ざくざくアクターズ・ウォーキング   作:名無ツ草

68 / 89
感想・ここすき・お気に入り登録ありがとうございます。
皆さんのおかげで10000UAを突破いたしました。
特別編を執筆開始しながら、本編更新でございます。


その66.帝都動乱・三日目(4)

 

 大きくなり始めた街の喧噪に、アプリコの耳がピクリと動く。

 

「ふむ……クックルが暴れ出したようですな」

「少々予定が早まったが、彼にはあのままクックルを暴れさせてもらうとしよう」

 

 ジェスターが冷徹に告げる。

 彼はマクスウェルがクックルを制御できなくなったことを把握していた。

 というよりは、最初から暴走するだろうという算段を立てていた、というのが正しいが。

 いずれにせよ、マクスウェルの窮地に救援を出すつもりはないようだ。

 

「それではあの小僧が死にますぞ?」

「そうだな。だがそれはクックルを止める理由にはならない。マクスウェルに必要なことは、アルカナを戦いに引っ張り出させ、その手札を一枚でも多く暴かせること。それには命の一つ二つでは到底足りないからな。……まあ、それでも彼が無事逃げ延びたのなら、回収してやるとも」

 

 ザナルの疑問に悠然とした答えが返される。

 それ即ち、マクスウェルを捨て駒にするのと同義である。

 非道な宣告であるが、ザナルは得心が行ったと頷く。

 

 そもそも、召喚人解放戦線が掲げているのは『召喚によって虐げられた者たちの解放』。

 召喚士によってその地位を奪われたザナルも現地人だが賛同する資格がある。だがマクスウェルは元召喚士だ。組織が肥大化しハグレたちの意識も高まりつつある今、召喚士協会の経歴を持つ者を幹部に据えておくのは内部不和を招きかねない。そもそもマクスウェルはジェスター以外の構成員を見下しているきらいがあった。後々のことを考えれば、いっそこの辺りで切り捨てておくのも手かとザナルは考えた。

 

「恐ろしいものですな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とは」

「不満か?」

「いえ。むしろ魔導を志した者として、白翼に挑むという我が火炎の真髄を思い知らせる絶好の機会を逃すなどというほうがどうかしていますとも」

 

 相手は魔術師の頂点に位置する存在。そんなものを相手に正道で挑むほうが正気ではない。

 

 ザナル自身、アルカナに対して特に恨みはないが、召喚士協会に与するのであれば敵であり、同時に自らが修めた叡智を試す機会に興奮を隠せなかった。

 ジェスターはそんなザナルを笑って肯定する。その執念こそが、この世界に爪痕を刻み付けるのだから。

 

「その通りだ。そしてかの魔導殲滅兵は彼が至った一つの答え、研究の集大成といえる。仮にその結果にマクスウェル自身が呑まれるというのならば、それもまた結末よ」

 

 これから広がる混沌にむけて、ジェスターは期待の笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 召喚士協会に到着したエステルは、エントランスで親友の名を叫んだ。

 

 

「シノブ、シノブはいる!?」

 

 

 ぎょっとする協会員たちだが、声の主がエステルとわかるや否やすぐに元の作業に戻る。

 誰かがシノブを呼びに向かい、数分と待たずに奥からシノブが顔を出した。

 

 

「どうしたのエステル……本当にどうしたの、その傷?」

「ただ転んだだけよ」

 

 

 エステルとルークの顔にできた擦り傷を見て怪訝な顔をするシノブ。

 まさか不注意運転での転倒とは言えず、適当な言葉でごまかす。

 シノブもそれで納得する。親友が勢い余って生傷を作ることは珍しくないし、切羽詰まっている様子から変に追及する必要はないと判断した。

 

 

「相変わらずそそっかしいんだから……それで、ただ事じゃないようだけどどうしたの? メニャーニャは一緒じゃないのかしら」

「ざっくり言うと、マクスウェルがやらかして商業区にデカイ魔導兵が突っ込んだわ」

「……本当に緊急事態ね」

 

 

 マクスウェルのことだから何かしらの強硬策に出るだろうことは予想していた。

 大体予想通りではある。

 マクスウェルの制御すら外れて暴れている、というのは少々想定していなかったが。

 

 ともあれ、相手が魔導兵ならまだ何とかなる。

 シノブは思考を切り替えて状況の対処を始める。

 先ほどもちょうど、そのための準備を進めていたところだ。

 

 

「あのクックルっていう魔導兵、私たちじゃ手も足も出なかったわ。でもシノブの魔法なら少しは通るはずよ、だから……」

「そうね。それじゃあ着いてきてくれるかしら?」

 

 エステルの予想に反して、シノブは玄関とは正反対の方向に足を進めた。

 

「……え、いや、どこに?」

「メニャーニャの研究室よ。あの子の指示で来たってことは、多分だけど()()が必要になったってことだから」

 

 

 

 

 

 

 振るわれる豪力の斧。

 完全なる不意打ち。薙彦はかろうじて薙刀の柄で防ぐ。分厚い刃が狼牙鉄と石鬼柳で作られた柄の半ばまで食い込むも、その一撃は阻まれていた。

 

 だが、斧槍の穂先が黄緑色の光を帯び……そして爆ぜた。

 

 

「な――」

 

 

 それは極めて小規模な爆発だった。

 だが刃の食い込む薙刀を破壊し、さらに柄を掴んでいた右手を破壊するのには十分な威力であった。

 

「ごはっ……!」

「薙彦!?」

 

 駆け付けてきたジュリアが驚愕する。

 これまで鎧袖一触で薙ぎ払ってきた男が初めて深手を負ったのだ。

 地を転がる薙彦に追撃の前蹴りが突き刺さる。

 爆発の反動を利用した蹴りによって吹き飛ばされた薙彦は空中で直線を描き、その先にあった武器屋の壁を砕いて姿が見えなくなった。

 

 

クルァァァァァァ!

 

 

 まずは一人。獲物を仕留めたクックルが雄叫びを上げ、呼応するように魔導殲滅鎧が動作する。

 だらりと垂れ下がっていたチューブが意思をもったかのようにのたうち、地面へと突き刺さった。

 

「くっ、なんて怪物だ……」

「ジュリア姉!」

「ああくそ、何やってんだあのナンパ野郎は!」

 

 そのままメニャーニャに襲い掛かろうとしたクックルをジュリアが引き受け、さらにアルフレッドとジーナが加勢する。だがそれでも激しさの増したクックルの連撃をいなすのが精いっぱいだ。

 クックルはつい先ほど頭蓋を貫かれて死んだはずだ。だというのに今や血の跡を残すのみで完全に傷が塞がっていた。そのからくりを掴まなければクックルを倒すことはできない。メニャーニャは冷静にその様子を観察する。

 

 

「あいつは……死なないんだ。クックルは不死身なんだよ」

「不死身……? そういう種族ということか? ……いや違うな。一つ聞きますが、あの巨人が纏っている鎧が不死身の仕組みですね?」

「そ、それは……」

「答えろ、これは質問じゃなくて尋問だ。ここでお前をアレに差し出してもいいんだぞ」

「ひィぃ! そうだよ、アイツに着せた特性の魔導鎧だよ! 能力強化は元々のバイオ鎧の性能のまま、他にも色々と手を加えたんだ」

「バイオ鎧とは?」

 

 聞きなれぬ兵器にメニャーニャが問う。

 

「東の世界樹の地下遺跡にあった古代兵器だ。元々は大気中のマナを吸って稼働する兵器なんだ。でもマナが足りないと着用者を取り込んで暴走する。ジェスターのやつはそれを疎んで重火器系統をカットして再生能力と魔法吸収に特化させたんだ」

「ガトリングやグレネードを積んだはいいがコストが賄えず着用者を蝕むとか、過剰兵器としてコンセプトから破綻していますね。……それで、どのように改良したんですか?」

「クックルに着せた魔導鎧は相手からの魔力や大気中のマナだけじゃなくて、地脈や水脈のマナを吸い上げることができるんだ。だから致命傷だろうと回復するんだよ!」

「地脈って……まさか!」

 

 メニャーニャは振り向いて事実を確かめる。

 彼の背中から伸びるチューブ。地面に突き刺さったそれからはマナの光が吸い上げられるように登り、クックルの体に吸い込まれていく。

 そしてその傍らで、石畳みの隙間から健気にも生えていた花や草が枯れ果てていった。

 

 

「な、何考えてるんですかその無茶苦茶極まるコンセプトは!? アンタらが乗っとる予定の国の土地をぶっ殺す気ですか! 馬鹿ですか死ぬんですかつか死ね!!」

「うるさい! 最初からお前たち相手にぶつけていいところで自爆させて諸共に吹っ飛ばすつもりだったんだよ! ()ってももう自爆スイッチもぶっ壊れて止めようがないけどな! はははははははははは!」

「何開き直ってんですか!」

「どうせ見捨てられただろうからな! ああくそ、アイツら最初から僕を使い捨てるつもりだったんだ。何が革命の同志だクソったれ!!」

 

 もはや自棄になってきたのかふてぶてしさすら取り戻す勢いでマクスウェルは叫んだ。

 実際、半分は見捨てるつもりであり間違ってはいない。

 マクスウェル自身、ジェスターに誘われたことで疑問にも思わなかったが、それでも帝国の在り方を憎むような彼らとは多少の意識の差を感じており、この期に及んで救援の一人も来ないことで自分の立場を理解したらしい。

 

「まあ、アナタ達の仲間割れ事情はどうでもいい。私たちが聞きたいことはただ一つ、アレに弱点はありますか?」

「弱点だと? 僕の作った最強兵器にそんなものがあるわけが……」

「ふんっ」

 

 メニャーニャの鋭い蹴りがわき腹を抉る!

 積年の恨みも籠っているため、その威力は普通に痛い!

 

「ぐはっ! ……そ、そうだ。動力源だ! 流石にマナを増幅する炉心を潰されたらアイツの不死身は消えるはずだ! でも中は膨大なエネルギーが循環してる! 適当に潰したら多分ドエライことになるからやめろ! 主に僕の身のために!!」

「なるほど、つまり一瞬で動力炉を消滅させるほどの一撃を叩きこむ必要があると」

「そうは言うけどな、そんな攻撃どうやって――」

 

 

「メニャーニャ!」

 

 

 後ろから聞こえてきた声に振り向くと、シノブが協会の方向から走ってくる。エステルとルークもやや遅れており、二人は他の協会員と共に何かが積まれた荷車を引いていた。

 

「シノブさん」

「状況はエステルから聞きました。それと、そこにいるのは……」

「けっ」

 

 マクスウェルはシノブを忌々し気に睨んだ後、顔を背けた。

 

「……色々とありますが、すべて終わってからですね。必要になるだろうと思って持ってきました」

 

 シノブの後ろで、エステル達が荷車からその()()()()を下ろし始める。

 

「くっそ、怪我人にこんな労働させんなよなー」

「もう回復したんだから文句言わないの。ところで、今どうなってんの? かなりヤバイ感じなのは見てわかるけど」

「……クックルが騎士団と交戦し、騎士団が壊滅。その後私たちが食い止めに掛かりましたが、薙彦さんがやられました」

「なんだと!? あいつが!?」

 

 ルークは信じられないとばかりに声を荒げる。

 だが彼の姿が見えないことを考えると、事実なのだろう。薙彦が戦場から逃げ出すような男ではないことはこの場の誰よりも分かっているつもりだ。

 だがそれでも信じられない。クックルの手に負えない強さは実際に刃を交えて理解したつもりだ。その上で、薙彦がいるならどうにかできるという確信があったのだ。

 

「一度は仕留めてくれたのですが……まさか頭部を破壊された状態から再生するとは」

「なんだそのバケモノは……」

「でも、何か策はあるんでしょう?」

「ええ。クックルは地脈そのものからマナを吸収することで超再生力を獲得しています。これを攻略するには超合金でできた魔法無効化装甲と彼自身の防御を貫いて魔力炉を破壊できる一点突破型の一撃が必要。

 ――つまり、これの出番というわけです」

 

 

 どこか得意げにメニャーニャは布を取り払う。

 

 かつて鹵獲した魔導鎧。

 それらを解析し、対策を講じてきた。

 相手が自分たちを想定してあの兵器を作ったというのなら、こちらもまたそれを打ち破るための兵器を開発する。

 

「これは……!」

「対魔導鎧用兵器。整備が間に合ってなかったのでまだ出せていませんでしたが、ようやくお披露目と行けそうです」

 

 

 その形は大弩(バリスタ)

 

 両翼を広げた大きさは直径3メートル弱と異様なまでに巨大。

 それだけでも発射される矢の威力は圧倒的。

 しかも通常の矢ではなくマナエネルギーによって打ち出されるというのだから、一体どれだけの破壊力が出されることか。

 

 だが何より恐ろしいのは、

 これは戦車でも船でも城でもなく、

 たった一個の生命を狙い撃つことを目的として作られた兵器だということだ。

 

 名を――

 

 

「――"狙撃用機械式魔導弓試作型:シキ"

 魔導ゴーレムから一歩発展させた、私の最新作です♪」

 

 

「うわ……マジかっけえじゃねえか」

 

 ルークはそのシャープなフォルムに目を輝かせる。

 メニャーニャもまんざらではなさそうに頷いた。

 

「整備は済んでいます。マナジャムも充填してあるし、理論上は多分発射も問題ない。不安要素としては最後の試運転がまだなことですが……」

「ぶっつけ本番でいくしかないですね。あんまり好きではありませんが」

「そこはあんたたちの腕を信じる!」

 

 エステルの自信満々の言葉に、責任重大だとメニャーニャは苦笑しながらシキを起動する。

 両翼が開き、弓としての形をとる。

 その両端からマナの光がバチバチと迸り、中心に供えられた矢型の弾頭にマナが込められていく。

 

「まず発射のためのチャージに時間がかかるのが難点ですがね。三分ほど稼いでください」

「三分って、簡単に言ってくれますねえ……」

 

 普段なら麺をゆでていれば終わるような時間だが、こと秒単位での攻防が行われる戦闘においては果てしなく長い時間ともいえよう。

 

 ルークは注意深く周りを観察する。

 クックルを相手にしているのはジュリア、アルフレッド、ジーナの三人。

 見事な連携でしのいでいるが、爆発を起こす斧を警戒するあまり攻めに出られない。

 その少し離れた場所では、ニワカマッスルとジョルジュ長岡が倒れている。

 力自慢の彼らですらあのように転がされている。

 その事実にルークは改めて戦慄する。

 

 

「おいおい、大丈夫かー?」

 

 ニワカマッスルの傍にハピコが着地する。

 彼女はつい先ほどまでニワカマッスルとともにいたが、騒ぎが起こると同時にマッスルに状況の対応を任せ、自身は王国の仲間たちへ呼びかけに向かい、おおよそ全員に呼びかけを終えた形となる。

 

「ハピコお前、同じ鳥なんだからちょっと話とかできねえか?」

「いや、あいつ鶏じゃん。食う側と食われる側じゃ話は通じないっていうかむしろ私のほうが逆に食われそうなんだけど」

 

 冗談めいたやり取りだが、要するに話は通じないということである。

 

「ヒール!」

「ありがとよデーリッチ。ようし、もいっちょいってやらあ!」

 

 福ちゃんやティーティ―様の加護(バフ)も受け、三度クックルへと立ち向かうニワカマッスル。

 今まさに前衛が押し切られ、続く一撃をアルフレッドが回避できないと思われたその横から筋肉満点のタックルをぶち当てる。

 流石にこの質量攻撃には体制が崩れるクックル。

 

 その間に三人が下がり、入れ替わるようににハオ、地竜ちゃん、かなづち大明神が戦いを挑んでいく。

 

……!!」 

「暴れニワトリ! 今こそハオの槍が帝都を守るとき!」

「なんともまあ恐ろしいテクノロジーですね……ですが、体格なら負けませんよ!」

「もけもっけー!」

 

 投げ槍が接合部を貫く。

 だがクックルは意に介さず、脳天を狙って振り下ろされたハンマーを両腕でガードする。

 その足元では地竜の強烈な体当たりが炸裂する。

 

 

■■■■■■■ー!

 

 

 クックルが勢い任せに斧を地面に叩きつける。蓄積されたマナが爆発を引き起こす。かなづち大明神が盾となってかばうも、飛散する瓦礫が彼女の体を傷つけていく。

 死闘が繰り広げられる中、ローズマリーは彼女たちに助言を与えるために戦況を観察する。

 

「やはり特技による攻撃は有効……爆発する斧も気を付けていれば耐えられないわけじゃない。エステルのフレイムウォールが有効かもしれないな。ただあの回復力を上回るだけの一撃が……」

 

 魔導鎧から伸びて地面に突き刺さるチューブがマナを取り込んでいることは傍目に見ても明らか。ローズマリ―もまたメニャーニャと同じ結論に至っていた。

 

「ううむ。よもやあ奴が出ているとは……」

 

 どうにか攻略の糸口を見つけようとクックルの挙動を分析するローズマリーの横で、マーロウが唸るように口を開いた。

 

「マーロウさん。あのハグレを知っているんですか?」

「ええ。かつては同じ陣営として共に戦いました。クックル=ドゥルードゥ。剣闘士として戦いを強いられた男であり、あらゆる破壊と略奪を行った将軍です」

 

 マーロウは思い出す。

 10年前のハグレ戦争。当初は奇襲も相まって破竹の快進撃を続けていた反乱軍は、アルカナを始めとした帝国側の実力者が動員されたことで瞬く間に形勢をひっくり返された。

 掃討戦が行われ、これ以上の犠牲を出すわけにはいかぬとマーロウやアプリコといった指導者たちが降伏を選んだ中、クックルは独り抵抗を続けた。

 そこにあったのは後先を考えない怒りだったのか、あるいは誇りに殉じようとしたのかはわからない。

 クックルはひときわ寡黙な男で、作戦会議でもとりわけ口数が少ないながらも、攻勢に出ることに拘るところがあった。同じ陣営にあったマーロウでもその心境は推し測ることは難しかったが、彼を突き動かすものが途方もない怒りによるものであることだけは、執拗なまでに帝国の兵士や民を殺戮する様子から伺えた。

 

「そんな人物が……」

「マリーさん!」

 

 と、戦場を迂回するようにして駆け寄ってきたのはルークだ。

 

「ルーク、そっちはどうなっている?」

「今あいつを倒すための兵器がチャージ中です、メニャーニャさんが言うには三分持ちこたえてくれって」

「そうか……みんな、三分だ! 三分そいつをどうにか足止めしてくれ!!」

 

 ローズマリーがそう檄を飛ばすが、現実は厳しい。

 一瞬だけ押し込めたハオたちも蹴散らされており、回復したジュリア達が再び入れ替わる。

 迷宮装甲のせいで魔法を主体とする者たちの攻撃が聞かない以上、彼女たちは援護に徹するしかなく、じりじりと戦線が後退していく。

 マーロウも加勢しようと考えるが、彼は帝都に入る条件として一切の武装を許されておらず、肉弾戦を挑もうにもクックルが相手では焼け石に水だ。

 

 ハグレ王国の精鋭がほぼ総がかりで尚優勢に持ち込めない。

 何人かの冒険者たちはあまりに規格外の存在に尻込みしている。

 帝国騎士団の勇猛な男たちは、一足先に壊滅した。

 

 せめて、せめて後一人でも彼らに匹敵する猛者がいたのならば……!

 

 

 

「――水龍槍・双龍閃」

 

 

 

 絡み合うような二つの龍の形を模した激流。

 槍の形に押し込められた波濤がクックルの顔面に直撃し、盛大に転ばせる。

 ズズン、と地響きが鳴る。

 

 全員が一斉に、その一撃の出どころを見る。

 小さな料理店。悲惨なことに瓦礫によって粉砕された窓から、飛び出してくる影が一つ。

 くるくると一回転してから着地したその姿に、一同はさらに驚愕に目を見開いた。

 

「てめえか、こんなところでボコボコ爆発させてんのは。おかげで料理が来る前に店主が逃げちまったじゃねえか」

 

 真紅の生地に黄金の龍の刺繍が輝くチャイニードレスに身を包んだその女性は、しかし美麗な姿に似合わぬ眼差しを以って相手を睨みつける。

 

「お前は……」

「全く、おちおち飯も食えねえのかよこの街は」

 

 その布地の隙間から除く肢体は、艶めかしくも極限まで引き締まった筋肉を備えており。

 その全身は、周囲の風景を自然と揺らめかせるほどの闘気を放っていた。

 

「ラプス!」

「ようルーク、奇遇……でもねえか。まあいい、せっかくだからこの祭り、あたしも混ぜてもらうぜ」

 

 波濤戦士ラプス。

 深海より出でし龍宮の戦士が、参戦の名乗りを上げた。




○狙撃用機械式魔導弓試作型:シキ
 魔導兵器の一つ。一点特化で魔法装甲を貫くために作っていた。
 とはいえ単発式。過剰火力。高燃費。無駄に大型と課題点は多い。

 名前の由来は子規。
 別名ホトトギス、時鳥、忍び音、不如帰。
 ……要するに、水着イベントでメニャーニャが作る武器のプロトタイプという設定。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。