ラブライブ!サンシャイン!!〜大地と海の巨人〜   作:カズオ

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位置づけ的には前回の後編に相当します。
前回を読んでない方は前回を読んでからにすることをお勧めします(宣伝)
それでは23話、どうぞ


23話 友情ヨーソロー/ヴァージョンアップ・ファイト!

「本音をぶつける…か」

 

昨日鞠莉にもらったアドバイスだった。本当に大切な友達なら、本音をぶつけるべきだ。

 

それが2年前できなかったからすれ違った彼女だから言えることだったのだろう。

 

「よし!」

 

意を決して部室の扉を開ける。

 

「おはよ~」

 

翌日朝、練習の為に部室に曜が最後にやってきたのだが、

 

「曜ちゃん見て見て!」

 

そう言って千歌は右手首にはめたオレンジのシュシュを見せてきた。

 

「わぁ可愛い、どうしたのコレ?」

 

「みんなへのお礼って梨子ちゃんが送ってくれたんだ」

 

千歌がそう答えると、他のメンバーもそれぞれのイメージカラーの色のシュシュを嵌めているのを見せてくる。

 

「梨子ちゃんもこれつけて演奏するって、曜ちゃんのもあるよ」

 

そう言って差し出された水色のシュシュを受け取ると「ありがとう」と返した。

 

「さて、練習を始めますわよ」

 

ダイヤがそう告げると、練習の為に屋上を目指す。

 

「曜ちゃんも着替え急いでね」

 

「千歌ちゃん!」

 

先に屋上に向かう前に、千歌がそう声をかけてから部室から出ていくのを曜が呼び止めるが、

 

「頑張ろうね」

 

「うん!」

 

曜はそれしか言う事が出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕が、隠してる事、か…」

 

練習後、遥は一人音楽室にいた。かつて姉と一緒の事がしたい。そう言って始めたピアノだったが、小学校の頃周りと違う自分を意識した時に投げ出してしまったものだ。

 

 

 

―おねーちゃん、ぼくピアノやめたい

 

―どうして?

 

―おかしいんだって、男の子のぼくがピアノやってるの。それにみんなより勉強ができるのも

 

それは遥が周りと比較して頭脳が優れていた事、それでいて姉の梨子には遠く及ばないがそれでも、同年代の中ではピアノも堪能で周りと違って外に出たがらなことが重なって起きたことだった。

 

子供というものは残酷で、みんなと違うものを時として輪から追い出してしまう。

 

だから遥はそれから目立つことを嫌った。成績なんて黙っておけば解らない、人並みにしか理解してないフリもした。だからピアノも弾けないことにした。

 

でもそんな時にたまたまネットを使って知り合ったのがダニエルだった。彼はアルケミースターズを立ち上げ、優秀な頭脳を持った若者を世界中から集めてその能力を役立ててきた。そのお陰で遥は自分の才能を伸ばす事を望むようになった。

 

高校に入って、全くゼロから人間関係を築くことになったのも幸いし、少しずつトラウマを乗り越えてこれた。

 

でもそれでも怖かったのだ、自分がウルトラマンになったことを人に知られることが。

 

だから今までも自分から望んで正体を明かすことはしなかったし、梨子には心配をかけたくなかった。

 

そっと鍵盤に指を伸ばし、一つだけ音を出す。

 

その感触を味わった後、椅子に腰かけて少しだけ弾いた。当時大好きで弾いていた曲、不思議と体は覚えている物でいくら小学生で弾ける曲だったからといっても目立つミスもなく弾けてしまう。

 

「遥って、ピアノ弾けたんだ」

 

暫し夢中で弾いていて、人が来たことに気が付かなかったが。演奏をやめた時その声が聞こえる。

 

「まぁね」

 

相手が善子だった。多分花丸とルビィは図書室にでもいるのだろうか?彼女も正直個性が強いが意外と後の2人より気を遣わずに会話できるから楽だと感じる。最初は苦手だったが…。

 

「まぁ姉を見るとそこまで以外じゃないか」

 

「家にもピアノあるし、作曲も少し手伝ったりしたからね」

 

まぁ遥は絶対ピアノは触れなかったから梨子以外に弾けることを知らない訳だが。

 

「上手なのになんで弾かないの?」

 

「色々あってやめちゃったんだよね、今日はちょっと気が向いたというか…」

 

「そういうことにしといたげるわ、遥はあんまり知られるの嫌そうだし」

 

そうやって誤魔化す遥に善子はそれ以上追及することはなかった。

 

「ありがと」

 

「ま、まあヨハネにはリトルデーモンの事なんてお見通しだけどね」

 

そうやってすぐいつもの調子になるのもあまり聞いてこないのも彼女なりの優しさだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな時、学校の近くの空が突然輝き。ウルトラマンガイアが現れた。

 

「どうして?遥はここにいるわよね?まさかドッペルゲンガー?」

 

「わかんない、けどあれはウルトラマンじゃない…きっと何者かがガイアのデータを使って…」

 

「そんな事分析してる場合!?」

 

目の前に遥がいるのに突如現れたガイアに善子は動揺するが、遥は落ち着いた様子で現状を分析する。

 

「ちょっとどこいくの!?」

 

突然音楽室を飛び出した遥を、善子も追いかける。

 

もし本当にガイアのデータをどこからか盗み出してガイアの姿を真似ているのなら、きっと能力も本物と互角。だが当のガイアはその場に佇むだけで何もしない。

 

まるで'本物'が現れるのを待っているかのように…。

 

 

 

 

「なんで、ガイアが…」

 

今日は一人で帰っていた曜も、自身の近くに現れたガイアに驚いた。

 

特に怪獣が現れたとかそういった話も聞いていない。ならどうして遥はガイアに?―

 

そう思ったときガイアと目が合う、するとガイアはこちら目掛けてクァンタムストリームの発射態勢に入った!

 

「うそ!?なんで!?」

 

まさか昨日ひどい事言ったせい…などと考えてしまうが、本物はそういうことをする訳がない。そう思うが目の前の現実は変わらない。もう逃げられない…。

 

そう思い咄嗟に目を伏せた時だった。

 

 

 

「デヤァァアアアア!!」

 

恐る恐る目を開けた曜が見たものは、何者かに蹴り飛ばされ転倒するガイアと、それを蹴り飛ばした正体が宙返りをして派手な土煙を上げながら着地したところだった。

 

「ガイアが…2人?」

 

その存在もまたガイアだった。両者の違いは胸のプロテクターが赤か黒かの差しかなかった。

 

今現れた方のガイアが黒で、曜を攻撃しようとしたガイアが赤だ。つまり、赤い方が偽物で過去のガイアのデータをもとにしているのだが、ガイアV2はゾーリムと戦っている時の僅かな時間だけだったので、周りの人間にはどちらが本物か解らない。

 

「遥…勝てるわよね?」

 

飛び出した遥が目の前でガイアとなって、もう一体のガイアへ挑んでいくのを見た善子はそう呟いた。

 

「善子ちゃん、何があったずら?」

 

「なんでガイアが2人いるの?」

 

そう言って花丸とルビィも善子の方へ駆け寄ってくる。

 

「解んないわよ、でもさっき街を攻撃しようとした方が悪者に決まってるわ」

 

そう言ってぶつかり合う二体の巨人の方を見る。きっと自分たちが知っているガイアが勝つと信じて。

 

お互い同じ構えで暫くにらみ合っていたが、本物のガイアは力を抜き、アグルの様に片腕を突き出す構えに変わる。

 

「デュワッ!」

 

「デヤァッ!」

 

偽物のガイアがフォトンエッジを放つと、本物はなんとフォトンクラッシャーを放った。アグルの力を得てパワーアップしたガイアは、アグルの技も習得したのだ。

 

本来なら完全に互角の威力の技なのだが、ガイアがパワーアップしたことで威力が上昇しており、フォトンクラッシャーが完全に押し切った。

 

「やった!」

 

それを見ていた一年生三人は歓喜の声を上げるが、押し切られた偽物は吹き飛ばされ爆炎に包まれるも、その中から出てきたのは金属生命体だった。

 

その姿はアパテーやアルギュロスと違い、ライフゲージはなく全体的にごつごつしており腕や脚、背中には鋭利な金属片が付いている。

 

ガイアもその姿に一瞬驚くような仕草を見せるが、両者駆け寄っていき肉弾戦に移行していった。

 

金属生命体の拳を片腕で受け流すともう片方の腕で胸を殴りつけ、回し蹴りをバク転で回避して全力のドロップキックを見舞う。

 

だが相手もガイアの攻撃が効いている筈なのにその動きは全く衰えない、両者起き上がると取っ組み合いになるがガイアが押し切ろうとすると逆に巴投げを食らってしまう。

 

ガイアは起き上がると咄嗟に再びアグルの技であるリキデイターを放つ。咄嗟に撃てて瞬間の火力ならクァンタムストリームに勝るのだが単発攻撃なので攻撃し続ける時間は短いのだ。

 

だが金属生命体も仰け反りはするもののやはり効果的なダメージは与えられていない。

 

すると金属生命体は背中の2つの金属片をブーメランに変形させて射出してきた。

 

最初のうちは様々な方向から飛んでくる攻撃にも反応して躱していたが、それをみて相手は更に腕と足の金属片もブーメランに変形させて飛ばしてきた。

 

6つのブーメランが全ての方向からランダムで襲い掛かってくるので、ガイアも反応しきれず次第に攻撃を受け始める。何発か食らってしまったところで、ブーメランをさらにさす又状に変形させ、それがガイアの首を捉えた。

 

その勢いでガイアは後方へ倒れこんでしまうが、残りの金属片もさす又に変形させ、ガイアは地面に張り付けにされてしまった。

 

「遥くんが…」

 

曜は自身を助けてくれたガイアを助けることはできない、昨日は酷いことを言ってしまった自分に何も言わず更に身を挺して守ってくれた後輩に今してあげられることなどない…。

 

金属生命体は勝ち誇ったような声を上げるとガイアへ歩み寄る。

 

「お願いガイア、負けないで!」

 

気が付いたら曜はそう叫んでいた。

 

「私、友達に言わなきゃいけないことがある!昨日ひどい事言っちゃった事謝ってない!だから…だから負けないで…」

 

段々泣きそうな表情になりながらそう訴えかける。今何もしてあげられる事ができない、このままでは自分の言わなきゃいけないことを伝えることができなくなってしまう。

 

「私何もしてあげられないけど、ガイアが勝つのを信じてる!ここで見てるから!」

 

ガイアはゆっくりと曜の方を向き、目が合う。

 

(先輩…僕も謝らないといけないんです…それにここで負けたら、誰がみんなを…姉さんを守るんだ?そうだ…ここでやられてたまるかぁッ!)

 

目前に迫った金属生命体に視線を戻すと全身に力を込める。するとガイアの四肢が赤く輝き、さす又を力ずくで引き抜くと飛び起きる。

 

突然の事に相手も完全に虚を突かれたのか動きが止まってしまう。

 

「デュワッ!ハァァア…デヤッ!!」

 

その隙にガイアは両腕を突き上げ、大地と海の光を完全開放するとそれを身に纏う。

 

ガイアの姿が変わったが、金属生命体は今度こそガイアを倒そうと駆け寄ってくる。

 

しかし、ガイアはそのまま相手の体を掴んで放り投げると、起き上がろうとする相手を掴み、今度は背負い投げをかける。

 

さらに起き上がった相手に駆け寄って再び投げ飛ばす。

 

「凄い…」

 

「圧倒的ずら…」

 

「うゆ…」

 

その光景を見ていた一年生組は、普段の遥から想像できないような戦いに圧倒されるのだった。

 

金属生命体はその名の通り全身のほとんどが金属と同じもので構成されており、強固な身体を持つ反面重量がある、したがって投げ技なら、その重さがダメージになるので格闘より効果がある。そう思っての戦法だった。

 

だがガイアの猛攻は止まらない、今度は起き上がる前に相手の上半身を掴んで抱え上げて自身の背中へ持っていきそのまま頭から地面へ落とす。その次は完全に頭上に持ち上げて遠くへ投げ飛ばす。

 

反撃に蹴りを放つ金属生命体の足を掴んで反対側に投げ飛ばし、起き上がろうとする所を飛び上がって近くに着地すると再び持ち上げて頭から落とす。

 

もがき苦しんでいる所を足を掴んで更に放り投げたので、金属生命体はもうボロボロで立ち上がるのが精一杯といった様子だった。

 

ガイアは右腕を突き上げると、両腕を大きく振りかぶってエネルギーを収束させる。

 

「デヤッ!ハァァア……デヤァアアアア!!」

 

そしてそれを胸の前で合掌するように手を合わせ、右手を下にスライドさせてそのエネルギーを解き放つ!

 

光子の奔流―フォトンストリーム―新たな姿を得たガイアの最強の一撃だ。

 

それをまともに受けた金属生命体は一瞬にしてチリも残さず消滅してしまった。

 

そしてガイアは再び曜の方を向くと、サムズアップをする。

 

「へへっヨーソロー!」

 

曜も嬉しそうにそう言って敬礼をするもう遥にとっても馴染み深いポーズだ。

 

するとガイアもそれに敬礼で返すと、そのまま飛び去って行った。

 

「…ありがと、遥くん」

 

曜は飛び去るガイアを見ながらそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「曜先輩、大丈夫ですか?」

 

ふと声のした方を見ると、そこには遥が立っていた。

 

「遥くん、何で?」

 

たしか帰るとき学校に残っていたハズだったので、学校に戻ったものだと思っていた。

 

「いや、さっき戦った時。近くに先輩がいたから怪我とかしてたら大変だなって…」

 

「ううん、わたしは大丈夫」

 

「よかった…」

 

曜はすぐガイアが現れたおかげで無傷だったし、ガイアが離れた場所に相手を吹き飛ばしたお陰で戦闘の余波も受けずに済んだのだ。それに遥は安心したように胸をなでおろす。

 

「それより、昨日はごめんね。心配してくれたのに…」

 

「僕の方こそすいませんでした、僕も皆には色々秘密にしてるのに偉そうにあんなこと聞いて…」

 

そう言って遥は頭を下げた。

 

「や、やめよう?遥君は悪くないから…」

 

曜もそれには流石に慌ててやめるように促すのだった。

 

「きっと先輩、姉さんがコンクールに出たせいで自分の役割が増えて大変だから…。そう思ったんです」

 

「え?」

 

「それに姉さんに話しちゃったんです。姉さんのポジションを先輩がやることになった。って、そしたら『曜ちゃんには曜ちゃんに合ったやり方があるから、変えてもいい』って確かにもう本番まで時間がないけど、それは僕も賛成です」

 

「でも…」

 

もう梨子の動きを曜がトレースすることで話は纏ってしまった。それにさっき言ったように時間がない。そう言いかけた曜だったが、遥は続けた。

 

「それに千歌先輩も言ってたんです。『ずっと曜ちゃんと一緒に何かやりたかったんだ』って、先輩は曜先輩の誘いを断ってきたの気にしてたらしくて、だからスクールアイドルは絶対やり遂げるんだって。うちで曲作ってるときよく言ってました」

 

その言葉に涙が出そうになり、何も言えなくなる曜だったが遥は気が付いていないのか更に続ける。

 

「だから、もう一回千歌先輩と話して2人が納得できる形にしましょう。僕もできることがあれば手伝いますから」

 

「うん、ありがと」

 

泣きそうなのを悟られないように顔を伏せる曜は、一言だけ感謝を述べる。

 

「お礼を言うのも僕の方ですよ、先輩の応援がなかったらきっと今日は負けてました。だから、ありがとうございました」

 

遥もそれが一番伝えたかったのか、言い終わると「じゃあまた練習で」それだけ言って走って帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

想いよひとつになれ

 

 

 

それが予備予選の為に作った曲、『大切なもの』がテーマとなった曲だ。

 

恐らくAqpursがステージに立っている頃、梨子もコンクールのステージでピアノを演奏している。たとえ、今いる場所が離れていても想いは一つだから。だから今、9人全員同じ気持ちで不安も孤独も感じず、ただ自分の思うがままのパフォーマンスを行っているだろう。

 

そしてその気持ちを分かち合って、遥もまた戦っていくのだ。

 

「そうだ、僕も一人じゃない…」

 

 

 

 

 

 




今回の登場怪獣は、ニセウルトラマンガイアこと最後の金属生命体ミーモスです。
今回の戦闘ではくどいくらい投げられたコイツですが、前作通りの扱いですのでちょっとくどく感じた方は申し訳ありません、原作リスペクトで投げまくりました。
違うところといえばスーツアクターという概念がないので頭から落としたくらいですかね?()
そろそろ以前いよいよ登場って言って全く出番のなかった2人満を持して登場するのでどうかお楽しみに.
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