今回は前後編の前編的な立ち位置になってます
「ここは…?」
遥は気が付いたら辺り一面が砂に覆われた場所にいた。
ここはどこなのだろう?なぜこんな所に自分はいるのか?何か手掛かりがあるはずと思いあたりを見渡すと二つの砂丘があった。
その中の一つ、自分の目の前にある砂丘は、まるでガイアの頭部を模しているようだった。
まさかと思い足元を見ると、ライフゲージの形で砂が盛り上がっている。そんなはずはない、そう思って足元の砂を搔き分けると、光を失ったライフゲージが浮かび上がる。
あり得ない…そんなはずはない…そう思う遥だったが、もう一つの砂丘はアグルを模したような不自然な形をしていた。
―まるでここは、ガイアとアグルが争った結果、砂漠と化した地球のようだった。
「うわぁぁあああああああああああ!」
頭を抱え絶叫する遥だった。これは一体何なんだ?そう考えるが答えなどでない。
「…きて…お…て…るか…」
そんな声が聞こえる。そこで遥は自分がさっきまで見ていたものが夢だったことを理解すると同時に意識が覚醒した。
「ゆ、夢か…」
「大丈夫?かなりうなされてたわよ?」
どうやらかなりうなされていたらしい、時計を見るとまだ普段起きる時間より小一時間程早い時間帯だった。
それに夏休みに入ったので部活があるとはいえ、いつも通りの時間に起きる必要もない。
「うん、大丈夫だよありがとう。母さん」
部屋が一階と二階で離れている母親が心配して起こしてくれたようだった。
「それならいいけど…汗もビッショリだしシャワー浴びたほうがいいわね、お湯沸かすから浴びてきなさい」
「うん、そうするよ」
(あれは何だったんだろう…?)
あの夢は以前ウルトラマンの力を手に入れた時のように何か意味があるのではないか?そう思ったがやっぱり答えは思いつかなかった。
(君はどうして僕に力を授けてくれたんだ?僕にこの力で何をさせたいんだ?)
母親が出て行った後、エスプレンダーを取り出して、ガイアの光にそう問いかけるが、やっぱり光は何も言ってはくれないのだった。
「あつい~」
「ずらぁ…」
「天の業火に、闇の翼が…」
夏の炎天下の中屋上に集合したメンバーだったが、千歌と花丸はあまりの暑さに肩を落とし、日よけのつもりなのか黒いローブを羽織った善子も暑さにやられていた。
「その服やめたほうがいいんじゃ…」
「全くだ、そもそも黒色っていうのは熱が籠るんだから…」
そう指摘するルビィに遥も同意する。
「それより、どうしたんですか?全員集めて」
曜がこの場に全員を集めたダイヤにこの集まりの目的を訪ねと、ダイヤは「ふふふ…」と不敵な笑みを浮かべ。
「さて?いよいよ今日から夏休み…」
「サマーバケージョンといえば…?」
そう言って鞠莉が乗っかってくると、ダイヤは「はい、そこのあなた!」と千歌を指さす。千歌は話の意図が全く解らないといった様子で戸惑いつつもなんとか答える。
「やっぱり、海だよね…」
「夏休みはパパが帰ってくるんだ」
その次は曜だった。
「マルはお婆ちゃん家に」
これは花丸。
「夏コミ!」
これはローブを翻し大げさなポーズをとる善子が。
夏コミなんてイベントあったなそういえば…。なんて遥が考えていると、ダイヤは回答が気に食わなかったのか、わなわなと肩を震わせ。
「ブッブーですわ!」
いきなりそんな怒声を上げるものだから、一部を除いてビクッ!っと体を震わせた。この人こういうキャラだっけ?
「あなた達それでもスクールアイドルなのですか?片腹痛い片腹痛いですわ!」
さすがにこの暑さで屋上で話し込むのはしんどいという事で部室へ場所を移したのだが、今度は何やら円グラフを書いた紙をホワイトボードに張り付け始める。
「いいですか皆さん?夏といえば…」
そこまで言いかけてダイヤは視線を移し、「はいルビィ」と妹を指さす。
「多分、ラブライブ!」
話が読めてきたのか、そう自信満々に答えるのだった。
「流石は我が妹、可愛いでちゅねよくできましたぁ」
そう言って妹を猫なで声で褒めながら頭を撫で始めた。
「がんばルビィ」
満更でもなさげなルビィはルビィで決め台詞をポーズ付きで言ってくれるが、呆れ顔の善子に。
「何?この姉妹コント…」
「あはは…」
そんな事を言われてしまうが遥も思ってはいたが自身のダイヤのイメージからかけ離れていたので苦笑いを浮かべるしかなかった。
「コント言うな!!」
普段とはかなり違う口調で噛み付くダイヤだったが、気を取り直して続ける。
「夏といえばラブライブ!その大会が開かれる季節なのです!!」
するとダイヤはホワイトボードに張り出した紙を指刺し。
「ラブライブ予選突破を目指して、Aqoursはこの練習メニューをこなします!」
そう宣言するのだった、紙の正体は練習メニューと一日の時間割を書いた円グラフだった。
遠泳10kmやランニング15kmに腕立てや腹筋を100回などと正直無茶苦茶なものだった。オリンピックでも目指すつもりなんだろうか?
「これは私が独自に入手したμ'sの練習メニューですわ」
「お姉ちゃん凄い!」
ルビィは目を輝かせていたが他のメンバーも遥と同じで無茶苦茶だと感じたのだろう。訝し気な視線を送っていた。
「こんなの無理だよ…」
そう呟く千歌だったが、
「ま、何とかなるでしょ」
「そうそう、僕もこんなのやったらけが人が出るとおも…え?」
流石にこれをこなすのは無理がある、そう言いたかったが一名何とかなると言ってのける人物がいた。果南だ、これには流石にキョトンとしてしまう遥だったが、
「熱いハートがあれば何でもできますわ!」
一昔前のスポコン漫画みたいな事を言い始めるダイヤに対して曜は、
「どうしてこんなにやる気なの?」
そう疑問を口にするのだったが、それに答えたのは一番はしゃぎそうな人物だった。
「ずっと我慢してた、今までの気持ちがシャイニーしたのかも」
二年間ずっと誰にも明かせず押さえつけてきた気持ちの蓋が外れた反動という事なのだろうが、だからこのメニューをこなせるかはあくまで別問題であって…。
「何をごちゃごちゃと…さあ!外へ行って始めますわよ!」
ダイヤは張り切っているが周りは置き去りになっていた。
「そういえば千歌ちゃん、海の家の手伝いがある。って言ってなかった?」
曜がここでわざとらしくそう切り出した。
「ああ、そうだよそうだよ。自治会で出してる海の家を手伝うように言われたのです。」
こちらも芝居臭いしゃべり方をしだすが、嘘ではないらしい、本当に毎年この時期にやっていることのようだ。
「あ、わたしもだ」
果南も家のダイビングショップの手伝いがあることを思い出す。確かに夏休みは一年で一番繁盛しそうなイメージがあるし、手伝わないわけにもいかないだろう。
「そんなぁ…特訓はどうするんですの?」
ガックシと肩を落とすダイヤだったが、
「残念ながらそのスケジュールでは…」
そう曜が申し訳なさそうに言うと千歌も。
「モチロン、サボりたいわけではなく…」
そう付け足すと、ダイヤは腕組みをして暫く考えると、代案を思いついたのか凄く悪そうな顔で不敵に笑う。「ひっ…!」と千歌と曜は悲鳴を上げる。
まさか海の家を手伝いながらこれを全てこなせとでもいうのだろうか?そう戦慄していると鞠莉から助け船が出た。
「じゃあ全員で海の家を手伝って、涼しいモーニングアンドイブニングに練習したらいいんじゃない?」
「それ賛成ずら」
花丸もその代案に賛成するが、ダイヤは気に入らなそうな様子だった。
「そんなぁ…それでは練習時間が…」
「それなら、夏休みだしうちで合宿にしない?」
そう千歌が切り出したのだった。
「合宿?」
そう全員が反復する。
「ほら、うちって旅館でしょ?頼んで一部屋借りれば全員泊まれるし」
「移動がない分、練習できるしね」
そう果南は言うが、花丸はまだ懸念がある様子だった。
「でも、全員でいきなり行って大丈夫ずらか?」
彼女の言い分はもっともだった。この客入りがよくなるであろうシーズンに一部屋使えなくなるだけでも不利益になる可能性は高い。
「大丈夫、何とかなるって。じゃあ決まり!」
だが当の千歌はそんなことは全く考えている様子はなかった。
「それでは明日の朝四時、海の家に集合という事で!」
ダイヤのその言葉でその日は解散となったのだが、全員が明日その時間に起きれる気はしなかった…。
雲一つない青空、日の光を反射させ輝く海、そこで千歌達は各々水着で大はしゃぎしていた。
こうなる気はしていたが各々が海水浴を楽しむ光景を見て梨子はため息が出た。
「結局こうなるのですね…」
腕組みをしてそう漏らすダイヤだったが、花丸はダイヤに対しても不満があるようで。
「朝四時に来たら、マルと遥君以外誰もいなかったずら」
そう嫌味たらしく言う。
「当り前よ、そんなの無理に決まってるじゃない!」
そう善子が皮肉を垂らす。結局言い出しっぺのダイヤですら寝坊して現れなかった訳だからこれには何も言い返せない。
「ていうか、遥はなんで寝てるの?」
そう梨子が言うと、全員の視線が花丸の隣で気持ちよさげに寝ている遥に向く。
「遥君、朝マルが来た時はもういて―」
それは朝の四時前の事だった、花丸が時間通りに海の家の前に到着するとすでに遥は海の家の前に座って海を眺めていた。
「おはよう遥君、早いずらね」
「あ、おはよ花丸ちゃん。なんか眠れなくてね」
そう花丸の方を振り向いた遥は目にクマができていた。
「大丈夫?クマできてるよ?何かあったの?」
「大丈夫だよ?ちょっと、怖い夢を昨日見ちゃって…それで眠れないのかも」
「夢?」
心配そうにしている花丸に対して、遥は全て説明するわけにもいかないので、申し訳ないと思いながら嘘にならないように説明する。
「うん、ウルトラマン同士が争って地球が砂漠になっちゃう夢…かな?」
「そっか…でも二人で力を合わせて戦ったこともあるずら。だからきっとそんな事にはならないと思うずら」
そう優しく語り掛ける花丸に遥も「そっか…そうだよね」と答えるのだが、まだ納得しきれてはいないようだった。
「あのロボットと戦ったのは、きっとどちらも地球を守りたいからだとマルは思ったずら、きっと目指してるものは同じだから、ね?」
目指しているものは同じ。確かに花丸の言う通りだ、彼も地球を救う為に戦ってくれた。ただそのやり方が違うから反発しあうだけで、その結果地球を滅ぼす事になってしまうことは望んでいない。
「その通りだよね、ありがとう」
「どういたしまして」
「なんか、眠くなってきたかも…」
花丸にそうほほ笑みながら礼を言う遥だったが、あの夢への恐怖が薄れたことで今度は睡魔が襲ってきたのだ。
「練習始まったら起こしてあげるから、寝てていいずらよ」
「うん、ありが…と…」
そう言うと遥は眠ってしまった。
「そんなことが…」
「きっと梨子ちゃんを青いウルトラマンが攻撃したりしちゃったから、心配になったんだと思う」
そう花丸が梨子に対して答えるが、ガイアの正体を知っているダイヤは遥が抱え込んでいる不安はきっとそれだけではない、そう思うのだった。
「遥さんはもう少し寝かせてあげましょうか」
「そうずらね」
とりあえず手伝いが始まるまで寝かせてあげよう、そう話をすると今度はダイヤがきょろきょろし始める。
「はて、そのお店はどこですの?」
真後ろにあるぼろい海の家と書かれた小屋を視線に入れないようにするダイヤに花丸は「現実を見るずら」と冷たい視線を送る。
残念だが自分たちが手伝う海の家は古い簡素な作りの小屋だった。肩を落とすダイヤだったが、ほかにも要因があった。
そのすぐ隣にある海の家は所謂南国風な作りとなっていて、海水浴の客もそちらの方にほぼ流れてしまっているのだから。
「都会ずらぁ」
花丸はただ一人それを見て嬉しそうにしていた。
「都会の軍門に下るのデェスカ?私たちはラブライブ決勝を目指しているんでしょう?あんなチャラチャラした店に負けるわけにはいかないわ!」
唐突に鞠莉がそんなことを言いだすのでみんなの視線はそちらへ向く。周りとしては別に競うつもりなど微塵もないのだが…。
「鞠莉さんの言う通りですわ!」
そう言ってダイヤが一人で燃え始めたところで手伝いがスタートしたのだった。
ダイヤの指示の元役割分担をしたのだが、そこで燃え上がっていて忘れていたのか遥は全員が持ち場へ移動した頃に花丸によって起こされたのだった。
「ごめん、ずっと寝ちゃってた。もう練習終わっちゃった?」
「いいや、結局みんな遊んでたから大丈夫だよ、それより顔色もよくなってよかったずら」
「ごめんね、もう大丈夫だから。ところで僕は手伝いって何したらいいの?」
「多分マルとルビィちゃんと接客でいいと思うよ?」
「そっか、了解!」
そう言ってようやく遥も活動し始めたのだが、客数はあまり多くなく。売れるのも曜の作った『ヨキソバ』なるオムそば的な料理ばかりで、残り二人の調理担当の鞠莉の作る『シャイ煮』というなにやら色々似たものと善子の作った『堕天使の涙』なる得体のしれない真黒なたこ焼きは全くと言っていいほど売れないのだった。
「これ…大丈夫なの?」
遥は思わずそう口にしてしまったのだった。
結局集客もあまりうまくいかなかったらしいのだが、千歌がクラスメイトを誘ったところクラスメイトのおかげで繁盛することができた。
ちなみにヨキソバ『は』ほぼほぼ完売したらしい。
「やっぱりお店の後だと、ちょっとキツいね…」
その日の手伝いが終わった後、夕日の輝く中練習を行ったのだが、さすがに海の家で働いた後は体力を消耗しているもので、普段よりもきつく感じる。
そもそもあんな練習をいきなりこなせるはずもないのだが…。言い出しっぺのダイヤもさすがに堪えた様で砂浜に倒れこんでしまった。
結局その日は遠泳はもう日も沈むし、何より溺れかねないから危険だと遥が必死に言い聞かせてその日の練習は終了となったのだった。
遥は流石に女子に紛れて泊まる訳にもいかないし、何より遥自身が耐えられないので一人家に戻ったのだが、結局電話で「自分達の売れ残りは自分たちで処理しろと言われたので手伝え」そう言った旨の連絡が来たので再び海の家に戻ることになったのだが、そこで待っていたものは…。
「本当に、申し訳ない(デース)!」
そう言って机に指を立てて頭を下げる善子と鞠莉の姿があった。なんでも自信満々に作ったはいいがほぼ全くと言っていい程売れなかったのでヨキソバはほぼ完売だったのに対してこの始末であった。
花丸とルビィが未知の食べ物に興味を示したので、作ったときのように自信満々で「さぁ、召し上がれ!」と大量に皿に盛り付けるのだった。
だが存外食べてみるとシャイ煮はかなり美味しかった。
美味しかったのだが、食材が鞠莉が世界中から取り寄せた高級食材を使っているらしく、一杯あたり10万円程すると言い出すものだからみんな吹き出してしまった。
「これだから金持ちは…」と果南もあきれた様子だったが、気を取り直して堕天使の涙をルビィが食べたのだが、暫く固まった後、「辛い辛い辛い~」と顔を真っ赤にして外に飛び出して走り回るのだった。
「ちょっと!一体何が入っているんですの!?」
そうダイヤが問い詰めるが、善子は何食わぬ顔で一つ取ると、
「タコの代わりに大量のタバスコで味付けした…これぞ、堕天使の涙」
そう言って取った分を口に含むと、とてもおいしそうに咀嚼するのだった。
そんなの辛いどころじゃ済まないのでは?そう思った遥は怖くて手は出せなかった。
「ごちそうさまでした、ちょっと友達に頼まれてることがあるんで僕はこれで…」
そう言って立ち去ろうとするが花丸に止められる。
「遥君細いしもっと食べたほうがいいと思うずら」
すると鞠莉も「そーよまだまだあるんだから」とシャイ煮を勧めてくる。
「いや、あの…」
結局後片付けまでずっといることになってしまった訳だが、家に戻る途中で遥はあることに気が付いた。
「あれ…星がおかしい…」
ふと夜空を見上げなのだが、東京と違ってかなり綺麗に星空が見えるのだがその星々が渦を巻くように動いていた。
「一体…何が起きてるんだ…?」
「やっと気が付いた?もう一人の方はかなり早い段階で気が付いて行動を起こしたわ」
「誰?」
他のメンバーは十千万へ行った筈、なら唐突に後ろから聞こえた声は誰のものなのか?そう思い振り返るとそこにいたのは、黒いドレスを着た金髪の少女だった。
「私の名前はシルビア。あなたは知らないでいい、そうすれば仲良しグループと一緒に苦しまずに消えることができる…」
シルビアと名乗った少女は淡々と遥にそう告げる。
「なら君は何を知っているの?僕は皆を護りたい、だから何も知らないでいる事なんてできる訳ないんだ!」
「本当に知りたいのなら、それは自分で探さないとダメ…あなたが本当にこの星を護りたいなら…」
そう告げると少女は夜の闇に去っていった。
「あっ、待って!」
そう言って遥は駆け出したが、彼女の姿を見ることはできなかった。
「もう一人はもう行動を起こしている―まさか!?」
アグルが怪獣を呼び覚ましたのは、大きな脅威に対抗する為。その結論にたどり着いたのだった。
「それでも、やっぱり僕は…」
エスプレンダーをとり出した遥は、自分の決意を固めるのだった。
決戦の日は近い―
というわけで19話でやっとサンシャイン10話の内容に入っていきます、初登場以来のシルビアちゃんの会話シーンですね。
あれ以降独り言ばっかだったのでやっと会話シーンかけて良かったです。
次回、いよいよ激突