傷ついたカズマさんに祝福を   作:吉岡栄

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ウィズ魔道具店にて

ダストの提案に乗り、渋々のアクアを連れて3人はウィズ魔道具店へ向かってた。

 

「何か知っていてもいなくても、初手ゴッドブローを喰らわしてやるわ!」

 

ジャブをし始めたアクアを、ダクネスは止めに入った。

 

「落ち着いてくれアクア!仲が悪いのは十分知っているが手がかりが掴めるチャンスなんだ。今日は我慢してくれ!」

 

「そうですよ。今回だけ我慢すればいいんです。今我慢すれば最近の寂しい食事も無くなるかもしれないんです。そのチャンスを棒に振る気ですか?それと、次に会うときにボコボコにすればいいだけですよ?わかりましたか?」

 

「うぅ・・・しょうがないわね・・・今回だけだからね?」

 

それでも納得いかなかったのか、アクアの目つきは鋭いままだった。

 

 

 

3人は無事、ウィズ魔道具店の入り口に辿り着く。

 

「いいか、アクア。今日だけは我慢するんだ。わかっているのな?」

 

「わかってるわよ!私もそこまで子供じゃないわ!1回だけなら余裕で我慢できるわよ!」

 

「ふ、不安ですね・・・」

 

アクアに対して警戒しながら、ダクネスが扉に手をかけた。

 

 

「いらっしゃいませー!・・・あら!アクアさん達じゃないですか!お久しぶりですね!」

 

満面の笑みでこちらに駆け寄るウィズに、ダクネスが尋ねた。

 

「久しぶりだな、ウィズ。今日はバニルに聞きたいことがあってきたのだが、バニルはいるか?」

 

「バニルさんですか?裏で魔導具の整理をしているのですが・・・もしかして、聞きたい事って、カズマさんのことですか?」

 

カズマの名前が出た途端、猛スピードでウィズに飛びかかるアクア。

 

「ちょっとウィズ!なんでカズマさんのことだってわかったの!?もしかしてあんた、カズマさんに何か唆したんじゃないでしょうね!デストロイヤーの時のようにキスをしようとして魔力を吸い取ったように、またカズマさんのすけべ心を利用して!」

 

「ち、違いますよアクア様!あの時の事は本当に申し訳ないと思ってますから!アクア様話を聞いてください!」

 

 

お茶を貰い、一息つく3人。

 

 

「それで、何であんたは聞きたいことがカズマさんだってわかったの?」

 

威圧的な態度で言うアクア。嘘をついたら本気で浄化されそうな気がし、ウィズは慎重に言葉を選ぶ。

 

「じ、実はですね、カズマさんが一週間ほど前にお店に来たのですが、その時いろいろありまして、精神的に傷ついてしまったんですが・・・そ、その原因を作ってしまったのは私のせいでもあるというか・・・」

 

「やっぱりアンタのせいじゃない!」

 

胸ぐらを掴もうとするアクアを、ダクネスは止めに入った。

 

「今日は我慢するっていったじゃないか!」

 

「あれは仮面やろうに対してよ!ウィズに対しては我慢するとは一言も言っていないわ!」

 

「子供ですかアクアは!お願いですから落ち着いてください!」

 

必死になだめる2人。 

 

「ふん!」

 

そっぽを向いてしまったアクアに、あわあわしてしまうウィズ。

 

「そ、その、アクア様?長くなってしまうのですが、聞いてくれませんか?その、一週間ほど前にカズマさんが訪ねてきましてね・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

一週間前

 

時間は夜の8時。

 

 

ーーーーカランカランーーーー

 

閉店間際、ドアベルが鳴り、今日はもうお客さんは来ないだろうと不貞寝していたウィズは慌ててカウンターの机から顔を上げた。 

 

「すすすいません!!いらっしゃませー!・・・って、あれ?」

 

店内を見渡すも、誰もいない。

あ、あれー?と誰かいないか、店内を散策するウィズ。

 

「寝ぼけていましたし、もしかして幻聴を聞いてしまったのでしょうか・・・。でも確かに扉が開いた気がしたんですよね」

 

首を傾げ、扉に近づこうとすると、後ろから突然声をかけられた。

 

「よっ、ウィズ」

 

振り返ると、仮面をつけた、まるで小さくなったバニルのような男が気さくな挨拶をしてきた。

 

 

「ひ、ひゃあああああああ!!」 

 

 

突然不審者が現れ、思わず仮面に向かって右ストレートを喰らわせるウィズ。

 

そのまま後ろに吹き飛び、商品棚に頭をぶつける謎の男。その拍子でカウンターに置いてあった小物や魔導具が落ちてしまった。

 

「い、いってええええ!ご、ごめんウィズ俺だよ俺!カズマだよ!驚かせて悪かったって!」

 

強く頭を打ち、よろけながら立ち上がるカズマ。

 

仮面を取り、顔を晒すが予想以上に痛かったのか、鼻を抑えながら謝罪した。

 

顔を確認し、胸に手を当て安堵するウィズ。

 

「も、もう!本当にびっくりしたんですね!カズマさんが悪いんですよ!」

 

「すまんすまん!ちょっと驚かす練習をしていてな。ほ、ほら、モテる男はサプライズとか、驚かすの上手いだろう?なんて・・・」

 

「そ、そうですねー・・・」

 

棒読みで言うウィズに、どことなく怒りを感じ取ったカズマは、こういうサプライズや冗談は気を付けようと深く誓った。

 

 

 

騒ぎを聞きつけたのか、店の奥からバニルがやってきた。

 

「おやおや、最近より怠惰な生活を送りながら日々爆裂娘と変態クルセイダーに誘惑され関係が進展しそうになるも結局は一線を超えず悶々としている男よ。こんな時間にどうしたのだ?そんなカッコ良い仮面を持って」

 

「もも悶々としてねぇーし!!!」

 

図星を突かれ恥ずかしくなったカズマは仮面をつけ、顔色を見られないようにした。

 

「うーむ実に良い悪感情!1日が終わる頃に頂けるとは何たる幸運!さーてさて小僧、なにようか?」

 

気にしてることいいやがって・・・とフルフルしながら、カズマはポケットから、黒く四角いものを取り出した。

 

「この魔道具のことなにか知ってるか?見た目はサイコロっぽいんだが、感じとれる魔力が尋常じゃなくてさ。勘なんだが、これはとても危険なものだと思うんだ。それで魔道具に詳しいウィズに話を聞こうと思って立ち寄ってみたんだが・・・」

 

バニルとウィズは、手のひらに乗った魔道具を見て考え込み

 

 

「ふむ・・・」

 

「これは・・・」

 

 

「サイコロだな(ですね)」

 

 

想像していたとうりものだとわかり、少しホッとするカズマ。

 

「これ、やっぱりサイコロなのか?形だけは似てるけど数字も数を表す点とか模様とかなにも書かれてないから別物だと思ったが、あってたのか」

 

「おそらくこれは魔力を込めると模様が浮き出るタイプのサイコロだと思います。キラキラ光るサイコロがおしゃれだと一時期子供達に人気があった頃がありましたね。しかし、ここまで魔力を感じるものは珍しいですね。カズマさん、これはどこで見つけたんですか?」

 

「え、えーとそれは」

 

(実はそれ、アルダープの屋敷で貰ったやつで、さっきクリスと義賊をしていた際置いてこようとしたけどバチが当たりそうだから持ち帰った・・・とは言えないよな・・・変に嘘をついたらバニルに見通す力を使われそうだし。クリスについて勘繰られたらいろいろとややこしいことになりそうだな)

 

「前にアルダープの屋敷で警護した際、アルダープに貰ったんだよ。いらんから持ってけと言われてさ。けどいろいろと悪名高かったあいつに渡されたから何か怖くてしばらく放置してたんだ。あれからしばらく経って、いい加減こいつが何なのか知りたくなってさ」

 

(よ、よし!それっぽいこと言えたぞ!アルダープの屋敷で警護していたのも貰ったのも事実!大丈夫!変に疑ってこないはず!)

 

 

「アルダープ、か」

 

「そういえばあの方はどうしたのでしょうかね?随分前に悪行がバレて以来行方不明だそうですし」

 

「あまり人のことを探ろうとするなポンコツ店主よ。だからどんどん行き遅れになる事がわからないのであるか?」

 

「人のことを探るなって、バニルさんにだけは言われたくないですよ!あと最後の一言は余計です!」

 

ウィズがプンスカし始めたのを他所に、カズマは試しに、慎重にサイコロに魔力を込めた。

 

すると・・・

 

床全体に巨大な魔法陣が現れ、ホログラムのようなボードゲームが3人の前に現れた。

 

「はわわわ!なにがどうなっているんですか!?」

 

ボードゲームはカズマの胸元の高さに表示されていた。

 

「成金小僧よ。さては勝手に魔力を込めてしまったな?」

 

「だってほら!これってそう使うんだろう!?キラキラ光るだけだって聞いたから試しに魔力を込めたんだそれだけなんだよ!」

 

慌てふためくカズマはバニルの後ろに隠れた。

 

警戒するバニルとウィズ。

しばらくすると、ボードゲームの頭上に、ダンディな顔をした金髪の目つきが鋭いおじさんが現れた。

 

 

「リアルボードゲーム『ジュメンジ』を起動せしものよ。待ちくたびれたぞ。何年経ったと思っておるのだ。勝手にゲームを中断しおって。ゲームの内容を考える我の身になって考えてみろ・・・おや、誰だお主らは?」

 

突然喋り出したこのおっさんは、心底機嫌が悪いみたいだ。

 

 

「これはこれは初めまして、私、ウィズ魔道具店のウィズです!以後、お見知り置きを」

 

ニコニコと挨拶をするウィズ機嫌。

 

「丁寧な挨拶感謝する。我の名はアレン。このボードゲームの開発者にしてその身をボードゲームに言葉通りささげた者だ。そこの2人は何者だ?アルダープの仲間であるか?」

 

「これこれは初めまして。我輩の名はバニル。人の悪感情が三度の飯より好きな悪魔である。」

 

「お、俺の名前はサトウカズマ。これでも魔王軍幹部を幾度となく倒した実績がある男だ!嘘じゃないぞ?」

 

「サトウ・・・カズマ?佐藤・・・」

 

名前を聞いた瞬間眉がピクつくアレンという男。

 

「黒髪で黒い目。さてはお主、日本の転生者か?」

 

思いもよらぬところで転生者であることを見破られ、動揺するカズマ。

 

転生者?と小首を傾げるウィズを傍目に、カズマはもしかして思い尋ねた。

 

「そ、そうだけど・・・。もしかして、あんたも転生者なのか?」

 

「あぁ。もう何十年も前になるがな。青い髪の美しい女神に導かれこの世界に転生した。いやはや、あれから何年経ったことやら。懐かしいであるな・・・」

 

(アクアは今何歳なのだろう。本人に問い詰めたら絶対殴られるので聞くことはもうしないが。)

 

「名前や見た目的に海外の人っぽいけど、日本人なのか?確か日本人を転生者に選んでいた気がするけど」

 

「生まれはアメリカだが、3歳の頃からずっと日本で暮らしておった。そのせいかも知れないが、我も転生者に選ばれたのだろう」

 

同胞に出会えたのが嬉しいのか、アレンも少し嬉しそうだ。

 

「会話が弾んでいるところすまないが、アレンといったか?この状況は一体どうなっておるのだ?このようなボードゲームは見たことがないのであるが」

 

「転生特典として貰った能力を使い、私が作った世界に一つだけのリアルボードゲームである。転生する前・・・前世で見たボードゲームをモチーフにした映画が印象的でな。それを私の能力で再現したのだ」

 

その映画を見た記憶があったような気がするカズマだが、内容がイマイチ思い出せない。

 

「なぁ、その能力ってなんなんだ?」

 

「私がゲームをつくり、そのゲームの一部となる能力だ。この世界に転生する直前まで女神様とゲームの内容を一緒に決めていたのだが、起動しないと外に出れない仕様にしたのは失敗であったな。一度決めたルールは変えられないのだ。出れない方がゲームっぽいという理由で賛同した私が間違っていた」

 

(あの野郎!昔から余計なこと言ってやがったのか!?)

 

なんだか自分が悪いことをしてしまった気分になり、とりあえず謝るカズマ。

 

なぜ謝る?とアレンさんに言われたが、今は何も言わないことにしよう。

 

「ところでアルダープのやつはどこに行った?あやつ、途中でゲームをほっぽりおって。マス目の指示に失敗した人間は裸になるという罰ゲームを追加してくれという要求を拒否したら強制終了したからのう」

 

「ちょっとその罰ゲームについて詳しく!!」

 

妙に食いついてくるカズマに、ウィズは少しだけ冷たい目で見ていた。

 

「言ったであろうリアルボードゲームだと。私のゲームは実際に行うのだ。マス目に書かれた指示に成功したらリアルで褒美が貰え、失敗すれば罰ゲームを実際に喰らうというものだ」

 

「な、なるほど・・・罰ゲームを追加してくれ!て言ったってことは、追加できたりするのか?」

 

「可能である。と言っても私は紳士であるからな。女性が絶対にしたくないであろうことやエロいことは追加しないことにしておる」

 

静まり返るカズマ。興味が薄れたのか、ウィズの胸をチラ見し始めた。

 

「アルダープのことであるが、何があったのかは知らぬが行方不明になっておる。消息不明になる前にアルダープはそこにおる脳内ピンク小僧にこのサイコロ・・・ジュメンジをくれてやったそうであるぞ」

 

「ほう・・・あやつが行方不明に・・・」

 

こんなときまで心を読むな!とカズマは心の中で突っ込む。

 

「事情はわかった。つまり、今の私の所有者はサトウカズマ。君で間違いないな?」

 

「あ、あぁ、合ってると思うよ。」

 

(私の所有者、という言い回しはちょっと引っかかるが・・・)

 

「なら話が早い。アルダープがいなくなった今、お主が!我が作ったこのジュメンジで遊んではくれないか!ここにはお主も含め3人いる!ちょうど良いではないか!さぁ、さっそくこのサイコロを」

 

「いやいいよ。元々このサイコロが何かを知りたかっただけだし。それにエロいことできないんだろ?ならいいや」

 

ズコーっと、昭和のギャグのようにこけるアレン。いや、宙には浮いてはいるんだけど。

 

「こ、ここは遊んでくれる流れではないのか!頼む!我はここ数年誰にも遊んで貰えず退屈していたのだ!1回だ!1回だけでいい!この場にいる3人が1回ずつやるだけで良いのだ!バニル殿といったか、お主はどうだ?!」

 

「我輩も遠慮しておくぞ。閉店時間が近いのもあるが、今はそんなものに時間は割けん。そこにいる小僧が考えた商品を作らねばならぬしな。」

 

そ、そんな・・・としょんぼりするアレン。

 

「カズマさん!バニルさん!アレンさんが可哀想ですよ!聞いた限りでは楽しんでいた最中無理やり終了させられそのまま放置されていたみたいじゃないですか!1回だけでも遊んでみましょうよ!それに、なんだか楽しそうじゃないですか!」

 

説得するウィズに、感動したのか涙目になるアレン。

 

断りづらくなり、カズマはバニルをみる。

 

やれやれ、とため息をついた後。

 

「1回だけであるぞ。それ以上は付き合ってやれん」

 

その言葉を聞いて、パーっとおもちゃを買ってもらった子供のように一瞬だけ笑顔になった後、ルールの説明をし始めた。

 

 

 

 

ホログラムのように表示されたボードゲームを囲むように立つ3人。

 

ボードゲームの上に浮くアレン。

 

「起動する際に使ったこのサイコロを使い、でた目の数だけマス目を進み、そのマスに書かれた指示を成功した場合褒美が貰え、失敗した場合は罰ゲームを受ける、基本的な流れはこうである」

 

「罰ゲームを受けるのは知っていたが、褒美が貰えるって、いったい何が貰えるんだ?」

 

「いろいろとあるが、エリスやレアな素材が貰える。偽物ではなく本物であるぞ。試しに、ほれ』

 

右手の人差し指を天に向けると、空からエリスが降ってきた。

 

それを迷いなく拾い上げるバニル。

「ふむ。これは紛れもなく本物のエリス硬貨であるな。どういう仕組みかは知らぬが、あの忌々しい女神の力が元と考えると、あまり受け取りたくはないな。勿体ないので貰うが」

 

「す、凄いですね!このゲームの指示に応え続けられることができれば大儲けできますよ!」

 

これで沢山魔導具が買えます!と言った直後ジリジリ近づいてくるバニルに気付き、冗談ですからうたないでくださいと涙目になるウィズ。

 

「こほん。確かに答え続ければそうなることも可能であろうな。しかし、先ほども言ったが罰ゲームもある。忘れぬようにな」

 

「なぁ、その罰ゲームってどんなのがあるんだ?エロいのがないのは残念だが、エリス没収とか、スキルポイントが減るとかか?」

 

「そのような類いの罰ゲームもあるが、人によっては洒落にならない罰ゲームもある。沢山あるのでゲームが始まってから話したいのだが。ちなみに、マス目の指示は最初から決まっておるが、一度止まると指示が変わる。そして、罰ゲームはマスに止まった際ランダムに決まる。稀にその洒落にならない罰ゲームが出てくることもあるが、比較的簡単な指示の時に出るので大丈夫であろう」

 

一通りルールを聞き、ウィズがサイコロを手に取った。

 

「では、とりあえず初めてみましょうか!あの、最初は私からでいいですか?」

 

「好きにするが良い。」

 

「俺は3番目にするよ。最後ってほら、幸運が舞い込んできそうだし」

 

結果、ウィズ、バニル、カズマの順になった。

 

「では、ウィズ殿。サイコロを振るが良い。」

 

「え、えーい!」

 

床にサイコロが転がり、5の目が出るとボードゲーム上のスタート地点にある女性のような人形が動き始めた。

 

5マス進んだ瞬間、ウィズの目の前に文字が映り出された。そこには指示と褒美、罰ゲームが書かれているのだろう。

 

「えーと、指示は、『爆裂魔法の詠唱を3割以上間違えずに言え』ですか。褒美は10万エリス・・・じゅ、10万エリス!?」

 

予想以上の額に驚くウィズ。

 

(めぐみんなら余裕だろうなぁ。俺もいけるんじゃないか?)

 

爆裂魔法を誰よりもめぐみんと共に間近で見てきたカズマは、俺にも来てくれと願い始める。

 

「あっ、そうでした罰ゲームもありましたね。『魔力を一割消費する』ですか」

 

「おやおや、これはついてないですな。ネタ魔法だから覚えている人は少ないだろうと思い指示に入れてみましたが、まさか最初に引いてしまうとは」

 

同情の目でウィズを見つめるが、ウィズはなんの迷いもなく詠唱を言い始めた。

 

 

 

 

「なぜだ!なぜネタ魔法を一語一句間違わずに言えるのだ!」

 

 

(そりゃびっくりするだろうなぁ。この世界で爆裂魔法がら使える数少ない人材がここにいるんだし)

 

 

「理由はいろいろとあるのですが、取れるから取ってみた、というか・・・」

 

信じられないものを見る目をするアレンに、カズマは続けて言った。

 

「ウィズの他にも爆裂魔法を使えるやつがいるぞ。俺のパーティー仲間なんだけどな、そいつ、爆裂魔法しか使えないんだけど」

 

「ははははは。冗談が上手いですねカズマ殿は。そんな人がいない事くらいずっとゲームの中にいた私にもわかりますよ」

 

(そりゃ信じてくれないよな。うん。これが普通の反応だ)

 

「でも確かに、ウィズ殿から底知れない魔力を感じますな。バニル殿からも得体の知れない力を感じます。さすが悪魔といったところでしょうか。カズマ殿からは・・・」

 

カズマの体を一瞥した後、「あっ」という顔をして慌ててゲームを進めようとする。

 

「さ、さて、お次はバニル殿ですぞ」

 

「おい!なんかいえよ!わかってるけどスルーするのはそれはそれで堪えるぞ!」

 

「あ、いえ、転生者にしてはその・・・がんばっておりますな!」

 

無理やりはぐらかそうとするアレンに精神をやられるカズマ。

 

「ふははは!まさかこんな場面で悪感情を頂けるとは!アレンよ、感謝するぞ!」

 

いつにも増してテンションが高いバニル。

 

褒美として10万エリスが入った袋を受け取り、嬉しそうに抱え込むも「無駄遣いは治さなければな、これは没収である」と袋を奪われたウィズは泣いていた。

 

帰りたくてしょうがなくなったカズマを他所に、バニルは奪い取った袋を左手に持ちながら、テンション高く右手でサイコロを振った。

 

「6が出ましたな」

 

バニルのような人形が6マス進むと、バニルの目の前に文字が表示された。

 

「なになに・・・『アレンの手のどちらに消しゴムがあるか当てろ』であるか。報酬はドラゴンの爪。中々の報酬ではないか!ふははははは!よし、アレンよ、さっさと消しゴムをどちらかの手に隠すが良い!」

 

「バニル殿、罰ゲームは見なくて良いのか?先ほど言ったが、稀にだがひどい罰ゲームもあるのだが。だからこそそれに釣り合うよう報酬を良くしたのだが、本当に良いのか?」

 

「お構いなくアレンよ。50%の確率で当たるのであろう?それでドラゴンの爪が貰えるのであればどんな罰ゲームでも怖くないわ!」

 

「そ、そうであるか?バニル殿がそういうのであれば仕方ないですな。では、どちらかに隠しますぞ?」

 

上空に浮かびながら消しゴムを隠した後、下に降りてきたアレンはバニルの前に行く。

 

「では、バニル殿。どちらの手だと思うか決めてくれるか」

 

「うむ。そうであるな。50%の確率なのでどちらを選んでも良いのであるが、そうだ、ここは勘を信じて右にするぞ」

 

(なんて白々しいんだバニルのやつ!)

 

「な、なんと正解だ。勘が冴えてますなぁバニル殿。では、褒美のドラゴンの爪をくれてやろう」

 

なにもない空間からドラゴンの爪が現れ、バニルの手に収まった。

 

「バニルさん卑怯じゃないですか!見通す力を使って100%じゃないですか!」

 

「何を言っておるのだ生き遅れ店主よ。我輩はそんな力持ち合わせておらぬが」

 

あくまでシラを切るバニル。

 

アレンが「まじ?」という顔でこちらを見てきたので、カズマは頷いた。

 

「ちょっとバニル殿!それはズルではないですか!イカサマですよ、イ・カ・サ・マ!」

 

「別に隠していたわけではないがな。それに、イカサマをしてはダメというルールは聞いておらぬぞ?」

 

ぐぬぬ・・・とピキピキするアレン

 

「バ、バニル殿。そういうのはいけないと思いますぞ?人として?」

 

「我輩は悪魔なのでな。そんなことは知らぬわ!・・・フハハハハ!!!うむ、実に良き悪感情である。この短時間に3回も味わえるとは、今日はついておるなぁ!」

 

何を言ってもダメだと気づいたのだろう。アレンは諦めてカズマの方へ行く。

 

「えっと・・・カズマ殿。サイコロを振ってくだされ。これで最後ですので。指示を終えればすぐ帰れますので、安心してくださるよう」

 

早くお開きしたさそうなので、カズマはサイコロを受け取り床に転がした。

 

「出た目は3ですな。」

 

カズマのような人形が進むと、目の前に文字が表示された。

 

「なになに、指示は『10秒間半径1メートル以内から出ないこと』か。簡単じゃないか」

 

楽勝じゃん、と意気揚々としていると

 

「その指示は、その場にいる人達がどんな手を使ってでも指示された対象者を外へ出させようとする、皆でワイワイするのが醍醐味のものなのだが・・・そういう事は期待できませんな」

 

「なにその、イケてる人たちがやりそうな遊びは!なんか傷つくんですけど!」

 

「あ、安心してくださいカズマさん!そういうことでしたら、私が参加してあげますよ。」

 

「そういうことに憧れている小僧よ。しょうがないので、我輩も協力してあげようではないか。なに。貴様を外へ出そうと密着してくるであろうへっぽこ店主に抱き着こうと考えている汝を邪魔するだけだ。安心するがいい」

 

「安心するがいい、じゃねーよ!言うんじゃねーよ!ウィ、ウィズ!?だ、大丈夫。そんなことは考えてないからさ、なぁ、だから安心して近づいてきてくれていいんだぞ!?」

 

少しづつ離れていくウィズにがっかりしていると、アレンが耳元で囁いてきた。

 

「カズマ殿、褒美と罰ゲームの確認を忘れずにな」

 

「そうだった!忘れてたよすっかり。えーと、褒美は『新鮮なサンマを収穫できる確率が1週間20%上がる』か。なんかぱっとしないなぁ。」

 

「あくまで楽しさ重視、ですから。ウィズやバニル殿の褒美は幸運な方なんですよ。」

 

そんなものか、と納得することにしたカズマ。

 

「罰ゲームは何だ?えーっと?『トラウマを植え付けられた場所に強制的にテレポートする』か。おいちょっと待て!俺だけ罰ゲームのレベル違いすぎないか!?」

 

「カズマ殿引いちゃいましたか。それは1%の確率で現れる『本当に嫌な罰ゲーム』です。確かそれは女神様が考えた罰ゲームだった気がしますぞ?」

 

アクアのやつ!とんでもない罰ゲーム考えやがって!

 

「でも安心してくださいカズマ殿。半径1メートル以内に10秒間いればいいだけですから。」

 

「私は何もしませんので、密着しませんので、安心してくださいね?」

 

「我輩としては悪戯してみたいところではあるが、儲け話のこともあるのでな。心に傷を負わせるようなことはせんから安心するが良い」

 

その言葉を聞いてほっとし、アレンの方を見る。

 

「では、カズマ殿。これからカウントを始めますが、用意はいいですな?」

 

「お、おう!初めてくれ!」

 

(そうだ、ただ10秒だけこの場に止まればいいだけだ!特に難しいことなんてないじゃないか!大丈夫、何もなければ大丈夫なはず!)

 

 

アレンが持ったストップウォッチのような物で、カウントが始まった。

 

 

1.....2.....3.....

 

 

アレンと一緒に、見慣れないストップウォッチを見ながらカウントするウィズ。

 

 

(10秒だけだと言うのに妙に緊張するな・・・)

 

手汗が出始めたことに気づくカズマ。トラウマを植え付けられたところを無意識に考えてしまっている。

 

 

そのとき。

 

 

カランカラン・・・と、小さい音をたて、さきほど右ストレートをくらった際に落ちてしまった魔導具が、後方からカズマの方へ転がってきた。まだ、誰もそのことには気が付いていない。

 

 

4....5....6....7....

 

 

足に意識し過ぎたせいか妙に疲れてしまい、片方の足を休憩させようと右足をあげる。

 

あげたことにより、足が死角となり見えなかった魔導具が目に入るウィズ。 

 

気づいたウィズが咄嗟に、危ない!と叫ぶも遅かった。

 

「えっ?」

 

何事かとも思ったカズマはそのまま右足を地面につこうとするも、魔導具を踏んでしまい、そのまま大きく後ろへ転んでしまう。

 

「い、たたたた。何なんだ一体?」

 

後ろを確認すると、踏んでしまった魔導具が身に入り、アレのせいかと理解する。

 

「あ、あの、カズマさん?その・・・」

 

何か言いたげな目をするウィズ。

 

そして気づく。 

 

そうだ、1m以内に出てはいけないことを。

 

「その、カズマ殿。とても言いづらいのですが、1m以上出ちゃってますね・・・」

 

頭の中が真っ白になり始めたのも束の間、カズマの周りを魔法陣が囲う。

 

「カズマ殿。すいません!罰ゲームは即時、実行されるのです。そうできているのです。なので、このまま魔法を止めるこということはできないので」

 

パニックにし始め、カズマの絶叫が店内に響き渡る前に、カズマはテレポートしてしまった。

 

 

 

 

 

「う、うわああああああああああ・・・あれ?」

 

気がつくと、カズマはどこか見覚えのある平原にテレポートしていた。

 

夜ということもあるが室内から外へテレポートしたこともあり、一段と夜の冷たさを感じている。

 

「ここは・・・どこだ?」

 

妙に頭に引っかかるものの、ここがどこかは思い出せない。

 

外ということもあり、モンスターの出現に警戒し千里眼スキルを使うと、カズマの後ろに、複数の生命反応を確認した。

 

恐る恐る振り返ると、そこには、思い出したくもない、モンスターの顔が目の前にあった。

 

「あらあら!あなたはあの時の男前なお兄さんじゃない?!突然現れるなんてびっくりしちゃったわ!もしかして私達、運命の赤い糸で結ばれているのかもしれないわね!」

 

ふーっ!ふーっ!と鼻息を立てるオーク達の数を確認する前に、カズマは全力で逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

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