『召喚士の会話』
妖精王国にて、エステルがアルカナを連れ出した時の話。
事務所を出て、森の中を進むこと少し。
けもの道を進んだところで、ちょうどいいだろうと立ち止まった。
「よし、ここなら誰も来なさそうね」
周囲に誰もいないことを確認してから、彼女に向けて口を開く。
「色々言いたいこととか、聞きたいこととかあるんだけど……。挨拶が先か。
――お久しぶりです、先生」
「ああ、久しぶりだな。エステル」
そうして教え子を見る彼女の目は、協会にいた頃と変わりない。
ほんの数か月会ってなかっただけというのに、とても懐かしいものに思えた。
「先生はどこも変わっていないようで」
「そういうお前は、変わっていないようで、見違えたわね。男子三日合わざればと言うが、それは女の子でも同じらしい」
「わかるんだ、そういうの」
「ああ、雰囲気が壮健になった。随分と修羅場を潜り抜けてきたようじゃない?」
先ほどまでとは違い、多少砕けた口調で語る先生の言葉に、ハグレ王国での日々が思い返される。
あの夜、帝都から逃げだし、ハグレ王国に居を移して早数か月。
それから今までの間に起こった想像を超える大冒険の数々。
協会で過ごした二年間に勝るとも劣らない冒険の日々は、自分に急速なレベルアップをもたらしていた。
少し言葉を交わしただけでそれを見抜いてきた先生の観察眼は健在らしい。
成長したと言われて、悪い気はしない。むしろ、目の前の相手に少しでも褒められたというのならそれは大分誇らしいことだった。
「さて、話したい事あるんだろ?言ってみ。せっかくだ、答えられる範囲なら答えてやる」
先生が手ごろな倒木に腰を下ろしたので、私はその隣に座る。
随分と気前が良い。折角なので、ここはお言葉に甘えるとしよう。
「じゃあさ、今協会はどうなってるの?私が飛び出してから、随分と慌ただしくなったみたいだけど」
まず軽いジャブとして、自分がいなくなった後の協会の様子について聞いてみることにした。
多くの不祥事が表沙汰となり、多くの召喚士が抜けていったことまでは知っているが、そこからどうなったのかまでは把握しておらず、流石に気にはなっているのだ。
「うん。とっても大変だったね。まずは貴族派の連中が軒並み消えて、有望な連中も結構な数が協会を見切ってしまった。そのおかげでやらなくていい仕事がこっちに回ってきてね……なし崩しにあのジジイの補佐やってる」
「ああ、協会長はそのままなのね」
「数少ない私の同期だからね。お飾りだったとは言え、一応は組織への愛着もあるんだと。今頃は書類仕事に忙殺されてるころだろうさ」
たらい回しのツケだと先生は意地の悪い笑みを浮かべる。身内で役職を回して、面倒ごとだけは相手に押し付けるのが協会の悪いところだと以前に愚痴っていたけど、もう押し付ける相手も居なくなったか。
私は催しで年に数度見る程度のあの爺さんが書類の山に埋もれる光景を想像して、つい吹き出しそうになった。
しかし、先生と協会長の年齢は一回り以上も違うというのに、親し気に語るあたりやはりこの人は見た目以上に精神が成熟しているように感じる。
「でも悪い事ばかりじゃない。組織としての風通しは良くなったし、醜態を晒しても残ってくれるやつはいたし、後ろ盾がない魔法使いの知り合いなんかにも声を掛けた。今はそいつらを中心として、れっきとした研究機関として再編成し直してる最中と言えば、聞こえはいいかな」
つまり悪く言えば、協会はアルカナに私物化されているということなのだが。そこは私腹を肥やすことに興味がない我が師のこと、精々が研究に使えるスペースが広くなった程度の感覚なのだろう。
それにどうやら協会も落ちぶれたままという訳ではないらしく、ちゃんと組織としてまともになっているようだった。確かに、先生は協会でも昼行灯のようでいて色々と顔が利いていた。内外に彼女を慕う者は、存外多かったらしい。
私には組織の運用とかはわからないけど、こんな短期間で協会を作り替えてしまった先生はすごい。
「へえ、中々すごいことやってるのね」
「ちなみに、陣頭に立ってるのがメニャーニャな。あいつ、この前には一級召喚士に昇進した。もうお前を顎で使える立場というわけだ」
「うへえ。あいつにこき使われるのか」
出てきた名前もこれまた懐かしい。
自分よりも優秀で猫みたいなあの後輩は、見ない間にもぐんぐんと頭角を現していた。
あれだけ可愛がった後輩が、今では上司。何だか遠い存在になったようで、今イチ実感が湧かなかった。
「あいつを上司と仰ぎたくなったらいつでも言ってくれ。お前の席はいつでも用意している。正直、人手はいくらいても足りないし、お前より才能あるやつってのもそうそういなくてね。どうだ?」
「なんでそれで戻ってくると思ったのよ……まあ、声かけてくれるのは嬉しいけどさ。でも、ごめん。それはできない」
確かに協会は居心地が良かった。正確には先生の研究室がだけど、今でもあの日々に戻れるというのなら、自分だって戻りたいと思う。それぐらいの未練は私にだってある。
でも、そこにシノブはもういない。
一番大事な親友がいなくなってしまったあの場所に今更戻ったところで、自分の心にはぽっかりと穴が開いてしまうだろう。きっとあの日々が戻ってくることはない。
それに、今いる王国を離れるという選択肢も無い。
逃げ込むように仲間入りしたとはいえ、あそこの面々は全員がかけがえのない友で、小さな王様は、この世界の確かな希望。そんな彼女を支える参謀は、ちょっと無茶をするきらいがあるから、私が前に出てあげなきゃいけない。
まだまだ発展途上の王国は、私という存在を必要としているのだという自負があった。
「成る程。彼女達が相当気に入ったようだね」
「ええ。自慢の仲間達よ」
「じゃあ勧誘は止めておこう。メニャーニャには負担をかけてしまう形になるがね」
「それは……うん。あのメニャーニャだ、きっと上手くやれるさ」
胸を張って告げれば、あっさりと先生は引き下がった。
(は?まだ私に仕事押し付ける気ですか!?)
なんか聞こえた気がしないでもないが、気のせいだろう。
「そうそう。あいつは要領いいから大体の事はそつなくこなしてきてくれて、めっちゃ有難いのよ」
(ふざけんな!その頭カチ割ってあげましょうか!?)
先生も何か聞こえたような素振りは見せないからやっぱり気のせいだろう。
「まあ、あの子が上手くやってるならそれに越したことはないんだけどさ」
そして、やはり気になるのは、親友のこと。
「……シノブは、元気でやってる?」
「ああ、何の問題も無い。むしろ、自分で歩き回ることが増えたから健康さなら良くなったと言ってもいいだろう」
「ああ、確かに。シノブは体力ないからね」
魔力と知力はずば抜けているものの、フィジカル面はインドア派らしく貧弱の一言で済む親友にとってフィールドワークはいい運動らしい。あっちこっち動き回っていることを不安に思ってはいたが、その点については心配無用のようだ。
「それはそれとしてだ。お前シノブばかり気にかけるるんじゃなくて、いい加減あいつに手紙の一つぐらい出してやりな。めっちゃ拗ねてたからな。音信不通で再開なんてしてみろ、スパナ投げつけられても知らんからな」
「うげっ。帰ったら手紙書きます……」
無意識にシノブのほうを優先していることに、師から忠告を受ける。
綺麗なフォームでスパナをピッチングしてくる後輩が、脳裏にあまりに鮮明に映し出されるものだから、思わず顔が青くなる。
考えるより先に身体が動く自分と、対人関係がダメダメなシノブに比べると、どっちもできてしまう後輩はどうしても後回しになりがちだった。
と、ここまでが軽い世間話。
ここからは少々、真面目な話だ。
「最後に、シノブと先生。何を考えてるの?召喚ゲートの実験なんてして、何がしたいの?」
トゲチーク山地下の古代遺跡。
ザンブラコの海底洞窟。
そして、戦争後に関与が発覚した妖精王国。
これら全ては、親友たるシノブも関わっている。
マナの実という一つの植物を起点として、ある実験が進んでいることは明白だ。
故に、問う。
その質問に、先生は驚かなかった。
おそらく、私ならこの質問はするだろうと予測していたのだろうし、私もそう考えていた。
だから、この後の答えも何となくわかってしまった。
「……すまない、エステル。それはまだ言えないんだ」
少し悲しそうな顔をして、口を噤んだ。
「どうして……!」
何故自分に話してくれないのか。
私は二人の力になれないほどに力不足なのか?
「ああ、別にお前を信用していないとかそういう話じゃない。単純に、ここで話すには少しばかり規模が大きすぎる。話をする場を整えるから、もう少し我慢してくれ。」
……確かにその通りだ。そうまで言われてしまうと、こっちも一度引き下がるしかない。
「そう、わかったわ。でも、これだけは教えて。
それは、人を幸せにするものなの?」
親友が追い求めた、世界を平和にするという目標。
私も助けになりたいと思った一大事業。加わりたいと思った偉業。
それは、今も変わっていないのか――?
「ああ、勿論だとも。今も昔も、私の掲げる目標は変わっていない。未来が善きものだと証明することこそが、我が生涯の命題だとも」
答えた先生の目は、いつになく真剣なもの。
それは、かつてシノブやメニャーニャと一緒に、ゼロキャンペーンを発案したときに示した反応と同じだった。
――よし、やろうじゃないか。しかしこんなに大それたことを考えるとは、お前たちはやはり天才だ。
そう褒めたたえてくれたあの時も、彼女は真剣な目で許可を与えた。
……それはきっと、先生が追い求める夢に繋がっているのだろう。
だから、ひとまずはそれで納得することにした。
「……そう。それじゃあ、今は信じてあげる」
「ありがとう。それじゃあお返しに、お前がここまで見てきたハグレ王国の話でもしてくれないか。生憎、こっちで把握してる動きは冒険の話ぐらいでね。どんな面白い人と会ってきたのか、君の目で見たものを教えてくれないか」
「ええ、わかったわ」
私がどんな人と出会い、どんな絆を育んできたのか。
せっかくだ、日が暮れるまで語りあかしてやろう――!
『落ち着いてください、お姉ちゃん!』
ハグレ王国拠点。談話室の一角にて。
「……」
「……」
隣り合わせで座るヘルラージュとルーク。
一組の男女の前に、ミアラージュがテーブルを挟んで向きあっている。
彼女から発せられる無言の重圧に、ただただ黙る二人であった。
(え、何?なんでいきなり席に座らされたと思ったら無言!?)
(まずいまずいまずい。何だか知らんが身の危険を感じる)
「初めて出会った時からツッコミたくて、でもシリアスだから言うのは後回しにしてたんだけど。ヘル。あなたのその服、何なの?」
「え?」
(そうきたかーーー!!)
「その服よ、服。少々露出が激しすぎないとは思わないの?別に二人の仲にケチつけるような真似はしないけど、流石に恰好ぐらいは一言言わせて頂戴」
ヘルラージュが秘密結社の仕事着としていうドレスの露出度を指摘する姉に、ついに指摘が入ったかと納得するルーク。ついでに、何故自分が危機を感じていたかの理由も判明した。
「ええ、そうね。私もちょっと高いなぁとは思うのだけど……」
「やっぱりそこの彼の仕業なの!?こいつの趣味なのね!?」
「ひッ!?」
「落ち着いてくだせえ姉さん!」
「あたしゃアンタの姉さんになった覚えはねえ!」
「ひぃい!!」
あんまり問題に思ってなさそうな妹の様子に、勝手に納得して荒ぶるお姉ちゃん。
制止に入ろうとするも、余計なワードが火に油を注ぐだけ。
なんとかなだめすかして、理由を話してみれば、今度は悪の秘密結社の部分にご立腹。
「そんなの今すぐ止めなさーい!」
「い、いやですわー!」
「なにをー!?」
と、姉妹の言い争う声が談話室に木霊したのであった。
「と、言うわけでして。一刻も早く秘密結社なんて止めなさいとお姉ちゃんに怒られまして……」
「急に呼び出されたと思ったら、出動要請じゃなくてそうきたか」
「やれやれ、とんだところで存続の危機ですよ」
ところ変わって会議室。
緊急会議ということで呼び出されたローズマリーにヘルラージュが訳を話す。
悪逆非道の秘密結社が、まさかの保護者ストップによって存続の危機に陥るなど、一体誰が予想しただろうか。
あんまりな理由のためなんとも言えない雰囲気の中、遅れてやってきたなすびが一人。
「やー、遅くなったでち。すまんでち。ボードゲームがいいところで~」
「デーリッチ、今日はナスビの恰好しなくていいよ」
「おう?今日は先日の《クリーンナップキャンペーン、山賊ゼロの国!》の続きかと」
ハグレ王国近辺の山賊襲撃活動ではないことに、なすびから戻ったデーリッチが首を傾げる。
「いやそれがね、どうも秘密結社の存続が怪しくなってきたんだ」
悪の幹部なんてとても認められないという姉の強い発言力によって、我を通すのも難しく、かと言って動機を言えば、その復讐自体が壮大な空回りだったので、最早存続している理由もなく。
「ねえ、どうしましょう?」
「うーん、ヘルちんが止めるって言うなら仕方ないとは思うけど……」
「続けたいって気持ちは二人にあるんですの?」
「うん、活動が意外と息抜きになってるし。ナスビスーツも結構すきなんだよなぁ……。無限に迫ってくる雑務を忘れて、無心になれる気がするんだよね」
ちょっとドン引きする感じの理由だった。
「成る程、なすびの時のローズマリーさん、イキイキとしておられますものね」
「正直、ちょっと引くぐらいには澄み切った表情でなすびに成り切ってるよな」
そこまで追い込まれるほどに王国の雑務を一手に背負わせていることに、ルークは申し訳ない気持ちが湧いてくると共に、金勘定ぐらいはもっと手伝おうと決意した。具体的には、参謀とマネージャーを分担させる感じで。
「デーリッチちゃんは?」
「普通に無い体験ができるでちからねー。感謝状とかも一杯もらったし、このまま続けていきたいところだったんでちが……」
なんだかんだ二人はやりがいを見出していたようで、最後に副リーダーに質問が向いた。
「ルーク君は?」
「俺はリーダーに従うとしか。続けたくないかって言われると嘘になりますがね。そこのところ、どうなんです?」
肝心の総統に続ける意欲が無ければ、自分達が何を言っても仕方がない。
「……実のところ、迷っていますわ。お姉ちゃんの言う通り、続ける必要はないのだけれど。でも、やめてしまうと皆との繋がりが無くなってしまうようで。だからって惰性で続けるのもどうかと思いますし……」
秘密結社は手段であった筈だが、アイデンティティの一つにまでなっていたようだ。
どうしたものかと皆で悩んでいると、ローズマリーがあることに気が付いた。
「ん、ちょっと待って?そもそもおかしくない?」
「え?」
「お?」
「秘密結社、ちっとも悪い事やってないよ?」
お気づきになられましたか。
「あれ、そうだっけ?」
「ちょっと、活動内容挙げてみ。」
「いやいやそんなこと無いと思うけど……。まず、山賊アジトでの金品強奪ね」
「それ、山賊が巻き上げた金品を取り返して村の人に配りなおしただけだよね?」
「たまに、おたからとか持ってたりするから。襲撃しがいがあるよね」
「最近は秘密結社の名前聴くだけで逃げ出すから張り合いが無いでち」
「あれ、えーっと……?あ!ほら!女児誘拐事件は流石に悪ですわ……!身代金まで要求しましたからね!」
「それは盗賊団がさらった娘を、私達がさらに誘拐して、身代金50Gで帰してあげたんだよね?」
「むしろその100倍くらい後で払われたんだよな。これぽっちじゃ感謝の気持ちには足りねえって」
「あの時の娘さん、ルーク君を見る目が若干怪しかったんでちよね」
「……え、マジで?」
「じゃ、じゃあ。この悪代官米屋敷襲撃事件は!?」
「タイトルで説明ついてるじゃん……」
「俺としてはとても楽しかったからまたお邪魔したいっすね」
「それわかるー」
ここまでの活動を列挙したところ、概ね義賊っぽいことばかりやっていた秘密結社。
手段が犯罪だったりすることはあれど、結果としては人に感謝されることしかやっていないのである!
「なんてことでち……。我々は善行を振りまいていたんでちか」
「気づいてなかったのか?」
「悪行じゃないとは思ってたけど、思った以上に善行ばかりだな……」
「まあ、そういう作戦しか立てませんからね」
無理やりに言ってみれば、悪人にとっての悪といったところだろうか。
「わ、私達は悪の秘密結社を名乗っておきながら、それに相応しい活動を何もしてきてないというの……?」
「この前のヘルちんは結構決まってたんでちがね。まあルーク君の誘い受けだったんでちが」
「やめろ。頼むからあの時の事は、やめろ」
「えぇ~~~?」
こっ恥ずかしいプロポーズを引っ張り合いに出されると、ルークにダメージが行きます。
そんなやり取りをよそに、悪として全然なってない体たらくだった事実にヘルラージュはわなわなと震える。
「こ、これじゃあお姉ちゃんが悪の秘密結社を解散しろというのも当然ですわーっ!」
「いや、そうはならないでしょ!?」
「うわぁ!?」
ツッコミと共にテーブルの下から這い出してきたのは、他ならぬミアラージュだった。
「何で机の下から……?」
「心配だったから聴き耳を立てさせてもらったわ。それより、聞いてたわよ。あなた達、ちっとも悪いことしてないじゃない。なによそれ」
ミアラージュは呆れた様子。
どうやら彼女が怒っていたのは"悪の"部分だったようで、秘密結社の活動自体に文句をつけるつもりはないらしい。
「そ、そうなの?じゃあ、存続おーけーなの?」
「んー、どうしようかな……。別にいいんだけど、メンバーがあなた達だけじゃあ、ちょっと不安よねぇ……」
思わせぶりな事を言うミアラージュであったが、
「はぁ……」
「メンバーを五人にして、新しく監視役とかどうかなぁ……って、思ったり……」
「え?五人と言われても……」
「なかなか急に入ってくれる人は、ねぇ?」
総員、これをスルー。
「……あー、最近時間出来ちゃったな。時間を持て余してる感じがあるわー」
「うーん、出来れば信頼できる身内で固めておくのがいいですし……」
「まあ、そろそろ一人増やしてもいいかなとは思ってたが、ちょうどいい人材ってのは案外見つからないもんだよなあ」
「中々都合よく現れるわけでも……」
「んー、ごほんっ……!ん、んんんっ!」
気を引こうと咳払いとかしても、まさかの全スルー。
「というわけでお姉ちゃん、残念ですけど今すぐってわけには……」
「ええっ!?これだけ振ってるのに!?」
見事なまでのスルー芸に、思わずツッコミ。
「え?」
「都合よく現れた、身内で信頼出来て、かつ丁度時間を持て余しちゃってる感じの人物が目の前にいるでしょう!?」
「え、もしかしてお姉ちゃん?」
「え、あ、ど、どうかなぁー?」
解散しなさいと強く言った手前、素直に入りたいと言えないミアラージュ。
「え、ミアちゃん秘密結社に入りたいんでちか?」
「い、いや、あなた達がどうしてもというなら仕方ないかなって……!」
「仕方ないってことはあまり入りたくはないのですね……」
「無理強いはちょっとね」
「それにうちはサタ〇ペな感じだから、ネク〇ニカの方はちょっと……」
「おい!露骨なワード出すな!しかも後ろの方隠してるようで隠れてないぞ!」
「サプリ導入でいけないでちか?」
唐突なステマにカミソリめいた切れ味のツッコミが入る。
「あー、もうっ!いい加減にしろっ!分かるでしょう……?つべこべ言わず私を入れなさいよ!」
埒がアカンと言ったようにミアラージュは開き直る。
「お姉ちゃんを?」
「そう!」
「入りたい?」
「え、あ……。は、入りたい、かな……」
この期に及んでまだ言いよどむ。
「ごめん。聞こえなかった。もう少し大きな声で」
「は、入りたいのよ」
「ビッグボイス!」
「はーいーりーたーいでーすー!」
「もっとなりふり構わず辛抱たまらん感じで!」
「おい、ぶっ飛ばすぞ」
「お姉ちゃん結構、ちょろいですわね……」
「お前らわざとか!」
散々露出だ存続だと言われた意趣返しとして焦らしまくった結果。晴れてミアラージュは秘密結社の五人目のメンバーとして加入することが決定した。
人がいいのか悪いのかわからない集まりだが、だからこそ悪い事なんてできないのだろうと納得するミアラージュだった。
「じゃあ、お姉ちゃんも戦闘員だから、ナスビスーツ着ようね」
「は、ナス?」
「秘密結社の戦闘員の服装だよ。うちは、これで統一してるんだ」
「こ、これってどんなの?」
「これでち!」
さっきデーリッチが脱いだナスビスーツが目の前に出される。
「……あんた達、こんなの着て活動してたの?」
「そうでちよ?」
「そこの彼も?」
「ルークさんは副リーダーなので、今の服装のままですね」
「まあ、そういうこった」
言いくるめて幹部格に収まろうにも、既に席は埋まっていた。
ミアラージュはどうあがいてもナスビスーツから逃れられないことを悟る。
「あの、入社希望はなかったことに……」
「うふふ、だーめー」
慌てて取り消そうとするも、ここでは妹の方が強かった。
「それじゃ、秘密結社の
「え、どういうこと?」
「うちの活動資金、俺とヘルの稼ぎなんで。ヘルの財布がミアさんに渡った以上、こっちの管理も任せましょうってことですよ」
先日、ヘルラージュが小遣いを好物の甘いものに浪費するので、ミアラージュがお財布を取り上げたラージュ家で一括管理するようになったのは記憶に新しい。渡す金額自体はルークが管理していたのだが、なんだかんだとヘルラージュのおねだりに負けてしまうことも少なくないので、この際全部委任してしまおうということである。
「まあ、別にいいけど。その代わり、無駄遣いとか厳しくするからね?」
「オーケーオーケー。皆さんも問題ないですね?」
「異存はないかな。デーリッチが活動終わりに毎回ヘルちんにプリンをねだるからどうしようかと思ってたところだし」
「うげげーっ!?」
「はわわーっ!?」
至福の時間が取り潰されたことに、衝撃を受ける二人であった。
「それじゃあ、次元の塔で新生秘密結社の腕試しと行こうじゃないか。アルカナさんのとこに行く日まで、そこで特訓する予定だったんだろ」
「あ、そうだね。じゃあ今からメンバー集めようか」
丁度お互いの連携を確かめる場もあるので、最近新階層が解放された次元の塔行きを提案する。
「ん?次元の塔?何よそれ」
「あ、そういえばミアさんが来る前でしたね、行ってしまえばレベル上げ用のダンジョンですよ。階層ごとに景色とか変わってるんですが、次に行く場所は――
――宇宙都市だよ」
〇今作での召喚士協会について
アルカナ先生の方針により、研究者気質の強い者達が集まるようになった。
とは言っても概ね原作との相違点は少ないかもしれない。メニャーニャはアルカナの下で喜々として古代兵器を改造してる。雑用を押し付けてくるのにはイラついてるけど。
〇ネクロニカ
【永い後日談のネクロニカ】
終末戦争後の世界で、ゾンビ人形となった少女たちの悲劇を演じるTRPG。
表紙がグロいことで有名。
次回は次元の塔5層のお話。
ドリ姫加入後のあれこれが済んでから、ようやっとオリジナルに突入する予定です