ラブライブ!サンシャイン!!〜大地と海の巨人〜   作:カズオ

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お待たせしました、29話です。
この作品も気が付けば連載開始から4か月が経っていました。皆様が呼んでくれるお蔭です、ありがとうございます。
それでは本編どうぞ


29話 1年と3年と/海は何も答えない

『各国の連携により、各国を防衛するためにG.U.A.R.D.(対根源的破滅地球防衛連合)が極秘に結成され。これまで極秘にされていたのは、無用な混乱を防ぐためであり、更に衛星軌道上に対〈空間レーザーシステム〉を配備したことで、宇宙からの脅威から皆様を護る為に…』

 

TVではこの前現れた戦闘機についての会見が行われていた。XIGはその中でもエキスパートで結成された組織なのだ。

 

G.U.A.R.D.は根源的破滅地球防衛連合の略で、クリシスの予測の時点から時間はかかったが各国の連携によって結成された組織なのだ。

 

「でもいきなりあんなの飛ばしたら騒ぎにもなるわよね…」

 

そう呟いたのは母親だった。

 

「でもあの飛行機遥も関わったんでしょ?」

 

「え?いやまあぁ…浮くための装置造るのにね…」

 

朝ニュースを観ながら朝食をとっている中、突然そう話を梨子に振られた遥はそう返した。

 

「アルケミースターズが関わっているのね…」

 

そう呟いたのは母親だった。遥がアルケミースターズと一緒に色々やっていることは知っていたが、ファイターの事までは伝えていなかったのだ。

 

「でもこれで怪獣からの被害が少なくなるだろうし、いいことなんじゃない?」

 

「だといいけれど…」

 

梨子がそう言ったが、母親はそう何か含みのある言い方しかしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時を同じくして、淡島の一角にポツンとある海に沿いに立つ墓前に立っている人がいた。

 

『湊麗華』そう書かれた墓石の前に立っていたのは、黒いシャツに黒のズボンといった出で立ちの青年だった。そう、湊博樹だった。

 

博樹はその墓前に花束を添える。ここに眠っているのは博樹が幼くして失った母親のお墓だった。

 

「お母さん、オレは全てを失った…。なのにまだ奴等は生き残っている。アグルの力はもう戻ってこない…地球はもうオレに語り掛けてはくれない…。だがまだ人間として、オレにもやれることがあるハズだ。そうだろ…?」

 

博樹は遥にアグルの力を授け、ゾーリムが撃破された後も地球を襲撃する根源的破滅招来体に対抗しようと一人きりで行動していた。そしてその間にここ淡島に戻り、アグルの光を手にした海に飛び込むも何も得ることはできなかった。その事を母の墓前で呟くも、当然返事などあるはずもない。

 

ふっ。と自嘲気味に笑うと、博樹はその場を後にするのだった。人間としてやれることを、するために。

 

墓前には白いユリの花束が一つだけ海風に晒されていた。

 

 

そしてその日、ジオベースに侵入し、対空間レーザーシステムのコンピューターを書き換えようとした人物がいたことが発覚するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか予備予選がこんなに早くにあるなんて思ってなかったんだもん…」

 

その日、部室で千歌がそう言って頭を抱えていた。

 

結論から言うと、学校説明会の中止は撤回された。鞠莉が父親に「何人入学希望者を集めれば統廃合を撤回してくれる?」その問いへの答えは100人だった。

 

説明会を行って、年末までに入学希望者が100人を超えれば、浦の星は来年度も生徒を募集する。そうなればみんなこの学校で高校卒業を迎えられる。

 

「出場グループが多いですからね。この地区の予備予選は来月始め、場所は特設ステージ」

 

そうダイヤが答える。もう1か月を切っている、だが足掻くと決めた以上そうするしかない。

 

「有象の魑魅魍魎が集う宴ッ!」

 

その隣で善子は意味の解らないことを口走ってはしゃいでいる。

 

「でも、どうして早いと困るずら?」

 

「それは…その…」

 

「歌詞を作らなきゃならないからでしょ」

 

花丸が不思議そうに聞くと、千歌は答えあぐねるが梨子が代わりに答える。

 

「なるほど」

 

そう鞠莉は納得する、学校説明会も新曲でいこう。そう説明会が行われることが確定した時にみんなで決めたのだが、説明会と予備予選の間はわずか1週間、2つの曲を同時に進めなければならないのだ。

 

ラブライブで発表する曲は、未発表ののもでなければならない。その規定の為、ステージのたびに曲を作る必要があるのだ。

 

「わたしばっかりズルい!」

 

「梨子ちゃんも2曲作るの大変って言ってたよ」

 

思わずそう不満を叫ぶ千歌に、曜がそう言ってプレッシャーをかける。千歌の歌詞作りが遅れれば、その分梨子が短い期間で曲を仕上げなければならなくなるのだ。

 

「それを言ったら曜ちゃんも」

 

「9人分だからね…」

 

梨子にそう言われて曜も苦笑しながら答える。曲が増えればそれに合わせた衣装も必要になる。合わせて18着と考えると曜の負担もかなり大きいものになる。

 

「厳しいよ…ラブライブ…」

 

「それを乗り越えたものだけが、頂点からの景色を見ることができるのですわ」

 

千歌の弱音も止まらないが、ダイヤはそう言ってもすぐ曲ができる訳でもない。

 

「まぁでも、このまま千歌たちに任せっぱなしっていうのもね」

 

「じゃあ果南、久しぶりに作詞やってみる?」

 

果南が千歌の様子をみてそう言うと、鞠莉が食いついてくる。

 

「い、いや~…わたしはちょっと…」

 

「前は作ってたじゃない」

 

「それを言ったら鞠莉だって曲作ってたじゃん」

 

そう言って言い合いになる。すると梨子が「じゃあ衣装は?」と聞いた。

 

「まぁそれは私と…」

 

そう言ってダイヤがルビィに視線を向ける。

 

「そっかルビィちゃん裁縫得意だもんね」

 

すると曜は納得したように頷く。

 

「得意っていうか…」

 

そう言って謙遜するルビィだったが、「これもルビィちゃんが作ってくれたずら!」そう言って花丸がクマやらの刺繍の施されたバックを出す。

 

そんなやり取りを見ていた鞠莉が立ち上がると、ある提案をする。

 

「じゃあ二手に分かれてやってみない?チカっちと梨子に曜が説明会用の曲を作って、他のみんなでラブライブの曲を作る。これなら負担も減るでしょ?」

 

「でも、いきなりラブライブ用の曲なんて…」

 

その提案に異議を申し立てたのはルビィだった。初めて作る曲が、予備予選のための曲となればプレッシャーになるのも無理はない。

 

「でも、一回ステージに立ってるし案外、チカっち達よりいい曲ができるかもよ?」

 

「かもではなく、作らなくてはなりませんわね。スクールアイドルの先輩として!」

 

「おぉ、言うねえ~」

 

鞠莉の言葉に触発されたのか、ダイヤと果南もやる気になると千歌も「それ良い!」と賛同するのだった。

 

「じゃあどっちがいい曲作るか競争だね!」

 

そう言って、二手に解れたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり、鞠莉さんの家では作業になりませんわ!」

 

そう言ったのはダイヤだった。最初は鞠莉の家―即ちホテルオハラで作業をという話になったのだが、結局そこで出されたお茶や菓子に夢中になってしまい、誰一人として作業を進めるに至らなかったのでこうして黒澤家に移動してきたのだ。

 

「え~?」

 

「あっちがいいずら」

 

「もっとポップコーン食べたかったのに!」

 

そう言ってはぶたれるのは善子と花丸だった。この2人は特に出されたお菓子を気に入っていたので、まぁその気持ちも解らなくはないが…

 

「太るよ…」

 

そう思わずつぶやいた遥だったが2人に睨まれ「ヒッ…」と声を上げて静かになる。

 

「やりますわよ!」

 

そんな感じの3人だったが、ダイヤがそう言って凄むと「へい…」と凄い渋々返事をするのだった。

 

「ではまず、詩のコンセプトから。ラブライブの予選を突破するには」

 

「はい!」

 

ダイヤがそう言って仕切って話を進めると、花丸に考えがあるのか打って変わって手を上げる。

 

「ずばり…『無』ずら」

 

スケッチブックにでかでかと『無』とかかれている。果南は「無?」と首をかしげる。

 

「そうずら、即ち無というのは全てが無いのではなく、無という状態が有るということずら。それこそまさに無」

 

「はぁ?」

 

花丸の言っていることが理解できず、ダイヤは「はぁ?」と鞠莉も「ワッツ?」と首をかしげている。この場にいる全員が理解できていない。そう思っていたが…

 

「何それ…かっこいい!」

 

ここに解っている?人が一人いた。

 

「善子さん」

 

花丸は善子にそう視線を送る。

 

「そも無が有るということこそ、私たちが到達できる究極の境地ずら」

 

「ヨハネ…無…つまり漆黒の闇、そこから出ずる力…」

そのやり取りを聞いて察した『あぁ、善子も解ってないけど言葉だけ聞いてかっこいいから便乗してるんだな』と。

 

「それでラブライブに勝てるんですの?」

 

そうダイヤがもっともな疑問を投げかける。結局の所、難しい事を題材に取り扱っても、それが聴き手の心に響かなければラブライブの舞台で通用しないのだ。

 

「テーマが難しすぎるよ」

 

「オフコース!もっとハッピーなのがいいよ!」

 

果南も鞠莉もそう言った、少なくとも3年生3人からするとこの意見はナシのようだ。

 

「理解できないとは…」

 

「不幸ずら…」

 

ここにいる全員が理解できたとして、ライブで理解されなければ意味はないのだが…。

 

 

「そういう鞠莉さんは何かアイディアはありますの?」

 

そこでダイヤがそう鞠莉に話を振ると、鞠莉は自信たっぷりな表情を浮かべると。

 

「まっかせなさーい!ずっと温めていた、飛びっきりで斬新でハッピーな曲がありマース!」

 

そういってスピーカーに自身のスマートフォンを差し込む、まさか既に曲を作っていたのは想定していなかったが、これは期待できそうだった。しかし―

 

ヘビィメタル風の音楽が、爆音で響き渡る。そんななか鞠莉はごきげんで踊っているし、果南とダイヤはそんな楽曲に慣れているようだった。

 

「なんかいいね、体を動かしたくなるっていうか」

 

「確かに、いままでやったことのないジャンルではありますわね」

 

そんな風に二人からは好評だったのだが、花丸がなんとかプレイヤーの停止ボタンを押す。三年生に対して、一年生はあまりの音量に伸びてしまった。

 

「ルビィ、こういうの苦手…」

 

「耳がキーンってする」

 

「ただの騒音ずら…」

 

「僕も右に同じ…」

 

そう言ってぐったりする4人に、3年生3人は、苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

 

 

 

 

一方2年生組は、千歌の家で作詞を行っている最中だった。

 

「浮かびそうにない?」

 

「うーん…『輝き』ってことがテーマだとは思うんだけど…」

 

机に突っ伏して頭を抱える千歌に、曜が問いかけると千歌からテーマは決まっているという返事が返ってくる。

 

「『輝き』ねぇ…」

 

梨子はそう呟く、ずっと『輝き』を追い求めてきた訳だからそれをテーマとして押し出した曲を作ることに異論はないが、やはりそう簡単に思い浮かぶものではない。

 

「早くしないと果南ちゃん達に先越されちゃうよね…」

 

「だよね…」

 

競争しているわけではなくても、やはり先に完成したといわれてしまえば余計にプレッシャーになってしまう。そんな事を気にしているとスマホに1通のメールが届く。

 

『早く来て』

 

ただその一言のみのメールだったが、送り主はルビィだった。何かあったに違いない、そう思った3人は事前にどこで作業をするか聞いていたので、黒澤家に急ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘!?もうできた…の?」

 

ルビィたちがいる部屋に通されて、部屋に駆け込むや否やそう聞いた千歌はその中の惨状に言葉を詰まらせた。

 

「それでは予備予選は突破できません!」

 

「じゃあその曲だったら突破できるっていうの?」

 

そう言ってダイヤに噛み付いたのは善子だった。1年生と3年生で対立して睨み合っているという構図が出来上がっていた。

 

「まぁまぁ落ち着いて…」

 

「「遥は黙ってて!」」

 

「ひゃい…」

 

遥も仲裁に入ろうとしていたが2人に睨まれて大人しくなる。

 

「花丸の作詞よりマシデース!」

 

「でも、あの曲はAqoursには合わないような…」

 

そう言い放つ鞠莉にルビィは恐る恐る言い返すが。

 

「新たなチャレンジこそ、新たなフューチャーを切り開くのデース!」

 

「さらにそこにお琴を!」

 

「無の境地ずら」

 

なんて各々が好き勝手言い始めるからさぁ大変、ようやく状況が飲み込めた千歌たちも苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

 

 

 

 

「やはり、一緒に曲を作るというのは無理かもしれませんわね…」

 

「趣味が違いすぎて…」

 

鞠莉、果南、善子、花丸の4人を部屋に残して玄関前で一旦落ち着いて話を聞いてみるとダイヤとルビィがそう言った。

 

「いい考えだと思ったんだけどなぁ…」

 

「もう少し話し合ってみたら?」

 

そう曜と梨子が言うが、遥も「散々話し合ったけどやっぱ好みがバラバラなんだよね…」と困ったように言う。

 

「バラバラ…」

 

そう呟く千歌の隣で曜は「確かに1年生と3年生、全然タイプ違うもんね」と納得した様子だった。

 

「でも、それを言い訳にしてたらいつまでも纏まらないし…」

 

「確かに、その通りですわね」

 

梨子のいう事はもっともだったし、ダイヤもそのことに対しては自覚があった。

 

「私達は、決定的にコミュニケーションが不足しているのかもしれませんわ」

 

「前から1年生と3年生、あんまり話してなかったもんね」

 

そう告げるダイヤに曜も同意する。確かに今までずっと2年生を中心に話が纏まっていた中で、急にその2年生を抜いた結果それが明確になってしまったのだ。

 

「善子ちゃんと花丸ちゃんはあんまり人と話す方じゃないし…果南ちゃんと鞠莉ちゃんもあぁ見えて人見知りなところがあるし…」

 

そう千歌がここに居ない4人のことを思い返せば、やはりそうなのかもしれない。

 

「どうしたもんか…」

 

「となると…」

 

頭を悩ます遥をよそに、ダイヤは何か思いついたようで再び3年生と1年生7人で頑張ってみることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホントに大丈夫かなぁ?」

 

十千万に戻る途中、千歌がそう呟く。自分が2曲準備できれば避けられた事態ではあったので、どうしても気になってしまう。

 

「でも、この問題は解決しておかないと…」

 

梨子はそう返す、こればかりはみんなを信じるしかない。それにメンバー全員が個々でもコミュニケーションをとれるようになることも重要だ。

 

「あれ?あの人…?」

 

そんなやり取りをしているとき、船着場の前を通りかかった際ある人物が千歌の目に留まる。

 

「どうしたの?知り合い?」

 

千歌のそんな様子に気が付いた曜がそう聞くと、千歌は「知り合いって訳じゃないけど…」と歯切れの悪い返事をする。そして梨子もその人物に気が付いて息をのんだ。

 

そして千歌はその人物に歩み寄っていくと声をかける。

 

「無事だったんですね」

 

「君は確か…」

 

千歌が見つけた人物、それは湊博樹だった。千歌に声をかけられて振り返った博樹も、千歌の顔を見て名前は知らないので無理もないがどう呼んだらいいか困っているようだった。

 

「わたしは高海千歌っていいます、どうして果南ちゃんたちに会ってあげなかったんですか?心配してたんですよ?」

 

千歌はそう博樹に告げる。あの日、ガイアに光を与えた後行方をくらませた博樹を、特に3年生の3人は酷く心配していた。あんな風にガイアと戦うための人質のように連れ去られた果南も、彼が引き起こしたことで記憶一時期失う事になった鞠莉でさえ。

 

「事情はダイヤさんや鞠莉ちゃんから聞きました。でももう遥君と協力できない理由なんて無いんでしょ?同じウルトラマンなんですよね」

 

「あるさ」

 

千歌の言葉をそう言って跳ね除けた博樹は続ける。

 

「オレのせいでたくさんの人が傷ついた、オレは心のどこかで自分の力に溺れていた。オレはその償いをしなければならない」

 

「でも、あなたの立場ならみんな同じことをするよ!」

 

「違うんだよ、実際にすることと…仮定の話は」

 

そう言って博樹は千歌の隣をすり抜けると、梨子に気が付いたのか彼女の前に立ち止まると。

 

「君にも悪いことをしたな、悪かった」

 

そういうと歩み去ろうとする博樹に、千歌は「博樹さん!」と呼びとめようとする。

 

「遥に会ったら伝えてくれ、今度会った時は手加減するな、じゃないとお前が怪我をすることになる。ってな」

 

そう言って今度こそ居なくなってしまった。

 

(待っていろ…遥!)

 

博樹によって、ある計画が動き出そうとしていた。




久しぶりの博樹登場、アグルの力を失った彼がやろうとしていることとは?
次回、雨の音/再会の空お楽しみに!
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