今回も戦闘ありません申し訳ない!
当初は毎回戦闘入れる予定でしたがそれやると話が進まないので…
それでは22話です
あの日、あの後千歌と梨子は2人だけ学校に残っていた。
そこで千歌は梨子に、彼女が作った曲を弾いてほしいと頼むのだった。
「考えてみたら、聴いた事無かったなって」
音楽室まで移動し、千歌は梨子に「ここなら思いっきり弾いても大丈夫だから」と弾くことを促す。
「梨子ちゃんが自分で考えて、悩んで一生懸命作った曲でしょ?聴いてみたくて」
「でも…」
「お願い、ちょっとだけでいいから」
千歌にこの曲を聴かせることにためらいがあるのか、ためらている梨子に千歌はそう食い下がる。
「そんないい曲じゃないよ?」
そう言って梨子は椅子に腰かけると、鍵盤の蓋を開ける。それでもまだ鍵盤にすぐ触れることができなかった。そういえば人前で演奏するのは何時以来だろうか?
意を決し、鍵盤に指をのせ演奏を開始する。弾き始めてしまえば、先程まで感じていた緊張も何も感じなくなる。ただ、思うままに梨子は演奏を続けた。
海に還るもの
梨子が内浦にやってきたときに聴きたがっていた海の音、それを千歌と曜と出会ったことで聴こえた海の音。それが曲となったものだった。
「良い曲だね」
演奏が終わると、それまで黙って聴き入っていた千歌が口を開く。
「すっごくいい曲だよ、梨子ちゃんが詰まった」
梨子は照れ臭いのか顔を逸らす。
「梨子ちゃん。ピアノコンクール、出て欲しい」
その言葉に梨子は、はっと息を呑む。コンクールは、ラブライブの予備予選と日程が同じだった。つまり、コンクールに出るという事は、予備予選では梨子のいない8人で出るという事なのだ。
「こんな事言うの変だよね、滅茶苦茶だよね?スクールアイドルに誘ったのはわたしで、梨子ちゃんはAqoursの方が大切って言ってくれたのに」
きっと千歌は梨子が、Aqoursの方が大切。そう言ったものの、どちらをとるかまだ本当は悩んでいることに気が付いているのだ。
「私と一緒じゃ…いや?」
「違うよ!一緒がいいに決まってるよ!!」
自分でも卑怯だと梨子は思った。こういえばきっと、千歌は予備予選に出ることに反対できない。
「思い出したの、梨子ちゃんを最初に誘った時の事。あのときわたし、思ってた。スクールアイドルを一緒に続けて、梨子ちゃんの中で何かが変わって、またピアノに前向きに取り組めたら素晴らしいな、素敵だな、て」
「でも…」
梨子だって覚えている、でも本当にそれは今なのだろうか?そう思って梨子は目を逸らすと、何かが手に触れた。それは千歌の手だった。
「この町や学校が、みんなが大切なのは解るよ?わたしも同じだもん、でも梨子ちゃんにとってピアノは、同じくらい大切なんじゃないの?その気持ちに、答えを出してあげて」
そう千歌は語り掛ける。
「わたし、待ってるから。どこにもいかないって。ここでみんなと待ってるって、約束するから。だから―」
コンクールに出て欲しい。そこまで言わなくとも梨子には伝わったし、気が付けば千歌に抱き着いていた。
「ホント、変な人…」
梨子の為に、一人欠けるというリスクを負ってでもコンクールに出て欲しい。千歌は、そういう人間だ。本当に、みんなを大切に思っている―
「大好きだよ」
例え立つステージが違っても、気持ちはみんな繋がっている。想いは一つだから。
「梨子ちゃん、しっかりね」
「お互いに」
駅の改札前で、これから東京のピアノコンクールに向かう梨子に千歌がそう言うと、梨子からそう返される。
これから梨子は一人でコンクールへ向かうのだ、今日は全員でそれを見送りに来たのだ。
「梨子ちゃん、がんばルビィ」
「東京に負けてはダメですわよ」
ルビィが激励の言葉を贈る隣でダイヤがそう食い気味に告げる。
東京に負けるの意味が解らないしそもそも半年前まで住んでいたのだが…。
そんな事を思っていると、電光板へ目を向ける曜が、
「そろそろ時間だよ」
そう告げる、確かにそろそろホームへ向かわないと乗り遅れる、梨子は「うん」と応じ荷物を手にする。
「チャオ~梨子」
「しっかりね」
「ファイトずら」
鞠莉、果南、花丸にそれぞれ激励の言葉を貰った梨子は、遥と目を合わせる。
「姉さん、頑張ってね」
「遥も、しっかりね」
「もちろんさ」
マネージャーとしての仕事を指しての言葉だと思っている遥だったが、梨子のその言葉に別の想いがあることを知るのは、まだ後の事だった。
「梨子ちゃん!次のステージは、みんな一緒に歌おうね!!」
「もちろん!」
千歌の呼びかけに、笑顔で応じた梨子はホームへと去っていった。
「さ、練習戻りますわよ」
梨子を見送った後、ダイヤがそう切り出す。次のステージに9人で立つために、これから練習だ。
「これで、予備予選で負けられなくなったね」
果南は最初から負けるつもりなどない、そんな様子で言うと、みんなも一層気が引き締まった。
「なんか気合いが入りマース!」
みんなも鞠莉と同じ気持ちだった。絶対に予備予選は突破できる。そう思うのだった。
「特訓ですわ!」
部室で再び集合したメンバーだったが、ダイヤが一人で盛り上がっていてルビィですらPCを操作していて無視を決め込んでいた。
「また?」「本当に好きずら…」そんな声がちらほらメンバーから上がるが、PCの画面に夢中だったルビィが「あっ」と声を上げたことで全員の視線がそちらへ注がれる。
ルビィが見ていたのは、すでに行われた別の地域での予備予選の映像だった。
「これって、Saint Snow!」
千歌が興奮気味にそのグループ名を言う。
「へぇ、これが千歌達が東京で会ったっていう」
そう果南が興味ありげに言うと、そういえばその時はまだ6人だったな、と思い出す。遥も東京には行けなかったが、話は行ったメンバーから聞いていた。
惜しくも入賞こそ逃したが、圧倒的なパフォーマンスをする2人組だったと。
「先に行われた北海道予選をトップで通過したって!」
「頑張ってるんだ…」
記事を興奮気味に読むルビィの言葉を聞いて、千歌も嬉しそうにそう漏らす。
「気持ちは解るけど、今は目の前の予備予選。そこに集中しない?」
そう口を挟む果南を鞠莉はからかうように、
「果南にしてはずいぶん堅実ね」
「誰かさんのお陰で勉強したからね」
そんな軽口を叩くとダイヤが「では」と言って手を叩く。
「なんでこうなるの…?」
思わず千歌がそう漏らすのも無理はない、何故ならダイヤは特訓だといったが移動したのはいつもの屋上ではなくプール、しかも今からここを清掃するというのだ。
「まさかこんな時期にプール掃除なんて…」
遥も本音が漏れてしまう、確かにそう言えば一学期中にプールの授業なんか無かったが、まさか掃除もされてないなんて…。
「文句を言ってないでしっかり磨くのですわ!」
プールサイドに立つダイヤが監視しているがそう激を飛ばす。
周りを見ると花丸はぬかるみに足をとられて転倒し、その近くにいたルビィも驚いて尻餅をついていた。
「これで本当に練習になるの?」
「ダイヤがプール掃除の手配を忘れていただけね」
千歌の疑問に鞠莉が悪戯っぽく答えると、ダイヤが噛み付いてきた。
「忘れていたのは鞠莉さんでしょう!」
「言ったわよ?夏休みになったら何とかしろって」
「だから何とかしてるんじゃないですか!」
僕らがね、そう口から出そうになった皮肉をなんとか引っ込めた遥だったが、
「なんなのが理事長と生徒会長で大丈夫なの?」
「私もそう思う」
鞠莉とダイヤの言い合いに巻き込まれないように離れて傍観していた善子の呟きに、果南も同意する。
千歌もダイヤが加入した時に生徒会の仕事を手伝うといったのでしょうがないといって全員で清掃に励むのだった。
「そうだ、ここで練習しない?」
プールも綺麗になり、無事清掃が終わったので果南がそう提案する。
今から屋上まで移動する時間を短縮できるしいい案だとみんな賛同する。
「じゃあみんな位置についてください」
その遥の声で全員が予備予選でやる曲のポジションにつくが、ここで何か違和感を覚えた。
「あれ…」
千歌も気が付いたらしく、そこでみんな曲の初めのポーズを解いてダンス担当の果南が違和感の正体を口にする。
「そっか、梨子ちゃんがいないんだね」
「そうなると今の形はちょっと、見栄えが良くないかもしれませんわね」
ダイヤもそう指摘する、元々9人で綺麗に見えるように作った振付なので一人欠けるだけでもかなり見栄えは悪い。
「変えるずら?」
花丸のその質問に果南が「それとも―」と代案を思いつく。
「誰かが梨子ちゃんの位置に入る?」
元々千歌と梨子がセンターの予定だったので、梨子の位置に誰かを配置してセンターはそのままの形で行く方が変更も少なく済ませれるのでそれが望ましいだろう。
「遥くん、踊ってみる?」
「レギュレーション違反で失格になりますよ」
「冗談だって」
千歌の言う事は冗談に聞こえないんだよなぁなんて思いながらも全員が、その位置に一番向いているであろう人物の方を見る。
「え?わたし?」
千歌とも付き合いが長くて、即席でもコンビネーションがとれるであろう人物。それは曜だった。
「私が悪いの…」
「違うよ、私が曜ちゃんに合わせられなくて…」
しかしなかなか上手く二人の息は揃わなかった。
「まぁ、体で覚えるしかないよ。もう少し頑張ってみよう」
とにかく、合うまで練習するしかない。果南の意見に2人も意義は無く、ここまでで既に10回は失敗しているがとにかく今は練習あるのみ。
「あ、ごめん…」
「私が早く出すぎて…ごめんね、千歌ちゃん」
再び二人の肩がぶつかってしまうと、お互い申し訳なさそうにしているが遥にも、2人は必要以上にお互いに気を使っているように見えた。
結局、その日の練習ではものにすることができず、夕方帰りに立ち寄ってコンビニの駐車場の一角でも練習を2人だけで行っていた。
「やっぱ難しいのかな?」
それを眺めながら何か自分にできることは無いだろうか?そう思う遥だったが、自分も素人なので気休めの言葉しかかけれないだろう。
コンビニの中では花丸とルビィはアイスを食べていて善子はなにやらくじを引いていた。3年生3人は、生徒会室に用事があると言って、そのまま学校で別れている。
もう当たりも夕日でオレンジ色になっていて時間帯的にそろそろ帰った方がいいのかもしれない…。
何度目の失敗だっただろうか?そういう次元に達するくたいずっと練習に打ち込んでいて、そろそろ止めないと疲労で余計にうまくいかないのではないか?そう思ったころ、
「わたしがいけないの…、どうしても梨子ちゃんと練習してた歩幅で動いちゃって…もう一回やってみよう」
千歌がそう言っているのが聞こえてくる。「じゃあいくよ」と準備する千歌を曜が呼び止めて、
「千歌ちゃん、梨子ちゃんと練習したとおりに動いてみて」
そう提案すると、千歌は「でも…」と言いよどむが「いいから」と曜が押し切ってその通りに動いてもらう。すると今までの失敗が嘘のように上手くいった。
「おぉ!天界的合致!」
気が付いたら様子を見に来ていた善子がそんなよくわからない声を上げる。
「これなら大丈夫でしょ?」
「さすが曜ちゃん、すごいね!」
確かに元々梨子と千歌でやることを前提としたものだったので、確かに曜が梨子の動きをコピーできれば千歌は今まで通りの動きで済む。でも一発でそれをこなすなんて…本人以外はみんな驚いていた。
その時、着信音が聞こえた。千歌のスマートフォンからだった。
「あっ梨子ちゃんだからだ!」
そううれしそうな声を上げると、そのまま通話に出た。
暫く千歌が笑顔で嬉しそうに話していたが、「みんなに代わるね」というの耳を離しスピーカーに切り替える。
「花丸ちゃん」
その時たまたま一番近くにいた花丸に千歌がスマホを向ける。
「え、え~と…もすもす?」
咄嗟に出てしまった訛りで梨子にも相手が誰かすぐ解ったのか『花丸ちゃん?』とスマホから梨子の声が聞こえる。
「み、未来ずらぁ~」
と驚いた様子で驚いた表紙に後ろに仰け反る。流石にもう普及してそれなりに経っているいるのだが…。
「何驚いてるのよ、流石にスマホくらい知って-」
『善子ちゃん?』
花丸の様子に呆れている善子の声に梨子が反応する。
「フフフ…ヨハネは堕天に忙しいの、別のリトルデーモンに代わります!」
そう言うや否やルビィを代わりにスマホの前に突き出す。
『もしもし?』
若干呆れた様子の声が怖かったのか、「ピギィイィイ!」と悲鳴を上げると駐車場の木の陰に隠れてしまう。
「どうしてそんなに緊張するの?梨子ちゃんだよ?」
不思議そうにしている千歌に、花丸はいまだにスマホを見つめたまま。
「電話だと緊張するずら、東京からだし」
「東京関係ある?」
そんな話をしている2人を見つめていると、「じゃあ曜ちゃん!」そう言って曜にスマホを差し出す。
「梨子ちゃんに話しておくことない?」
そう問われると、曜はしばらく迷っているような様子を見せるが、そこで千歌のスマホが電池残量が残り少ない事を告げる。
「あ、電池切れそう」
そう言ってスピーカーを解除して通話する千歌だったが、「またとか言わないでよ、まただけど…」なんて罰の悪そうに笑う千歌だったが、少しして電話を切る。
「よかった、喜んでるみたいで…」
そう言ってスマホを大切そうに抱きしめる。
「じゃあ曜ちゃん」
「…え?」
急に名前を呼ばれた曜が困惑気味に反応すると、
「私たちももうちょっとだけがんばろっか」
「うん、そうだね…」
そう答える曜の手に握られていた2人の分のアイスは、もう溶けていた。
「曜先輩、何かあったんですか?」
「え?なんで?」
「なんか、コンビニにいた時辛そうに見えたので…僕でよければ話してください」
あの後、曜の様子の変化に勘付いた遥は、他のメンバーが先に帰ったあとそう切り出した。
「い、いや?なんでもないよ…?」
「けど…姉さんと電話してたあたりから辛そうでした。何か我慢してることがあるんじゃないんですか?」
何でもないと笑って答える曜にそんな筈はないと遥は食い下がる。
「遥くんには解らないよ…」
「え?」
「だって遥くん男の子だし、ウルトラマンなのずっと隠してたし…遥君に何が解るの!?」
思わず少しづつ言葉が強くなって言い返してしまう。
「そ、それは…」
その発言が曜の逆鱗に触れてしまったのか、遥は痛い所を突かれて言葉を詰まらせてしまう。
「あ…ごめん…」
そう言って曜はその場を走り去ってしまう。
「先輩、待ってくだ…」
「はいストーップ!」
自分の言い方が悪かったのだと思った遥は、曜を追って訂正しようとしたとき突如後ろから声をかけられる。
「…っ誰だ!?」
「チャオ~ハルカ」
「鞠莉先輩」
彼女は学校での練習の時点で何かに気が付いていたらしく、自分たちの用事が終わった後、遥と曜が何やら言い合っていたのを見かけたのだという。
「どうしてそんなこと…」
「まぁまぁ、とにかくここはマリーに任せて?ガールズトークの方が良い時もあるの」
「…解りました、お願いします」
「オッケー」
そう言って曜が去っていった方へ向かって行くと暫くして曜の悲鳴が聞こえた気がした。
後から聞いた話によると、後ろから抱き着いた結果背負い投げを食らったらしい。
2人っきりになれる場所で話をしよう。鞠莉にそう連れられてやってきたのは沼津の展望水門だった。
「ちかっちとはどう?」
「千歌ちゃんと?」
天文台の中に入るや否やそう鞠莉は切り出した。
「うまくいってなかったでしょう?」
「あぁ、それなら大丈夫。あの後ふたりで練習してうまくいったから」
そういえばあの後別行動だったから彼女はダンスがうまくいくようになったことは知らないんだ。そう思って曜はそう答えるが、鞠莉が言っているのはその事ではない。
「いーえ、ダンスではなく…」
「え?」
「ちかっちを梨子に取られて、嫉妬ファイヤ~♪が燃え上がってたんじゃないの?」
「しっ嫉妬!?まさかそんな事…」
そうやって取り繕うとする辺り図星なのだろう。曜の言葉を両のほっぺをつまみ遮ると。
「ぶっちゃけトーク!する場ですよここは」
「鞠莉ちゃん…」
「話して?ちかっちにも梨子にもましてやハルカにも話せないでしょ?」
そう言ってベンチに腰掛けた鞠莉は、隣の席を叩いて曜に座るよう促した。
そこで曜は、初めて胸の内を明かすのだった。
(危ない時は、いつも助けてもらった。本当にアグルがいなかったら勝てなかった事は何回もあった…)
あの後遥は、一人海を眺めて物思いに耽っていた。
(でも、もうアグルはいない…これからは僕が一人でみんなを守っていかなきゃいけないんだ)
遥自身も曜の様に悩んでいたのだ。アグルの力を貰ってパワーアップを遂げたが、それは同時にこれからは自身の力だけで戦わなければならないという事だった。
「でも、できるのかな…」
「君はどうして、僕に力を授けたんだ?」
そうエスプレンダーをとり出して、そう光に問いかけるが赤と青の光の玉が浮かび上がるだけで返事は返ってこない。
「先輩の言う通り、僕の方がずっと隠してたのにね…」
遥もまた、自分との戦いが始まるのだった。
というわけで今回からサンシャイン一期の11話の内容に入っていきます。
一期で一番好きな回なので妥協せずやっていきたいです笑
次回も半分近く完成しているので早めにお届けできればと思っております。