ウォーターガール   作:アノヒ

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ーーーーガルゥ

ーーーー日本の国土の殆どが山と言うならば、山の殆どは海に面している

 

かつてのささやかな賑わいが有れば両方の幸が楽しめる筈だろうこの土地も

悪魔とは関係なく

少子高齢化や交通の便の悪さ、漁獲量の減少などにより既に廃村であった

 

だが今は人知れずに異なる者たちが住う漁村と変わり果て、かつての賑わいを見せていた

 

 

そんな漁村の中でも一際大きな建物である修理ドックに

 

片腕を咥え、ずた袋を背負いながら入るのは熊の悪魔であった

 

暗がりに向かい己の腕を吐き捨てると

 

「うぉぉい!化粧の悪魔!破けたから直してくれぃ!」

 

暗がりの中場違いな布地が吊られた奥からヒールの鳴らして出てきたのは

 

蜘蛛の如く細ばった数々の腕とそれを束ねてドレスの如く誂えた異形の姿

 

 

化粧の悪魔はくねりながら熊の悪魔を一瞥すると一言

 

「対価は?」

 

悪魔にとって契約は大事なものだ

 

だが悪魔同士ならそうではない、結局は力で捻じ伏せ喰らうか命令する。

 

だが熊の悪魔はさも当然の如く

 

「俺の腕だ!「足りない」ぐぬぅ…ならば帰り路にて捕らえしニンゲン一匹と三匹分の衣類と皮はどうだ?」

 

その対価に化粧の悪魔は軽く呆れながら返事をしようとし

 

 

突然屋内に響き渡る低いながらも重圧感のある二つの声が響き渡った

 

「おまえ、何故我が前に一番に来なかった?」

「此処で決めた定めを忘れたか熊よ」

 

熊の悪魔はイラつきながら

 

「身綺麗にしてから向か「手酷くやられたな」

 

「やはり童に好かれそうな姿と思い向かわせたが中身が駄目だったかぁ」

 

……うっさいわ!確かに向かい入れることは出来なかったが所詮人に近い脆弱な悪魔よ!」

 

 

「それにしては片腕をやられたようだな?」

 

「対価の支払いは一度こちらに精算してからその後にすれば良いであろうにどうしてお前は出来んのだ」

 

「ぐらぁ?!」

「グルウゥxっx!?」

「ギぃxぃx?!」

その場の悪魔は互いに睨み合いながら牙をちらつかせ剣呑な様子になりつつあった

 

化粧の悪魔は馬や鹿の悪魔では無いのに馬鹿な熊の悪魔に内心毒づきながら格の違う悪魔達に萎縮していた

 

悪魔なのに神に縋ろうとした時 主が訪れた

 

「騒がしい、何事だ」

 

その一言でいがみ合った悪魔達は膝をつき頭を垂れる

 

その先にいるのはただ1人の少女

 

「我らは互いにかつての栄華を目指す同胞(ハラカラ)。此処で争うな」

その姿はかつて別の世界、別の話、別の物語で語られた

 

ある時代の主役その人

 

かつての王かつての幻想の

 

化け物(英霊)の姿

 

騎士王そのものであった


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