『後日談』
召喚人解放戦線による帝都占拠を狙ったテロは収束を迎えた。
兵士たちにはある程度の死傷者が出つつも、王族にも市民にも被害は出ておらず、破壊された広場を片付けた後に式典は再開。その後は妨害もなく、しめやかに閉幕した。
「いやー、色々あったけどお疲れ様。これでしばらくは安泰ってところかなあ」
ハグレ王国の談話室。
事後処理のためにやってきたアルカナの言葉にローズマリーは頷いた。
「そうですね……。ジェスター、アプリコ、ザナルといった中核メンバーは取り逃がしましたが、解放戦線も大きく戦力が削れたはずです。これでしばらくは大人しくしてくれるでしょう」
「演説の甲斐あってか、解放戦線に参加してたハグレ達も結構な数が降伏してきましたね。中にはハグレ王国への移住を申請している人も多いんでしょう?」
「帝都としては、彼らのハグレ王国への移住は認めるつもりらしいよ。おかげで役所は書類仕事が盛りだくさんだってさ。ま、私たちも人を笑っていられる立場じゃないんだけど」
「東の世界樹でしたっけ? マクスウェルから聞き出した話だと、魔導鎧の雛型を発掘した遺跡があるということですが……」
マクスウェルは既に投獄された。解放戦線からは尻尾切りめいて見捨てられたとはいえ、魔導鎧を帝都に持ち込んだ挙句、ハグレを脱獄させて暴走させたテロの実行犯であることに変わりはない。今度こそ資産を凍結され、進退窮まったマクスウェルは司法取引として解放戦線の情報を知る限りのすべてを
「奴が知っていた以上アジトの線は薄いだろうが、手掛かりが得られる可能性はゼロじゃない。人手が飽き次第、調査隊を組ませるつもりだよ」
「世界樹は厳密には帝都ではなく管理者の神の管轄となってますけど、集団で押し寄せて地下の遺跡を調査すると言って許可は降りるんでしょうか?」
「あそこの神様は子供だけど、話が通じないわけじゃない。流石にテロリストが潜伏している危険性を訴えれば許可は通るはずだ」
「しかし世界樹の地下に遺跡ですか……南の世界樹はそんな風には見えなかったし、ティーティー様からもそんな話を聞いたことはなかったな」
「んー、そう? そっちにもゼロキャンペーンの対象になるぐらい大きなマナの噴出孔があったし、おかしな話じゃないと思うけど」
試すようなアルカナの言葉にローズマリーは訝しむが、すぐにその答えに思い至る。
「……あっ、もしかしてここの地下遺跡!?」
「そゆこと。古代人が作った遺跡にはマナの噴出孔、いや取り入れ口が存在する。んで、世界樹は地下と異世界から取り込んだ膨大なマナを地上に放出している。そのおかげで世界樹の周辺では生命が溢れ、人も元気になるご利益が存在する……どうかな? そうおかしな話じゃないと思うけど」
その場にいた全員がぽかんと口を開ける。
アルカナの言葉は荒唐無稽ではある。だがハグレ王国が辿ってきた道のりがそれを裏付け、何よりその古代からの生き証人から遺跡の機能について説明を受けている。
「……すごいな。それだとこれまでの一件すべてに辻褄が合ってしまいますよ。この仮説、あなた一人で全部推察したんですか?」
「いや? 知り合いに古代文明に詳しい魔法使いがいるんだよ。彼と話し合った時に得られた情報と、シノブが組み立てたマナ理論を合わせて、そういうものなんじゃないかっていう仮説を組み立てただけよ」
「先生。私たち、そんな人がいること一切聞いた覚えがないんですが?」
「その辺の話は順繰りに出そうと思ってたら、シノブが一足飛びにたどり着いちゃったからねえ」
メニャーニャの抗議するような目線にアルカナは苦笑いで返すだけ。
世界の構造とか召喚術と古代人の密接な関係など、アルカナが抱えている情報は普通の召喚士には劇薬も良いところ。故にこそ情報の開示はエステル達に対しても慎重な姿勢を保っており、ゼロキャンペーンはそのアプローチとしては実に有用だと思っており、期待通りにシノブは召喚の仕組みをほぼ独力で解明した。
「しかし、それほどの知識人なら何らかの権威であってもおかしくはないはず。先生がだんまり決めていたのはいつもの事だからいいとして、「ちょっと?」研究の過程で影も形もないというのもおかしな話ですよ」
「名誉とか権威に興味なくて、ただ知識欲だけを求めてたとかじゃない?」
「先生は何か聞いていないんですか?」
「あの爺さん、自分の家から一切外に出ないんだよ。普通なら会うのにも一苦労で、外界からその情報を入手するっていうのは偶然通りがかりでもしない限り難しいな」
「隠棲した偏屈爺さんってわけか……そりゃあシノブやメニャーニャじゃだめだな。間違いなく喧嘩になる」
「いや、他人事みたいにいうがエステルお前もだからね?」
「ほんとナチュラル無礼だなこの人……」
距離を詰めるのが誰よりも上手であると同時に、誰よりも人の地雷を踏み抜くのが得意な爆炎ピンク。それがエステルだった。
「まあ、既に上層部のほうで話が進んでいるからこの話は置いておこう。問題はやっぱりハグレ達の処遇でさ。歓迎するっていうなら今のうちに受け入れ態勢を整えておきなさい。聞けばこの国、政務はほぼマリーちゃんが一人で引き受けているような状態らしいじゃないか。過労死する前に、きちんと役割分担はしておきなさいよ」
「ご忠告痛み入ります。とはいえ、やろうやろうと思ってもいざとなると適任が見つけられないんですよね。店舗のほうはみんなの報告をベルくんやミアさんが纏めてくれているんですが、それ以外の手続きとなると勝手が違いますし……」
「それでしたら私が手伝いますよ」
「いいのかい?」
「ええ。これからお世話になる以上、できる仕事は引き受けませんとね」
「助かるよ」
プリシラはハグレ王国に帰属する。それは妖精戦争の時から決まっていたことだったのだが、この度プリシラ商会の帝都進出計画もひと段落ついたところで、ひとまず妖精王国側の運用はリッピー達に任せて、自分はハグレ王国の常駐戦力として滞在することにしたらしい。
「しかし正門にあんだけハグレが居座っていたとは、マジで攻め込んでこなくて助かったわー」
「帝都を攻め落とすには非合理的すぎましたけどね。マーロウさん曰く、正面から攻め込んだらアルカナさんが問答無用でブチかますから攻撃は王族の拘束ができるまでやらなかったとアプリコが言ったらしいですけど。実際はどうなんですか?」
「んなことしたら帝都や市民に被害が出ちゃうでしょ。復興とかその後の信用問題とか国民感情とか、デメリットが多すぎて割に合わないわ。それにきっと君たちに嫌われちゃうのが一番堪えるかな」
やらない、とは言わないあたりが恐ろしい。もしハグレ王国が対処できなかった場合、おそらくこの女は最終手段として解放戦線のハグレ達を殲滅しただろう。帝都が占拠されて周辺諸国との内乱勃発よりはマシだと判断するはずだ。
「それならそれで、帝都は反乱分子を自爆覚悟で殲滅する国家だった。って恐れられるかもしれませんけどね」
「恐怖政治なんて流行らないわよ。プリシラちゃんも気をつけなさいね」
「わかってますよ」
そういって笑い話にする二人の姿にローズマリーは苦笑する。
このままだと政治的ブラックジョークの応酬になりかねないので、ローズマリーは急いで話題を軌道修正する。
「とにかく、ちゃんと帝都が私たちの活動を認めてくれるそうで安心する限りですよ」
「そりゃあね。あれだけ大見得切って大立ち回りした英雄を無下に扱うほうが沽券に関わるとも。帝都市民からのハグレ王国人気はうなぎのぼりだ。上層部の中には依然快く思わない者もいるだろうけど、皇帝直々のお墨付きとなれば黙認するしかない」
ハグレ王国が今回の冒険で得られたものはとても大きい。
なんといっても、皇帝が直々にハグレ王国の存在を認めたのだ。
帝国を代表して今回の脅威を退けたことへの感謝と、これまでのハグレに対する狼藉への謝罪。帝都市民や家臣たちが見守る中、皇帝はデーリッチと握手を交わし、対等な存在として同盟を結ぶことを宣言したのだ。これまでもアルカナの進言でハグレの扱いを慎重に行ってはいたが、本人の意思でハグレとの歩み寄りの姿勢を見せたのは初めてであった。
そして帝都中央政府は帰還計画を行うことを容認し、改めてハグレ王国、妖精王国、エルフ王国との健全な国交を樹立した。そしてハグレ王国には友好的な関係を維持するための大使が送られることとなったのだ。
それが一体誰なのかというと……、
「あー、はい。私です」
メニャーニャであった。
彼女は元々ハグレ王国とは行動を共にすることが多く、召喚士協会の有望株であることから友好関係を築くのに適任だとして任命された。
勿論ハグレ王国の皆は大歓迎。特にエステルは後輩と共に過ごせるということで、ご機嫌有頂天絶好調であった。
「これでアンタと毎日一緒に過ごせるのね~♪ でも本当にいいの?」
「別に研究ならこっちでもできますからね。というか、協会にいた時もそこまで一緒にいたわけじゃないでしょうに。やけにベタベタしてきますね」
「一度離れた分、寂しさ恋しさも人一倍ってわけですよ。でもメニャーニャだけだと物足りないなー。ねぇねぇ先生、シノブと二人でこっちに来てくださいよー」
「それはまだ無理だねぇ。シノブは私が囲っておかないと不安だし、私は私で協会でやっておくことが色々あるし……できるとしたら、面倒ごとが全部片付いたらかな」
「ってことは、いつかは来てくれるんですね!?」
「楽しみに待ってるこった」
帝都との連絡事項もほぼ終わり、最後にある意味一番肝心な部分についての話となる。
「それではお待ちかね、こちら協会からの報酬でございます。金額はどーんと1000000Gだ!!」
どすん、とどっさりゴールドが詰まった宝箱が机の上に置かれる。
その見た目と金額の豪快さに歓声が巻き起こる。
「ひゃ……っ!? いいんですかこんなに!?」
「君たちは今や大陸中のスターだ。これぐらいでも足りないぐらいだよ。あ、それとヘル君達が狩った賞金首の分は冒険者ギルドからの報酬なので別口で支払わせてもらいます」
「だから俺たちも呼ばれてたんですね」
ルークは何故自分たち秘密結社がここにいるのかと思っていたが、その疑問が氷解した。
「私たちの分ってどれくらいになるんでしたっけ?」
「グエンは薙彦が殺って、アドベラは俺たちが倒した。ノックはいつの間にかラプスがぶちのめしてたらしいし、結局俺たちの分ってアドベラに掛けられてた100000Gしか無いな」
「……この流れだと、いくらでもはした金に聞こえちゃいそうで困るわ。それで、どうするの?」
「半分はへそくりに回しますよ。何かあった時の蓄えは合った方がいい。薙彦みたいな借金地獄はまっぴらごめんですからね」
フラグであった。
「で、こちらは私からの献上品です。どうぞ御納めください」
アルカナは恭しく豪華な装飾の箱をデーリッチに手渡した。
「おぉ……何やら凄い箱。一体何が入っているんでち?」
「むふふ。開けてからのお楽しみ」
期待するようなその口ぶりに、デーリッチはわくわくと開封する。
入っていたのは、水晶で作られた鳥を模したペンダントだ。
「アクセサリー?」
「これ先生がいつも身に着けてるやつよね?」
「その通り。うちの領地の近くの水晶洞窟。あそこで取れた水晶の中でも最高純度のもので作った白翼のペンダントさ。この世界に一個しかない貴重品だぞ」
「おお~っ!」
「それだけじゃない。そいつには時空アンカーとして機能する魔法が付与されている。例え国王殿がまた異世界に飛んだとしても、それが常に君の居場所を示してくれるし、君がハグレ王国の場所を見失うこともまたない。あの時の謝罪も兼ねた品だ、どうか受け取ってもらいたい」
「か、感情が重い……!」
めちゃくちゃあの時の事を引きずっていることが発覚し、しかもかなり高度な魔法までかける執念っぷりに若干引く一同であった。
「今ここでつけてもいいでちか?」
「勿論」
胸元のペンダントはきらりと神秘的に輝いていながら、デーリッチ本人の雰囲気を押しのけるような真似はしておらず、彼女が放つカリスマを引き立てることに成功している。
「どうどう? 似合っているでちか?」
「いいじゃん、ベリベリキュート! 立派な装飾つけてると、ちょっとは王様らしい威厳も出た気がするわね」
気がするだけである。
「でしょでしょ? どや! 羨ましいか!!」
「いいなー! 私も先生から贈り物ほしー!」
「暴れるなって。ちゃんとお前にも用意してあるよ」
ほい、エステル。とアルカナは懐から書筒と小箱を取り出して、エステルに手渡す。
「おおっ! ……って、なにこの筒? どっかで見たような気がするけど」
「おいおい、
「てことはこれ協会からの公式文書? 私何かやらかした?」
「やらかしたっていうか、成し遂げたっていうか。いいから見なさい」
エステルはドキドキしながら書筒の中身を取り出して広げる。
格式ばった文が書かれているが、要約すると以下の通りだ。
「『その技術及び功績を評価し、エステルを一級召喚士に認定する』……って、マジか!?」
「いつまでも二級のままじゃ恰好つかないでしょ? これまでの活動で功績なら十分にある。問題だった研究成果についても、その炎魔術の腕前を見れば文句なし。加えて敵の魔術の原理を分析して報告したことも評価の後押しになった。おめでとうエステル。その箱の中身は私からのご褒美だ」
最早期待しかなく小箱を開ければ、赤い宝石をはめ込んだ指輪が納まっていた。
「《ブレイズンリング》。君の最も得意な火属性魔法を強化する魔道具だよ。勿論、私が選りすぐった素材で作った特注品だ」
「おおー! いいじゃん!! 私の欲しいものわかってるー!」
お洒落で実用性もあるアクセサリーに大はしゃぎのエステル。そのまま自分の右中指に通せば、燃えるような赤色のガーネットが照明の光を反射して輝く。
「へっへーん! どうだメニャーニャ、先生が私に送ってくれたプレゼントだぞ」
「そうですか。それはよかったですね」
そのままメニャーニャに見せつけるが、予想に反して反応は薄い。
「なんだよ、反応薄いな。先生から魔道具とか滅多に貰えないんだぞ?」
「そうですね。ところで先輩、これが何かわかりますか?」
ほら、とメニャーニャは自分の髪を指差した。
今の今まで気が付かなかったが、右側の髪飾りはそれまでの赤いガラス玉とは違い、内側に雷電の光を宿した黄色の宝石が輝いていた。
名を《トワイライトアンバー》。雷に撃たれた琥珀を用いて作られた、雷属性をブーストする霊装である。
「え、それってまさか……!?」
「お察しの通り。私もこの前昇進祝いに貰っていまして。要はエステル先輩が一番最後ってわけですね」
「ちくしょう、自慢できると思ったのにー!」
したり顔の後輩に悔しがるエステル。
そんな彼女たちの様子を見ていたルークは、誰に聞かせるでもなくぽつりと呟いた。
「……贈り物、か」
◇
『アフタープレイ』
帝都商業区。
酒場『サモンバッカス』はあらゆる種族、職業を差別せずに受け入れる。
例えば、よく似た顔の双子が変わらない日々が戻ってきたことを喜んだり。
例えば、筋骨隆々の武道家が赤ら顔でいかに女性の胸部が素晴らしいかを力説したり。
例えば、傭兵たちが散っていった同僚のために酒を付き上げたり。
例えば、太った戦士と猫人の剣士が互いの生存を祝ってグラスを突き合わせたり。
市民。冒険者。傭兵。ハグレ。
死線となった式典を生き抜いた者たちは互いの健闘を称え、汗を流すように酒を飲み交わし、騒いでいる。
「よう、もう始めちまったか?」
そんな酒場のテーブルの一つに、ヘルとミアを連れたルークは近づいた。
「いやいや、まだだよ」
「むしろ僕たちが先に来ちゃったぐらいだよね。それぞれ用事も早く終わったし」
「ったく、独立したのにギルドもつまんないことで呼び出すんじゃないよ……」
そこに座っているのはジュリア、ジーナ、アルフレッドの三人。
秘密結社の三人を合わせて、帝都捜索班のメンバーがこの席に集っていた。
これから行うのはハグレ王国の祝賀会とは別の、彼らだけの打ち上げ。
帝都を駆けずり回って汗と血を流した者たちの、ささやかな祝勝会である。
「エステルはまだなの?」
「もうすぐ彼女たちも来る頃だとは思うよ」
「おっまたせー! エステル組とうちゃーく!」
ガランガラン、と大きくベルを鳴らし、それをかき消すように大きな声と共に扉が開かれた。
「ほら来た」
「うるさいピンクだなあ。あれでシティガール名乗るのは無理あるだろ」
こちらに向かって歩いてくるエステルに無理やり肩を回されて引きずられるメニャーニャ。その後ろからシノブが付いてくる。
「やー、まさか帝都に来たら協会の仕事やらされるとは。一級召喚士ってのも楽じゃないわー」
「当たり前でしょう。あれでも不在期間を考えればかなり少ない方ですからね?」
「ま、仕事のことは呑んでパーッと忘れましょ!」
「まったくこの人は……シノブさん、ここにどうぞ」
ドカッと景気よくルーク達の隣のテーブルに座るエステル。
メニャーニャは間を一個開けて座り、しり込みするシノブを促した。
「ええと、いいのかしら私まで……」
「何言ってんの。シノブはメニャーニャの補佐してくれてたでしょ? アンタも十分今回のチームメンバーだって」
「そうだな。遠慮せずに参加してくれ。にぎやかになるのはいいことだ」
「そ、それなら……」
おずおず、とちょっと縮こまりながらシノブも着席する。
「シノブ先輩にはあまり酒を飲ませないでくださいね? 酔い潰れたら先生がうるさいので」
「まじ過保護だなあの人……」
「自分は飲んだくれのくせにねー」
そうして料理と酒が来るまで駄弁っていると、又してもガランガランという音が鳴る。
「ややや。出遅れましたかね?」
「よう手前ら! 呑みに来てやったぞ!!」
右手を三角巾で吊った薙彦と胴着姿のラプスもやってきた。これで今回の参加メンバーは全員集合した。
頃合いを見計らったように、人数分のエールグラスと料理が運ばれてくる。全員がグラスを持ったところで、エステルがテーブルを見渡した。
「それじゃ、一番働いてたルーク。音頭よろしく!」
「へいよ。……それじゃ、今回の作戦の成功を祝って、乾杯!」
『乾杯!!』
グラスのぶつかり合い、小気味よい音を奏でた。それだけでもこれまでの苦労が報われたような気がする。
酒と料理をかっ食らい、それぞれ思い思いのままに今回の
「あー、酒がうめえ!!」
「わかるよルーク。私たちはこの一杯のために生きてるんだ」
「また始まったよ」
「そういうジーナも飲み干しているじゃないか」
「まあね。ほら、お代わりじゃんじゃん用意しなさい」
「姉さん、あまり飲みすぎると体に良くないってば……」
「なんだアルフレッド、私たちと一緒の酒は飲めないってのか?」
「絡むにしても雑じゃない!?」
「あら、美味しいわねこのお酒」
「スクリュードライバーはほぼオレンジジュースですからね。度数は高いから飲みすぎるとあっという間に酔いつぶれますよ」
「あらそうなの。ところでメニャーニャが飲んでるのは何かしら?」
「これはファジー・ネーブルですね。桃とオレンジのカクテルですよ」
「へえ……次はそっちを飲もうかしら」
「えへへ~ルークく~ん」
「酔い潰れるの早すぎません?」
「ヘルちんは酒弱いからなあ」
「しょうがないわね、介抱は私がしておくわ」
「ルークくん、しゅき~~」
「ああ。俺もだよヘル」
「ヒューッ、お熱いねー!」
「しかし、あのヘタれたルークがいっちょ前の男になるとはな。しかもついこの前にとうとうヤッたんだってな?」
「ぶっ、なんでお前がそれ知ってんだよ」
「コイツが病室で話した」
「薙彦ぉ!」
「はははは。さてこの干物が美味ですねえ」
「確かに、酒のつまみにちょうどいいわね」
「ジーナさん。それウィスキー何杯目っすか」
「小山できてんじゃん……」
「てかマジで俺、今回死ぬような目に遭いすぎじゃね?」
「君だけじゃないぞ。この場にいる皆が死にかけてたからな」
「思い返してみれば、今までにない修羅場でしたねえ」
「なんだったら私はもう死んでるし?」
「おっとゾンビジョーク!」
「ゾンビジョーク!」
ゲラゲラと笑い声が木霊する。
そんなくだらなくて、掛け替えのないひと時。
このひと時があるからこそ、人は明日も歩いていく。
だから彼らは、最後はいつもこう言うのだ。
「いやー、色々あったけど」
『生きててよかった!』
――第3章「帝都動乱」完。
○白翼のペンダント
アルカナからの贈り物。
なおこの後デーリッチが遊びまわるのにどこかに引っかけては大変だということで、ローズマリーによって大事な時以外はしまわれることになった。
○ブレイズンリング
エステル専用装備。燃え盛るような赤い宝石。火輪とは太陽の別名。
装備枠ではなく常時強化スキルとして入る感じ。
メニャーニャの《トワイライトアンバー》、シノブの《プラチナバングル》で三色揃っている。
○メニャーニャ
というわけで帝国からの大使として王国入り。
三人娘がいなくても協会が回る様に組織を固めていたのは、ハグレ王国入りさせるためのアルカナの策略でしたと。
○マーロウ
特に描写はしてないけど、アルカナからの個人的な使者という名目でしれっと王国入りしている。
~あとがき~
これにて一年以上も掛かった帝都動乱編も終了!
いやあ、長かったです。
なんか打ち切り最終回っぽい内容になりましたが、ちゃんと続きます。
以下、軽く裏話を纏めました。
○プロット関連
元々、帝都中に潜伏したテロリストたちをルーク達があっちこっち行って倒していく、というシティアドベンチャーを想定していました。そこで欲を出してオリキャラ塗れにしたことで彼らへの尺で大幅に伸びました。
最初は帝都編は三日目のクックル戦が本番だから一日目と二日目はサクサク行こう! ぐらいの心持ちでした。はい。全日程6話以上かかりました。
式典当日もほとんど決めていなかったのでめちゃくちゃ難産でした。最初に決めていたのはアプリコをデーリッチが一喝する。ぐらいのものです。
巨大魔物とか完全に悪乗りの産物ですね。ハグレが一斉に攻めてこなかった理由はまあ色々ありますが、帝都に大勢で乗り込まれたら防衛は無理。なのでそうしない理由を作らなくてはいけない……ということでジェスターやアプリコが帝都をスマートに掌握したがったから、という理由を急遽ひねり出しました。全員なまじ頭がいいので、それぞれの裏をかこうとした結果、最善手を逃しているわけですね。
○敵キャラ達
帝都にもハグレ王国に負けないぐらい変なやつらがいるんだぞ! っていうのを表現したかった。
死霊術師アドベラはポッと出で変なの出すよりはハグレ王国の誰かと因縁持ってた方がいいよねってことでラージュ姉妹との因縁を作りました。そしたらあれよあれよとルークとヘルのいちゃいちゃのための当て馬になっていましたね……。特別編の方でもしれっとミアお姉ちゃんに始末されてます。個人的に気に入ってる敵キャラですね。
グエンはステレオタイプな殺人鬼です。野良エンカウントよりは中ボスのお供だよねということで薙彦くんのワザマエを披露するための役回りとなりました。
始末屋ノックはラプスを関わらせるための導線といいますか......舞台裏でしれっと退場する奴もいる方が群像劇っぽくないかという思いつきです。
クックルは作者的に満を持してお出しできたボスキャラです。
ハグレ王国の素晴らしい仲間たちを知ったことかと正面からなぎ倒していく。それぐらいの気概がなけりゃボスキャラなんて務まりませんからね!! 皆で力を合わせて倒せるボスキャラであり、時代の流れに取り残された哀れなハグレの一人。デーリッチの手の中で安らかに眠ったのが救いと言えるでしょう。
個人的には結構胡乱な奴らが揃ったと思うのですが、読者の皆さんとしてはどうですかね? 感想で教えてくれると今後の参考になります。
○マクスウェルについて
彼が生存することは決めていました。原作だと知略でシノブを上回ってくれましたが、今作ではもっと悪い大人たちに利用されてポイされちゃいました。これでも誰も彼もに見捨てられて死ぬよりはマシな最期ではないでしょうか。
いくつかの幕間を挟んだ後、いよいよ本編最終章へと移ります。
やはり話の順序は原作と変わっておりますが、おおむねやること自体は変わらないかと。
引き続き、応援よろしくお願いします。