長々と期間を開けた挙句年を跨ぐという去年と同じようなことをやらかしておりますが、失踪するつもりはありませんので応援よろしくお願いします。今年こそは、本編完結まで目指したい……っ!
以下、今回いるサブオリキャラ達のおさらいです
〇渡辺さん 从'ー'从
土魔法使い。ゴーレムとか生み出すの得意だよ。
〇ラプス
やんちゃリュージン。この中だとステゴロ最強。
『潮騒の出会い』
「おお。本当に下半身が蛸じゃないか。興味深い。付け根のほうとかどうなってるの?」
岩礁によって阻まれた入り江。
怪物が出ると噂されて人の寄り付かない私たちの住処に、彼女は遠慮なく踏み入ってきた。
人間の女。年は二十代後半から三十といったところ。
白波のごとく清らかな白金の髪は潮風に靡かせ、金色の瞳は水面から見上げた夜空の星のように煌めき、肌はよく磨いた貝殻のようになめらかで注意深くその衣で覆われている。
どれ一つとっても極上の物を見事な比率で配置したかんばせが形づくるにこやかな笑みと好奇心旺盛な眼差しは、心の底から興味深いという気持ちを余さずに表現している。
ここまで臆さない人間は初めて見た。二足歩行の人間たちのほとんどは、水棲に適した私たちの姿を見てまるで怪物のように扱ってくるから、それがかえって不気味で仕方ない。
「あの、どな「私たちに何の用よ、人間」
口を開こうとしたシオーネの言葉を遮って前に出る。
目の前の人間が何を企んでいるのか分からないが、口ぶりから察するに私たちの噂を聞きつけてきたのだろう。
人間たちが怯える魔物を討伐にきた冒険者か、あるいは好事家へ売りさばくためにきた商人か。はたまたその仕立ての良い服から自分の手で捕らえにきた貴族という可能性もある。
いずれにせよ、何かあれば彼女がすぐに海へ逃げ込めるように矢面に立って相手の出方を待つ。
有無を言わずに追い払うという選択肢もあっただろう。けれど
せめて正当防衛という大義名分を得られるまでは、こちらから下手なアクションを起こすことはできなかった。
「待ってくれ待ってくれ。別に乱暴を働くつもりはない」
女は顔の側で両手を広げて害意がないことをアピールした。だが顔色一つ変えることなく微笑みを続ける様子はその美麗さでも誤魔化しきれないほどに胡散臭い。脚の一本を岩に打ち付けて威嚇すると女はたはは、と苦笑して一歩下がった。
「うーん、手厳しいなこりゃ。どうしようか、ブーン」
女は背後を振り向いて控えていた男に呼びかけた。
見るからに重戦士とわかる鎧姿のふとましい体格の男。人間たちとほぼ同じ見た目だったが、この世界の人間ではないのは気配で分かった。ハグレとこの世界の人間は根本的に違うのだ。
「仕方ないおね。ここはハンサムで愛嬌たっぷりのモテモテな僕が行くお」
「何言ってんだこの白饅頭。
無駄にキリっとした顔で出てこようとした男を、女はしっしと手を払って下がらせた。ブーンと呼ばれた男はしょんぼりした感じですごすごと下がった。
正直言ってこちらもあのガタイは若干御免だった。連れてくるなら顔の良い奴を寄越せ。とはいえ、目の前のこいつ以上の顔が良い奴もそうそういないだろうけど。
「あーあ、目撃されたハグレがこんなかわいい女の子たちだって分かってたなら渡辺ちゃん連れてきたほうが良かったかな?」
「触手持ってる相手に彼女を出したら面倒な事態になるって言って省いたのは君だお」
「だって皆ここにいるのがタコ足持った化け物だとしか言わないもん。ちゃんと相手を見て言ってくれないとこっちもこっちで対応に困っちゃうよね。……あぁ、すまないね。化け物云々は比喩って言うか私たちが聞いた情報だから、そんなデリカシーのない言葉を言うつもりは無いから、ね?」
しょうもない言い争いを始める二人。一体こいつらは何をしにきたのだろうか。
そんな毒気の抜けるやり取りを目にしたからか、背中からシオーネが顔を出しておずおずと尋ねていた。
「……私たちを狩りに来た冒険者、ではないんですよね……?」
「おおっと失礼。名乗るのが遅れた」
女は均整の取れた顔で柔らかく微笑み、そして名乗った。
「私はアルカナ・クラウン。召喚士協会から出向してきたハグレ監査役。……ってのは置いといて、今はただの物好きなお姉さんだ。まずは君たちの事を教えてほしいな」
◇
『渦巻く陰謀』
海洋ホテル・ドナウブルー。
高級リゾートホテルとして開業するはずだったそこには、多くの深人たちが蔓延っていた。
丈夫な鱗と強靭な顎を持つ鰐人。螺旋状の殻からぎょろぎょろと目玉を覗かせる貝人。
召喚ゲートを通じて異世界からやってきた異形の者たち。
「あんじゃがうんじゃが。わんじゃがおんじゃが」
「むぐるふるぐる。いあいああごだし」
膝まで漬かるほどの水が満ちたその空間。深人たちは円を描くようにして並び、自分たちが奉じる神への祈祷を捧げる舞いを踊り、その口からは人の言葉では形容できない発音の祝詞が紡がれる。それらを透き通る肌とのたうつ複脚を持つイカにも似た姿の
召喚ゲートからは儀式に応じるようにして時折のたうつ触手の塊が溢れ出てるようにして這い出てくる。魚人たちがあがめる深神、その落とし仔。
意志があるのかすら定かではないその触手の群れは、獲物を求めるように部屋の外へと這い出ていった。
その様子をスーツ姿の男が満足そうに眺め、傾いた眼鏡を直しながら傍らの男に語り掛ける。
「とまあ、このように儀式は順調でございます。眷属たる落とし仔の数も増え、この調子ならば規定の時刻には間に合うかと」
「素晴らしい出来だ。やはり貴殿に頼んで正解だったな、ハグルマ殿」
「ええ。その節は本当に助かりましたよジェスター様」
ジェスターの言葉にウォルナット・ハグルマはへこへこと頭を下げ、神経質そうにその七三分けを櫛で整える。
エルフ王国との戦いでの手痛い敗走によって拠点の一つと多くの軍勢を失った彼は、支社の一つに逃れ息を潜めた。
そうして再起を図ろうと準備を進めていた彼の耳に飛び込んできたのは帝都侵攻失敗の報せと、怒り狂ったサハギン達による支社への襲撃だった。
自分たちにすり寄ってきた人間の甘言に騙され、憎きエルフを滅ぼすどころか多くの仲間たちを死地に追いやった。そして帝都でのハグレ王国の宣言が決定打となり単純なサハギン達にハグルマへ抱き始めていた不信を敵意へと変化させた。
最早ハグルマの言う事をまともに聞こうとしない魚人たちは、意のままに動かせる愚鈍な駒ではなくなっていたのだ。
瞬く間に支社は包囲され、部下たち同様串刺しにされかけたウォルナットを助けたのは、他ならぬジェスターだった。彼はウォルナットの窮地を救うとこの遺跡へ送り込んで命じた。再び深人を率いて、強大なる神性存在をこの世界に呼び寄せよと。
かなり危険な賭けであることに違いはない。呼び出す対象はかつての世界ですら邪神と畏れられ、ハグルマ本社の資本卿ですらおいそれと関わることを禁じられている上位深人。
頼みの綱はいにしえの魔導士スレイマンが遺した「契約の言葉」のみ。72種の契約深人を縛るこの呪文を偶然知っていたことが、ウォルナットが持っていた逆転の切り札でもあった。
だがそれは完全な制御を意味することではない。
契約に縛られようとも邪神は邪神。ただの人間が容易く御し得る存在ではなく、仮に僅かでも対応を間違えればこの世界ごと巻き込んだ破滅が訪れるだろう。
(臨むところよ!)
どちらにせよ己にはもう後が無いのだ。
帝都から海で隔たれたこの遺跡を中心として軍勢を呼び寄せ、
「ん、ふふふ」
狂気の混ざった笑みと共に左手袋を外す。
そこにあったのは水かきと鋭い爪を備え、強固な鱗に覆われた異形の手。
それが前触れもなく疼き始めるのは、決まって
眷属たちの声は届く。迷宮の奥底、深階にてまどろむ神の手はやがてこの世界に届くだろう。
来るべき時を見据え、ハグルマの名を騙る男は濁った眼で狂気の笑みを浮かべていた。
◇
『ぶらり海の旅』
「んじゃ、ここから海底を進んでいくぞ」
「そうは言いますけど、本当に大丈夫なんですよね?」
「大丈夫だって、ちゃんとシオーネバブルは発動してるから」
海岸を北上した行き止まり。アルカナの言葉にローズマリーは不安を口にした。
おあつらえ向きに存在する下り階段。そこから海底を歩いてドナウブルーまで行くというのだ。
ウズシオーネが操るスキュラ族の奥義《シオーネバブル》によって水中でも陸上と変わらず活動できるというのだが、やはり信じがたいものがあるのも確か。
「まあいいや。とりあえず私が先に行くから、皆も早く来るように」
アルカナが率先して海の下へと続く階段をざぶざぶと降りていき、あっという間にその姿は水面に消えていった。
「本当に行っちゃったよ……」
「でも出てこないってことはちゃんと潜れるのよね」
「よーし、ならば行くでち!」
「あー、ずるいぞー!」
どぼん、と盛大にデーリッチが飛び込んだ。
競うようにヅッチーもダイブ。恐れ知らずの王様たちである。
「ガキどもも行っちまったし、俺たちも行きますか」
「え、ちょっと待ってまだ心の準備が」
「それじゃ、ダーイブ!」
姉を相棒に両脇をがっちり固められたヘルの悲鳴は水しぶきに掻き消えた。
その後に続いて王国民たちもどんどんダイブしていく。
「宇宙遊泳は何度かあるが、海底散歩の経験はなかったのう。レッツダーイヴ☆彡」
「ドリントルさん躊躇いなさすぎではぁあ!?」
「スペースヤエちゃん深海編、こうご期待!!
「ほら、エステル、メニャーニャ。私たちも行きましょう!」
「わかったから引っ張らないでください!」
わくわくしているシノブに引っ張られた召喚士組が続いて水の中へと歩を進め、気が付けばローズマリーはその場にぽつんと残されていた。
「どうするー? 怖いなら私が一思いに投入するけど」
「いやいいです」
巨大な土の腕を動かしながら問いかける渡辺に、ローズマリーも意を決して水の中へと身を委ねた。
どぷん、と水の弾ける音が耳に飛び込む。覚悟していた全身が濡れる感触はなく、それどころかゆっくりと下に降りていくような不思議な感覚があった。
間もなく足元が接地し、ゆっくりと目を開ける。
「……わぁ」
視界を埋め尽くすのは360度のウォータービュー、全景が海一色の青く透き通った世界。
色鮮やかな魚群とサンゴ礁が織りなすその光景は、まるで寝物語に聞いたおとぎ話のよう。
「本当に、水の中で息ができる……」
「そうだろう? どうかな、生身での水中散歩の気分は」
「すごいでち! 水の中綺麗でちー!」
普通では見られない絶景にぴょんぴょんとはしゃぐデーリッチ。どうやら飛び跳ねるなどの動作も地上と変わらずに行えるらしい。
「ルーク君、これ現実よね? お姉ちゃん、私溺れてないよね!?」
「ちゃんと息できてるから安心しろって……え、いや待て、うおぉ、何だこれ。こんな冒険してるの俺たちが初めてじゃねえのか? やっべ、一番乗りってことじゃねえか。マジか! マジなのか!?」
「それにしても凄いわねこれ、マナで空気の膜を作っているのかしら? もしかして酸素も水を分解して生成してるわけ?」
「ええ。基本的にバブルが破損することはないので大丈夫ですよ」
水からマナと酸素を取り出し、水中にいる限りは半永久的に稼働し続ける魔法。まさに秘術と呼んで遜色ない代物である。
「これを広めて実用化したりとかすれば……」
「いやぁ、んなことしたらどうせ上の馬鹿どもが独占するし、ろくな使い道しないでしょ」
「ですよねー」
案の定な答えにメニャーニャは肩を竦める。帝都が特許を取り、ハグレから奪って独占した技術の中には人間には使いづらい、原理が不明などの理由で放置され、奪われただけになって発展も進まなくなったものがいくつも存在する。これがまだ人類発展のために研究と改良に励んでいるのならマシだったのだが、いくらでも別の世界から召喚すればいいという状況でそんな考えに及ぶわけもなく。恐らくずっと前から存在を知っていたであろうアルカナが情報を絶っていたのは大体そういう理由だ。
「……ふむ、この水中からのマナを取り出す過程を応用して液体中のマナを圧縮ができないかな……。そうしたら実質的なマナの容量が増えて多くの古代遺物を動かせるようになる。それに液体以外の物質への充填方法はどうだろう……例えば結晶に凝固させたら体積も小さくなるからさらに……」
「はーい、勉強熱心はよろしいが人様の技術を目の前で大っぴらに
「あ、すみません……」
バブルの膜を見ながらブツブツとつぶやくシノブの頭をアルカナはつついて窘める。ウズシオーネの眼が一瞬だが開かれて、「え、何こわ……」という言葉が漏れ出ていた。一族の秘術の仕組みをこうもあっさり解析されかければさもありなん。
そんなこんなで海中行軍とは名ばかりのダイビングツアーを満喫する一行だったが、
「皆さん、あれを見てください!」
ウズシオーネの言葉に立ち止まり、前方に位置するものを見る。
そこには
「ありゃなんだ。亀たちが追いかけられているように見えるが」
「あの亀たちはこの海域にいるギャング団です。この辺りでブイブイ言わせている暴れん坊たちなのですが、変ですね。彼らの縄張りはもう少し先の岩礁地帯のはずなのに……」
「どう見ても追い立てられてるな。あっちの魚人たちに見覚えは?」
「いいえ。この辺り、というかこの世界では全く見た覚えがないです」
「ということはハグルマが呼んだ魔物か。どうやら早速周囲の侵略行動に出ているらしい」
「完全に生態系を汚染してるな……どうする?」
「勿論、助けるでちよ!」
「おっけー。んじゃ渡辺、壁プリーズ」
「はいはーい」
義を見てせざるは勇無きなり。海亀たちを遮るようにして土壁が隆起し、ハグレ王国はその前へと躍り出る。
突然の闖入者、それも人間たちの存在に魚人側も面食らったように一瞬固まるが、すぐに相手を敵と認定して武器を構え出す。
舎利蟹指令がじゃぎじゃぎとハサミを開閉して鳴らすと、それを合図として彼らの足元に隠れていた何かがぞろぞろと溢れ出してきた。
「うわ、何よあのキモいの!」
エステルが思わず嫌悪的な声をあげたそれは、イソギンチャクの細い触手が塊となり、その中心には無数の目玉が密集した生物だった。
ぎょろぎょろと全方位の目玉を焦点も合わずに動かしながらうねうねと触手を蠢かせる様子を見て、福ちゃんが何かに気づいたように眉を顰めた。
「む……あのただならない生物、微かですが神気を感じます」
「神気?」
「うむ。とはいえ、あれそのものは神ではないがな。いわば神から生まれた下級の生命……眷属ということじゃの」
「あんなのが神様の眷属なのかよ……」
ヒトデのなり損ないみたいな怪物と、自分たちの神様を見比べるという何とも罰当たりなことをしながらルークは呟いた。
「まあ神と言っても色々あるからねぇ。とはいえちょっと数が多いな、シオーネちゃんよろしく頼むよ」
「はーい。それじゃあいきますね、ばっぽいーん!」
アルカナの要請に応え、奇妙な掛け声と共にウズシオーネが凄まじい速度で発進する。そのままぐるぐるとカツオ武士たちの周囲を旋回すると瞬く間に渦潮が巻き起こりカツオ武士たちが呑み込まれて舞い上がった。
これぞ真・ウズシオーネ。自らの名前を冠したスキュラが海中でも上位のヒエラルキーに属する理由のひとつである必殺技だ。
「うっひゃー、すげえな」
「ここまでできるのも水の中だけなんだけどね。それでも水中なら敵なしだから怖いわあの子」
そうして散々もみくちゃにされた魚人たちは落ちてきた後もぐったりとしており、そこを電撃で追撃して徹底的にダウンさせた。
「SYYYYYYY!!」
「ラプス!」
「任せろ!」
一瞬で部下を全滅させたことに怒りを覚えた舎利蟹指令のハサミ連撃をルークが短剣でいなし、その間に懐に潜り込んだラプスが拳を叩き込む。
だがその一撃は舎利蟹指令が腹部に身に着けていた亀の甲羅らしき胴当てに防がれて大きく威力を減退されてしまった。
「SYYYYYYY!!」
「っと、あぶねえな!」
衝撃に耐えた舎利蟹が繰り出した鋭いハサミを、割り込みに間に合ったマッスルが受け止める。
「ふーん、いいもん持ってるじゃねえか」
ラプスは水龍槍を解除し、背負っていた筒から釣竿を取り出した。その名を《七宝釣り》。盗人の呪いを帯びた釣竿を振り、放物線を描いた針が胴当てに引っかかった。
「おっしゃぁ、フィーシュ!」
そのまま見事な一本釣りで装備を剥ぎ取る。比較的殻の薄い胴体が暴かれ、そこに赤い筋肉の突進と鋭い斬撃が滑り込んだ。
「KANIIIIII!?」
急所に攻撃を叩き込まれた舎利蟹指令はその口から泡を吹き出して崩れ落ちる。
息の合ったセットプレーを決めたルークとラプスは互いに手を叩いて勝利を分かち合った。
「SPAMSPAMSPAM……」
「ばきゅーん☆」
しぶとく生き残って這いよろうとする触手塊をアルカナは指先から放たれた星型弾が四散させる。千切れて飛び散った触手の破片がびちびちと動いていたが、やがて大人しくなった。
「はい終了っと。いやーやっぱラプスちゃんいると効率がダンチね」
「おーよ。この程度ならいくらでも持ってきな」
「しかしいい感じのおたからだなコレ。ラプスの一撃受けて凹み一つねえや」
「それは多分ウミガメ族の秘宝ですね。侵略を受けた時に奪われたんだと思います」
「ってことは返したほうがいいんじゃねえか?」
マッスルが海亀ギャング団の方を見ると、亀たちは気にするなと言うようにぐるぐると回って泳いだ。
「……なんかくれるみたいだな」
「だったら報酬ってことで貰っとこうぜ。あたしが盾持つ趣味ねえからあんたらにやるよ」
「お、サンキューな。んじゃマッスルが装備な」
「甲羅を背負った牛ってかなり奇妙な見た目だね……」
驚異も去り、デーリッチのヒールで傷も癒えたウミガメーズは悠々と海の彼方へと去っていった。その様子をデーリッチは手を振って見送る。心なしか彼らも手を振っているようにも見えた。
「気を付けていくんでちよー!」
今後彼らは新天地を求め、対岸であるアッチーナ海岸にたどり着き、そこでまたひと悶着あったりするのだが、それはまた別のお話。
「しかし見事な光景ですわねぇ。水面から降り注ぐ光のカーテンの中を優雅に歩くわたくし――まさにセレブに相応しい舞台だと思いませんこと?」
「そうだねぇ。ヴォルちゃんのおかげでフレイムもバッチリ効いてるし、最高の思い出間違いなしだ!」
「エステル、流石にその返しはどうかとアルカナさん思うワケ」
「この人炎をぶち込むことしかアイデンティティありませんから……」
「なにおー! 私だってこの光景の素晴らしさについて感じってるんだからね!? それはそれとしてフレイムが通用するのもまた大事ってだけで……」
「はいはい。ほらほらヴォルケッタちゃん、あんな品性の欠片もないフレイムゴリラとつるんでいると野生が移るから私と一緒にいなさい。ついでに道すがら魔法のあれこれについて話してみよう。君の腕前は道中で見せてもらったから、ここはひとつ手取り足取りアドバイスをしてあげようじゃないか」
「え、ええ……ってどうして肩とか腰に手を持ってくるんですの!?」
「おうさりげなくセクハラ目論むのやめーや」
そうして時折襲ってくる魔物をシバきながら海底散歩をエンジョイしつつ、ハグレ王国は目的の場所にまでたどり着いた。
「あぁ、折角作った看板が……」
「アホみてえな看板に挿げ替えられてるな」
ドナウブルーの看板は撤去され、代わりに『神聖ハグルマ資本主義教団本社』と無機質な看板が立てられていた。
「確か入り口は正面の昇降機だったね」
アルカナが扉の前まで歩いてポチポチとボタンを押すが、昇降機は一向に動く様子を見せない。
「案の定ロックがかかってるか」
「あたしがいっちょブチ破ってやろうか?」
「それするとエレベーター来なくなるからダメー」
「だったらラプス、お前こういうの開けられる鍵持ってなかったか? あの板みたいなやつ」
「あー……わりぃな、アレどっかいったわ」
「オイオイ……勘弁してくれよな」
そんなやり取りを余所に、アルカナは懐をまさぐり、掌サイズのケースを取り出した。
「なんでちかそれ?」
「ハッキングツール。古代文明の機器ならだいたいアドミン権限でこじ開けられる素敵アイテムだ。こういう時のために用意しておいた」
「おぉ、流石は研究者ってか」
「いやいや、なんでそんなもの用意できるのよ。古代文字が読めて操作できるのはまだしも、そういう装置を作るのはまた別の話でしょ?」
ルークは素直に感心するが、曲がりなりにも古代文明の高度さをよく知るエステルはそのトンデモな内容について追及せざるを得ない。
「私の伝手を舐めてもらっちゃ困るよ。さてさて、確かこの辺を開ければっと、ここだな」
格納されていたコンソールを開け、差込み口に端子を接続する。そしてあらかじめ聞いておいた起動パスワードを打ち込んでいく。
「パスワードは確か"AMBTSNSCR"っと。……よし、これで操作可能だ」
そして再びボタンを押すと、すぐに稼働音が聞こえ始めた。
「皆、準備はいい? ……よろしい。それじゃあハック&スラッシュと行こうか。とにかく最短で奥まで突っ込むよ」
ガコンと口を開けた扉の中へ、彼女たちは躊躇いなく足を踏み出した。
○"AMBTSNSCR"
……ただの感傷だよ。それ以外の何物でもないさ。
○ラプス:サタスペ風ステータス
犯罪4 教養3 恋愛1 生活2 戦闘7
肉体7 精神5 破壊力8 攻撃力5 反応力5
性業値3
習得カルマ
異能:《修羅場》《無影脚》《旋風脚》《震脚》《投げ技》《ハメ技》《追撃》《韋駄天》《一騎当千》《血の饗宴》《聖痕》《鉄腕》
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趣味:アウトドア、飲食、スポーツ
おたから:《七宝釣り》《勇気のマフラー》《夫婦どんぶり》《妖血》《反撃のラケット》
続きはもう少ししたら投稿できると思います。
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