実際はルークがヘルラージュにベタ惚れしており、ヘルラージュも彼があまりにも自分に優しいので一緒にいたいだけなのだが、好いた惚れたに疎いローズマリーにそれを察することはできず、義理堅い人間なのだなぐらいにしか思わなかった。

 

 そして議論は根本的な、そもそも何故ヘルラージュが悪いことをできないのかという話題へと移る。

 

 デーリッチはヘルが相手の事を気にしすぎるあまりに悪いことができないのだと指摘し、それなら極悪人を相手にすれば良いのだと解決策を挙げる。

 

 なるほどとヘルラージュは感心し、少し考える。

 そして、現在次元の塔では山賊が取引している非合法の品を強奪するという悪事を思いつき、そのままプランが組みあがったようで早速作戦を実行に移そうとする。

 

「待ってください。私達も手伝いますよ」

 

 どうやらヘルラージュに対して不安を覚えたのかローズマリーが助力を申し出る。

 デーリッチも山賊退治にやる気を出し、ヘルラージュも喜んでこれを承諾した。

 そして実行前の準備が必要になったのだが、

 

「着替えてくれます?戦闘服に」

 

 全身黒タイツとかではないかわいい戦闘服を用意しているということで、デーリッチとローズマリーは奥の更衣室へと通されることになった。

 

「あれ、ルーク君は着替えないんでちか?」

「俺は副リーダーなのでね。それにこれがコスチュームを兼ねてるんですよ。後はこいつを被るだけさ」

 

 そう言ってルークは黒生地に紫のボーダーが入った、ヘルラージュお手製のスーツを引っ張り、顔の上半分を覆う仮面を取り出した。

 実際にこのスーツはイエティの剛毛を混ぜ込んでおり、魔物の爪を通さない頑丈さと行動を阻害しないしなやかさを兼ね備えた素敵礼装だったりするのでルーク本人もなんだかんだ気に入っている。

 

 そして何より、洒落ている。

 

「へえ~」

「ところで表の人達はどうするんですか?あなた達のパーティですよね」

「ここで待機してもらうでち。構わないでちか?」

「構いませんわ!」

 

 そうして四人は意気揚々と浜辺に出発した。

 

 果たして秘密結社ヘルラージュの初仕事、非合法物資の強奪は上手くいくのだろうか。




〇ルーク 
一人称 俺/私
若干癖のついた茶髪に黒地に紫のストライプが入ったスーツを着こなした伊達男。


ヘルちんへの愛が爆発しました、
以上。

オリキャラをあてがうのはどうなんだという意見もありそうですが二次創作は自由であるということでどうか。

原作だと八人パーティで山賊戦ですが今作ではルークの性能描写の目的もあり四人パーティで行きます。



誤字脱字誤用は絶賛受け付けております。
感想をくれると投稿速度や文章量が上がったりします。

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