ざくざくアクターズ・ウォーキング   作:名無ツ草

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あけましておめでとうございます。
今年も地道に書いていきますよー
後今回も地味にオリジナルの設定が出ます


その21.サタデーナイトスペースオペラ・エピソードⅡ

――彼が悪党に憧れたのは、いつの頃だったか。

 

 周りの子供が正義の味方に夢中になる中、彼は海賊や泥棒、殺し屋が活躍するピカレスクロマンというジャンルに嵌っていった。

 

 それは大人になってからも変わらず、むしろ剣術も魔法も人並み以上にできたがゆえに、いっそう夢を拗らせてしまった彼は調子に乗って宇宙海賊なんて立ち上げてしまった。

 

 幸い宇宙にはならず者なぞ星の数よりいるので部下にも困らず、いろんな場所で大騒ぎの馬鹿騒ぎを繰り広げ、ついには戦艦列車という大物まで手に入れてしまった。

 

 そんな彼の名こそ、ハンサムソード。

 

 そんな彼の海賊団こそ、宇宙海賊ハンサムボーイ。

 

 どうしてハンサム?

 なんて野暮な事を聞いてはいけない。

 

 悪党である彼はまぎれもなくハンサム。

 誰がなんと言ったってハンサムなのだ。

 

『通すさ、俺が通す』

 

――彼はいつだってその言葉を胸に生きてきた。

 

 だからいい年こいたむさいおっさんとなっても、己はハンサムであり続けるのだ。 

 

「どうせ死ぬならハンサムハンサム。心も体もハンサムボ~イ♪」

 

 そんな彼は現在本部が襲撃を受けているにも関わらず、涼やかに社歌(我ながら会心の出来だと思っている)を鼻歌混じりで歌っていた。なんかハンサムがゲシュタルト崩壊しそう。

 

 街で反乱が起こり、戦艦列車が奪われたと這う這うの体でやってきた部下から報告があったのが数時間前。

 勝利に舞い上がったレジスタンスが、勇み足で乗り込んでくるだろうと予想するのは当然である。

 だが、宇宙海賊の親分たるもの余裕をもってハンサムたれ。

 こちらから打って出るというハンサムでない真似はせず、のこのこと本部にやってきた連中を歓迎してやればいい……

 

 それゆえに、今まさに飛び込んできた部下の報告にも動じず、侵入者を迎え撃つ算段でいた。

 

 佇まい一つ、台詞一つとっても十把一絡げのサンシタではない、主人公めいた風格を醸し出すハンサムボーイは、ハグレ王国にとってまごうことなき強敵であっただろう。

 

 だがしかし、彼にとっての不運はあることを失念していたことであり、悪党のやり方を心得ていた者がハグレ王国にいたことであっただろう。

 

「こんにちはー」

 

 間の抜けた声でやってきたのは、殆どが少女の女所帯。

 こんな連中に負けたのか……と部下の不甲斐なさに呆れながらも、悪党らしくハンサムに出迎えてやろうと立ち上がり――

 

「挨拶代わりだ、受け取るといい」

「へ?」

 

 ロケットランチャーを構えて笑う男の姿が視界に収まったのを最後に、ハンサムソード氏の意識は爆炎に飲み込まれた。

 

 ――そう、彼が失念していたのは、悪党の最後というものは、どうしようもなくみじめで、あっけなく、唐突に訪れるものだということだった。

 

 

 

 

 

 

「あ、不意打ちでやっちまった。先制攻撃程度のものだったのに」

「いやあれ、列車の副砲じゃない。戦闘前にそんなの撃ち込まれたらひとたまりもないでしょ」

 

 宇宙海賊をものの見事に爆破したハグレ王国ご一行。

 戦艦列車からの極レアドロップで出たみんな大好き《RPG-7》は、このファンタジー世界でも強力な代わりに消耗品というエリクサー症候群患者なら倉庫の肥やしになりかねない代物だった。でもその破壊力を一度は見てみたいということで、せっかくならと最も手ごろな強敵枠だった宇宙海賊に撃ち込んでみることにした。その結果がこれである。

 

 そもそも、今のパーティには不意打ち上等なルークがいるのにわざわざ悪党相手に真正面から戦う訳がないのだ。

 

 肝心のボス戦をドロップ品のレアアイテムで台無しにしたことに若干の申し訳なさを感じるもこの世は弱肉強食。RPG-7を入手されてせっかくGMの用意したボスが一撃……なんてのもまた日常茶飯事である。

 

 やってしまったものは仕方がないので、真っ黒こげで気絶しているハンサムソードと部下二名を横目に、彼らの処遇について話し合うことにした。

 

「後はこいつらをどうするかじゃ。悪党を懲らしめたなら、次は罪を償わせるのが鉄則じゃ」

「海賊達の所業を帝国の法に照らし合わせると……良くて懲役、悪くて極刑か」

「いやいや、流石に命まで奪うのはよくないよ。牢屋もないし。でも街の人が納得するようにしないといけないしな……」

「あ。だったら俺、良い落とし前のつけ方知ってますよ」

「落とし前って言い方がもう物騒極まりないわね」

 

 かくかくしかじか。

 

「――成程、確かにそれは必要じゃな。でもそれだけじゃパンチが足りんのう」

「じゃあ人のためになることをやらせればいいんでち。例えば――」

 

 

 

 

 

 

――次にハンサムソードの目が覚めた時、彼の視界に広がっていたのは大掃除の時間であった。

 

「えーと、机が二十、椅子が八十。貴金属の類はざっと二十万ゴールド以上。武器防具も中古でまとめ売りすれば二束三文にはなるかな」

「この箪笥はどうする?」

「ああ、重たい家具はマッスルを呼んで運ばせるから後回しでいいよ」

 

 海賊本部の物資リストを見ながら、緑一色な女が指示を出し、それに応じて人種種族もバラバラな者達が動いている。

 アジトの中を見知らぬ連中が行ったり来たりしながら、置かれていた物を荷台に乗せたり背負ったりしながら持ち去っていく。

 

 一人が部屋を去ったかと思えば、別の人間が入ってくる。

 

 そうして誰かがアジトを出入りする度に、家具や武具といった家財はどんどん減っていく。

 

 そんな光景に白黒させていると、ローズマリーはハンサムソードが目覚めたことに気が付いた。

 

「あ、目が覚めたみたい」

「あんたら……何してやがる?」

「戦利品の押収?それとも差し押さえ?まあなんでもいいや。ここにあるもの全部貰っていこうかと。町から略奪したものは還元するとして、それ以外の物はこっちで有効活用しようって決まりまして」

 

 宇宙海賊に下されたお仕置きは財産の没収。

 武器、設備、食料品に至るまで一切合切、全ての物資を街に寄付させるという、夜逃げした債務者に課すような判決が下された。

 

「そんなことしたらもう仕事できねえよ!」

「え、何言ってるの?海賊家業はもうする必要ないんだよ?」

「わかってるよ!!現在進行形で身柄拘束されてるからな俺達!」

「ああそうそう、君達には償いとしてこれから12年間ボランティア団体として活動してもらうから」

「嘘、家財没収の上無賃労働!?鬼なの!?悪魔なの!?」

「ははは、こんな美少女所帯が悪魔の巣窟な訳ないでしょ。もっとおぞましいなにかだよ」

「ルーク君?」

「命を取らないなんて天使のようなお方の集まりですよハグレ王国は」

 

 自分たち以上に外道な真似をするハグレ王国に海賊親分は恐れおののく。うっかり口を滑らせたルークにも女性陣の白く冷たい視線が突き刺さる。特にラージュ姉妹からの視線が痛い痛い。

 

 だが、彼らとしてはこれでも相当に温い罰なのだ。

 暗殺を企てれば一人ずつ殺し、戦争を仕掛けた者には首を投石器で投げ飛ばすような刑罰を行う王国にとって、命をとらないだけでめちゃくちゃ減刑されている。尚、上記の文章はハグレ王国鉄板の弄りネタでありそれ以上の意味はないことを明記しておく。

 

「まあ落とし前の話は置いといてだ。俺としてはこの金庫だ。中々のおたからが入ってると見たけど開けられねえ。暗証番号知ってるのお前だけだろ?」

 

 そう言ってルークが指さした先にある金庫を見て、よりにもよってそれに目をつけられたことにハンサムソードは分かりやすく顔色を変えた。そりゃ大事に金庫にしまってるものは真っ先に差し押さえ対象だ。

 

「げっ、そいつだけは勘弁してくれ……!!」

「開けないと刑罰が宇宙紐無しバンジーに変わるよ?」

「1%の生存確率もねえじゃねえか!」

 

 金庫の中身が気になって仕方がないルークはハンサムソードへの落とし前をユーモアに溢れたほぼほぼ極刑な内容に変えることををチラつかせる。汚い流石亜侠汚い。

 残念ながら命を握られているこの状況で口を閉じていられるほど、ハンサムソードは覚悟が決まってはいなかった。

 

「い、言う言う!8036だ!!」

「暗証番号までハンサムかよ……。お、開いた開いた」

 

 ルークはいい加減聞き飽きたフレーズに辟易しつつ、言われた番号を打ち込む。

 すると軽快な電子音と共に重たい扉が開き、中から出てきたのは錆びに錆びた金属の筒だった。

 

「え?なにこれ?」

「ふーむ、随分と古ぼけておるのう。なんじゃ、このガラクタは?」

「ガラクタじゃねえ!そいつは伝説の古代文明、カロナダイムの遺産だ!列車を乗っ取ったのも、元はと言えばそれを直せる技師が欲しかったんだよ」

「な、なんじゃと!!」

 

 ハンサムソードが出した、カロナダイムという名称。

 ハグレ王国の面々には馴染みのない名前だが、宇宙人であるドリントルには聞き覚えがあるもので、驚愕の色を現した。

 

「知ってるのかい?」

「うむ。それは昔、極めて高度な科学技術を以って栄えた惑星があった。その技術力の高さは星の天候なんぞちょちょいのちょいで操作できるほどじゃった」

「ですが、その高度な文明が逆に星の環境を荒らしてしまい、遂には人が住めない環境になってしまったのです」

「生き残った住民たちは偉大なる賢者の導きによって新天地を求めて宇宙の旅に出た。後には砂漠に鉄の残骸が聳え立つだけの星が残った……。その星の名こそ、カロナダイムというわけじゃ」

 

 宇宙では有名な伝説を語るドリントルを、ユーフォニアが補足していく。忘れてなんかいませんよ?

 

「へー」

「じゃあこれはその文明が遺したおたからってワケか?なーんだめっちゃいいものあるじゃねえか」

「瞬く間に手のひら返してるじゃないの」

 

 一転して好奇心に満ちた目で金属筒を見るルークの様子を見て、まるで子供みたいだなとミアラージュは思った。

 

「それで、一体どんなおたからなんでち?」

「そこまでは俺たちもわからねえ。だが鑑定士の話だと、もしかしたらかのトンデモ兵器の一つ、星を切り裂く剣かもしれねえってな」

「何ッ、かの魔剣がか!?」

「え、剣なのこれ?」

 

 説明を聞いて、さっきよりも3割増しでドリントルが驚くが、ハグレ王国的にはこれが剣でございと言われてもピンとこない。

 だが丁度両手で持てるぐらいの長さの金属の筒は、何かが外れたような形跡もある。こうしてみれば確かに剣の柄にも見えなくはない。

 

「星を切り裂くって、いくらなんでも大袈裟な」

「というか、そんなスーパーウェポン作れるのに滅びたの?」

「無論、滅びに立ち向かうために技術多くのハイアイテムが作られた」

「結果、星一つは軽く滅ぼせる兵器がぽこじゃか出来上がった。ってか?」

「お、鋭いのお主。その通り、自分たちが作った救世主は滅びをもたらす災厄にもなりかねなかった。仕方なく凍結された兵器たちは、文明の崩壊と共に宇宙各地に散らばり、今もなお眠り続けていると云われておる」

「そうだ。浪漫ある話じゃねえか」

 

 諸行無常盛者必衰。

 形あるものがいずれ崩れゆくのは世の理であるが、ただ受け入れられるものでもない。

 滅びに少しでも抗おうとして、それでも滅亡した。

 そんなよくあるお話こそ、宇宙史に名を残した古代文明伝説の結末だった。

 

「随分詳しいね?」

「ドリンピア星を含む銀河連合ではメジャーな神話じゃからな。それら題材にした映画もいっぱい出ておってな、最早銀河に知らぬ者は居らぬ超大作じゃ! まあ、あくまで伝説なのじゃが」

「二千年以上も前の話ですからな。実在していたとは言え、幾らかの誇張は入っておられるかと」

「ん?実在はしていたのか」

「ああ、それは確定事項ですね。そう言った文明があったという記録は各地で散見されております。実際に文明があったであろう惑星の場所も既に判明しております」

 

 そう、カロナダイム文明は確かにあった。

 星の半分を覆う砂漠に、人の名前が刻まれたオベリスクが万を超える数突き刺さる光景。

 調査団が降り立った先にみたその姿こそ、確かに文明のあった証なのだというのが考古学会での通説であった。

 

「それに、カロナダイムの血を引く民族は確認されております。殆どが家系図に記されていた程度のものですが、中には文明由来となる技術を持った星もあります。……まあこれ以上の歴史語りは長くなるのでこの辺りで」

「そうだね。暇を持て余した子供たちが遊び始めてるよ」

 

「ぶおんぶおんっ!」

「がきんがきんっ!」

 

 歴史話に興味を無くしたデーリッチとヅッチーは木の棒でチャンバラを始めていた。

 

「それじゃあ、こいつは貰っていくぜ」

「(´・ω・`)そんなー」

 

 結局、おたから(仮)は持っていかれるのだった。

 浪漫を理解するもの同士だからこそ、妥協は無いのである。

 

「はーいそろそろ切り上げるよー!」

「ぶおんっ!」

「グワーッ!ヤ・ラ・レ・ター!」

 

 ローズマリーの呼びかけにデーリッチはエア斬撃で返事をする。

 丁度その先にいたルークは律儀にやられる。

 

「副官を倒すとは流石!しかし私がルーク君の仇を取ってあげますわ!光のジェ〇イよかかってきなさい!」

「ずばーっ!」

「やられましたわーっ!」

 

 ヘルラージュもヅッチーにやられた。君達仲いいね。

 

「こらー!いい加減やめなさーい!」

『はーい』

 

 悪ふざけがすぎたのでお姉ちゃんのお叱りを受けてしまった四人。

 

「全く、しょうがないんだから」 

「かんらかんら。仲睦まじきは良い事じゃ。これなら退屈せんで済みそうじゃの」

「ははは、確かに。王国は賑やかさだけなら事欠かないから」

「隊長の言う通り、あっという間に打ち解けられるさ。勿論ミアさんもね」

 

 子どものはしゃぎっぷりにやれやれと呆れるミアラージュと、にぎやかな王国暮らしへの期待で胸を膨らませるドリントル。

 

 お互い差はあれどまだまだ王国の新人であり、そんな二人をローズマリーとジュリアの大人組が誇りをもって迎え入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

『ひとりじめ』

 

 これはドリントルが仲間になってすぐの事である。

 

 

 宇宙人であることを活かしたゲーム施設。その名をMUFOキャッチャー!決してUFOキャッチャーではない。

 

 UFO型アームを動かし、景品をビームで吸い上げてキャッチするという癖になること間違いなしのゲーム装置をプレイできる施設である!繰り返すが断じてUFOキャッチャーではない。

 

 人造人間工房と提携したことで王国民のぬいぐるみが景品となったMFOキャッチャーは、ハグレ王国の特色をいかんなく発揮しており、見たことがあるようでないその奇抜さと相まって一日と待たずに大人気!

 

 お目当てのぬいぐるみをゲットするべく、多くの客が挑み、勝利し、あるいは敗北していく。

 

 行列がいるにも関わらず、居座って根こそぎ取ろうとした不届き者も現れたが、ハグレ警察の手であえなくしょっ引かれたのは余談である。

 

 まあそういう訳でMUFOキャッチャーは初日から大繁盛。しばらく話題は持ちきりなのは間違いなかった。

 

 さて、早速ハグレ王国にピッタリの店舗を提案したドリントルはというと……

 

「突撃、あの子のお部屋を見てみようのコーナー!」

「本日はヘルちんとミアさんだー!」

「突撃ー!」

「おおー!」

 

 エステル、ヤエ、雪乃の三人を伴ってラージュ姉妹の部屋に乗り込んでいた。

 

「はーい、いらっしゃーい♪」

「みんな、よく来てくれたわね」

 

 部屋の主であるラージュ姉妹が歓迎すると、四人は思い思いに座ってくつろぎ始める。

 

「いやー、新しい子が来たらこれよこれ!」

「ヘルちんの部屋も、ミアちゃんが来てから一緒にするために大部屋に変わったのよね」

「うむうむ、女子会というやつじゃな!」

 

 そう、これもまた親睦会だ。

 それも女子だけで集まり、みんなの前だと話せない内容なんかも話しちゃうタイプのやつだった。

 実のところ、一番わくわくしているのはミアラージュである。

 

「むむっ、このカーテンはヘルさんのものじゃありませんね!?」

「あら、そこに気が付くのね?それは私のチョイスよ」

「は、はい。ヘルさんのはピンクでしたから」

 

 はじめにおこなわれたのが、部屋模様の品評である。

 目ざとい雪乃が赤いフリルカーテンを見て即座にミアラージュのものだと看破する。

 姉妹で一緒の部屋を使うようになったことで、インテリアもまた姉妹の趣味が入り混じったものへと変わっていた。

 

「とはいえ、あんまり私の物は置いてないわよ。屋敷にいた頃は家具にはあんまりこだわらなかったから」

「これから一緒に選んでいくんだもんねー」

 

 ミアラージュは女の子が好むようなインテリアを見せられないことを残念がり、ヘルラージュは姉と一緒に買い物をするのだと嬉しそうに言った。

 

「お、ここに飾ってあったか~」

 

 エステルが目を付けたのは、箪笥の上の飾り棚。

 

 以前のヘルラージュの部屋にもあったそれの上には、秘密結社のナスビスーツを来たデーリッチとローズマリーのぬいぐるみが飾られており、その一段上にヘルラージュ自身のぬいぐるみが置かれ、右隣に相棒たるルークのぬいぐるみも座っている。

 そして、ヘルラージュの左隣には、他ならぬミアラージュのぬいぐるみが追加されていた。

 

「おおー、ミアさんがちゃんといる!」 

「ちょうど先日作ったばかりですわ」

「ふーむ。こうして飾られているのを見るとまた一味ちがうのう」

 

 見事な出来栄えに四人が感心する。 

 

「……あれ?そういやこのぬいぐるみは見たことがないのう」

「ルークさんのですか?」

「あ、それは……」

 

 ドリントルがルークの人形に目をつける。

 他の男性陣の人形とは違い、微妙な目つきの悪さまで再現されていることに職人のこだわりを感じるそれが、MUFOキャッチャーに卸された人形の中に存在していたかったことを思い出し、あることを口に出した。

 

「ふむ、レアものというわけじゃな?よければわらわにも一つくれぬかのう?」

 

 特に何か思い入れがあったわけではなく、単純に一個もなかったから欲しくなった程度の意味でヘルラージュに話を持ち掛けたのだが……

 

「――――え、嫌ですけど?」

「……!?」

 

 あっさりと拒絶される。

 

 普段の彼女からは想像もつかないような冷たい声に、その場にいた全員が凍り付いた。

 

「こら」

「あっ、ごめんなさい。申し訳ないのですがその提案は……」

「あ、うむ。別によいぞ。無理を言ったのはわらわじゃからのう」 

 

 ミアラージュに小突かれ、ヘルラージュは改めて礼儀正しく断った。

 ドリントルもあっさり引き下がったので、特に後に引っ張るような事態にはならなかった。

 ……が、ドリントルが三人を集めてひそひそと話し合う。

 無論、先ほどヘルラージュが見せた態度についてだ。

 

「なんじゃなんじゃあの対応は、冷たすぎてちょっと引いたぞ」

「私だって見たことないわよ。いつもの人畜無害みたいな顔が一瞬ガチの無表情だったわ」

「そういえば、ヘルさんの工房にお手伝いに行くことがあるんですけど、ルークさんのぬいぐるみ。一つもおいてないんですよぉ……」

「……デジマ?」

「なるほどのう……」

 

 独占欲ってこわい。

 あの姉にしてこの妹あり。

 いや、もしかしたら姉よりも恐ろしい妹なのだった。

 

 




人物紹介

〇ハンサムソード
ある意味原作よりもひどい目にあった人。
古代兵器とかいうロマンの塊を宝にするぐらいにはロマンに生きていた。
ざくアク屈指の名言を生み出したことで妙な愛され方をしている。

〇ドリントル
みんな大好きカレーのお姫さま。いやコーヒーのお姫様。
女子力の高まりを感じる……!!

〇ユーフォニア
ドリ姫の相槌役。忘れてなかったら今後も出てくるかもしれない。

次回はアルカナさんとのお話回。
ようやくここまで来たって感じですね。

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