ざくざくアクターズ・ウォーキング   作:名無ツ草

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3話目です。
宜しくお願いします。

ルーク
パッシブスキル
アウトローの生き様
近接攻撃に耐性。
HPとMPが毎ターン3%回復。

固有スキル
☆シャドウハイド 消費MP8% 消費TP20
隠密状態(狙われ率-50%、回避率+25%)
回避率は魔法回避率も上昇するので生存率が高い。
シーフとしての必須技能。持ってない盗賊のほうが多いとか言わない。

(2023/4/10 台詞周りを改稿)


その3.王国へようこそ

 ハグレ王国が誇る凶悪兵器、こたつカウンターの前に沈んだ秘密結社ヘルラージュ。

 戦闘が終了して間もなく、ルークは目を覚ました。

 

「ぐえ……」

「あ、起きたかい?」

 

 抉るような痛みを堪え、むくりと上半身を起こしてヘルラージュの姿を視界に収める。はむすけの姿は綺麗さっぱり見当たらなかった。

 

「あのげっ歯類は……逃げましたか。ったく、所詮は畜生か」

「メンバーはもうちょっと慎重に選んだほうがいいんじゃないかい?」

「そっちのように豊富なメンバーの当てがあるわけでも無いんですよ、こっちは」

 

 悪態をつくルークにローズマリーは苦笑する。

 

「ところで君、やっぱりそっちの方が素なんだね」

「あ~……ん、こうやってかしこまった言葉してればある程度は話聞いてもらえますからね。仕事口調ですよ」

「ル"ー"グぐ~ん"」

「へちょらないでください。あれを意識の外に置いていた私のミスです」

 

 泣きついてくるヘルラージュをあしらいつつ、視線を後ろに下がった王国に向ける。自分を撃破した張本人であるこたつドラゴンはドヤ顔を返してきた。

 こんなふざけたやつに……と非常に腹が立つが、そのせいで意識から外していた自分の判断ミスなので怒りを鎮める。

 

「『ふざけた奴ほど油断するな』……あの人からの教えを忘れていたのが敗因か」

「冷静に分析していても仕方ありません! 二人を引き戻すのに失敗してこれからどうすれば……」

「それなんだけど、二人とも王国に来ないかい? ほら、最初に言っていたじゃないか」

 

 じゃあ秘密結社はどうなるの、とヘルラージュが問う。元々、それが原因で始まった戦闘だ。負けた自分たちにうだうだと言う資格はないが、それについてはデーリッチが提案を出した。秘密結社は王国内でやればいい。小さな悪事から初めて立派な悪人を目指せばいいのだと。

 

(確かに、ヘルにはぴったりの道だな)

 

 どうせ大した悪事もできないヘタレだ。これぐらいゆるゆるな感じのほうがヘルも無理に頭を悩ませずに済むだろうし、何よりデーリッチ達と活動をしていた時は本当に楽しそうにしていた。それが一番いい。ルークは一人そう思いつつ、同時に自分の身の振り方についても考えていた。

 勿論、ヘルラージュが反対しないのならば自分も受け入れるつもりではある。しかし堅気ではない自分は彼女の様にすんなりとはいかないだろうとも考えていた。

 

 思案しているうちに、ヘルラージュはデーリッチの提案を受け入れてハグレ王国に加わることを決める。

 

「……ルーク君はどうしますの?」

 

 ヘルは自分の相方を見る。それなりに長い付き合い。世渡りの方法を教えてくれて、秘密結社の設立に立ち合って、ここまで付き合ってくれた。そんな彼の意思を尊重するために。

 

「あなたが行くならついていきますよ。ここに愛着があるわけでもありませんので」

「秘密結社はどうでもいいんですの!?」

「次元の塔だよ! 全く、手がかかる……」

 

 肩をすくめたルークはデーリッチ達に向き直り、改まった表情で口を開く。

 この小さな王様に、逸れ者なれど悪には遠い者達に、最低限自分のことを伝えておくのが筋であった。

 

「あらかじめ言っておきましょう。私はヘルのような底抜けの善人ってわけじゃありません。むしろ法を犯したことは数えきれない……盗みや殺しだってやってきた悪党だ。そんな俺を、仲間に迎え入れるのか?」

「もちろん!」

 

 即答だった。

 ルークは目を丸くした。確かにハグレは大なり小なり鼻つまみ者ではある。だが、それでも自分のような札付きまで二つ返事で受け入れるなど、人を信じるにもほどがあるだろう。

 

「ルーク君は良いひとでち。話したのはちょっとでも、ヘルちんのことを大事に思っているのが十分伝わってきたでちよ」

「取り繕っているとは考えないのですか?」

「そんなことできるならそもそもヘルちんと一緒にいるわけないでち。多分だけど、ヘルちんはそういう勘だけは立派でちからね」

「まあ、ここにいるのは全員訳アリみたいなものだしね。今更一人二人増えたところで変わらないさ」

 

 手を差し伸べてくるデーリッチ。

 それを見てルークの脳裏にかつての光景が去来する。

 

 幼い頃、街を出て一旗揚げようとするあの男についていこうとした。子供たちの人気者だった彼を、夜中の馬車までこっそりと追いかけてきた自分を見た、獰猛だが愛嬌のある笑顔を。

 

――なんだどうしようもねえ悪ガキだな。いい度胸だ、だったら俺についてきな! 

 

――俺はチームのリーダーだからな。相手が信用できるかどうかは、見てわかるさ。

 

「……そうですか。そうだよなぁ」

 

 目の前にいる彼女と、今は亡き彼は全く異なる部類の人間だ。

 背丈も、性別も、性格もなにもかもが違う。

 だが、それでも。

 その差し伸べられた手が、ルークにはとても大きなものに見えていた。

 

(悪くねえな)

 

 ルークは笑みを返し、ヘルラージュと同様にその小さな(大きな)手を取る。

 

「それじゃあ改めて、……俺はルーク。《おたから使い(ガジェットマスター)》のルーク。小細工ぐらいしか取り得はないが、ヘルラージュ共々、よろしく頼む」

「こちらこそ、よろしくでち!」

 

 

――ヘルラージュとルークが正式に王国のメンバーとして加わりました。

 いつでも、パーティ編成できるようになりました。

 

 

「それじゃ、王国に帰るでち!」

 

 

 

 ◇

 

 

 

 王国に戻ったデーリッチ達は、休息をとると同時に新しい仲間へ拠点の案内をして回っていた。談話室、食堂、応接間……そして今はハグレ王国の活動方針を決定する大事な会議室を案内している最中だ。

 

「ここが会議室でち! 王国の皆で集まって会議をするんでち」

「まぁ、広いわね。これだけ広い部屋で秘密結社の会議をするなんてドキドキしますわ」

「既に秘密結社が使用すること決まってるー!?」

 

 デーリッチは主にヘルラージュの案内をしており、ルークの案内はローズマリーが受け持っていた。ルークは拠点である遺跡のあちらこちらを興味深く観察している。

 

「なるほど、昔の遺跡をそのまま使ってるのか。お宝とかは無いのかい?」

「特にそう言ったものは……、使っているのは表面だけですし、地下は魔物がいるので塞いでいますので」

「へえ、地下ね。一度潜ってみたいものだ」

 

 拠点の地下が遺跡だという発言にルークは目を光らせる。

 職業冒険者、その中でも特に遺跡探索を請け負う者として、遺跡と聞いたら財宝を探しに向かいたくなるものだ。それが誰も足を踏み入れたことのない場所ならば猶更である。

 

「特に何も無かったはずだけどね」

「こういうのは隠し部屋とかあるもんですよ。一度連れて行ってもらいたいですね」

 

 ルークは指を丸く作って金貨が欲しいとアピールをする。

 

「いたいた。マリー、こっちに大明神来なかった?」

「いや、来てないけど」

「どこに行ったのやら……新入りに迷惑かけてなきゃいいんだけど」

「自分のことか?」

「いや、女の人のほうだけど……あなたも新入り?」

「彼も新しく加わった一人だよ。君と同じこっち(現地)側の人間だ」

 

 二人に声をかけてきたピンク色の髪で召喚士の服装をした十代後半*1の女性、エステルはがローズマリーを見かけて話しかけた。

 エステルはかなづち大明神を探していたらしく*2、図体に似合わずすばしっこいその姿を途中で見失ったのでここまでやってきた形だ。

 

「よろしく、私はエステル。召喚士をやっているわ」

「おう、俺はルーク。《おたから使い》のルークだ」

 

 新顔に対して職業と共に名乗るエステル。

 溌溂とした彼女に、ルークもまた気さくげな口調で返す。

 そうして互いに挨拶を終えると、エステルはむむ、と眉をひそめた。

 

「……何かひっかかるわね」

「どうしたんだい?」

「ああいや、大したこと無いのよ。ただ彼の顔、何となく見覚えがある感じがするっていうか」

 

 う~ん、と記憶の棚を漁りだすエステル。

 それを見ながらルークは素知らぬ顔で口を開いた。

 

「……商店街のピンクが召喚士って、どういう風の吹き回しだ?」

「エステルのことを知ってるのか?」

「カエル商店街*3のガキ大将だろ? よくエルヴィスの旦那のダボラを真に受けて、アホな真似に明け暮れた悪童どものリーダー格」

「その時の話はやめろ……って、あー! あーっ!!」

「ひっ!」

 

 しれっとエステルの幼少期について語るルーク。

 それを聞いてようやく合点がいったエステルが叫び、ヘルラージュが悲鳴を上げた。

 

「ルーク! ガラクタ集めと工作好きのルークか! いやー、忘れてたわ。ごめんごめん」

「やっぱり忘れてたな。こっちはキャラ濃すぎて忘れたくても忘れられねえってのによ」

「まあアンタ地味だったし? しかしまさかここに来るとはねえ、帝都で見かけないからもう死んだかと思ってたわよ」

「お生憎様、旦那と一緒に冒険者やってましたよっと」

「知り合いだったのかい?」

 

 一転して親しげにルークとエステルは軽口をたたき合い、その様子にローズマリーは疑問を飛ばした。

 

「まあね。別にそこまで親しいわけじゃなかったけど」

「こいつがガキ大将だった時の取り巻きだったんですよ。昔は皆で近所の旦那の武勇伝を聞いてました」

「いやー、それにしても懐かしい顔だわ! しかもなんだよ、その洒落た恰好。昔はは古着を着まわしてたくせに」

「そりゃお前も同じだったろがよ。まあ、色々あったんだよ」

 

 ルークの礼服を見て、エステルは背伸びした子供をからかうように突っかかる。

 かつて帝都に住んでいた時のルークであれば、おおよそ無縁と言えるような服装だ。

 

「ヘルに作ってもらったんだよ。今は秘密結社の副リーダーでね、つまり相方の趣味みたいなものだよ」

「秘密結社? 何でまた?」

「詳細は省くが、前のチームが解散した。その後にそこの破廉恥とパーティを組んだら何故か秘密結社を名乗り出した」

「はっ、破廉恥!? 誰ですのそれは!?」

「鏡を見てきてくればわかりますよ」

 

 口調を丁寧に戻してルークはエステルに経緯を簡潔に語る。

 唐突に罵倒されたことでヘルラージュは突っかかるが、ルークは適当にあしらった。

 

「ところで、エステルさんはルーク君とはお知り合いなんですね?」

「ただの昔馴染みよ。というかパーティ組んでてこいつの過去を知らないの?」

「まあ、特に話す事でもなかったし、お互いそういうのは気にしなかったからな」

「へえ、過去にはこだわらないってやつ? 漫画みたいじゃない」

「そんなカッコいいものでもないさ」

 

 ねえ? と苦笑するルークにそうね、と返すヘルラージュ。

 それを見たエステルの、

 

「やっぱり漫画じゃねえの」

 

 という言葉にその部屋にいた全員が同意した。

 

 

 

 

 

 

 秘密結社の二人にとっては記念すべき初参加となる王国会議。

 ハグレ王国の冒険が一区切りつく度に開かれ、それぞれの活動報告を持ってくるのだが、新人が加入する度に恒例となっているのが国民からの店舗提案だ。

 

 これは秘密結社にも事前に伝えられており、彼女たちも自分の案を用意していた。

 

 まずヘルラージュが早速自信満々に名乗りを上げ、秘密結社の名にふさわしい悪の店舗を提案する。

 

 その名もなんと人造人間工房。

 

 布と綿で構成された不死身の体を持つ人造人間は、その愛嬌から多くの人が買い求めて大きな利益を王国にもたらすという壮大な計画をヘルラージュはローズマリーに話す。

 あまりに衝撃的な内容にローズマリーが制止するも時すでに遅く、王国民のクローン体である人造人間も何体か製造済み。もはや彼女を止める手立てはない……!

 

「まあぬいぐるみショップなんですがね」

 

 というのはヘルラージュのボケで、実際はみんなを象ったぬいぐるみを売るファンシーショップである。

 

 悪乗り大好きな王国民の茶番により収拾がつかなくなり始めたクローン騒動はローズマリーが店舗を承認することで強引に打ち切った。実際悪くない案なので、特に否定する理由もなかった。

 

 そんなこんなで次はルークの番になる。

 

 ヘルラージュは持ち前の裁縫技術によってぬいぐるみを大量に作成し、これを商品にするという本人の持ち味を生かした提案だったわけだが、はたして彼は何を提案してくるのかとローズマリーは密かにツッコミのスタンバイをする。悲しきかな、彼女は既にボケへの備えを無意識に行っていた。

 

「挙手しておいて何ですが、固定の店って訳ではないんですよね。自分の場合」

「それって何らかのサービスの提案かな? 心配しなくてもうちはそういう形も歓迎しているよ」

 

 ルークの前置きにローズマリーがフォローを入れる。

 皆がそれぞれ立派な店舗を提案しているが、エステルが体育グラウンドを提案したように収入に繋がらないような設備も充分歓迎しており、もっと言えば三つ首犬のベロベロスなんかは自分の能力向上のためのトレーニングを提案していたりする。

 

 だからあまり型にはまったような提案でなくてよいとローズマリーが言うと、ルークは少し安堵してから話を切り出した。

 

「ありがとうございます。では本題に入りますと、素材の売買をしようかと思いまして」

「素材かい?」

「ええ、元々宝を売り歩いていた経験を活かしてみようと思いまして。素材の買取自体はその辺の店でもできますが、販売となると少ないじゃないですか」

「確かにそうだね。大体はダンジョンに潜れば手に入るから買い急ぐものでもないしね」

「ですが、下級のアイテムを求めてレベルの低いダンジョンにわざわざ行くというのも苦行です。主にクェイク*4とかクェイクとかクェイクとか」

「やけに具体的だなあ……。まあ確かにダンジョン探索は鍛錬も兼ねてるから弱い魔物のいる場所を巡るのは効率が悪いよね」

 

 おおよそ私怨が混ざった冒険者の世知辛い事情を吐き出すルークだが、ローズマリーはそれに一定の理解を示す。

 レアアイテムが欲しいからと言って、弱い魔物を延々と借りながら探索をするのはただの徒労だからだ。

 それに、冒険者が必要とする上位素材はギルドでも中々出回らない。

 その点ハグレ王国はキーオブパンドラという反則アイテムによってダンジョンへと潜りたい放題。いずれ素材を持て余すのは自明の理。ならばそれをより高く売り、レアアイテムを持ってこれるという活用しない手は無い。

 

「という訳でして、下級アイテム取り扱いを中心にした行商人でも始めようかと。主に冒険者中心の商売になるので足での商売になりますが、そのあたりは交易に便乗することで経費は抑えられる筈です」

「理屈は通ってるし、私としてはいいんじゃないかな。ただ……」

「う~ん、もう一押し欲しいところでちね。デーリッチ達には何かいいことあるんでちか?」

 

 ローズマリーは納得した様子だが、国王は難色を示している。

 ハグレ王国は冒険者パーティという目線で見れば高レベル帯のため、今の段階では恩恵が薄い。

 ルークは予想通りと言った風に次の案を提出する。

 

「それについては心配なく。私が相場を見て需要の高い素材を他よりも高値で買い取ります。高レベルの素材を欲しがる冒険者は星の数ほどいますから問題はありません。それとレベルは下がりますがレアアイテムも販売しますよ。こちらは入荷すればになるので、基本的には持て余した素材を高く引き取ってもらえると考えてください」

「なぬっ! レアアイテムでちか!?」

「ええ、取り逃した秘宝とか揃えたいスキル書とかあるんじゃないですか?」

「当然でち! 早速始めてほしいでち!」

(うまいことやるなあ……)

 

 蒐集家としての性をくすぐられたデーリッチは店舗の最終案をせがみ始める。

 

 拠点に施設を追加します。

 現在のダンジョンレベル(基準は次元の塔)よりも下級の素材を取り扱う施設です。

 また現在のレベルの素材をランダムで高く買い取ります。

 稀にレアアイテムや秘宝が入荷します。

 また、交易の収入を増加させ他の店舗よりも生産力が高いです。

 

 ただし、店舗のブースト対象にはなりません。

 

 ルークの提案。

 「素材販売」

 初期投資に20000G必要です。

 提案を採用しますか?

 

「はいでち!」

 

 デーリッチが勢いよく承認したことで提案は通され、ルークに20000Gが融資される。

 

「ありがとう。期待を裏切らない働きを約束しましょう。そして売り上げを高くするためにも、是非探索を頑張ってくださいよ」

 

 発言の裏でルークは安堵した。

 正直な話、ルークが出した提案はモグリの行商人でしかなく、これを却下されたら雑用ぐらいしかやることがない。実際一度デーリッチに渋られたので、色々と利点をひねり出して何とか了承を得たのが実情である。

 

「ふぉっふぉっふぉっ、いいんでちか? あんまり頑張りすぎると買取が無くなっちゃうかもしれないでちよ?」

「そういうのはダンジョンの女神様がお見通しだろうから、否応にでも頼ってくるだろうさ」

「嫌な期待のされ方でちね……」

 

 拠点に素材取引所がオープンしました!

 ルークに話しかけることでショップを開けます。

 

「ふう……」

「どうしたんですかローズマリーさん。そんなため息ついて」

「いやあ。特に変なボケとかなく終わったなあって」

「今まで何を見せられてきたんですか……?」

 

 店舗提案の度に数々のボケを投げつけられてきたことを思い出し、遠い目で語るローズマリーに、厄介事には飽きなさそうだとルークは思った。

 

 

 

 ◇

 

 

 

『義賊伝説』

 

 拠点の談話室。

 ルークは仲間たちとテーブルを囲んで食事をとりながら、自分の身の上話に興じていた。

 

「へえ、ハグレの冒険家についていってトレジャーハンターねえ」

「さぞかし儲かったんじゃないの~?」

 

 誰が意図して発言したわけでもない「王国に来るまで何やってたの?」から始まった過去語り。

 ルークの行動力に感心するニワカマッスルと対照的に、稼ぎについて尋ねてくるのは有翼人のハピコだ。金を好む種族らしく荒稼ぎの話題に食いついてきた彼女に対し、ルークは肩を竦めてみせた。

 

「だったら良かったんですがね。結局やってたのは貴族や金貸しの金庫に襲撃をかけるのと酒場の依頼が半々で、遺跡探索とかはそこまで。しかも報酬はほとんど準備と後始末に消えて見入りなんて雀の涙。一人になってからの方が安定していたとは思いますよ」

 

 しかし、あの頃のほうが充実していたのだと彼の表情は語っていた。

 何でも無いように語られる物騒な武勇伝に、個性派な面々も少々驚いたようで、ルークは内心で笑みを浮かべた。

 ヘルラージュも過去を尋ねはしなかったが、実際には興味があったようで、彼の話す内容に一喜一憂の反応を見せている。

 

「お前中々破天荒なことやってんだな……」

「それも旦那ってやつと一緒にかい?」

「ええ、エルヴィスの旦那をリーダーに、パーティを組んで大陸を跨いだものです」

「ん? エルヴィスだって……?」

 

 その名前に反応したのは次元の塔でルークと打ち合ったジュリアである。

 彼女は傭兵として、ルークの出した名前に聞き覚えがあったようだ。

 

「もしかして、《夜明けのトロピカル.com》か?」

「おや、私達を知っているのですか?」

「当時は傭兵の間でも君達の話題で持ち切りだったからね。……そうか、君があの《おたから使い(ガジェットマスター)》か」

「なんですかいジュリアさん、そのヘンテコな名前は?」

(ニワカマッスルも十分ヘンテコな名前だと思うけどな……)

 

 ジュリアの口からでた組織名と思わしき言葉をマッスルが訝しむ。

 

「ああ、エルヴィス・大徳寺というハグレを中心とした義賊団だ。主に悪徳貴族から金品を奪い、市民にばら撒いていたことで3、4年前まで有名だった」

「あの人は《亜侠》って名乗ってましたがね。何でも以前の世界でも同じようにパーティ組んで暴れてたようでさ。俺たちもそれに(あやか)って亜侠と名乗ってるんだ」

「じゃあその《おたから使い》ってのは?」

「義賊団のメンバーはそれぞれに通り名がついていたんだ。《ハグレ軍曹》、《青空オレンジ》、《ナギナタボーイ》、《波濤戦士》、そして《おたから使い》。奇怪なマジックアイテムや秘宝を自在に使いこなす様子からそんな風に呼ばれていたんだ」

「マジックアイテムって言うと……ああ、あの銃弾か?」

「ははは、あれは正直言って恐ろしかったですよ。死神に愛された弾丸なんてものがあるとは。他にもああいう危ない物持ってるんですか?」

 

 おたからについてニワカマッスルが次元の塔でルークが使用した《死の弾丸》を話例に挙げると、その恐ろしい威力を身をもって知ったかなづち大明神は身を震わせる。

 

「極端なほうですけどね。他にも宙を自在に舞える糸とかどこでも使える高級レストランの無料券なんてありましたね」

「なにそれうらやま!」

「まあ何故か6分の1で汚職事件扱いされてしょっぴかれるんですが」

「こえー!?」

 

 お食事券の内容にデーリッチが目を輝かせるが、確率で旨い飯ではなく臭い飯を食いかねないというとんでもない危険性に思わず叫んだ。

 

「そんなのが旦那の世界にはゴロゴロ転がっていたらしくてですね。ひっくるめて《おたから》って呼ばれてたようです。ついでに言えば、この銃も彼から貰ったものですよ」

 

 そう言って取り出したのは戦闘で使用した拳銃、《S&W36チーフ・スペシャル》

 ルークはその引金に指をひっかけ、クルクルと器用に回してみせる。

 

「本人は近接型だから無用の長物だと言って押し付けてきたんですよね。まあ、肝心の弾丸が手に入らないので使う機会は殆どないけど」

「そんな小さいのが銃なんだろ? いっぺん調べてみたいものだね」

「じゃあ後で一つ渡しますよ。三つも押し付けられて困ってたんだよね」

 

 ジーナが拳銃に興味を抱いて、ルークはそれを承諾する。使い道の限られる武器ならば、武器の専門家に預けたほうがいいだろうと思ったのだ。

 もしかしたら銃弾を作ってくれるかもしれない。そんな淡い期待も彼にはあった。

 

「でもさでもさ、そんなすげえ奴とパーティ組んでたのにルークっちはなんで今秘密結社なんてやってんだ?」

「なんだか雑に扱われましたわ!?」

「ああ、そのことですか」

 

 妖精王国の女王であり、現在はハグレ王国に留学しているイカヅチ妖精のヅッチーが何の気なしに発した言葉にヘルラージュはショックを受ける。

 

 そんなリーダーの様子を気にも留めず、ルークはチームを解散した理由について口にした。

 

「簡単な話さ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いなくなっちまったんですよ、エルヴィスの旦那。遺跡の割れ目に落っこちてそれっきり。リーダーを失った俺たちは活動が纏まらず、そのまま解散したんだ」

 

 

 一瞬、周囲が静まり返った。

 

 リーダーの死という衝撃的な内容に、一同は驚き、そして口を噤んだ。

 

「……すまねえ、悪いこと聞いちまったか?」

「いえ、喧嘩して別れたわけでもないですから。それがチームの寿命だったんだと思ってますよ。どうせチンピラ冒険者の集まりだ。まとめ役がいなければ自然に分解するのは当然の話さ」

 

 藪蛇だったかと気遣うヅッチーに、ルークは気にしてないように振る舞う。

 だが、先ほどの発言の時。ルークの目には悲しみと後悔の色が浮かんだことを、ヘルラージュは見ていた。

 

「まあそんなわけでして、その後は一人で冒険者をしているうちにヘルと出会ったわけなんですね。それじゃあ私の話はこれぐらいにしよう。皆の食事も冷めてるんじゃないないか?」

「おっといけねえ!」

 

 食事を口に運ぶことすら忘れて聞き入っていたことに皆が気が付き、慌てて食器の中身を片付けに掛かるのを見て、ルークはさりげなく談話室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 拠点内の通路。

 

 ルークは一人、どこともなく歩いていく。

 どうやら王国民の殆どがあの談話室にいたようで、ルークは自身の靴音がやけに響くのを耳に感じていた。

 

 ――立ち止まって、深くため息をつく。

 

 どうやら思いのほか自分でも堪えているらしい。

 すぐに馴染んだヘルラージュの顔を汚すまいと、彼らと打ち解けるべく慣れない昔話をしたが、どうやらほんの少し興じすぎたようだ。

 

 我ながららしくない。

 少しぶらつけば気分も戻るだろうと、散策に歩きだそうとしたその時。

 離れた後方から声がかけられた。

 

「ルーク君」

 

 ヘルラージュに呼び止められ、ルークは振り向くことなく応えた。

 

「どうしましたか」

「過去を聞かなかったから知りませんでしたが、そういうことでしたのね」

「……何がですか?」

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「……」

「やっぱり、未練が残っているんですか?」

 

 ルークは観念したように溜息をつき、そして口を開いた。

 

「……別にヘルをリーダーと認めてないわけじゃないさ。むしろ俺には勿体ないぐらいだ。……ただまあ、まだ少し割り切れていないだけなんだよ」

 

 そうやって語る彼の顔は見えなかったが、どんな顔だったかなど想像に難くない。

 

「ルーク君……」

「あの人には俺の命を預けていたからなあ、そう簡単にリーダーって呼べないだけさ。そうしたら、あの人と同じになるんじゃないかって。……だからさ、あの時で俺が《死の弾丸》を使っただろ。そこで初めて呼んだのはそういう事なんだ」

「え、それって……」

 

 ヘルラージュの期待するような反応に、ルークは背を向けたまま答える。さっきまでのセンチメントから、くるりと飄々とした口調で。

 

「とは言ったものの、今のあなたはどちらかと言うと私が面倒見ないといけないようですから。それはまたの機会ということで」

「それって頼りないってことですの!?」

 

 違いますか? と笑って歩き始めるルーク。

 待ちなさい! とヘルラージュが追いかける。

 

 秘密結社ヘルラージュ。

 彼女たちのハグレ王国での活動はまだまだ始まったばかりである。

*1
17歳

*2
宿屋イベント「世代交代」参照

*3
ざくアクファンブック参照

*4
レア魔法書の代表格。これを人数分求めて次元の塔一層を周回するプレイヤーは数知れず




あってもなくても困らないけどあったほうがいい感じの店舗。
本当に役立つのは後半になってからかもしれない。

ルークは現地人ですがハグレの影響を多分に受けています。
なんで実質ハーフみたいなものです。
過去話はなんか書いていたらやけに文字数が膨らんだなあというのが感想です。
というよりサタスペやってない人には殆ど伝わらないのではないだろうか。

次は秘密結社と交代して別キャラの話。
召喚士についてフォーカスを当てようかと思います。
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