怪獣から吐き出された糸を避けることができずに繭の中に捕らわれてしまったガイア―遥の姿に梨子の悲痛な叫びがこだました。
「ガイアが、繭の中に…」
「嘘よね…どうすんのよこれ…」
誰も考えなかった…いや考えたくなかったガイアの敗北に花丸と善子も茫然とするしかなかった。
「大丈夫だもん、ガイアが…遥君が負けるわけない」
「ルビィ…」
ただ一人、ルビィを除いて。
「だってルビィが怪獣に操られた時だっていつも助けてくれた。だからきっとガイアは負けない」
そう言い切ってみせるのだった。
「ルビィは信じてる、絶対みんなを護ってくれるって。明日みんなで予選に行くんだって…!」
しかし怪獣は無情にも勝ち誇ったように動き始めると、巣にしたホテルに近づいていく。
「まずい、このままじゃ…」
「何とかできないんですの?」
「もしあのまま怪獣が卵を産んだら…」
3年生からそんな声が出る。あのまま卵を産んでそれが羽化してしまったら大変なことになる。だがそれは政府等も理解しているようで、少しでも怪獣を足止めしようと攻撃は激しくなるが、ほんの少しの時間稼ぎにしかならない。
だがその隙にレスキュー部隊が突入し、少しずつ授業員や宿泊客の救助が始まった。
「よかった、この間に助けられれば」
千歌の表情に少しだけ元気が戻って来た。そのタイミングで千歌のスマホに電話がかかってきた。相手はむつだった。
「もしもしむっちゃん、無事なの!?」
『うん、なんとかね…千歌たちは?』
「私達はみんな平気!それより他の皆は?」
『今救助の人が来てくれてるし、みんな怪我はしてないから』
「よかった…」
『でもウルトラマンが私たちを庇って…』
無地を確認できて安心した千歌たちだったが、その言葉で再び表情は暗くなるが最初に口を開いたのは梨子だった。
「大丈夫、ウルトラマンはきっと」
「梨子ちゃん…」
『そうだよね、じゃあまた後で!』
そう言って電話が切られたのだが、そこで怪獣はついに戦闘機を振り切ってしまう。
「ダメ!もう少し…」
「お願い遥…みんなを助けて…」
まだ救助は完了していない、このままでは…その時―
『ハァアア…デヤアァアアッ!!』
ガイアを閉じ込めた繭が赤く輝いた後、砕け散ったのだった。まるで梨子の想いに答えるかのように。
「あの姿は…?」
「梨子ちゃん、よかったね!」
「うん!よかった…ホントに…」
その中から現れたガイアの姿は、体の側面が青く染まり全体的に赤の面積の増えた。大地と海の光を全て開放した姿―
「よかった、本当に…」
「全くこのヨハネを心配させるなんて…」
「遥くん、信じてた」
花丸、善子、ルビィもガイアの姿を見て安心していたが、目じりには涙が浮かんでいた。
「デヤッ!」
ガイアは力強くファイティングポーズを取ると、怪獣に肉薄する。怪獣とホテルの間に入り込むと、素早い拳の連打と回し蹴りで怪獣を後退させていく。
鉤爪で反撃する怪獣だったが、ガイアはそれを捌いて腕を掴むとそのまま怪獣の太ももを蹴り転ばせる。
そのまま今度は起き上がろうとしたところを、下顎を蹴り上げ今度は頭部へチョップを放つが、両腕の爪と顎でガイアの手首を噛みつきそれを受け止める。
やはりかなりの力なのか、ガイアは苦しそうな声を上げるが、無理やりその腕を下ろして力づくで引き抜くと、怪獣の顎を破壊してみせた。
怪獣は悲鳴を上げて後退するが、ガイアは追い打ちをかけるように怪獣の側頭部に回し蹴りを放ち怪獣の巨体が大地を転がる。
「すごい…」
「何て強さですの…」
「アメイジング…」
初めて見るこの姿のガイアの圧倒的な力にダイヤと果南、鞠莉も圧倒される。
「やっぱりあの姿のガイアは凄いや」
「曜ちゃん見たことあるの?」
以前ミーモスを圧倒して見せたガイアの姿をみた曜は思わずそう呟くと、梨子にそう聞かれる。
「うん、予備予選の前にガイアに化けた怪獣に襲われた時にね」
「そんなことがあったのね…」
怪獣を圧倒する姿に、自分の知らないところで起こっていた戦いに梨子は何か感じるものがあったのかもしれない。
「でも、これならきっとみんな助かるよ」
やっとみんなの表情に希望が戻って来たのだった。
「ウルトラマン!がんばれ!!」
沢山の人々の声援を受け、ガイアは怪獣と戦っていた。学校の皆を、Aqoursの皆をそして何より大切な姉を守るために、ガイアはこの怪獣を必ず倒さなければならない。
ガイアは怪獣を片手で持ち上げるとそのまま空高く投げ飛ばした。
「セヤッ!ハァアアア…デヤァアアアアアア!!」
そのまま両腕を大きく振りエネルギーを集め、フォトンストリームを放ったのだった。
その一撃を受けた怪獣は、木っ端微塵に砕け散るのだった。それを見届けたガイアは夜空を飛び去って行った。
「本当!?みんな無事なんだね?よかった~」
『ほんとにね、だから明日の応援、期待しててよね~』
「うん!じゃあまた明日ね」
その後怪獣の繭のせいで当分ホテルが使えなくなってしまったのだが、レスキュー部隊や戦闘機部隊、なによりガイアの活躍の結果、宿泊客にけが人はでなかった。
だが学校の皆は臨時字で手配されたホテルに今夜は泊まることになってしまったので、結局次に会うのは予選本番となってしまった。
「おーい!」
自分達もホテルに戻ろう、これならきっと明日の予選は開催されるだろうから。と、ホテルに戻る道中に、遥が手を振って駆け寄ってきた。
「遥!」
その姿を見た梨子は、遥に駆け寄ると抱きしめた。
「ね、姉さん?」
「よかった…本当に心配したのよ?」
「ごめん姉さん、でもみんな無事で良かった。僕も怪我とか全然ないし」
そう言って遥は笑って見せると、梨子もほほ笑んで遥を開放した。
「ところで、あのガイアは何なの?以前と姿が違うけど…」
鞠莉が遥にそう聞く。このことはダイヤにしか話していなかったし、博樹―アグルとの間にあったことをどこまで話せばいいか解らなかった。
「あの時、ゾーリムと戦う前にアグルから光を授かったんです」
「じゃあアグルはどうなったの?」
アグルである博樹も、あの日以来姿を見せない。ならどこに行ったのかそう果南が問いかける。
「彼は、根源的破滅招来体によって歪められた予測を信じていた…でもそれが間違いだって気が付いて、戦う誇りを失ってしまったんです…でも信じてます、いつか彼と肩を並べて戦えるって」
「そっか…そうだよね」
そう言って果南は笑った、きっとまた会える今度こそダイビングも行ける。そう信じて。
「まあとにかく!みんな無事だったし、あとは明日の予選に備えないとね!」
「そうですね、曜先輩」
曜のその言葉に遥も笑顔で返す、本当によかった。皆無事で。
「遥くん」
「何ですか?」
「ありがとね?」
「はいっ!」
戻ろうとした時、千歌に呼び止められた遥に千歌はそう告げる。マネージャーとして自分たちを支えてくれていた陰で、ウルトラマンとして戦ってくれていた。それに報いる為にも明日は絶対に最高のパフォーマンスをしよう。そう思ったのだった。
「実は、まだ信じられないんだ…今、こうしてここにいることが」
「マルも…夢見たずら」
当日、楽屋でメイクをしている時にルビィがそう漏らしたのに、隣で同様にメイクを行っていた花丸もそう同意する。
「何今更言ってるの?今こそがリアル、リアルこそが正義」
反対側の机でメイクを行う善子がそう反論した。
「ありがとね」
「「え?」」
それに続いて呟かれた、他のグループの会話に掻き消されそうな音量の言葉に花丸とルビィは振り返ろうとする。その善子の表情を見る前に、善子は2人の間に飛び込み肩を抱く。
「さ、あとはスクールアイドルとなってラブライブに堕天するだけ!」
「うん!」
「黄昏の理解者ずら…」
そう応じるルビィと花丸の目には涙が溜まっていた。
「さあ行くわよ!堕天使ヨハネとリトルデーモン達!ラブライブにぃ…降~臨ッ!!」
そういっていつものようにポーズを決める善子の目もまた、涙にぬれていた。
「高校3年になってから、こんな事になるなんてね」
他に誰もいないホールの観客席で果南はダイヤと鞠莉と3人でいた。
「全くですわ、誰かさんがしつこいお陰ですわね」
果南のつぶやきに、ダイヤもそう同意する。
「だね、感謝してる。鞠莉」
鞠莉がずっとまた3人でステージに立つことを諦めないでくれたから、今の自分たちがある。そう思うと鞠莉には感謝してもしきれない。そう思った。
「感謝するのは私だよ、果南とダイヤがスクールアイドルになって、ずっと待っててくれたから諦めずに来られたの」
その言葉に皆涙があふれた。始めた時はこっちから誘ったのに、最後まで諦めなかったのは最初は興味を示さなかった鞠莉だった。でもそのお陰で再びここに戻ってこられた…。
果南は両隣にいる2人の腰に手を回し告げた。
「あの時置いてきたものを、もう一度取り戻そう!」
「勿論ですわ!」
そう返すダイヤも、自然と手すりを掴んでいた手に、力が入った。2年前置いてきてしまったものを、今こそ取り戻そう。そう誓って。
「不思議だなぁ…内浦に引っ越してきたときは、こんな未来が待ってるなんて思ってもみなかった」
舞台裏で梨子がそう感慨深そうにつぶやいた。内浦に引っ越してきたころは、スクールアイドルなんて知らなかったし。ましてや弟もマネージャーになって、こんな舞台に立って歌うなんて想像したこともなかった。
「千歌ちゃんがいたからだね」
そう曜が嬉しそうに言う。千歌が…彼女がいたからここに9人でスクールアイドルとして踊る、きっと千歌が居なかったら、誰もこの場にはいなかった。そう感じた。
「それだけじゃないよ」
「「え?」」
千歌の口から出た否定の言葉に、思わず目を丸くする。
「ラブライブがあったから、μ'sがあったから、スクールアイドルがいたから、曜ちゃんと梨子ちゃんがいたから」
普通の女子高生が、ステージで歌って踊る様が輝いて見えた。自分達も彼女たちの様に自分も輝きたい!そう思ったからスクールアイドルを始めた。
でも自分たちは自分達だけの目標を見つけた。だからここはゴールじゃない、その先にもっと大きなものを見つけられる、そう信じて。
「これからも、色んなことがあると思う。辛いことも大変な事もいっぱいあると思う」
この予選で、学校が廃校を免れることができるとは限らない。
「それでもわたし、それを楽しみたい。全部を楽しんで、みんなと進んでいきたい!それがきっと『輝く』ってことだと思う!」
「そうね」
「9人もいるし」
その声に後ろを振り返ると、Aqoursのみんながいた。
「僕もいますよ」
「じゃあ10人か」
その後ろに、遥の姿もあった。
「僕は客席から、学校のみんなと応援してます、大丈夫!ここまで頑張ってきたんですその努力は、絶対に報われます」
「ありがと、遥」
そう言ってみんなで笑い合う。そうだ、遥もいれてこのみんなで、これからも進んでいける。千歌だけでなく9人みんながそう思ったのだった。
「行くよ!!」
そう言って千歌が、ステージへ続く扉を勢いよく開いた。
―MIRAI TICKET―
この光輝くステージで、彼女たちが披露した曲の名前。
このサイリウムの放つ青い光が、きっと未来への道しるべになる―
そうなることを願って
―私たちがゼロから作り上げたものってなんだろう?
―形の無いものを追いかけて
―迷って、怖くて、泣いて
―そんなゼロから逃げ出したいって
―でも、何もないはずなのに、いつも心に灯る光
―この9人でしかできないことが必ずある
―そう信じさせてくれる光
―わたし達Aqoursは、そこから生まれたんだ!
―叶えてみせるよ、私たちの物語を!この輝きで!!
「君の心は―」
「輝いてるかい?」
前回に比べるとちょっとボリューム不足かもしれませんが、これで1期―ver.1は最終回となります。
次回からすこし完全にサンシャイン本編と離れたお話を挟んで、2期の内容に入っていきます。
初めての創作活動で、今までやらなかったことに挑むので投稿ペースが下がるかもしれませんが、気長に待っていていただければ幸いです。
それではまた次回、お会いするのを楽しみにしております!