ザンブラコ編、前編です。
冒頭はただの宿屋コントです。
『ハグレ警察特集~その駄菓子は罪の味~』
ブリギットが王国の一員となってしばらく経った頃の話。
彼女が発案した駄菓子屋は、今日も大盛況のようです。
「よーし。レア物こいこい……」
駄菓子屋の前では子供たちがガチャガチャの筐体に群がっています。
がちゃんこがちゃんこ。
デーリッチが硬貨を一枚入れ、ツマミを回せばカプセルがころんと出てきました。
それを持って皆はガチャの前から離れます。引いたら退くのはガチャ戦士のマナーです。
「……皆引いたでちね?」
「ああ、ヅッチーの手がこいつは当たりだって伝えてるぜ」
「それじゃあいっせーので開けるわよ」
いっせーのせ……!!
カプセルを開け、皆そわそわしながら自分の獲物を覗き込みます。
さて、皆何を引けたかな?
「あっこれ持ってないやつ!でもレアじゃない~」
デーリッチは持っていない玩具をゲットのようです。でもノーマル。
「げっ、ダブった。」
ヅッチーはものの見事にダブりました。手触りでわかるとは一体。
「あーっ!これ欲しかったんだスローマン!」
雪乃ちゃんは雪だるまのキャラクターを引き当てたようです。よかったね。
「おや?おやおやおや?これはアレかな?レアだな?」
そして最後にエステル。どうやらレア物を当てた様子です。
「あーっ、いいなー!」
「へっへーん!これが普段の行いってもんよ」
周囲の羨む声を聴いて得意気になっているエステル。
そうして子供たち(JK含む)が盛り上がっている中、新たにガチャガチャに近づく者がいました。
「……」
「あれ、ルークさん?」
「あいつもガチャを引きに来たのか。昔っからああいうのは好きだもんな」
「んん?あの手に持っているものは……?」
ルークは片手に持っていたそれを広げ、地面に置きました。
あ、あれは……!
「折り畳み椅子、だと……?」
ルークは椅子に座り、懐からずっしりとした小銭袋を取り出しました。
こ、これはまさか……!!
「お、大人買いだーーーーっ!?」
がちゃがちゃがちゃがちゃ。
中身を確かめることもせずにトークン・セットとレバー・サイクルを繰り返すその様はまさに富豪。
次々とカプセルの山が積みあがっていく様子は子供たちを戦慄させます。
「あいつ、玩具を全部かっさらっていくつもりだ……!!」
「なっ、ダブりを恐れもしないでか!?」
「ダブった玩具をどうするつもりだ……?」
その言葉にフ、と鼻で笑ってルークが子供たちの方を見ます。
「決まっている……
後で欲しいガキに二割増しで売るんだよ」
キメ顔でろくでもないことを口走りました。
「て、転売だーーっ!?」
「なんて極悪な!?悪魔!小悪党!秘密結社!」
何という事でしょう。
この男、コレクター気質の子供の欲求に漬けこんだ極悪非道の行い、転売に手を染めていたのです。
ちなみに、現実において転売は許可を得た古物商ならばなんの問題もない行為です。
まあこの世界の帝国には転売を取り締まる法律自体が無いため、結局ルークを法律的にしょっぴくのは難しいのですが。
「ははははは!自分の金で得たものをどう使おうと文句を言われる筋合いは無いね!」
子供たちの非難もどこ吹く風。もはや財力という名の暴力を止められるものはいないのでしょうか……!!
「もしもしポリスウーメン?」
だがここは帝国ではなくハグレ王国。
とにかく迷惑になるのならばお叱り案件。
雪乃ちゃんがハグレ警察に通報します。
「あっ」
「ハグレ警察だ!ガチャの独占をする不届きものはここか!」
「やべっサツだ逃げろ!」
ジュリア刑事が駆けつけると、わき目も振らずに逃げ出そうとするルーク容疑者ですが、
「ぐえっ」
カプセルを踏んづけてしまい、見事に転びました。
インガオホー!
「逮捕だ逮捕!」
「ウワーナニヲスルヤメロー」
抵抗むなしく、子供たちから囲んで棒で叩かれ取り押さえられたルーク。
ここに悪は滅び、子供たちはガチャガチャの楽しみを取り戻すことに成功しました。
その後、ガチャガチャには以下の注意書きが加えられました。
――独り占め禁止。中身の転売禁止。
尚ルークは成果物の中から好きなものを子供たちに譲渡することと、お菓子をおごることで釈放されました。
そんな一連の茶番劇を大人二人は端から眺めていました。
「やれやれ、何やってるんだか...」
「仕方のない人ね...。店長さーん、ナロルチョコ1ケース下さいな!」
「そしてこっちは箱買いと、二人とも大人げねー」
ヘルラージュがチョコを箱ごと買い占める光景を見て、ローズマリーが肩をすくめたところで、落ちと致します。
◇
『やってきました港町』
王国を南下した海岸を挟んだ先の島国にある、海の街ザンブラコ。
この街で道具屋を志すハグレの少年を王国へと勧誘するため、一行は街に訪れたのであった。
「うぷっ……気持ち悪ィ……」
「無理して食べなくてもいいですのに……」
情報を聞きに訪れたたこ焼き屋にて店主から振る舞われた、たこ焼きラーメンなる悪魔合体料理を律儀にも完食した結果、吐き気を訴えるルークに隣で歩くヘルラージュは呆れる。
とてもじゃないが話を聞ける状態ではなくなったルークをヘルが引っ張るように店から出し、秘密結社の二人は気分転換と情報収集を兼ねて街を散策していたのである。
「くぅ~ん……」
「ベロちゃんも気分が悪そうですわね?」
「匂いも酷かったからな、頭が3つで被害も3倍だな……」
二人についてきていた3つ首犬のベロベロスも元気がない。
彼はたこ焼き屋の軒先で待機していたのだが、店から漂ってくる激臭を3つの頭それぞれの鼻に受けていた。ある意味では他の誰よりも被害を受けていたと言えるだろう。
「しかし……」
探し人である少年ベルについて聞き込みをしていると、街を行き来する一つの種族がよく目に留まった。
「妖精が多いな。というか、妖精ってあんなに商売っ気ある連中だったのか」
「妖精王国は温泉で観光業が盛んだと聞いていましたが、海一つ挟んだここにまで手を伸ばしていたのですね」
ハグレ王国に加わってから聞いた、妖精王国についての情報と合わせて街を分析する。
漁業を中心としたこの街は、逆に言えば目新しいものが無いということであり妖精王国はそこに大陸の物品を持ちこむことで、街の住人からのニーズを獲得することに成功した。商売気の盛んな若い商人はこのムーブメントに乗じた利益を得ているが、そうでない者達--人情を重んじて昔から住民に親しまれてきた古株の面々は妖精王国に迎合することができず客足が遠のいてしまった。
その証拠に、商店街は閑散として開いていない店が多く見受けられるのに対し、新設された妖精デパートは一つの建築物であるにもかかわらず多くの客で賑わっている。
そして、住人と話をする中で彼らが意気消沈していることも二人には痛いほど伝わってきていた。
「……まあ、辛いよな。いくら市場の原則に基づいた敗北と言っても、他所からかっさらわれるというのは。俺はそういう事情とはあまり関係がなかったわけだけど、そうして潰れた商人はよく見てきたものです」
「どうにかできないものかしら……」
「とことんやれって言うなら、いくらでもやりようはありますが。悪の秘密結社として市場操作に手を染めてみますか、ヘルさん?」
「もうっ、からかうのはおよしなさい」
冗談めかして言うルークをヘルラージュは嗜める。
「はは、そもそもモグリの古物商じゃ何もできないさ」
実際そういった手段に出るという考えはルークには無い。
お人よしのヘルラージュが感情移入をして落ち込み過ぎないように茶化しているのだ。
「まあ、ハグレ王国と接点ができれば何かしらの変化が起きるんじゃないですか?」
「そうなったらここで獲れた海の幸も王国に出てくるんですのね」
「確かに、酒の肴が増えるのはいいことですね」
「お魚だけに?」
「...魚類をさかなと読むのは肴から転じたもので、元々魚介類がツマミとして多く出されたのがそのまま読みになったらしいっすよ」
ガチです(wiki調べ)
「へえ~そうなの、意外と物知りねルーク君」
「昔の仲間がこういうのに詳しかったんすよ。和国だかなんだかの出身でさ。文字通り、酒の肴にしかならない知識ばかりですけどね」
談笑しながら二人は歩き、その後ろをベロベロスが付いていく。
ハグレ王国に来てからというものお互い店舗や行商で忙しく、秘密結社としての活動も四人で行っていたためほぼ二人きりという状況は無かった。
果たして彼らがそれを意識していたかは与り知らぬところではあるが、少なくとも久々に訪れたこの状況を楽しんでいたのは事実である。
◇
ヘルと一緒にぐるりと街を一周して、たこ焼き屋に戻ってくると軒先でハグレ王国の面々が待っていた。
何でも俺たちを待っていたという事で、話を聞くとベルという少年は大ダコを探しに街の外にある海岸洞窟へ行ってしまったという。
街の住人からは華奢な少年だと聞いていたので、そんな彼が一人で冒険とは大したやつだなと感心していると、妙に生暖かい視線を感じたのでそっちに目を向ける。
「……何だよその目は。ジュリアさん?」
「いや何、大したことじゃないさ。若いとは良いものだと思っただけさ」
ニヨニヨとした表情でこちらを見てくるジュリア傭兵隊長。
……うちに傭兵は彼女しかいないから隊長という呼び方もおかしいかもしれないが、雰囲気が隊長呼びを自然なものにしてくるのだ。
初対面は王国の敵として立ちふさがった時で、当時は堅い人物だという印象を抱いていた。
それからは自分の行いがグレーゾーンであることもあってハグレ王国の警察も担当する彼女とは色々と関わりがあった。...あれは割と情けない事件だったと反省してる。
兎も角、王国では数少ない男仲間であるアルフレッドを揶揄う姿を見たり、彼女と酒を飲み交わして色々と会話をする機会があったことから、ジュリアという人間が日常的には冗談を好む愉快な性格であることが分かってきていた。
つまるところ、だ。
彼女は俺とヘルが二人で街を巡ったことについて明らかにそういう考えで揶揄しに来ていた……!!
「それで、二人きりで何をしてきたのかな?」
「聞き込みですよ。この街と妖精王国の関係性とか不漁の原因とか、そういう地道なやつを」
「へえ、割と真面目だな」
「いつも真面目ですよ、俺は」
下手に反応すると悪乗りしてくるのが分かっているので事実のみを答える。
「ほんとに~?」
ぱつぱつスーツのサイキッカーがしつこく弄ろうとしてくるが、取り合わず視線を国王達のほうへ向けるとイカヅチ妖精が柄にもなく落ち込んでいる様子。
「それで、ヅッチーはどうしたんですか?」
「ああ。どうやら本当に妖精王国が関わっていたようでね。ヅッチーは交渉しに行ったんだけど、殆ど相手にされなかったらしいんだ」
曰く、代理女王として活動していたプリシラに実権を握られ、ヅッチーに心酔していた筈の彼女は交渉において殆ど取り合わなかったらしい。
「……それは、難儀なことですね」
原因については察しが付く。
ハグレ王国に留学しているヅッチーは妖精王国には交易の際に顔を見せる程度だった。俺が彼女の馬車に相乗りし始めた頃はもう少し時間をかけていたようだが、この前の交易では交易品の受け渡しと軽い雑談程度で終わらせ、次の街へ向かっていくという有様で、国の運営方針に全くと言っていいほど無関心だった。これではカリスマがあったところで何の意味もない。
俺もエルヴィスの旦那には常に前に出てパーティを引っ張る豪快さやここぞという時のガッツに惹かれていたし、ほかの連中もハグレであること以外はただの人間である旦那のそういったところを評価していたから、あの奇人変人のパーティは成立していた。
ハグレ王国国王のデーリッチも、見た目相応の明るさや無邪気さ、かと思えば時折正鵠を射るような言葉を発して、王として相応しい聡明さや経験の深さを介間見せる。王国民の連中だって、彼女に自分の不足を埋めてくれる何かを感じたからこそ、国造りという壮大な夢を手伝っている。
……ヘルについてもそうだ。悪の秘密結社なんてふざけてはいたが、復讐のために悪党であろうとする決心があいつにはある。それだけではなく、小心者だけど気配りは忘れず、おおよその人物であれば受け入れるほどには度量が大きい。聞き上手でもあり、交渉事には彼女を隣に座らせておけば少なくとも決裂しないまでには雰囲気を和らげることができる。リーダーとしての素養ならデーリッチに負けず劣らずのものがある。危なっかしくてほっとけないとか、役割分担が丁度良かったとか、色々理由をつけてはいるものの、あいつの側が居心地が良かったというのが一番の理由なのだろう。
今のヅッチーはそのいずれも無い。自分たちを率いず、自分たちの方針を受け入れず、自分達の居場所でもない。
……まあ、俺が何かアドバイスができるかと言えば全くないのだが。
「妖精の内輪もめは置いておくとして、目先の課題から片付けるとしましょう」
「そうだね。じゃあ皆、行こうか」
この街に来た目的、ベル少年を探しに俺たちは海岸へと歩みを進めることにした。
◇
『熱中症対策』
「あっつ!砂浜あっつ!」
海岸沿いに突き進むこと数十分。
ルークは南国の日差しにやられて膝をつき、砂の熱さに苦悶した。
「キャラ崩れてるじゃないか...」
「あーあ、スーツのまま来るから。脱いだら?」
ルークは一張羅である黒紫のストライプスーツから服装を変えたがらず常にこの恰好でいた。大陸は穏やかな気候だったため問題は無かったが、海を隔てた南国となれば話は別だ。
このまま意地を張っていても暑さに参るだけなので、ジャケットを脱ぐことにした。
「持ってあげますわ」
「ああ、すまない」
ヘルラージュが手を差し出す。ルークは折りたたんだジャケットを受け渡した。
魔法でキンキンに冷やされた水を飲みながら、彼は仲間たちに質問する。
「というか、そっちは暑くはないんですか?」
「ああ、暑さ寒さについては問題ないよ」
ローズマリーのゆったりとしたローブは、暑さと寒さの両方を緩和している。
「わたくしも周囲に冷気を纏わせています」
「ひんやり快適でちー!」
冷気の膜を展開していて暑さを遮断しているゼニヤッタに抱えられたデーリッチがご満悦に笑う。
「あーっずるいですわ。私たちはこんなに汗だくですのに」
「それじゃあヘルちん、こっち来る?」
「わーっありがとうこたっちゃん……ってなんでこたつに入らなきゃいけないんですの!?」
こたつドラゴンの誘いに、ヘルラージュがノリツッコミを入れる。
「……なんでお前暑くないの?」
「こどらはドラゴンだからね!暑さもへっちゃらじゃん!」
「なるほど……でも炎耐性無くない?」
沈黙。
「……こどらは、氷のドラゴンだから……」
「氷耐性も無くない?」
再度の沈黙。
「……こどらは、こたつのドラゴンだから!こたつアーマーは鉄壁の守りじゃん!」
「……そっか!」
これ以上話をまぜっかえすのもよろしくないと判断したのか、ルークは納得した。あるいは、暑さで思考がやられたのかもしれない。
小休止を済ませた一行。引き続きベル少年を探して海岸を突き進んでいく。
「ところでジュリア隊長は鎧暑くないんでち?」
「心頭滅却すれば大体の事はどうにかなるぞ、どうだ?」
「遠慮しておきます」
◇
『海!泳がずには……えっそれどころじゃない?』
探し人道中は、思いのほかすぐに終了した。
少年ベルが魔物と交戦していたところにハグレ王国が加勢して決着。
ひとまず街に戻ろうとローズマリーが言うと、ベルは彼女らに頭を下げてきた。
曰く、大ダコの足を持って帰ることで、意気消沈している町の皆を活気付けたいのだと。
「どうするでち?足の一本ぐらいならリスクは大分減ると思うでちが……」
「いいじゃないか……、そういう賭けは嫌いじゃない」
人助けと海の悪魔に対峙する危険性を天秤に掛ける中、ルークが意気揚々と賛成の意を見せる。
「おっと、やる気を出してるのがここに一人」
「王国としても、困っている町を助けるのは大事だろう?上手く行けば交易相手としても良好な関係を築ける筈さ。つまり……」
「国としても大義名分を得る、か。なるほどね」
つまりはwin-win関係。
わざわざ突っぱねる話でもないということで了承したデーリッチ達。
道中サボテンの魔物に手痛い反撃を受けて針だらけになるアクシデントに見舞われるも、何とか森を抜け、後は海に面した道に沿って進んでいくのみ。
状況が穏やかになったことで、ベルの身の上話が始まった。
「なるほどね、君も中々タフな男じゃないか。ベル」
町に流れ着いた頃はカナヅチだったが、保護者のおじさんに負担をかけさせまいと泳げるようになったという話を聞き、感心するルーク。
「そういえばルーク君はハグレの人と一緒に過ごしていたって言ってたでちね」
「そうなんですか?」
「まあね。親父は仕事で家に殆どいなかったから町のおばちゃんおじさんの世話になることが多かったよ。それはあの地区のガキ共全員そうだったし、俺は特に旦那の冒険譚が好きだったんですよ」
「あー、アンタ貧民層だったもんね……」
エステルが当時を思い返す。
「お前も大して変わらんだろうが……。
そういう訳で家族仲は割と淡泊でね。いや、親父が事故で亡くなった時は悲しんだりもしたけど。そこに旦那が帝都から出るって話を聞いて、勝手についていきました。生まれ育った街を離れることには特に抵抗は無かったってことです。だからまあ、義理とは言え父親みたいな人を大事にできるのは羨ましいと素直に思うんだよ。俺は」
自分の半生を語っていくルーク。
「家族というのは複雑なのですね、ルーク君」
「義理の家族の方が上手く行く時だってあるだけですよ。ヘルさんはご両親に愛されてきたんじゃないですか?」
「...ええ、そうですね。その通りですわ」
「どうしたヘルちん。元気ないぞ?」
いつになく調子の無い声で答えるヘルラージュをヅッチーが訝しむ。
「それはお前もだろうがヅッチー」
((……こりゃ変な地雷踏んだかな))
お互いに一歩引いていたとは言え、相方の過去を知らずに踏み入ろうとしたのをルークは反省する。
「話を戻しましょうか。
旦那についていったとは言え俺も当時は13のガキ。喧嘩が得意でも魔物相手に戦闘ができるかと言えば全くでさ。
でもその代わり亜侠チームの連中は旦那を含めどいつもこいつも腕っぷしは立つ奴らで、俺は持ち物の管理とか細かい雑事を引き受ける立場だったのさ。
ほら、今でも戦闘は逃げ回りながら小手先でなんとかやっているでしょう?」
「その小手先に助けられているのは確かだよ。君の器用さは色々と役に立っているよ」
「そう言ってくれるならなによりですよ」
ローズマリーの評価に感謝を返す。
デーリッチの全体蘇生があるとは言え、生存力に長けたものがいるのは戦略面でもありがたいものであった。
「その点でいえば王様はどうなんですか?最初はマリーさんと二人の建国だったそうじゃないですか」
「こっちに来たときは一日一食でしのいでいたでちね」
「想像以上に過酷ッ!?」
「でもローズマリーとすぐに出会えたんでち。その日から喜びは二倍、負担は半分こでち!」
「本当は?マリーさん」
「負担七割ぐらいかなぁ」
「そ、そこは合わせとこうよ!美談にして!」
とは言え、その負担も決して嫌なものではないのだろう。
お互いに足りない部分を埋め合ってきた者同士が持つ雰囲気をルークは二人の間に感じていた。
「不思議ですね。バラバラだったハグレ達が助け合って一つにまとまろうとしている。そんな奇跡に比べたら、大ダコ撃破なんて楽なもんですよね!」
ベルの意気ごみに皆が同調し、一行は意気揚々と進んでいく。
「ほらエステルさん。海です!脱ぎましょう!」
海を横目に進む中、かなづち大明神がエステルに絡みだす。
「何で未だに絡んでくるのよ。この前までサービスブラックだってはしゃいでいただろ?」
「ああ、あの人は本気で嫌がってくるので自重を。やっぱりエステルさんが一番だなあ!」
「私が嫌がってないとでも!?」
「あの人涙目になるんですよ!?悪い事してるみたいじゃないですか!それにルークさんもいますから……セクシー話には乗ってくれるんですが、ヘルさんの事になると途端に話を打ち切ってしまいますから」
「悪い事してないとでも!?後あの気取り野郎については察してあげな」
年頃の男子とは言え、意識している女性について猥談に挙げるのは流石に気が引けるに決まっている。
「まあ挨拶はこの辺にしておいて、ヅッチーが元気ないんようなんですがどうしました?」
「あー……、ちょっと妖精達とトラブってるのよ」
「つまり、プリシラと?」
「そうなるんじゃないの?町の状況を見るとさ」
「そっか、あの子は少し危ういからなあ」
大明神は語る。プリシラは生真面目故に思いつめるきらいがあり、ヅッチーに依存することでうまく帳尻が取れていたのだと。
その二人の仲がこじれている。それはつまりプリシラのストレスを発散する先が無くなっているということ。それはそのまま、彼女が取り仕切っている妖精王国の動きにも影響する。
「深刻なことになっていなければいいんですけどね……」
――この大明神の心配は、致命的な形で的中することとなる。
投稿が延びる!文字数も無駄に増える!
もしやこやつ小説へたくそなのでは???
段々と敬語が雑になる主人公。
ルークとヘルちんの描写を大事にしようとしたのが主に延びた要因ですね。表のメインなんですからもっと推さねば。
感想は励みになるので大歓迎です。